小学校学習指導要領解説 家庭編 平成20年6月 文部科学省 --1/81-- 目次 第1章 総 説 ………………………………………………………………………… 1 1 改訂の経緯 ………………………………………………………………… 1 2 家庭科改訂の趣旨 ………………………………………………………… 3 3 家庭科改訂の要点 ………………………………………………………… 5 第2章 家庭科の目標及び内容 ……………………………………………………… 9 第1節 家庭科の目標 ……………………………………………………………… 9 1 教科の目標 ………………………………………………………………… 9 2 学年の目標 ………………………………………………………………… 12 第2節 家庭科の内容構成 ………………………………………………………… 16 1 内容構成の考え方 ………………………………………………………… 16 2 内容の示し方 ……………………………………………………………… 17 第3節 家庭科の内容 ……………………………………………………………… 20 A 家庭生活と家族 ………………………………………………………… 20 (1)「自分の成長と家族」 ………………………………………………… 21 (2)「家庭生活と仕事」 ……………………………………………………… 23 (3)「家族や近隣の人々とのかかわり」 …………………………………… 26 B 日常の食事と調理の基礎 ………………………………………………… 30 (1)「食事の役割」 …………………………………………………………… 31 (2)「栄養を考えた食事」 …………………………………………………… 33 (3)「調理の基礎」 …………………………………………………………… 36 C 快適な衣服と住まい …………………………………………………… 44 (1)「衣服の着用と手入れ」 ………………………………………………… 45 --2/81-- (2)「快適な住まい方」 ……………………………………………………… 48 (3)「生活に役立つ物の製作」 ……………………………………………… 52 D 身近な消費生活と環境 …………………………………………………… 58 (1)「物や金銭の使い方と買物」…………………………………………… 59 (2)「環境に配慮した生活の工夫」 ………………………………………… 62 第3章 指導計画の作成と内容の取扱い…………………………………………… 64 1 指導計画作成上の配慮事項 ……………………………………………… 64 (1) 題材の構成 ……………………………………………………………… 65 (2) 「A家庭生活と家族」の(1)のアの指導 ………………………… 66 (3) 段階的な題材の配列 …………………………………………………… 66 (4) 道徳との関連 …………………………………………………………… 67 2 内容の取扱いと指導上の配慮事項 ……………………………………… 69 3 実習の指導 ………………………………………………………………… 70 (1) 服装,用具の手入れ,保管 …………………………………………… 70 (2) 事故防止,熱源や用具,機械などの取扱い ………………………… 71 (3) 生の魚や肉の扱い,安全・衛生……………………………………… 72 4 家庭との連携 ……………………………………………………………… 73 5 言語活動の充実と家庭科 ………………………………………………… 74 --3/81-- 第1章総説 1 改訂の経緯 21世紀は,新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる 領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」の時 代であると言われている。このような知識基盤社会化やグローバル化は,アイディ アなど知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させる一方で,異なる文化や文 明との共存や国際協力の必要性を増大させている。このような状況において,確か な学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」をはぐくむことがま すます重要になっている。 他方,OECD(経済協力開発機構)のPISA調査など各種の調査からは,我 が国の児童生徒については,例えば, @ 思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用す る問題に課題, A 読解力で成績分布の分散が拡大しており,その背景には家庭での学習時間な どの学習意欲,学習習慣・生活習慣に課題, B 自分への自信の欠如や自らの将来への不安,体力の低下といった課題, が見られるところである。 このため,平成17年2月には,文部科学大臣から,21世紀を生きる子どもたちの 教育の充実を図るため,教員の資質・能力の向上や教育条件の整備などと併せて, 国の教育課程の基準全体の見直しについて検討するよう,中央教育審議会に対して 要請があり,同年4月から審議を開始した。この間,教育基本法改正,学校教育法 改正が行われ,知・徳・体のバランス(教育基本法第2条第1号)とともに,基礎 的・基本的な知識・技能,思考力・判断力・表現力等及び学習意欲を重視し(学校 教育法第30条第2項),学校教育においてはこれらを調和的にはぐくむことが必要 である旨が法律上規定されたところである。中央教育審議会においては,このよう --4/81-- -1- な教育の根本にさかのぼった法改正を踏まえた審議が行われ,2年10か月にわたる 審議の末,平成20年1月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校 の学習指導要領等の改善について」答申を行った。 この答申においては,上記のような児童生徒の課題を踏まえ, @ 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂 A 「生きる力」という理念の共有 B 基礎的・基本的な知識・技能の習得 C 思考力・判断力・表現力等の育成 D 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保 E 学習意欲の向上や学習習慣の確立 F 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実 を基本的な考え方として,各学校段階や各教科等にわたる学習指導要領の改善の方 向性が示された。 具体的には,@については,教育基本法が約60年振りに改正され,21世紀を切り拓 ひら く心豊かでたくましい日本人の育成を目指すという観点から,これからの教育の新 しい理念が定められたことや学校教育法において教育基本法改正を受けて,新たに 義務教育の目標が規定されるとともに,各学校段階の目的・目標規定が改正された ことを十分に踏まえた学習指導要領改訂であることを求めた。Bについては,読み ・書き・計算などの基礎的・基本的な知識・技能は,例えば,小学校低・中学年で は体験的な理解や繰り返し学習を重視するなど,発達の段階に応じて徹底して習得 させ,学習の基盤を構築していくことが大切との提言がなされた。この基盤の上に, Cの思考力・判断力・表現力等をはぐくむために,観察・実験,レポートの作成, 論述など知識・技能の活用を図る学習活動を発達の段階に応じて充実させるととも に,これらの学習活動の基盤となる言語に関する能力の育成のために,小学校低・ 中学年の国語科において音読・暗唱,漢字の読み書きなど基本的な力を定着させた 上で,各教科等において,記録,要約,説明,論述といった学習活動に取り組む必 要があると指摘した。また,Fの豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実 については,徳育や体育の充実のほか,国語をはじめとする言語に関する能力の重 --5/81-- -2- 視や体験活動の充実により,他者,社会,自然・環境とかかわる中で,これらとと もに生きる自分への自信を持たせる必要があるとの提言がなされた。 この答申を踏まえ,平成20年3月28日に学校教育法施行規則を改正するとともに, 幼稚園教育要領,小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を公示した。小学校 学習指導要領は,平成21年4月1日から移行措置として算数,理科等を中心に内容 を前倒しして実施するとともに,平成23年4月1日から全面実施することとしてい る。 2 家庭科改訂の趣旨 平成20年1月17日の中央教育審議会の答申においては,教育課程の基準の改善のね らいを示すとともに,各教科等別の主な改善事項を示しているが,家庭科に関しては, 次のように述べられている。 (@)改善の基本方針 ○ 家庭科,技術・家庭科については,その課題を踏まえ,実践的・体験的な学 習活動を通して,家族と家庭の役割,生活に必要な衣,食,住,情報,産業等 についての基礎的な理解と技能を養うとともに,それらを活用して課題を解決 するために工夫し創造できる能力と実践的な態度の育成を一層重視する観点か ら,その内容の改善を図る。 その際,他教科等との連携を図り,社会において子どもたちが自立的に生き る基礎を培うことを特に重視する。 (ア) 家庭科,技術・家庭科家庭分野については,自己と家庭,家庭と社会との つながりを重視し,生涯の見通しをもって,よりよい生活を送るための能力 と実践的な態度を育成する視点から,子どもたちの発達の段階を踏まえ,学 校段階に応じた体系的な目標や内容に改善を図る。 ○ 社会の変化に対応し,次のような改善を図る。 --6/81-- -3- (ア) 少子高齢化や家庭の機能が十分に果たされていないといった状況に対応 し,家族と家庭に関する教育と子育て理解のための体験や高齢者との交流を 重視する。 心身ともに健康で安全な食生活のための食育の推進を図るため,食事の役 割や栄養・調理に関する内容を一層充実するとともに,社会において主体的 に生きる消費者をはぐくむ視点から,消費の在り方及び資源や環境に配慮し たライフスタイルの確立を目指す指導を充実する。 ○ 体験から,知識と技術などを獲得し,基本的な概念などの理解を深め,実際 に活用する能力と態度を育成するために,実践的・体験的な学習活動をより一 層重視する。また,知識と技術などを活用して,学習や実際の生活において課 題を発見し解決できる能力を育成するために,自ら課題を見いだし解決を図る 問題解決的な学習をより一層充実する。 ○ 家庭・地域社会との連携という視点を踏まえつつ,学校における学習と家庭 や社会における実践との結び付きに留意して内容の改善を図る。 (A)改善の具体的事項 (小学校:家庭) ○ 生活を工夫する楽しさやものをつくる喜び,家族の一員としての自覚をもっ た生活を実感するなど,実践的・体験的な学習活動,問題解決的な学習を通し て,自分の成長を理解し家庭生活を大切にする心情をはぐくむとともに,生活 を支える基礎的・基本的な能力と実践的な態度を育成することを重視し,次の ような改善を図る。 (ア) 中学校の内容との体系化を図り,生涯の家庭生活の基盤となる能力と実践 的な態度を育成する視点から,@家庭生活と家族,A食事のとり方や調理の 基礎,B快適な衣服と住まい方,C身近な生活と消費・環境に関する内容で 構成する。 (イ) 社会の変化に対応し,次のような改善を図る。 a 家族の一員として成長する自分を自覚し,家庭生活を大切にする心情を --7/81-- -4- はぐくむことを目指した学習活動を一層充実する。 b 食事の役割や栄養を考えた食事のとり方,調理などの学習活動を一層重 視するとともに,身の回りの生活における金銭の使い方や物の選び方,環 境に配慮した物の活用などの学習について,他の内容との関連を明確にし, 実践的な学習活動を更に充実する。 (ウ) 家庭生活を総合的にとらえる視点から,家族の生活と関連させながら衣食 住などの内容を取り扱うことを一層重視する。また,小学校第4学年までの 学習を踏まえた2学年間の学習のガイダンス的な内容を設定するとともに, 他教科等との関連を明確にし,連携を図る。 3 家庭科改訂の要点 中央教育審議会の答申に示された改善の基本方針及び改善の具体的事項を踏まえ, 実践的・体験的な活動や問題解決的な学習を通して,日常生活に必要な基礎的・基本 的な知識及び技能を身に付けることや,自分の成長を自覚し家庭生活を大切にする心 情をはぐくむこと,家族の一員として生活をよりよくしようと工夫する能力と態度を 育てるなどの観点から,目標及び内容について,次のように改善を図っている。 (1) 目標について 家庭科では,従来から,衣食住や家族の生活などに関する実践的・体験的な活動を 通して,日常生活に必要な基礎的な知識・技能と家族の一員として生活を工夫しよう とする実践的な態度を育てることを目標としてきた。 その基本的な考え方は同様であるが,次の3点について改善を図っている。 ア これまでの「家庭生活への関心を高める」を,「家庭生活を大切にする心情をは ぐくみ」とした。このことは,家庭生活への関心を高めるとともに,衣食住などの 生活の営みの大切さに気付くことを重視して,表現を改めたものである。 --8/81-- -5- イ これまでの「生活を工夫しようとする実践的な態度」を,「生活をよりよくしよ うとする実践的な態度」とした。生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な 態度を重視して,表現を改めたものである。 ウ 学習指導要領全体の表記と統一を図る視点から,これまでの「基礎的な知識と技 能」を,「基礎的・基本的な知識及び技能」と表現を改めた。 なお,学年の目標については,従前と同様に第5学年と第6学年をまとめて示し, 家庭科で育成する資質や能力を3つの側面から具体的に示している。 (2) 内容について ア 内容構成の基本的な考え方と改善(8内容から4内容へ) 中学校技術・家庭科の内容との系統性や連続性を重視し,生涯にわたる家庭生活 の基盤となる能力と実践的な態度を育成する観点から,次のように内容を改善して いる。 (旧)(1)「家庭生活と家族」(新)「A家庭生活と家族」 (2)「衣服への関心」「B日常の食事と調理の基礎」 (3)「生活に役立つ物の製作」「C快適な衣服と住まい」 (4)「食事への関心」「D身近な消費生活と環境」 (5)「簡単な調理」 (6)「住まい方への関心」 (7)「物や金銭の使い方と買物」 (8)「家庭生活の工夫」 このことにより,小学校と中学校の内容構成がAからDの同一の枠組みとなるこ とから,中学校での内容を見通して,小学校の学習に求められる基礎的・基本的な 知識及び技能や,生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態度が着実には ぐくまれることを目指している。 なお,家庭生活を総合的にとらえる視点から,家族の生活と関連させながら衣食 住などの内容を取り扱うよう題材を構成すること,また,各学校や児童の実態に応 --9/81-- -6- じた弾力的な指導をしやすくするため,内容を2学年まとめて示していることにつ いては,従前の扱いと同様である。 内容項目については,次表のように改善を図っている。 小学校家庭科 新旧内容項目一覧 新学習指導要領 旧学習指導要領 A 家庭生活と家族 (1) 家庭生活と家族 (1) 自分の成長と家族 ア 成長の自覚,家庭生活と家族の大切さア 家庭の仕事 (2) 家庭生活と仕事 イ 自分の仕事の工夫 ア 家庭の仕事と分担 ウ 生活時間と家族への協力 イ 生活時間の工夫 エ 家族との触れ合いや団らん (3) 家族や近隣の人々とのかかわり ア 家族との触れ合いや団らん(2) 衣服への関心 イ 近隣の人々とのかかわり B 日常の食事と調理の基礎 ア 衣服の働きと着方 (1) 食事の役割 イ 日常着の手入れとボタン付けや洗たく ア 食事の役割と日常の食事の大切さ イ 楽しく食事をするための工夫(3) 生活に役立つ物の製作 (2) 栄養を考えた食事 ア 体に必要な栄養素の種類と働きア 製作計画 イ 食品の栄養的な特徴と組合せイ 手縫いやミシン縫いによる製作 ウ 1食分の献立 ウ 用具の安全な取扱い (3) 調理の基礎 ア 調理への関心と調理計画 (4) 食事への関心 イ 材料の洗い方,切り方,味の付け方,盛り付 け,配膳及び後片付け ア 食品の栄養的な特徴と食品の組合せ ウ ゆでたり,いためたりする調理イ 1食分の食事 エ 米飯及びみそ汁の調理 オ 用具や食器の安全で衛生的な取扱い,こんろ(5) 簡単な調理 の安全な取扱い C 快適な衣服と住まい ア 調理計画 (1) 衣服の着用と手入れ イ 洗い方,切り方,味の付け方,後片付け ア 衣服の働きと快適な着方の工夫ウ ゆでたり,いためたりする調理 イ 日常着の手入れとボタン付け及び洗濯エ 米飯及びみそ汁の調理 (2) 快適な住まい方 オ 盛り付けや配膳,楽しい食事 ア 住まい方への関心,整理・整頓及び清掃 カ 用具や食器の安全で衛生的な取扱い,こんろの の仕方と工夫 安全な取扱い イ 季節の変化に合わせた生活の大切さ,快適な 住まい方の工夫 (3) 生活に役立つ物の製作 (6) 住まい方への関心 ア 形などの工夫と製作計画 イ 手縫いやミシン縫いによる製作・活用ア 整理・整とん,清掃の工夫 ウ 用具の安全な取扱い イ 身の回りを快適に整えるための手立てや工夫, 気持ちよい住まい方 D 身近な消費生活と環境 (1) 物や金銭の使い方と買物 (7) 物や金銭の使い方と買物 ア 物や金銭の大切さ,計画的な使い方 イ 身近な物の選び方,買い方ア 物や金銭の使い方 (2) 環境に配慮した生活の工夫 イ 身の回りの物の選び方や買い方を考えた購入 ア 身近な環境とのかかわり,物の使い方の 工 夫 (8) 家庭生活の工夫 --10/81-- --10/81-- -7- イ ガイダンス的な内容の設定 第4学年までの学習を踏まえ2学年間の学習の見通しを立てさせるため,ガイダ ンス的な内容としてA(1)「自分の成長と家族」の項目を設定し,第5学年の最初 に履修させることとしている。 ウ 家族・家庭に関する教育の充実 家族の一員として成長する自分を肯定的にとらえ,家庭生活と家族の大切さに気 付くことを重視し,A(1)「自分の成長と家族」の項目を設定している。この項目 はガイダンス的な内容であるとともに,「A家庭生活と家族」から「D身近な消費 生活と環境」の内容と関連させて学習することにより,「自分の成長」が学習全体 を貫く視点となるように設定されている。衣食住などの学習を通して成長する自分 を喜び自覚することで,学習意欲をより高めることを目指している。 エ 食生活に関する内容の充実 生活や学習の基盤となる食育の推進のため,食事の役割や栄養を考えた食事のと り方,調理などの学習活動を一層重視することとしている。特に,中学校での扱い となっていた五大栄養素については,その基礎的事項を小学校で扱うこととしてい る。 オ 主体的に生きる消費者をはぐくむ視点の重視 持続可能な社会の構築など社会の変化に対応して,主体的に生きる消費者として の態度を育成する視点から,内容「D身近な消費生活と環境」を設定した。具体的 には,児童に身近な物の選び方や買い方,環境に配慮した物の活用などの学習につ いて,他の3つの内容との関連を図り実践的に学ぶこととしている。 カ 言語を豊かにし,知識及び技能を活用して生活の課題を解決する能力をはぐくむ 視点の重視 各内容の指導に当たっては,衣食住などの生活の中の様々な言葉を実感を伴って 理解する学習活動や,生活の課題を解決するために,言葉や図表などを用いて考え たり説明したりする学習活動を充実することとしている。 --11/81-- -8- 第2章 家庭科の目標及び内容 第1節 家庭科の目標 1 教科の目標 小学校の教育課程は,各教科,道徳,外国語活動,総合的な学習の時間,特別活動 によって編成されている。小学校家庭科の果たすべき役割やねらいについて総括して 示したものが,教科の目標である。 教科の目標は次のとおりである。 衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して,日常生活に必要な基礎的 ・基本的な知識及び技能を身に付けるとともに,家庭生活を大切にする心情をは ぐくみ,家族の一員として生活をよりよくしようとする実践的な態度を育てる。 この家庭科の目標は,次の3つの部分から構成している。 「衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して」では,実践的・体験的な活 動を通して学習するという教科における学習方法の特質を述べている。 「日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付けるとともに,家庭生 活を大切にする心情をはぐくみ」では,学習内容として主に家庭生活に焦点を当て, 衣食住などに関する内容を取り上げ,日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技 能を身に付けるとともに,家庭生活を大切にする心情をはぐくむことを述べている。 「家族の一員として生活をよりよくしようとする実践的な態度を育てる」では,最 終目標として,家族の一員として生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態 度を育てることを述べている。 このように,家庭科は,家庭生活における衣食住などに関する内容について,実習 --12/81-- -9- や観察,調査などを通して学習することによって,日常生活に必要な基礎的・基本的 な知識及び技能を身に付け,生活における自立の基礎を培うとともに,家庭生活を大 切にする心情を育てることを目指している。また,進んで身近な生活の課題を解決す る能力を身に付け,家族の一員としての自覚をもって,家族や近隣の人々と協力して, 家庭生活を一層楽しく,よりよくしようと工夫する能力と実践的な態度や豊かな人間 性を育てることをねらいとしている。 このことは,自己と家庭,家庭と社会とのつながりを重視したものであり,自己と の対話を深めつつ,家族や近隣の人々など他者や社会,自然や環境とともに生きる開 かれた個であることを志向しており,生涯にわたる家庭生活の基盤となる能力や態度 をはぐくむことを目指したものである。 「衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して」とは,家庭科における学習 方法の特質を述べたものである。具体的には,衣食住や家族の生活などの家庭生活に 関する内容を主な学習対象として,製作,調理などの実習や観察,調査,実験などの 実践的・体験的な活動を通して,実感を伴って理解する学習を展開することを示して いる。 家庭科では,生命の維持や心身の成長発達などにかかわる人間の基本的な営みが行 われる家庭生活を主な学習対象としているので,家庭生活にかかわりの深い人やもの, 環境などとの関連を図りながら,食べることや着ること,住まうことなどを扱うこと になる。 これらに関する実践的・体験的な活動を通して具体的な学習を展開することによ り,より確実な知識及び技能を身に付けるとともに,知識や技能を活用して,身近な 生活の課題を解決したり,家庭での実践を無理なく行ったりすることができるように することを目指している。 「日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付ける」ということは, 衣食住や家族の生活などに関する内容について,実践的・体験的な活動を重視した学 習をしていく過程で,日常の生活に必要とされる基礎的・基本的な知識及び技能を, 児童一人一人のよさや個性を生かしながら身に付けるようにすることである。 --13/81-- -10- 基礎的・基本的な知識及び技能とは,中学校段階との系統性,一貫性を考慮した上 で,日常生活に必要なもの,応用・発展できるもの,生活における工夫・創造につな がるものとしている。 