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[[研究テーマとその考え方]]
*平成29(2017)年度研究テーマ趣旨説明文 [#of9d480d]

情報科は誕生してから今に至るまで、混沌の中を前に少しずつ進んできたといえます。
草創期には「とにかくやってみる (Let's Begin Anyway!)」ことが必要でした。
「何を教えるのか」は存在していましたが、「誰がどう教えるのか」は各々の学校に、各々の教員に委ねられていました。
その結果、情報科を担当することを受動的に受け入れざるを得ない教員が少なからず生まれました。
このことをただ単純に不幸と感じる人もいましたが、「何をどう教えればよいのかわからない」と深く悩む教員も多かったのです。

このような混沌を招いた理由は、いくつか考えられます。
一つ目は、他の教科と違い情報科には実践の蓄積が少ないため、適当な手本をどこかに、誰かに見出せなかったことです。
情報科では「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参画する態度」という3つの能力をバランスよく育成することが求められています。
しかしこのことが、学校の実情(生徒・教員・学習環境等)を鑑みながら、これらを実際に具体的な授業としてデザインしなければならないことは多くの教員を悩ませました。

そもそも情報科の学習は、情報の収集に始まり分析や発信までを総合的に学ぶことや、教科横断的に他教科と連携を進められることなどが特色です。
さまざまな見方や考え方から学習内容を捉えることができ、授業デザインに対して高い自由度を担保しています。
しかし、授業のデザインに悩む教員にとってこの自由さは、曖昧さでもあり捉えどころのなさでもあります。
このことが前述の、「何をどう教えればよいのか(正解が)わからない」ということに繋がっていると考えられます。
つまり、本来は情報科の強みであるはずの学習の内容や方法の自由さが、逆に足かせになってしまっていたのです。

二つ目は、情報科の意義への無理解です。
情報科の本来の目的は、情報科以外の大多数の教員には未だに正しく理解されていません。
「情報活用の実践力」を「コンピュータやアプリケーションソフトウェアの操作方法の習得」と同義に捉えられる傾向が、根強く存在していることからもそれがいえます。
また、既存の職業科による、コンピュータ教育や資格取得を主眼とした授業と混同されることもあります。
そのような授業を行う科目と、全ての高校生を対象に必履修科目としてある情報科との、存在意義についての相違が理解されていません。

さらに三つ目は、情報通信技術の加速度的な進展によるものです。
想像できないほどの速さで改良開発される情報技術のすべてに、私たちが対応しきることはとても難しいことです。
そうした状況の中で、教えるべき内容が大きく更新されたり、陳腐化したりすることは日常茶飯事として起こり続けています。
この意味では、混沌は私たちの内部だけにではなく、私たちを取り巻く環境の中にも存在しているとさえいえます。

このような混沌の中においても私たちは、授業デザインとその改善を繰り返し、前に進んできました。
その間にはいくつかの、混沌の状況を打ち破るための契機となりえるのではないかという節目もありました。
特に平成25年度に「情報A」「情報B」「情報C」の3科目が「社会と情報」「情報の科学」の2科目構成に見直されたことは、現在に続く大きな転換点となったといえるでしょう。
そして今再び、学習指導要領の改訂という新たな契機を迎えようとしています。

高校における直接的な改訂ではありませんが、小学校においてプログラミング教育が必修化されることは大きなポイントであるといえます。
もちろんここでの「プログラミング教育」の目的は、あくまで「プログラミング的な思考の育成」であって、コードを直接書かせてプログラミングを学ばせることまでは想定していません。
特別な時間を設けて行うというよりも、総合的な学習の時間や算数、理科など既存の教科科目の中でその思考を養おうともしています。

高校の情報科でも、プログラミングを学ぶことの目的は、単にアプリケーションソフトウェアの作成ができるようになることだけではありません。
それは例えば、さまざまな目的を実現するための手順を具体化することや、複雑な考えをシンプルなルールの組み合わせによって理解しやすくする能力を身に付けることなどです。
特に問題解決学習において、プログラミングは目的を達成するにはいくつもの方法があることを理解し、実際にプログラムを作成するという経験を通して主体的に物事を考える力や意欲を身につけることにとても役に立ちます。

私たちは一昨年の研究テーマの中で、不易流行の重要性に言及しました。
不易流行とは、いつまでも変化しない本質的なものを大切にしながら、新しい変化の積み重ねをも主体的に取り入れていくことです。
新味を求めて変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であるともいえます。
私たちにとっても、生徒にとっても、「何が必要なのか、なぜ必要なのか」といった根源的な疑問を余念なく突き止めることがとても大切です。
情報科の学びの中には、そうした探究的な活動を誘う魅力があります。
生徒が主体的に学ぶ態度を身につけ、学んだことを社会のさまざまな場面で活かし、誰かの役に立っていると実感できる原動力が、その魅力の中にあります。

学校における学びは「目標の設定」→「授業デザイン」→「実践」→「評価」→「フィードバック」の繰り返しです。
そしてここで、あらためて情報部会15年間の研究テーマを振り返ると、私たちの歩みはこの学びの繰り返しをまさに3周回してきたことが分かります。
その過程の中で私たちは、研究テーマが掲げた目標には直ちに至らないまでも、繰り返すことでスパイラルな成長を期待してきました。
情報科が混沌から脱け出し、社会からたとえ体系的な学問として認知されるようになったとしても、この上向きの循環をこれからも絶えず持続させていかなければなりません。

新学習指導要領の動向に常に意識を傾けながら、私たちはこれからを生きる生徒を見守っていきましょう。
その上で、これまでの経験のみばかりに縛られるのではなく、その時代の要請に合った情報科の目的を明らかにしながら注ぐ日々の努力は、情報科を新たに創り直すことと同義といえます。
情報部会の16年目はまさに、心新に未来に向けた再起動のボタンを押す時なのです。

以上を研究テーマの趣旨として、平成29(2017)年度のテーマを次のように提案します。
*情報科リブート(新たな気持ちで授業づくりに向き合おう) [#iad4da9f]

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