メルマガ原稿

奥村 稔(札幌北高校) <3rd Edition>

テストだけでは計れない!(人を伸ばす「評価」とは)

吉田 新一郎
生活人新書176(NHK出版)700円+税

高校で情報科が創設されて、もう4年目を迎えています。新しい教科ができるなんて初めてのことなんだと、驚きと戸惑いを感じながら過ごしてきたのは私だけではないように思います。初年度を迎えるお正月あたりには、きっと誰もが春からの情報科の授業を構想していたのだと思います。そして、授業の内容だけではなく、実は授業の教室環境も整える必要があることに気づき、あたふたと新年度を迎えてしまったのではないでしょうか。これは私だけ?

誰もが教科書を読み込みながら、自分なりの授業計画を練ったのだと思います。でもそのときには、生徒の学習活動を、そして授業そのものをどのように評価すれば良いのかなんていうことは、頭の隅にも芽生えていなかったのではないでしょうか。

私は、情報科の以前には数学を担当していました。授業計画、授業方法、評価などはほとんど教科としてルーティンワーク化しており、学校規模という要素もありますが、自分なりの考えを差し挟む余地などはほとんどありませんでした。現在、情報科を担当する先生方は、1人ないしは2人という学校がほとんどではないでしょうか。今度は、自分たちでそのルーティンを考え、評価し改良していかなくてはなりませんね。すでに何年も教職を経験してきている先生方にとっても、これはあまりにも新鮮?すぎて、負担の大きな仕事かもしれません。

授業をデザインするにあたっての第一歩は、教師として生徒に何を学んで欲しいかを自覚することだと思います。学習目標や学習内容がそれにあたるのでしょう。そしてさらに、そのときに生徒の学習活動をどのように評価するのかということを考えておかなければ、実際に授業が進行していくにつれて困ってしまいますね。実は、評価の規準というものは、授業内容をデザインするときにはすでに決めておかなければならないこととされています。考えてみれば当たり前で、何をどのように評価するかということは、学習内容を具体化することとほとんど同じことですから。   ということで私は、評価のことをもっと真剣に考えておけば良かったと後悔しているのですが、さらにこの出遅れをなかなか取り返せないでいます。教師って、意外と忙しかったのだなと実感している毎日。なあ〜んて言っているだけでは埒があかないですね。何とかしなくては。

そんな4年目にして焦っていたところに出会ったのが、今回お薦めの本です。

評価といえば、「評価の四観点」のことはすでにご存知だと思いますし、以下の資料にも眼を通されていることでしょう。

国立教育政策研究所の評価規準
「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料−評価規準,評価方法等の研究開発(報告)−」
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/kou-sankousiryou/html/index_h.htm

ここに掲載されている評価規準は、本来各学校の実態に合わせてアレンジしながら活用されることを想定しています。しかし、この評価規準をどのように自分の授業の中で具体的に活用していくのかについては、誰もがまったく暗中模索の状態だと思います。まして、「関心・意欲・態度」なんてどうやって評価するのだと、路頭に迷った気分の人も多いかと思います。果たして、これまでと同じような点数によるテスト評価では測ることができなかったそのような生徒の力を、どうしたら測ることができるのでしょうか。生徒の成長をうながすために、そのような評価をどのように活用していけばよいのでしょうか。

このような課題を解決する方法としてはこれまでも、例えば「ポートフォリオ」というものが紹介されてきました。自分の実践に取り入れている方も多いのではないかと思います。しかし、そうした実践を行いながらも、ポートフォリオをどのように評価や評定に持ち込んだらいいのだろうかとか、ほんとうにこれは実践的で効果的な評価方法なのだろうかなどと悩んだ経験はないでしょうか。

本書は、このポートフォリオ評価も含めた、生徒の成長を支えるいろいろな評価方法について、それらの間の関係をも解き明かしながら、具体的な実践方法について踏み込んでいるものです。また、ここでの評価は、単に生徒に対する評価を指すものではなく、自分が行った授業に対する評価も与えてくれます。自分で自身を評価することは、最初は気持ちの悪いものです。しかし、自分が評価されるのではなくて、自分のやった実践が評価されるのだということが実践の中でストンと腑に落ちたとき、つまり自分に対して客観的になれたときに、ここに書かれている評価の手法というものは教師に対して、「向上心」という一種の麻薬めいたものを与えてくれることでしょう。

評価についての自分なりのノートを作成しながら、この本を読み進めることをお薦めします。それはきっとその後になって、評価に対してあなたが(私が)行う考察の中で、非常に重要な核になってくれるものだと思います。その結果として、評価という目的のある試行錯誤、実践は楽しいものだと感じてもらえたら、これは仲間としてこの上なく嬉しいです。きっと、ここにフィードバックしてくれますよね。
・・・って、書いた以上は自分でもやらんといかんなあ。




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Last-modified: 2023-03-28 (火) 21:32:53