なお,今回の改訂では,小学校と中学校の内容の体系化を重視して,小学校,中学 校ともに同じ枠組みをもつ4つの内容とした。小学校で指導する基礎的・基本的な知 識及び技能が中学校の学習に発展していくものとして明確に意識され,着実な定着に つながることを目指している。 「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」ということは,家庭生活への関心を高め, 衣食住を中心とした生活の営みを大切にしようとする意欲や態度をはぐくむことであ る。 具体的には,家庭生活の基盤には,家族などの「人」,衣服や食物などの「もの」, 「時間」,「金銭」などの要素や,それらが関連し合って家族との関係や生活行為な どがあることを,衣食住などに関する自立の基礎に必要な知識及び技能を身に付ける 学習を通して気付くようにする。そうした気付きを通して,日々,繰り返し営まれる 家庭生活の中で家族と共に自分が成長していることを自覚し,衣食住を中心とした生 活の営みを大切にしようとする意欲や態度をはぐくむようにする。これらの意欲や態 度は生涯にわたる家庭生活を支える基盤となるものである。 「家族の一員として生活をよりよくしようとする実践的な態度を育てる」というこ とは,家族の一員として,家庭生活を改めて見つめ直したり実感したりすることによ って,現実の自分の生活の中から課題を見いだし,身に付けた知識や技能を活用して 生活をよりよくしようと工夫する能力と進んで実践しようとする態度を育てることで ある。 生活をよりよくしようと工夫する能力とは,すなわち,よりよい生活を目指して課 題を解決する能力であり,家庭生活における身近な課題を様々な角度から考える思考 力,考えたことを基に課題の解決を図るための判断力,自らの考えを的確に表す表現 力などを含む。実生活と関連を図った問題解決的な学習を効果的に取り入れ,身近な 生活の課題を解決する能力をはぐくむ指導を充実するようにする。 なお,児童は自分が家族に支えられているとともに,自分の存在があって家族が構 --14/81-- -11- 成されているという相互関係に気付くことで,家族の一員としての自覚をもつことが できる。そこでは,家族が協力して互いに家庭生活を支え合うことが大切である。 さらに,家庭生活は,近隣の人々や環境とのかかわりの中にあることにも気付かせ, 近隣の人々や身近な環境とのかかわりを大切にすることにより,よりよい生活が実現 できることにも気付かせるようにする。 2 学年の目標 学年の目標は,教科の目標に沿って家庭科で育成することを目指す資質や能力を具 体的に示している。主に,(1)は家庭生活への関心や意欲,(2)は日常生活に必要な基 礎的・基本的な知識及び技能,(3)はそれらの活用を通して生活をよりよくしようと 工夫する能力と実践的な態度について,それぞれ実現すべき目標として示したもので ある。また,これらの目標が相互に関連し合って教科全体の目標を実現するように構 成している。 なお,従前どおり,学校や児童の実態に応じた指導ができるようにするため,学年 の目標は2学年まとめた示し方としている。2学年を通して学年の目標や教科の目標 を実現できるようにする。 (1) 衣食住や家族の生活などに関する実践的・体験的な活動を通して,自分の成 長を自覚するとともに,家庭生活への関心を高め,その大切さに気付くように する。 (1)の目標は,教科の特質である実践的・体験的な活動を通して,自分の成長を自 覚するとともに,家庭生活への関心を高め,衣食住を中心とした生活の営みの大切さ に気付くよう,関心・意欲を高めることの重要性を明確にしている。 ここでは,自分の成長はその発達の過程で衣服や食物,住まいなどの生活に支えら れ,同時にその生活が家族によって支えられてきたことを,衣食住や家族の生活など に関する実践的・体験的な活動を通して実感することにより,家庭生活への関心を高 --15/81-- -12- め,日々の生活の営みの大切さに気付くようにすることを目指している。 「衣食住や家族の生活などに関する実践的・体験的な活動」とは,目的をもって, 衣食住や家族の生活などに関する学習対象を観察する,触れる,聴く,味わうことな どを通した直接体験や情報の収集,製作や調理などの実習,インタビューや実験等の 実感を伴った理解に資する具体的な学習を示している。 「自分の成長を自覚する」とは,これまでの自分の生活を振り返ることによって家 族に支えられ成長してきたことに気付くとともに,衣食住などに関する実践的・体験 的な活動を通して「してもらう自分」から「できる自分」へと成長していることに気 付き,これからの自分の成長について展望することである。 「家庭生活への関心を高め,その大切さに気付くようにする」とは,家庭生活を改 めて見つめ直すことによって,多くの要素から成り立つ家庭生活に関心を高め,日々 繰り返される衣食住などの生活の営みの大切さに気付くようにすることである。 具体的には,次の3つの段階で学習が深まっていくと考えられる。 まず,第1には,衣食住などの実践的・体験的な活動を通して,家庭生活を構成し ている要素に関心をもつことである。具体的には,家族などの「人」や衣服や食物な どの「もの」,「時間」,「金銭」などがある。 第2には,家庭生活はこれらの要素が互いに関連し合って,営まれていることに気 付くことである。そこでは,衣食住に関する生活行為や仕事が自分と人や物などを結 び付けていること,それぞれの家族のかかわり方や生活の仕方があること,また,自 分の生活の在り方が周囲に影響を与えていることなどについても気付くようにする。 第3には,家庭生活の要素や生活の営み,そこで生活する家族とのかかわりなどへ の関心が高まることにより,生活の営みにはなぜそうするのかという大切な意味があ ることに気付くようにすることである。 --16/81-- -13- (2) 日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,身近な生活に 活用できるようにする。 (2) の目標は,日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を確実に身に付け, それらを生活に活用する能力を育成することを明確にしている。 基礎的・基本的な知識及び技能は,生活における自立の基礎を培い,健康で自分ら しい生活をするために必要であり,また,他の新たな知識や技能を獲得する基となる ものである。そのような知識や技能を発揮することによって,よりよい家庭生活の実 践ができるようになる。 そのため,実践的・体験的な活動を通して,日常生活に必要な基礎的・基本的な知 識及び技能の確実な定着を図り,活用する能力を育成するようにする。 なお,このような知識や技能は,単に方法だけを取り出して訓練しても実生活に生 かすことのできるものとはなりにくい。日常生活に関連のある学習場面において,児 童自身が主体的に知識や技能を生かし,自分の考えを働かせながら工夫する経験を繰 り返す中で身に付いていくものである。 例えば,「ゆでる」という知識や技能は,水を使って加熱する調理操作の能力であ る。卵や青菜をゆでる場合,鍋の大きさや水の量,火力,加熱時間などの条件を総合 的に操作して,その場の条件に適した調理ができるようになることが求められる。そ のためには実践的・体験的に学ぶことが必要であり,その繰り返しによって,児童自 身が確かな知識や技能を身に付けていく。 また,同じ食品をゆでるにも,切り方や部位などによって方法を変化させることが できる。野菜によっては,ゆでることにより,かさが変化するものもある。このよう に,場面に応じて知識や技能を使いこなすことの意味やおもしろさに気付いたり,自 分にもできたという自信をもったりすることによって,生活に生かそうとする意欲が 高まり,知識や技能が身に付くのである。それを繰り返すことによって,生活の様々 な場面で,状況に応じて知識や技能を活用する能力が育ってくる。 --17/81-- -14- (3) 自分と家族などとのかかわりを考えて実践する喜びを味わい,家庭生活をよ りよくしようとする実践的な態度を育てる。 (3) の目標は,家族などとのかかわりの中で,家庭生活をよりよくしようと工夫す る能力と実践的な態度を育成することを明確にしている。 ここでは,目的をもって生活を見つめ,家族や近隣の人々とのかかわりの中で,生 活をよりよくするために工夫しようとする能力と,生活において実践しようとする意 欲的な態度を育てることを目指している。 これらの工夫しようとする能力や実践的な態度をはぐくむためには,家庭生活を見 つめ直し,身近な生活の課題を見付け,その解決を目指して考え工夫する活動ととも に,物を作ったり学習したことを生活に生かしてみたりすることなどを通して,実践 する喜びを味わうことが重要な視点の1つとなる。実践する喜びとは,物を作る楽し さを味わったり,学習したことによって自分にもできるようになったという達成感を 味わったりすることであり,家族や周りの人に喜んでもらうことで一層強くなるもの である。 ここで,「家族など」としているのは,学習の主な対象となる家庭生活が地域との かかわりの中にあることから,家族と共に,近隣の人々とのかかわりにも配慮するこ とが必要だからである。すなわち,児童は一人で生きているのではなく,家族や近隣 の人々と互いに支え合い,家庭生活を成り立たせている。家庭生活は,自分の家族と の関係だけではなく,近隣の人々とかかわることでより豊かになるのである。 そのため,児童が学習を進める際には,近隣の人々とのかかわり方や,家庭生活を 取り巻く環境への影響などを考慮しながら,よりよい家庭生活を工夫して積極的に取 り組むことができるようにする。 なお,家庭科では,家族をはじめ,人とかかわる意味やよさについて,実践する喜 びを味わいながら実感を伴って理解できるようにすることを目指している。例えば, 家族の役に立ちたいと自ら考え実践したことが受け入れられ,評価された時に,楽し さと充実感を味わうことができる。このような経験を重ねることによって,児童は, 家族の一員としての自覚をもち,喜んで家族と協力して家庭生活をよりよくしようと する態度を身に付けることができるようになる。 --18/81-- -15- 第2節 家庭科の内容構成 1 内容構成の考え方 平成10年に告示された学習指導要領では,小学校の家庭科は,(1)「家庭生活と家 族」,(2)「衣服への関心」,(3)「生活に役立つ物の製作」などの8つの内容,中学 校の技術・家庭科家庭分野は「A生活の自立と衣食住」,「B家族と家庭生活」の2 つの内容で構成していた。 今回の改訂では,これらの内容構成を改め,生涯にわたる家庭生活の基盤となる能 力と実践的な態度を育成する視点から,小学校と中学校の内容の体系化を図り,小学 校,中学校ともに同じ枠組みをもつ4つの内容で構成することとしている。 このことにより,小学校と中学校における内容の円滑な接続が可能となり,小学校 での指導が中学校までの内容を見通したものとなり,中学校につながる基礎的・基本 的な知識及び技能や生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態度が確実に定 着することを目指している。 内容構成に当たっては,生活における自分の成長を衣食住や家族の生活などの学習 全体を貫く視点としてとらえるとともに,家庭生活と家族に関する内容,衣食住に関 する内容,消費・環境に関する内容を大きな枠組みとしてとらえ,家庭生活を基盤と しながら相互に関連を図って題材を構成することで,家庭生活を総合的にとらえられ るようにしている。このことは,児童が家族や近隣の人々とかかわりながら,心身と もに健康で豊かに生活するための自立の基礎を培い,家庭生活を大切にする心情をは ぐくむとともに,社会の変化に主体的に対応できるようになることを意図している。 --19/81-- -16- 2 内容の示し方 内容については,児童の発達の段階や生活の実態などを考慮し中学校との体系化を 図るとともに,家族の生活と関連させながら衣食住の内容を扱うこと,また,家族や 衣食住の生活が身近な環境と密接にかかわっていることを一層明確にする視点から, 「A家庭生活と家族」,「B日常の食事と調理の基礎」,「C快適な衣服と住まい」,「D 身近な消費生活と環境」の4つの内容とした。 これらの内容は,2学年まとめて示している。また,第4学年までの学習を踏まえ, 2学年間の学習の見通しをもたせるガイダンスを設けるとともに,中学校での学習に 効果的に接続するように内容の示し方を工夫している。なお,内容の記述の順序は, 必ずしも学習の順序を示すものではなく,地域や学校,児童の実態に応じて弾力的に 学習指導ができるように配慮している。 特に,家庭科が主な学習対象としている家庭生活は,地域や家族構成によって違い が大きいので,児童の実態を考慮した独自の題材や関連する内容をまとめた題材,複 数の内容を組み合わせた題材などを構成し,学校独自の指導計画を作成することによ り,実態に応じた総合的な展開が可能となり,学習の効果は高められる。そのため, 学習指導要領においては,内容を大綱的に示し,弾力的な扱いができるようにすると ともに,個に応じた指導など創意ある学習が展開できるようにしている。 内容の示し方の特色としては,次の点を挙げることができる。 @ 4つの内容の関連の明示 4つの内容に関しては,「A家庭生活と家族」を,衣食住などの内容である「B 日常の食事と調理の基礎」,「C快適な衣服と住まい」,「D身近な消費生活と環境」 とかかわらせながら学習させるとともに,「D身近な消費生活と環境」を衣食住の 学習である「B日常の食事と調理の基礎」や「C快適な衣服と住まい」と関連させ て具体的に学習することを,各内容の指導や題材構成の配慮事項として示している。 このことにより,家庭生活を実際の生活により近いものとして総合的にとらえるこ とができるようになり,より効果的な学習が展開できることを意図している。 A ガイダンスと学習全体を貫く視点の設定 --20/81-- --20/81-- -17- A(1)「自分の成長と家族」のアの事項については,第4学年までの学習を踏ま え,2学年間の学習の見通しをもたせるためのガイダンスとして取り扱い,第5学 年の最初に学ぶ内容として示している。 また,この内容は,「A家庭生活と家族」から「D身近な消費生活と環境」の内 容と関連させて学習することにより,「自分の成長」が2学年間の学習全体を貫く 視点となっている。衣食住などの学習を通して成長する自分を喜び自覚するととも に,家庭生活への関心を高め,衣食住などの生活の営みを大切にする意欲や態度が はぐくまれることを意図している。 B 少子高齢化や食育の推進,持続可能な社会の構築など,社会の変化に対応する視 点からの内容の再構成 ア 「A家庭生活と家族」においては,自分の成長と家族や,家庭生活と仕事,家 族や近隣の人々とのかかわりの学習を通して,家族の一員として成長する自分を 自覚し,家庭生活を大切にする心情をはぐくむことを目指した学習活動を充実す るための指導項目を示している。 イ 「B日常の食事と調理の基礎」においては,生活や学習の基盤となる食育を推 進する視点から,食事の役割や栄養を考えた食事のとり方,調理などの学習活動 を一層重視している。なお,中学校での扱いになっていた五大栄養素については, その基礎的事項を小学校において指導することとしている。 ウ 「C快適な衣服と住まい」においては,人間を取り巻く快適な環境を作り出す 要素として衣服と住まいをとらえる視点から,これらを関連させて学習すること により効果的な学習活動が展開されることを意図している。 なお,課題選択となっていた「暖かさ,風通し,明るさなど」を「暑さ・寒さ, 通風・換気及び採光」と改め,小学校で押さえる基礎的・基本的な内容としてす べての児童に学習させることとしている。 エ 「D身近な消費生活と環境」においては,社会において主体的に生きる消費者 としての基礎を培う視点から,物や金銭の使い方と買物,身近な環境に配慮した 生活の工夫についての内容を重視している。生活において主体的に実践できるよ うにするために,他の3つの内容との関連を図り,実践的に学べるように配慮す --21/81-- -18- る必要がある。 C 言語を豊かにし,知識及び技能を活用して生活の課題を解決する能力をはぐくむ 視点の重視 教科の目標,学年の目標,内容及び指導計画の作成と内容の取扱いについては, それらの関連を十分理解して学習指導を展開する必要がある。 特に,学習した知識及び技能を活用し,思考力・判断力・表現力等の生活の課題 を解決する能力を育成する視点から,衣食住など生活の様々な言葉を実感をもって 理解したり,自分の生活における課題を解決するために,言葉や図表などを用いて 生活をよりよくする方法を考えたり,実習などで体験したことをまとめたり,発表 したりするなどの学習活動が充実するように配慮することを新たに示している。 --22/81-- -19- 第3節 家庭科の内容 A 家庭生活と家族 「家庭生活と家族」の内容は,(1)「自分の成長と家族」,(2)「家庭生活と仕事」, (3)「家族や近隣の人々とのかかわり」の3項目で構成されている。 ここでは,自分の成長や,家庭の仕事と生活時間などの学習を通して,家庭生活へ の関心を高め,衣食住などを中心とした生活の営みの大切さに気付くとともに,仕事 や生活時間,家族などとのかかわり方についての基礎的・基本的な知識及び技能を身 に付け,家庭生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態度を育てることをね らいとしている。 これらの内容の構成は,主な学習対象である家庭生活について,自分の成長や,家 庭の仕事と生活時間,家族や近隣の人々とのかかわりに視点を当てて学習することに より,家庭生活には生活を構成している様々な要素があり,それらの要素がかかわり 合って生活が成り立っていること,また,自分と家族,近隣の人々とのかかわりによ って,よりよい生活を作り出していけることなどを学習できるようにしている。 内容の指導に当たっては,A(1),(2),(3)の項目や,「B日常の食事と調理の基 礎」,「C快適な衣服と住まい」,「D身近な消費生活と環境」の内容との関連を図り 展開するなど,家庭生活を総合的にとらえられるように配慮する。 また,中学校技術・家庭科との円滑な接続のために,基礎的・基本的な内容の確実 な定着を図るように配慮する。 なお,家族構成や児童のプライバシーに十分配慮しながら取り扱うことが大切であ る。 --23/81-- -20- (1) 自分の成長と家族について,次の事項を指導する。 ア 自分の成長を自覚することを通して,家庭生活と家族の大切さに気付くこ と。 (指導計画の作成) (2)「A家庭生活と家族」の(1)のアについては,第4学年までの学習を踏まえ2 学年間の学習の見通しを立てさせるために,第5学年の最初に履修させるとと もに,「A家庭生活と家族」から「D身近な消費生活と環境」までの学習と関 連させるようにすること。 ここでは,成長する自分を自覚することを通して,家族とのかかわりの大切さを知 り,衣食住などの生活の営みに関心をもつことにより,家庭生活と家族の大切さに気 付くことをねらいとしている。 指導計画の作成に当たっては,この項目を,小学校第4学年までの学習を踏まえ, 2学年間の学習の見通しをもつためのガイダンスとして取り扱い,第5学年の最初に 履修させるようにする。さらに,この項目を「A家庭生活と家族」から「D身近な消 費生活と環境」までの学習を貫く視点として各内容と関連させて取り扱うようにする。 例えば,2学年間を見通して,学期や学年の区切りなどの適切な時期に,成長した自 分が実感できるように他の内容と関連させた題材を配列し,効果的な学習が可能とな るように配慮する。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように,A(2),(3)の項目や「B日常 の食事と調理の基礎」,「C快適な衣服と住まい」,「D身近な消費生活と環境」の内 容と関連を図るようにする。例えば,自分の仕事とかかわらせて学習させたり,でき るようになったことが実感しやすい製作や調理などの学習と関連させて1つの題材と したりするなどの工夫をして,児童が自分の成長を実感し意欲的に学習に取り組める ように配慮する。 --24/81-- -21- ア 自分の成長を自覚することを通して,家庭生活と家族の大切さに気付くこと。 「自分の成長を自覚する」ということは,これまでの自分の生活を振り返ることに よって,自分の成長はその時々に応じた食生活や衣生活などに支えられ,同時にその 生活が家庭生活の中で家族に支えられてきたことに気付くことである。また,2学年 間の衣食住などの実践的・体験的な活動を通して,家庭生活への関心を高めたり,成 長している自分に気付いたりしながら,これからの自分の成長を展望することでもあ る。 日々の生活の中で自己との対話を重ねながら,家族の一員として自分が成長してい ることに気付いたり,学習を通してできるようになった自分に喜びを感じたりするこ とは,学習に取り組む意欲を高める上でも重要なことである。 「家庭生活と家族の大切さに気付く」ということは,衣食住の生活が営まれている 家庭生活は,自分の成長を支え,家族の健康で快適な生活を支えるために重要である ことに気付くことである。また,自分の成長や生活は家族に支えられているとともに, 自分も家族を構成している大切な一人であることが分かるようにする。それらの学習 を通して,自分の成長は自分の喜びであるとともに家族の喜びでもあることにも考え が及ぶようにする。 指導に当たっては,ガイダンスの学習の場合は,第4学年までの学習を振り返り, 2学年間の学習の見通しがもてるようにする。例えば,小学校入学頃からの自分を振 り返り,自分の回りでどのような衣食住の生活が営まれていたか,それらは自分の成 長にどのようにかかわってきたかを考えたり,家庭生活の中で自分ができるようにな ったことを挙げ,それらは家族の理解に支えられてきたことに気付くなどの学習が考 えられる。また,2学年間で学習する内容に触れ,第4学年までの他教科の学習との 関連や,これからの学習を通して,自分ができるようになりたいことや2年後の自分 をイメージすることなども考えられる。その際,自分の目標や課題を見付け,見通し をもって意欲的に学習に取り組むことができるように配慮する。 「A家庭生活と家族」から「D身近な消費生活と環境」の内容と関連させて題材を 構成する場合は,例えば,学期や学年の終わりなど学習の区切りの時期に,実践記録 などから学習の成果を振り返ることを通して,自分の成長への気付きが段階的に深ま --25/81-- -22- るようにすることなどが考えられる。このことは,継続していくことの大切さに気付 いたり実践する意欲を高めたりする上で必要なことである。また,第6学年の終わり の学習においては,さらに,家庭生活をよりよくするための課題を中学校技術・家庭 科の内容と結び付けてとらえられるようにし,中学校への円滑な接続が図れるように 配慮することも考えられる。 (2) 家庭生活と仕事について,次の事項を指導する。 ア 家庭には自分や家族の生活を支える仕事があることが分かり,自分の分担 する仕事ができること。 イ 生活時間の有効な使い方を工夫し,家族に協力すること。 ここでは,家庭の仕事や生活時間の使い方などに関する実践的・体験的な活動を通 して,自分や家族が家庭でどのように生活しているか関心をもって見つめることによ り,家庭生活についての理解が深まるようにする。さらに,健康で快適に生きるため には,家庭生活をよりよくすることが大切であることにも気付くようにする。 その上で,家族の一員として家庭の仕事や生活時間を工夫し仕事を分担してできる ようにするとともに,家庭生活をよりよくするために自ら考え実践することの楽しさ を実感し,主体的に家族に協力しようとする意欲や態度を育てることをねらいとして いる。