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[[研究テーマとその考え方]]

*研究テーマ趣旨説明 2011(平成23)年度版[#j89097e2]

新科目の性格と特徴の研究~
(何を求めどのように近づくか、新科目への逆説的アプローチ)

平成25年度から新学習指導要領が動き出す。
情報科では、必履修2単位の情報A,B,Cという3科目が、「社会と情報」「情報の科学」という2科目に再編される。
情報活用の実践力の基礎部分を担っていた情報Aは、高校での役割をほぼ果たしたとして、その内容のほとんどを中学校での学習内容に移した。
情報の科学的理解を主に担ってきた情報Bは「情報の科学」という科目として、また、情報社会に参画する態度の育成を担ってきた情報Cは「社会と情報」として、よりその教科の特性を明確にして履修されることになる。

新学習指導要領(平成21年3月)が告示されてから私たちは、新科目への対応も考慮しながら、現在の体系による授業を改良改善してきている。
しかし、学習指導要領の解説(平成22年5月)を熟読したとしても、実際に教科書としての形にならなければ、具体的な授業としてイメージすることが難しい。
新しい科目へのこうした難しさは、主に三つの要因から来ていると思われる。

まず、未だ未成熟の教科であるという実態。
現状でも、学習目標を達成するためにはどのような授業を行うのが良いのかという確たるビジョンが存在しているとは思えない。
もちろん、学校の特性とか生徒の実態とかに対応した授業を行うことが重要であるが、それにしても、ほとんどすべての教員が共有している方向性が存在しているとは思われない。
情報教育の理念を共有しつつも、ゼロから内容を検討してきた若い教科には、まだまだ蓄積すべき実践が必要なのかもしれない。

次に、現状を変化させることの困難性。
授業のあるレベルを維持するためにはそれなりのエネルギーが必要であり、それなくしては次第に授業の質が落ちることは必至である。
その上でさらに、内容の向上を図ったり質的な転換を図ったりすることは、並々ならない努力を要することだろう。
まして、変化の方向性が漠としていては、それを明確にする段階で多くの力を注ぐ必要がある。

そして、抽象と具象の間にある克服すべき距離。
情報科の目標は、「情報を科学的に理解する」だの「情報社会に参画する」だのと、いたって抽象的である。
それなのに、実際に行われる学習活動は、実習として進めることが中心となる。
抽象的な学習を通して抽象的なことを学ぶこともなかなか難しいことだとは思うが、実習という具象的な活動を通して抽象的な目標に近づくことには大きな乖離があり、そこを埋めるためには様々な手立てが必要になる。

これらのことを克服しながら、さらに新学習指導要領、そして新しい科目の学習内容に対応するためには、まず目標となる新科目の特徴を的確に把握しなければならない。
新しい科目構成になるにあたっては、それまでの情報A,B,Cという科目名では、何を学習するのかということがすぐには分からないという指摘があったからだと聞いている。
確かに、「社会と情報」と「情報の科学」という科目構成によってその違いは明確になった。
しかし、あまりにも極端に明確になりすぎることで、情報科の目標を達成するために大切な部分が見えなくなってしまうといった懸念も生まれる。
両科目の学習領域のそれぞれ独自の部分と、両者の重なり合う部分との認識は、それらのどちらを選択したとしても、最後にはきちんと情報科の目標に到達しているという安心感が欲しい。

そして忘れてならないのは、「情報モラル等」の扱いである。
新学習指導要領での情報モラルに関する内容は、明らかに特筆されているといっても過言ではない。
それだけ今の社会から、そして将来の社会からはますます求められることになるであろう、情報社会に生きる上での素養。
そうした情報に関する倫理観、モラルに係って学習すべき内容は、あまりにも膨大で目眩がするほどある。
しかし、それらをすべて情報科で扱うことは、時間的なことを抜きにしてもあまりにも広範囲であり、情報科の教員だけで対応するのは明らかに不可能である。
行き当たりばったりの授業にならないようにするためにも、「社会と情報」と「情報の科学」とのそれぞれにおいて、どういった内容をどの程度扱うべきかについては慎重に取捨選択する作業が必要である。

以上のことを次のように簡潔にまとめ、2011(平成23)年度の研究テーマとして提案する。

新科目の性格と特徴の研究~
(何を求めどのように近づくか、新教科への逆説的アプローチ)

この研究を行うにあたって、新学習指導要領、あるいはその解説に書かれている内容だけにとらわれてしまって、教科や科目の性格や特徴を決めつけていくことは、あまりにも短絡的である。
情報をどのようにとらえるかという観点の違いによって、世の中がどのように見えるかが変わる。
こうした多様な面を持つ情報に対して、一つの指針だけに寄りかかった価値判断をするのでは、情報の本質を学んだことにはならない。

また、個人的な興味関心や持ち合わせの知識技術から、研究の方向付けをするのもどうかと思われる。
学習内容は、学校の特性や生徒の実態から考えなければならないとよく言われるが、まずは、自分が行おうとする情報科教育が少しずつ充実した方向に向かっていることが前提である。
易きにつかず、毎日の研鑽の中で幅広い見地から情報科の面白さを体得して、それらを生徒たちに還元することができるような授業を目指したい。

したがって、新科目に対応しなければと闇雲にそれを追いかけるのではなくて、その先にある情報の本質を情報科の教員が把握した上で、それを確かめるようにして新科目の性格や特徴に迫りたい。
こうした意味において、本研究におけるアプローチの方向性について注意を促しておきたい。

23年度のテーマをそのような姿勢で研究することができれば、自ずから次の段階として「新学習指導要領に基づいた授業の創造」に辿り着くのだろう。
また、教員自身が自らの教育理念を明確に意識することができたとき、「学習目標と一体化した評価の活動」も効果的に行うことができるものと思われる。
毎日の研修と授業の創造、それらの評価と改善を通して得た成果を、高教研情報部会というコミュニティで共有し、キャラバン研究会や1月の研究集会で出会うことで互いに磨き合いたい。

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