定義

1 問題解決学習あるいは問題解決型学習とは

教育学の分野では1世紀程前から用いられている用語であるため、論じる者の学問的背景や、教育対象の年齢層により様々な捉え方がなされている。

戦後の社会科教育の知見がある者にとっては、アメリカの教育学者ジョン・デューイが提唱した生活経験主義教育論の中核をなす学習原理を想起するであろう。

一方、大学関係者は近年主に医学教育の分野で実践されている問題解決型学習(Problem-based Learning:PBL)をイメージするかもしれない。狭義のPBLとは、少人数のグループによる学習を通じて課題を達成して行くなかで、学生自身が学ぶ内容を理解していく学習手法である。主に医学、歯学、薬学、看護学、工学教育の分野においての実践例が報告されている。 具体的な学習活動としては、最初に課題が学生に提示されることから始まる。学生はその文章から問題点を洗い出し、学習目標、仮説、問題解決の手段を明らかにする。次に個別学習で情報収集、分析、問題解決を行い、グループ討論により結果を確認し、問題解決のプロセスを修得してゆくというものである。

また、理科教育や専門教育に携わっている者は「仮説実験授業」や「課題研究」との類似性が気になるかもしれない。

2 学習指導要領における問題解決型学習

学習指導要領において「問題解決」が取り上げられる様になったのは、平成10年に告示されたものからである。高等学校学習指導要領第1章総則第4款総合的な学習の時間の、学習活動を行う際の配慮事項として次のような記述がある。

(2) 自然体験やボランティア活動,就業体験などの社会体験,観察・実験・実習,調査・研究,発表や討論,ものづくりや生産活動など体験的な学習,問題解決的な学習を積極的に取り入れること。

なお小中学校における、総合的な学習の時間の学習活動を行う際の配慮事項としても下記の様な記述がある。

(2) 自然体験やボランティア活動などの社会体験,観察・実験,見学や調査,発表や討論,ものづくりや生産活動など体験的な学習,問題解決的な学習を積極的に取り入れること。

さらに小中学校においては、指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項に「各教科等の指導に当たっては,体験的な学習や問題解決的な学習を重視するとともに,児童(生徒)の興味・関心を生かし,自主的,自発的な学習が促されるよう工夫すること。」とあり、各教科の指導においても高校以上に「問題解決的な学習」を重視していた。

その結果、「教え込み・詰め込みの授業」への反動も加わり、特に小学校を中心に「単元の導入部から自力発見や協同解決を促し、教師からの解説的な説明をほとんど行わないような授業」が蔓延したとの指摘もある。

問題解決とは自分の頭で考え、自分で解決したり判断したりする事を指すのだが、問題解決のための予備知識として基礎基本が習得できていなければ、非常に効率の悪い学習となる。

新しい学習指導要領において、指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項には次の様に改善された。

(2) 各教科等の指導に当たっては,体験的な学習や基礎的・基本的な知識及び技能を活用した問題解決的な学習を重視するとともに,児童(生徒)の興味・関 心を生かし,自主的,自発的な学習か促されるよう工夫すること。

3 共通教科「情報」における問題解決型学習

教科の目標には「社会の情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる。」と記されている。これを広く捉えるならば、「問題解決能力を育てる。」ことになるのではないか。

現行の学習指導要領の普通教科「情報」においても、新しい学習指導要領の共通教科「情報」においても、問題解決における「体系的な手法」そのものについての取り扱いが含まれている。

問題解決型学習を行う上で、予備知識・技能として問題解決手法を理解しておく事は極めて重要であり、体験的に学ぶ必要がある。

本研究で対象とする問題解決型学習とは、適切な困難度がある問題を、自ら考えるのに最低限必要なレディネスを教えてつくっておいた上で、生徒間での活動を通じて問題解決や討論を行い、授業の最後でわかった事とわからなかった事を自己評価させる学習と定義したい。

系統的学習のみでは、2単位という必要最低限の授業時間の中で共通教科「情報」の幅広い内容を網羅することは困難である。さらに、知識がいくらあっても、それを実際の場で適用し問題を解決しなければ、その知識は役には立たない。系統的学習と問題解決型学習のバランスが重要である。


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Last-modified: 2023-03-28 (火) 21:32:53