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように,A(1),(3)の項目や「B日常 の食事と調理の基礎」,「C快適な衣服と住まい」,「D身近な消費生活と環境」の学 習と関連を図り,家族の生活とかかわらせながら衣食住の内容を取り扱うことが考え られる。 例えば,「B日常の食事と調理の基礎」,「C快適な衣服と住まい」の内容との関連 を図り,衣食住にかかわる仕事を実践することで,自分ができる仕事を増やしたり, 家族に協力しようとする意欲を高めたりすることが考えられる。 なお,家族構成や家族の就業状況等,児童を取り巻く環境に十分配慮しながら取り --26/81-- -23- 扱うことが大切である。 ア 家庭には自分や家族の生活を支える仕事があることが分かり,自分の分担する仕 事ができること。 ここでは,家庭には衣食住や家族に関する仕事があり,自分や家族の生活を支えて いることが分かるとともに,家族の一員として仕事を分担する必要性に気付き,自分 の分担する仕事が工夫してできるようにする。 「家庭には自分や家族の生活を支える仕事があることが分かり」については,家庭 には,自分の生活とともに家族一人一人の生活があり,互いに支え合っていることに 気付くようにする。また,家庭での生活は,着たり食べたり住んだりすることにかか わる仕事,家族に関する仕事等によって支えられており,家庭の仕事を家族が互いに 分担していることが分かるようにする。 さらに,家族が自分のために仕事をしていることに気付くようにするとともに,自 分の身の回りのことを自分の仕事として受けもつことは家族への協力になり,家族の 生活を支える仕事にもなることに気付くようにする。 「自分の分担する仕事ができる」については,家庭において自分の分担する仕事を 工夫して実行することができるようにするとともに,家庭の仕事に積極的にかかわっ ていくことができるようにする。分担して実行する仕事と手伝いでは意識に違いがあ ることにも気付くようにし,一時の思いつきや興味で終わることなく,分担した仕事 に責任をもって継続的に実行できるようにする。 その際,分担しようとする仕事の内容や手順を調べ実践したり,実践後に自分の仕 事を振り返ったりするなどの活動が考えられる。仕事の様子はどうか,もっとよい方 法はないか,新しくできることはないかなどの視点から見直すことは,自分の仕事の 改善につながり,ひいては自分の仕事に責任をもつことにもなる。なお,自分の仕事 について,家族と話し合うなど家族の理解を図りながら計画を立て実行するようにす る。 指導に当たっては,例えば,家庭での家族の仕事を観察したり,家庭の仕事をして いてうれしいのはどのような時かインタビューしたりすることなどを導入として取り --27/81-- -24- 入れることが考えられる。また,児童の分担した仕事については,その後の生活でも 継続的なものとなるように,実践への意欲を高める指導を工夫する。 この学習では,A(2)のイの事項との関連を図り,家庭の仕事を実践することと家 族への協力を結び付けて学習するようにしたり,「B日常の食事と調理の基礎」,「C 快適な衣服と住まい」の内容との関連を図り,衣食住にかかわる仕事を具体的に理解 し実践するようにしたりすることも考えられる。 イ 生活時間の有効な使い方を工夫し,家族に協力すること。 ここでは,自分の生活時間を見直し,家族と共に過ごす時間や家族の生活に協力す る時間を生み出すなど生活時間の有効な使い方を工夫して,家族の一員として協力す ることができるようにする。 「生活時間の有効な使い方を工夫し」については,児童の生活時間に焦点を当て, 自分の生活時間をどう使うか,自分で工夫して決めることができるようにする。また, 家庭での時間の使い方を考えて実行し,見直すことができるようにする。このことは 生活における自立の基礎として重要である。 なお,有効な時間の使い方とは,時間に区切りを付けたり,計画的に時間を使った りするなど,時間を主体的に使うことができることである。 また,家族一人一人は,起床から就寝まで,様々な時間の過ごし方をしているが, 家庭では,個人が自由に使う時間ばかりではなく,食事や団らんなど家族と共に過ご す時間,家庭の仕事など家族と協力する時間等がある。これらの時間をもつことによ って,家庭生活が円滑に営まれ,家族の人間関係が深まり,助け合う気持ちや家族へ の愛着をより強めることができる。そのため,家族の生活時間とのかかわりにも目を 向け,自分の生活時間の使い方を工夫するようにする。 「家族に協力する」ということは,自分の生活時間を工夫し,家族と共に過ごした り,分担した仕事をしたりするなど,家族の一員として協力することである。さらに, 協力することによって家族との触れ合いが充実し,家族への心情が深まることにも気 付くようにする。 指導に当たっては,例えば,自分の生活時間を調べるとともに,時間を何のために --28/81-- -25- どのように使っているかを見直すなどして,自分や家族の生活時間について実感でき るようにする。 その際,例えば,一日のある時間帯を家族がどのように使っているか調べることに よって自分の生活時間とのかかわりを見付け比較するなど,児童が生活時間を家族の 生活とかかわらせてとらえられるように工夫する。また,家族と話し合うなど家族の 理解を図りながら実践できるように配慮する。 この学習では,A(3)の項目と関連させ,家族と共に過ごす時間の有効な使い方の 1つとして,進んで家族との触れ合いや団らんを計画する学習も考えられる。 (3) 家族や近隣の人々とのかかわりについて,次の事項を指導する。 ア 家族との触れ合いや団らんを楽しくする工夫をすること。 イ 近隣の人々とのかかわりを考え,自分の家庭生活を工夫すること。 ここでは,家族との触れ合いや団らん,近隣の人々とのかかわりなどの学習を通し て,人とかかわることへの関心を高めるとともに,生活をよりよくするためには家族 や近隣の人々とのかかわりが大切であることを知り,自分の家庭生活を工夫してより よくしようとする意欲や態度を育てることをねらいとしている。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように,例えば,「B日常の食事と調 理の基礎」やC(3)「生活に役立つ物の製作」と関連させ,家族のために食事を作る ことや家族が使える物や家族への贈り物を製作するなどの活動が考えられる。また, C(2)「快適な住まい方」やD(2)「環境に配慮した生活の工夫」と関連させ,近隣の 人々と共に地域で快適に生活できるように,生活環境に配慮した方法を家庭生活にお いて工夫し実践するなどの活動が考えられる。 ア 家族との触れ合いや団らんを楽しくする工夫をすること。 ここでは,日常の会話や行動の中で,心遣いをもって家族に気持ちを伝えたり触れ 合う場をもったりすることによって,家族相互の心のつながりがより深まることに気 --29/81-- -26- 付くようにし,触れ合いや団らんを楽しくするための工夫を考えることができるよう にする。 「家族との触れ合いや団らん」については,家族との触れ合いとは,あいさつや会 話等を通してコミュニケーションを図ること,食事や家庭の仕事などを共にすること 等,家族と親しくかかわることである。また,団らんは,家族などと和やかな時を過 ごすことである。触れ合いや団らんは毎日の生活の中でふだん何気なく行っているが, 重要な生活行為であることに気付くようにする。 「楽しくする工夫をする」ということは,会話や触れ合う場と時間を生み出す方法, 楽しくする方法を見いだすことができるようにすることである。さらに,ふだん何気 なく見過ごしている触れ合いや団らんの時間をより楽しく工夫することで,家族の心 のつながりが深まることにも気付くようにする。 また,自分の思いがうまく伝わらなかったり,自分の考えを分かってもらえなかっ たりした時,自分の思いの表し方を工夫したり相手の立場を理解したりすることの必 要性にも気付き,相互の理解に基づいて触れ合いを工夫できるようにする。 なお,家族との触れ合いや団らんは,家庭の状況によって様々な形が考えられる。 児童が家族の一員としての存在を実感できるように,個々の家庭に応じた工夫を考え るようにする。 指導に当たっては,例えば,会話や遊びなどの直接的な触れ合いができる場と時間 を作り出したり,家族が集まる時に進んでお茶を入れたり,果物や菓子などを供した りすることを計画するなど,一人一人の家庭に応じた工夫ができるように配慮する。 なお,家族が直接触れ合うことだけでなく,例えば,手紙で思いを伝えたり,日々 の感謝の気持ちを表すために手作りの品にメッセージカードを添えたり,家庭で新聞 を発行したりするなど,家族がそろわなかったり家族と触れ合う時間が短かったりし ても,心豊かな家庭生活を送るための工夫ができることが分かるようにする。 この学習では,A(2)のイの事項と関連させたり,B(1)のイ「楽しく食事をするた めの工夫」と団らんの学習を関連させたりして指導することも考えられる。 イ 近隣の人々とのかかわりを考え,自分の家庭生活を工夫すること。 --30/81-- --30/81-- -27- ここでは,近隣の人々とどのようにかかわっているかを考えることを通して,支え 合いながら家庭生活が成り立っていることやかかわりの大切さを知り,住んでいる地 域で近隣の人々と共に快適に生活するために,家庭生活を工夫するようにする。 「近隣の人々とのかかわりを考え」については,家庭生活と近隣の人々とのかかわ りについて考えることを通して,家庭生活が,家族の協力だけではなく,近隣の人々 とのかかわりで成り立っていることやかかわりの大切さが分かるようにする。このこ とは,家族の人数が減ったり,高齢者が多くなったりする地域社会の中で,そこに住 む様々な人々と共に協力し助け合って生活するために,ますます必要となることであ る。 また,自分の生活が,多くの人々とかかわって成り立っており,自分勝手では成り 立たないことを考えるようにする。例えば,自分の生活の快適さを求めていくことが 他の人の迷惑になったり,我慢しなければならなかったりする場合もあり,よりよい 生活を築いていくためには,近隣の人々と協力し助け合っていく必要があることに気 付くようにする。さらに,共に生活している近隣の人々への思いやりの気持ちをもて るようにする。 「自分の家庭生活を工夫する」ということは,近隣の人々とのかかわりをよりよく し,協力し助け合えるようにするために,自分の家庭生活で何ができるかを主体的に 考えることができるということである。 例えば,地域にはどのようなルールやマナーがあるかを調べたり,近隣の人とコミ ュニケーションを図るために何ができるかを考えたり,騒音など周りの迷惑を考えて 自分の行動や生活を見直したりするなど,自分たちができる具体的な事例を取り上げ て,近隣の人々との関係をよりよいものにしていくための工夫をすることが考えられ る。 指導に当たっては,生活する上で近隣の人々との調和が大切であることに気付き, 近隣の人々とのかかわりを考えて自分の家庭生活をどのように工夫したらよいのかを 考えることができるようにする。常に,自分の家庭生活との結び付きを考えながら学 習するようにし,児童の家庭の状況に応じた方法で課題を解決していくことができる ように配慮する。 --31/81-- -28- この学習では,C(2)「快適な住まい方」やD(2)「環境に配慮した生活の工夫」と の関連を図り,家族や近隣の人々が気持ちよく生活できるように,人とのかかわりを 大切にしたり,生活環境に配慮した方法を工夫したりして実践するなどの活動が考え られる。 --32/81-- -29- B 日常の食事と調理の基礎 「日常の食事と調理の基礎」の内容は,(1)「食事の役割」,(2)「栄養を考えた食 事」,(3)「調理の基礎」の3項目で構成されている。 ここでは,日常の食事と調理の学習を通して,日常の食事への関心を高め,食事の 大切さに気付くとともに,調和のよい食事と調理に関する基礎的・基本的な知識及び 技能を身に付け,食生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態度を育てるこ とをねらいとしている。 これらの内容の構成は,栄養を考えた食事のとり方や調理の基礎の学習に加え,食 事の役割について学ぶことにより,食生活を総合的に学習できるようにしている。日 常とっている食事を改めて見つめ直し,食事の役割,食品,栄養,調理などの基礎的 事項を関連付けて学習することにより,生涯にわたって健康で安全な食生活を送るた めの基礎となる力を養い,日常生活の中で主体的に活用できるようにすることを意図 している。 内容の指導に当たっては,B(1),(2),(3)の項目を相互に関連させて取り扱うと ともに,「A家庭生活と家族」,「D身近な消費生活と環境」などの内容と関連させる などして,家庭生活を総合的にとらえられるように配慮する。 さらに,家庭との連携を図り,児童が身に付けた知識及び技能などを日常生活に活 用できるように配慮する。 また,理科,体育科などの教科や学校給食等との関連を考慮するとともに,中学校 技術・家庭科との円滑な接続のために,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るよ うに配慮する。 --33/81-- -30- (1) 食事の役割について,次の事項を指導する。 ア 食事の役割を知り,日常の食事の大切さに気付くこと。 イ 楽しく食事をするための工夫をすること。 ここでは,食事の振り返りや実習などを通して,日常の食事への関心を高め,食事 の役割を知り,その大切さに気付くとともに,楽しく食事をするための工夫について 考え,実践できるようにすることをねらいとしている。 題材構成に当たっては,B(2),(3)の項目やA(2)「家庭生活と仕事」,A(3)「家 族や近隣の人々とのかかわり」などと関連を図るように配慮する。 例えば,B(3)の項目における調理実習と関連させ,試食の際に食事の大切さや役 割について考えさせたり,実践を通して気付かせたりすることなどが考えられる。 ア 食事の役割を知り,日常の食事の大切さに気付くこと。 ここでは,日常とっている食事に関心をもち,食事の役割を知り,食事を大切にし ようとする気持ちを育てるようにする。 「食事の役割を知り,日常の食事の大切さに気付く」については,食事は,健康を 保ち,体の成長や活動のもとになったりすることや,一緒に食事をすることで,人と 楽しくかかわったり,和やかな気持ちになったりすることなどを知る。また,規則正 しい食事が生活のリズムをつくることや,朝食を食べることによって学習や活動のた めの体の準備ができることなどにも触れるようにする。このような食事の役割を知る ことで,日常の食事が大切であることに気付くようにする。 指導に当たっては,例えば,児童が家庭の食事や給食について振り返り,おいしか ったことや楽しかったことを話し合ったり,なぜ食べるのかについて考えたりするこ とを通して,食事の役割を知り,日常の食事の大切さに気付くようにする。 この学習では,「A家庭生活と家族」の内容との関連を図り,家庭の食事づくり(買 物から後片付けまで)の仕事を振り返って,自分ができるようになりたいことを考えたり, 食事の大切さについて気付いたりすることが考えられる。また,家族との食事や団らんの --34/81-- -31- 計画をして,実践し,その報告会をすることなども考えられる。 なお,この学習では,体育科で学習した内容と結び付けて,健康や成長面から食事 の役割について気付かせる活動も考えられる。 イ 楽しく食事をするための工夫をすること。 ここでは,楽しく食事をするために必要な事柄を考え,工夫することができるよう にする。食事のマナーはその1つであることが分かるようにする。 「楽しく食事をするための工夫をする」については,楽しく食事をするために何が 必要か,日常の食事でどのような工夫をしているかを考えさせ,相手を思いやりなが ら楽しく食事をするための工夫をすることができるようにする。楽しく食事をするた めのマナーについては,はしや食器の扱い方などに気を付け,食べる速さに配慮し, 会話を考えることなどが挙げられる。また,食事に対する感謝の気持ちを表すために, 食事のあいさつをすること,供されたものを残さず食べるようにすることなどを通し て,食事を大切にする意識を高めるようにする。 指導に当たっては,例えば,お茶の入れ方や供し方,調理実習の試食等を体験しな がら,楽しく食事をするためのマナーや食卓の工夫について考えたり,話し合ったり することなどの活動が考えられる。また,B(3)の項目と関連させて,調理実習時に 配膳を工夫したり,試食において,はしや食器の扱い方など日常の食事に必要とされ ぜん るマナーを具体的に扱ったりすることも考えられる。 この学習では,A(3)「家族や近隣の人々とのかかわり」との関連を図り,食事な どの場における会話や心の触れ合いが好ましい人間関係を育てる上で大切であること に気付き,日常生活に活用できるようにすることも考えられる。 --35/81-- -32- (2) 栄養を考えた食事について,次の事項を指導する。 ア 体に必要な栄養素の種類と働きについて知ること。 イ 食品の栄養的な特徴を知り,食品を組み合わせてとる必要があることが分 かること。 ウ 1食分の献立を考えること。 (内容の取扱い) ア (2)のア及びイについては,五大栄養素と食品の体内での主な働きを中心に 扱うこと。 ここでは,栄養素とその働き,食品の栄養的特徴を知り,1食分の献立を考え,工 夫することを通して,栄養を考えた食事に関する基礎的・基本的な知識及び技能を身 に付けるとともに,日常生活で活用する能力を育てることをねらいとしている。 ア,イについては,五大栄養素と食品の体内での主な働きを中心に扱うこととして いる。今回の改訂で,中学校で扱っていた五大栄養素を小学校で扱うこととしたが, 中学校での日本食品標準成分表や食事摂取基準,食品群別摂取量の目安などの学習に つなげる内容として,小学校では五大栄養素の基礎的事項を扱うように配慮する。 題材構成に当たっては,B(1),(3)の項目や給食の献立との関連を図り,日常生活 に即して具体的に学習できるように配慮する。 ア 体に必要な栄養素の種類と働きについて知ること。 ここでは,食事に含まれる栄養素が体の成長や活動のもとになることに関心をもち, 栄養素の種類と働きを知り,栄養を考えて食事をとることの大切さが分かるようにす る。 「体に必要な栄養素の種類と働き」については,人が生命を維持したり,活動した り,さらに成長するために必要な成分を栄養素ということ,食品に含まれる栄養素に --36/81-- -33- は,炭水化物,脂質,たんぱく質,無機質,ビタミンがあり,五大栄養素と呼ばれて いること,それらは相互に関連をもちながら健康の保持や成長のために役立っている ことなどが分かるようにする。 例えば,炭水化物や脂質は主として体内で燃焼することによりエネルギーに変わり, 体温の保持や活動のために使われること,たんぱく質は主として体をつくるのに役立 つが,エネルギー源としても利用されること,無機質については,カルシウムなどが あり,カルシウムは骨や歯の成分となるが,体の調子を整える働きもあること,ビタ ミンには体の調子を整える働きがあることが分かるようにする。 指導に当たっては,名称や働きを覚えることだけに重点を置くのではなく,体に必 要な栄養素を食事によってとっていることに気付き,栄養を考えて食事をとることの 大切さが分かるように配慮する。例えば,B(2)のイの事項との関連を図り,日常食 べている食品に主に含まれる栄養素の種類や働きを調べ発表したり,栄養を考えて食 事をとるにはどうしたらよいかを話し合ったりすることが考えられる。 この学習では,理科の第5学年における植物の種子の中の養分に関する学習で扱う でんぷんとの関連を図り,でんぷんは炭水化物の1つであることに触れることも考え られる。 イ 食品の栄養的な特徴を知り,食品を組み合わせてとる必要があることが分かるこ と。 ここでは,日常よく摂取している食品に関心をもち,食品は主に含まれる栄養素に より3つのグループに分けられることを知り,食品を組み合わせてとる必要があるこ とが分かるようにする。 「食品の栄養的な特徴を知り」については,食品に含まれる主な栄養素の体内での 主な働きにより,「主にエネルギーのもとになる」,「主に体をつくるもとになる」,「主 に体の調子を整えるもとになる」の3つのグループに分けられることを知り,日常の 食事に使われる食品をグループに分類することができるようにする。 例えば,「主にエネルギーのもとになる」グループの食品には,米や麦,油などが あり,主に炭水化物又は脂質が多く含まれること,「主に体をつくるもとになる」グ --37/81-- -34- ループの食品には,魚,肉,卵,大豆,牛乳などがあり,主にたんぱく質が多く含ま れること,牛乳にはたんぱく質のほかに無機質であるカルシウムも多く含まれること, 「主に体の調子を整えるもとになる」グループの食品には,野菜や果物などがあり, 主にビタミンや無機質が多く含まれることが分かるようにする。 「食品を組み合わせてとる必要がある」については,栄養素には多くの種類があり, 健康の保持や成長のためにはそれらのすべてを摂取しなければならないが,1種類の 食品ですべての栄養素を必要量含んでいるものはないので,食品を上手に組み合わせ てとる必要があることが分かるようにする。また,「主にエネルギーのもとになる」, 「主に体をつくるもとになる」,「主に体の調子を整えるもとになる」の3つのグル ープの食品を組み合わせることにより,栄養のバランスがよい食事になることが分か るようにする。 指導に当たっては,例えば,日常の食事に使われている食品を調べてグループ分け する活動などを通して,多数の食品を食べていることを実感したり,食品の栄養的な 特徴を具体的に分かるようにしたりすることが考えられる。 この学習では,食品をグループに分けることに関して,食品には複数の栄養素が含 まれていることから,必ずしもいずれかのグループに厳密に分類しなくてもよい場合 もあることに配慮して指導する。 ウ 1食分の献立を考えること。 ここでは,食品を組み合わせていろいろな料理ができることに気付き,バランスよ く食品を組み合わせておかずとなる料理を考え,3つの食品グループのそろった具体 的な1食分の献立を考えることができるようにする。 「1食分の献立を考える」については,米飯とみそ汁を中心とした1食分を扱い, おかずやみそ汁の実を工夫し,調和のよい食事を考えるようにする。児童の実態に応 じてパンなどを中心とした1食分の食事を扱うことも考えられる。 調和のよい食事については,主に栄養のバランスを中心に考えるが,色どりや味の バランスについても気付くようにする。このほかに好みや季節,費用などの観点が考 えられるが,ここでは食品の組合せに重点を置くこととする。 --38/81-- -35- 指導に当たっては,例えば,自分が考えた献立の工夫や栄養のバランスについて発 表したり,話し合ったりするなどの活動を取り入れるようにすることが考えられる。 また,栄養のバランスや調理時間などを考慮して朝食づくりの計画を立て,調理実習 をしたり,家庭で実践したりすることも考えられる。工夫した献立を調理して試食し た結果をまとめて発表し合うなどの活動を通して,学習した知識及び技能を日常生活 の中で活用しようとする態度へつなげるようにすることなども考えられる。 この学習では,単に1食分としての組合せを考えるだけの学習に終わることがない よう,例えば,B(1)の項目との関連を図り朝食の献立を考えたり,B(3)の学習とか かわらせ,自分が考えた献立を実際に調理したりするなどして,日常生活で実践でき るように配慮する。 なお,給食や日常の食事の献立を見つめ直したり,課題を見付けたりすることも考 えられるが,食事調べなど児童の家庭の食事を取り上げる場合は,プライバシーに十 分配慮する。 (3) 調理の基礎について,次の事項を指導する。 ア 調理に関心をもち,必要な材料の分量や手順を考えて,調理計画を立てる こと。 イ 材料の洗い方,切り方,味の付け方,盛り付け,配膳及び後片付けが適切 ぜん にできること。 ウ ゆでたり,いためたりして調理ができること。 エ 米飯及びみそ汁の調理ができること。 オ 調理に必要な用具や食器の安全で衛生的な取扱い及びこんろの安全な取扱 いができること。 (指導計画の作成) (3) 「B日常の食事と調理の基礎」の(3)及び「C快適な衣服と住まい」の(3)に ついては,学習の効果を高めるため,2学年にわたって取り扱い,平易なもの --39/81-- -36- から段階的に学習できるよう計画すること。 (内容の取扱い) イ (3)のエについては,米飯やみそ汁が我が国の伝統的な日常食であることに も触れること。 (実習の指導) (3) 調理に用いる食品については,生の魚や肉は扱わないなど,安全・衛生に留 意すること。 ここでは,ゆでたり,いためたりする調理や米飯及びみそ汁の調理を計画し実習す ることを通して,調理に関心をもち,調理の基礎的・基本的な知識及び技能を身に付 けるとともに,調理のよさや作る楽しさを実感し,日常生活で工夫し活用する能力を 育てることをねらいとしている。 指導計画の作成に当たっては,学習の効果を高めるため,2学年間を見通した学習 が展開できるように留意する。例えば,第5学年では,初めて調理をする児童もいる ことが考えられるので,無理なく調理できるものを扱い,一人一人が自信をもって意 欲的に楽しく学習ができるように配慮する。特に,ここで取り上げるゆでたり,いた めたりする加熱操作を繰り返し学習できるよう題材を配列し,材料を変えたり調理法 を組み合わせたりなどして,平易なものから段階的に題材を発展させながら定着を図 ることが大切である。なお,調理に必要な材料の分量や手順を考えて調理の計画を立 てて,切ったり,ゆでたり,いためたりして簡単なおかずを作ったり,米飯及びみそ 汁を作ったりする学習により,2学年間を通して1食分の食事が整えられるようにす る。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように,B(1),(2)の項目や,「A家 庭生活と家族」及び「D身近な消費生活と環境」の内容と関連を図ることも考えられ --40/81-- --40/81-- -37- る。例えば,B(2)の項目と関連させて,考えた献立を実際に調理したり,調理で扱 った食品を基に,B(2)の項目の食品の栄養的な特徴について学習したりすることも 考えられる。また,A(3)「家族や近隣の人々とのかかわり」やB(1),(2)の項目と 関連させて,食事や団らんを通して家族と楽しくかかわるために,家族の好みなどを 考えた献立を調理し,楽しく食事をするための工夫をするなどの実践的な学習として 展開することが考えられる。さらに,調理に用いる食品についてD(1)「物や金銭の 使い方と買物」と関連させて必要な材料を準備したり,D(2)「環境に配慮した生活 の工夫」との関連を図って調理したりすることが考えられる。 実習の指導に当たっては,第3の3(3)にあるように,調理に用いる食品は,安全 ・衛生に留意する必要がある。特に,生の魚や肉については調理の基礎的事項を学習 しておらず,鮮度の保持や扱いが難しいので,扱わないようにする。生の魚や肉を扱 った調理は,中学校において行う。 なお,調理に用いる食品については,日常生活で手に入りやすく,調理の基礎的事 項を学ぶ上で適切な食品として,米,野菜,いも類,卵などが考えられる。児童の扱 いやすさや地域の特産,季節,成長期にある児童の栄養などを考慮して選択するよう にする。 指導に当たっては,例えば,児童が直接食材に触れ,自ら調理することにより食へ の関心を高めたり,グループで協力して作業することの大切さ,調理したものを皆で 食べる喜びや楽しさ,相手に供することにより感謝される喜びを感じたりするなど, 調理のよさを実感できるように配慮し,調理への自信をもたせ,日常生活に活用しよ うとする意欲につなげるように配慮することが考えられる。 さらに,ねらいに応じた観察,実験,実習等を通して,体験したことを言葉や図表 などを用いて表現したり,調理に関する言葉を実感を伴って理解したりする学習活動 が充実するように配慮する。 ア 調理に関心をもち,必要な材料の分量や手順を考えて,調理計画を立てること。 ここでは,調理に関心をもって,必要な材料を準備し,手際よく調理を進めるため に工夫し,計画を立てることができるようにする。 --41/81-- -38- 「調理に関心をもち」については,食材やその調理過程,でき上がった料理の味や 食べ方などに関心をもち,意欲的に調理の計画に取り組むように配慮する。 「必要な材料の分量や手順を考えて」については,材料は,調理の目的に応じて食 品の組合せや食べる人の好みを考えて選択し,必要な分量を考えるようにする。また, 必要な材料の分量は,一人分の量から考えておよその量が分かるようにする。また, 食品をおいしく調理するため,材料や調味料を正しく計量して用いるようにする。そ のため,計量スプーン,計量カップ,上皿自動秤等の使い方を知り,計量器具の扱い に慣れて調理に必要な材料を実際に計量することができるようにする。手順について は,例えば,複数の料理を作る時には,でき上がりの時間を考えて,何をどのような 手順で調理するか考えるようにする。その際,身支度などの準備,食卓の用意,後片 付けの時期なども考えるようにする。 「調理計画を立てる」については,調理するものによって,必要な材料や調理器具, 調理の手順を考え,見通しをもって時間配分をし,手際よく調理を進めることができ るように工夫して計画を立てるようにする。 指導に当たっては,こんろの使い方,作業の流れ,グループの協力の仕方などにつ いて計画を立て,それに基づいて調理することにより,調理が手順よくできることが 分かるようにする。 この学習では,材料について,D(1)「物や金銭の使い方と買物」や(2)「環境に配 慮した生活の工夫」との関連を図り,目的に合った品質のよいものを選んで,買い方 を考え,適切に購入できるようにする学習も考えられる。その際,必要なものを無駄 なく購入することにも配慮する。 イ 材料の洗い方,切り方,味の付け方,盛り付け,配膳及び後片付けが適切にでき ぜん ること。 ここでは,調理の目的に応じて必要な材料の洗い方,切り方,味の付け方,盛り付 け,配膳及び後片付けが適切にできるようにする。 ぜん 「材料の洗い方」については,食品の種類や調理の目的に応じた洗い方ができるよ うにする。例えば,ほうれん草などの葉菜類は根や柄の付け根,葉のひだの部分に泥 --42/81-- -39- が付いている場合が多いので,水中で振り洗いをした後,よく洗う。特に,生で食べ るものは,衛生に留意して流水でよく洗うようにする。 「切り方」については,包丁を使って切ったり,皮をむいたりすることができるよ うにする。また,形や大きさを整えることにより,熱の通りをよくしたり味をしみ込 みやすくしたり食べやすくしたりするなど目的に合った切り方ができるようにする。 切ることは,調理操作の中で頻度が高く,技術を要する部分であるので,特に注意を はらって包丁を使い,初めのうちは,児童が扱いやすい野菜などを用いて,包丁の使 い方に慣れさせるようにする。 「味の付け方」については,食塩,しょうゆなどの塩味による味付けを中心として 扱い,同じような料理でも味の付け方によって,味わいが違い,おいしく食べられる ことが分かるようにする。特に食塩は,わずかな量の違いで味の濃さが異なることか ら,味見をするなどして,味を整えるようにする。また,調理によって,加熱の前に 味を付けておくとよい場合や食卓に出す直前にするとよい場合があることにも気付く ようにする。 「盛り付け」については,料理の分量や色どり,食べやすさを考えて,盛り付ける ようにする。例えば,どんな食器にどのように盛り付けるか,一人分ずつ盛り付ける か一皿にまとめて盛り付けるかなど,その相手や目的に応じて工夫するとよいことが 実感的に分かるようにする。 「配膳」については,食器の位置に配慮し,例えば,米飯及びみそ汁,はしなどを ぜん 配膳する際には,我が国の伝統的な配膳の仕方があることが分かるようにする。 ぜん ぜん また,B(1)のイの事項と関連させ,例えば,盛り付けや配膳によって,同じ料理 ぜん でも食欲を喚起し,食事を楽しくするための雰囲気作りに役立つことに気付かせる学 習も考えられる。 「後片付け」については,計画的に行うことの必要性が分かり,衛生的に後片付け ができるようにする。また,仕事の能率だけでなく,次に使用する場合を考えて扱っ たり,保管したりすることの大切さにも気付くようにする。 指導に当たっては,例えば,調理をすることによって出たごみや残菜,油などを排 水口に流さないようにしたり,適切に分別したりできるようにする。また,水や洗剤 --43/81-- -40- を必要以上に使用しないように,汚れを余り布や古紙などで拭き取ってから洗うよう にする。ただし,食器や調理器具はよくすすぐなど衛生面にも配慮するようにする。 この学習では,D(2)「環境に配慮した生活の工夫」と関連させ,後片付けなどの 仕方を工夫する学習も考えられる。 ウ ゆでたり,いためたりして調理ができること。 ここでは,ゆでたり,いためたりする調理の仕方が分かり,材料や調理の目的に応 じた適切な加熱操作ができるようにする。 「ゆでる調理」については,固い食品を柔らかくするなど,食べやすくおいしくす るために目的に応じたゆで方ができるようにする。 「いためる調理」については,フライパンなどで油を使い,かき混ぜながら加熱し, 目的に応じたいため方ができるようにする。いためることは,ゆでることとともに, 日常生活でよく使われる調理法である。 指導に当たっては,例えば,ゆでる調理においては,同じゆでる場合でも,水から ゆでるものと沸騰してからゆでるものがあることに気付くようにしたり,ゆでること によって,野菜は生食に比べてかさが減り,多くの量を食べることができるなどの調 理の特性にも気付いたりできるようにする。なお,その際は,観察して気付いたこと を,実感をもって言葉で表現する活動を取り入れるようにすることも考えられる。ま た,いためる調理においては,調理の目的によっていためる時間や火力に違いがある ことに気付くようにする。例えば,野菜をいためる時は,弱い火力でいためると調理 時間も長くなり水っぽくなるので,強火にして短時間でいためる方がよいことに気付 くなどである。なお,油でいためることにより風味が増すことにも気付くようにする。 ゆでたり,いためたりする加熱操作については,平易なものから段階的に学習のね らいを高めながら繰り返し学習できるように工夫し,知識と技能の定着を図るように する。 エ 米飯及びみそ汁の調理ができること。 ここでは,米飯とみそ汁の調理に関する基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け --44/81-- -41- ることができるようにする。 「米飯やみそ汁」は,我が国の伝統的な日常食である。米は,我が国の主要な農産 物であり,主食として日本人の食生活から切り離すことができない食品である。また, みそは,大豆の加工品であり,調味料として日本人には古くから親しまれている食品 であり,それぞれの地方で特徴があるみそが生産されている。みそ汁は,日常の食生 活では,米飯と組み合わせてとられる場合が多い。 「米飯の調理」については,炊飯に関する基礎的・基本的な知識及び技能を身に付 けることをねらいとしており,米の洗い方,水加減,浸水時間,加熱の仕方,蒸らし など,固い米が柔らかい米飯になるまでの一連の操作や変化を実感的にとらえ,炊飯 することができるようにする。その際,観察した結果をまとめたり,発表したりする などの活動を取り入れ理解を深めるようにすることも考えられる。この学習では,自 動炊飯器による炊飯は対象としていないが,他の調理を学習するに当たって,1食分 の食事として米飯を組み合わせ調理する場合には,自動炊飯器の利用も考えられる。 「みそ汁の調理」については,だしのとり方,中に入れる実の切り方や入れ方,み その香りを損なわない扱い方などを調べ,みそ汁を調理することができるようにする。 指導に当たっては,例えば,みそ汁の中に入れる実の選び方や取り合わせ方について, 日常よく使われる食品の中から栄養のバランスや季節などを考えて,食品の組合せを 工夫することも考えられる。 この学習では,B(2)のウ及びB(3)のウの事項と関連させ,米飯及びみそ汁,おか ずを中心とした栄養のバランスがよい1食分の献立を考え,調理することにより,日 常生活に生かすことも考えられる。 オ 調理に必要な用具や食器の安全で衛生的な取扱い及びこんろの安全な取扱いがで きること。 ここでは,それぞれの調理に必要な用具や食器を取り上げ,安全と衛生に注意して 適切に取り扱うとともに,こんろの安全な取扱いができるようにする。 「調理に必要な用具や食器の安全で衛生的な取扱い」については,実習を通して, 包丁の安全な取扱いと食器やまな板,ふきんの衛生的な取扱いができるようにする。 --45/81-- -42- 「こんろの安全な取扱い」については,学校で使用する調理用こんろの特徴が分か り,換気に注意し,火傷の防止などに留意して,安全な取扱いができるようにする。 指導に当たっては,例えば,調理に必要な用具の安全で衛生的な取扱いについては, 包丁の扱いでは,相手に刃を向けて渡さないようにし,置く場所や置き方を工夫する。 また,まな板は,水でぬらし,ふきんでふいてから使うことや,ふきんと台ふきんを 区別して使うことなどができるようにする。 また,こんろの安全な取扱いについては,例えば,使用前後に器具栓などを確認し たり,加熱の仕方と関連させた火力の調節ができるようにしたりする。さらに,点火 する前に鍋の底がぬれていないかや,周囲に燃えやすい物を置いていないか確認する ようにする。 この学習では,第3の3にある実習の指導の配慮事項を十分参考にするようにする。 (内容の取扱い) ウ 食に関する指導については,家庭科の特質に応じて,食育の充実に資するよ う配慮すること。 食育については,平成17年に食育基本法が成立し,「食に関する知識と食を選択す る力を習得し,健全な食生活を実践することができる人間を育てる」ことが求められ ている。学校においては,家庭科などの食に関する指導を中核として,学校の教育活 動全体で一貫した取組を推進することが大切である。 家庭科における食に関する指導については,「B日常の食事と調理の基礎」のねら い及び各項目のねらいに示すとおり,日常の食事を大切にする心,心身の成長や健康 の保持増進の上で望ましい栄養や食事のとり方,食品の品質及び安全性等に関する基 礎的な知識,調理の基礎的・基本的な知識及び技能などを総合的にはぐくむ観点から 推進することが必要である。 これらの指導に当たっては,食生活を家庭生活の中で総合的にとらえるという家庭 科の特質を生かし,家庭や地域との連携を図りながら健康で安全な食生活を実践する --46/81-- -43- ための基礎が培われるように配慮し,食育の充実を図るようにすることが大切である。 --47/81-- -44- C 快適な衣服と住まい 「快適な衣服と住まい」の内容は,(1)「衣服の着用と手入れ」,(2)「快適な住ま い方」,(3)「生活に役立つ物の製作」の3項目で構成されている。 ここでは , 衣服の着用と手入れ,快適な住まい方及び製作の学習を通して,身の回 りの快適さへの関心を高め,その大切さに気付くとともに,衣服,住まい及び製作に 関する基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,衣生活や住生活をよりよくしよう と工夫する能力と実践的な態度を育てることをねらいとしている。 これらの内容の構成は, 人間を取り巻く環境を快適に整えることへの関心を高め, 衣服と住まいを関連付けて学習できるようにしている。 ここでの快適とは, 健康によく清潔で気持ちがよいことである。快適に過ごすため には, 衣服の着方を工夫したり,住まいの温度や湿度を調節したりすることなどが日 常的に行われている。衣服は身体に最も近い環境であり, 住まいはそれをさらに外側 から取り巻く環境である。このように,衣服と住まいは相互に関連しながら人間を取 り巻く環境をつくっている。 内容の指導に当たっては,C(1),(2),(3)の項目や,「A家庭生活と家族」,「D 身近な消費生活と環境」などの内容と相互に関連を図るなど, 家庭生活を総合的にと らえられるように配慮する。 また, 中学校技術・家庭科との円滑な接続のために, 基礎的・基本的な内容の確実 な定着を図るように配慮する。 --48/81-- -45- (1) 衣服の着用と手入れについて, 次の事項を指導する。 ア 衣服の働きが分かり,衣服に関心をもって日常着の快適な着方を工夫でき ること。 イ 日常着の手入れが必要であることが分かり,ボタン付けや洗濯ができるこ と。 ここでは,日常着の着方と手入れに関する実習などを通して,衣服への関心を高め, 着方や手入れの基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け, 目的に応じた快適な着方 を考え工夫する能力を育てることをねらいとしている。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように, C(2), (3)の項目と相互に関連 を図ることが考えられる。また, A(1)「自分の成長と家族」,(2)「家庭生活と仕事」 やD(1)「物や金銭の使い方と買物」,(2)「環境に配慮した生活の工夫」と関連を図 ることも考えられる。例えば, C(3)の学習と関連させて製作の中でボタンの付け方 を取り扱ったり, D(2)の学習と関連させて洗剤や水を無駄にしない洗濯の仕方を工 夫して実習したりするなどの活動が考えられる。 ア 衣服の働きが分かり,衣服に関心をもって日常着の快適な着方を工夫できること。 ここでは,児童の日常着を取り上げ, 衣服の働きが分かり, 衣服や着ることに関心 をもって, 生活の場面に応じた快適な着方を考え工夫することにより,適切に着るこ とができるようにする。 「衣服の働きが分かり」については,衣服の働きとして,保健衛生上や生活活動上 の働きがあることが分かるようにする。保健衛生上の働きとしては, 暑さ・寒さを防 いだり,皮膚を清潔に保ったり,ほこりや害虫,けがなどから身体を守ったりするこ となどが挙げられる。生活活動上の働きとしては, 身体の動きを妨げずに, 運動や作 業など活動をしやすくすることなどが挙げられる。 「衣服に関心をもって」については, 児童が着ている衣服について, なぜ着るのか, どのように着たらよいか意識して生活し, 衣服はどのような形か, どのような着方 --49/81-- -46- をしているかなど,衣服のつくりや働きなどにも関心をもつようにする。また, 布が 糸で縫い合わされていること, 衣服が厚さや色の異なる布でできていることなどにも 気付き, 衣服についての関心を高めるようにする。 「日常着の快適な着方を工夫できる」については, このような衣服の働きを生かし て, 気温や季節の変化及び生活場面などの状況に応じて気持ちよく着る方法を考え, 適切な着方を工夫できるようにする。日常着の着方については,保健衛生上,生活活 動上の着方を中心に取り上げるようにする。 保健衛生上の着方では, 夏を涼しく冬を暖かく過ごすための着方や気温の変化に応 じた着方が分かり, その場面に応じて清潔で気持ちよく着る方法を考え, 適切な着方 を工夫できるようにする。生活活動上の着方では, 体育着や作業着などの衣服が動き やすさや安全性を考えて工夫されていることが分かり, 生活場面に応じて気持ちよく 着る方法を考え, 適切な着方を工夫できるようにする。 指導に当たっては,衣服の働きについて,日常生活と関連させて理解できるように 配慮する。例えば,衣服を着用する意味や着替える理由を話し合ったり, 衣服を重ね て着てみたり, 動作による体の動きを観察したり, 布を用いた実験を行ってみたりす ることなど,児童が主体的に考えた方法によって,具体的に理解する活動が考えられ る。 また, 学習したことを活用し着方を工夫する能力をはぐくむために,例えば,遠足 や宿泊学習などの具体的な場面を想定して,気象条件や活動内容に合わせて衣服を選 び,実際に確かめてみる活動などが考えられる。 この学習では,C(2)のイの事項との関連を図り,季節の変化や住まい方に合わせ て涼しい着方や暖かい着方を考えることなど, 衣服の働きについて,日常生活と関連 させて学習することも考えられる。 なお,この内容を取り上げる季節に適した日常着を中心に扱うようにするが, 他の 季節の場合についても触れるようにし,学校の実態を考慮して取り上げ方を工夫する ようにする。 イ 日常着の手入れが必要であることが分かり, ボタン付けや洗濯ができること。 --50/81-- --50/81-- -47- ここでは,衣服を大切に扱い,気持ちよく着るために,日常の手入れが必要である ことが分かるようにする。また, 日常生活の中で常に衣服の手入れが行われているこ とにも気付き,ボタン付けや洗濯ができるようにする。 「日常着の手入れが必要であることが分かり」については, 衣服を大切に扱い, 気 持ちよく着るために,脱いだ衣服などを点検し手入れが必要であることが分かるよう にする。また, 日常的に衣服の手入れが行われていることに気付くようにする。例え ば, ボタンが取れかかっている,衣服に汚れが付いているなど課題を見付けて考える ようにし, ボタンは取れてしまうと不便であるばかりでなく, 身だしなみの上から見 苦しいことに気付き, ボタンを付け直したり, 汚れた場合に洗濯をしたりすることの 必要性が分かるようにする。 「ボタン付けができる」ということは, ボタンの付け方が分かり, 自分で付けるこ とができるようにすることである。ボタンは衣服の打ち合わせをとめるために必要で あることが分かるようにする。また, ボタンを丈夫に付けることができるようにする。 「洗濯ができる」ということは, 洗濯の必要性や日常着の洗濯に必要な洗剤, 用具, 洗い方などが分かり, 洗濯ができることである。 洗濯は, 洗濯物や汚れの点検, 洗う, すすぐ, 絞る, 干すなどの基本的な作業から 成り立っている。身近な衣服などの手洗いを通して, それぞれの作業の必要性が分か り, 適切な方法を考えて洗濯することができるようにする。たたんで収納することに ついてはC(2)のアの学習と関連付けて行う。 ここでは, 手洗いを中心として洗濯の基本について学習する。電気洗濯機について は, 脱水に使用したり手洗いと比較したりする程度に扱うようにする。また, 洗剤の 働きなどについては中学校で学習するので, 小学校では身近な環境への影響を考えた 洗剤の量などを中心に扱う。 指導に当たっては,例えば,毎日の生活の中で, ボタンが衣服に付いている様子や 日常着の汚れを観察したり, 衣服の手入れについて実践していることについて発表し 合ったりするなど, 児童の具体的な生活経験と関連付けて実感を伴う学習となるよう に配慮する。また,靴下や, Tシャツ, 体育着などの児童に身近な衣服を手洗いする 活動の中で,水だけで大まかな汚れを落としたり,汚れを用具を使って落としたり, --51/81-- -48- 乾きやすい干し方,後の手入れが容易になる干し方などを工夫したりすることによっ て,身に付けた知識や技能を活用して自分で衣服の手入れをしようとする意欲につな がるようにする。 この学習では,ボタン付けをC(3)の学習と関連させて実習した後, 再度手入れと してのボタン付けの実習を行うことも考えられる。学習の場面を変えて繰り返し学習 することにより基礎的・基本的な知識及び技能の定着を図ることも可能となる。 洗濯については, D(1)「物や金銭の使い方と買物」と関連させ, 既製服に付いて いる表示を調べた後,洗濯の学習を行ったり,水や洗剤を無駄にしない洗濯の仕方を 学習した上で,D(2)「環境に配慮した生活の工夫」の学習に発展させたりすること などが考えられる。 また, A(2)「家庭生活と仕事」の学習との関連を図り, 家族の一員としての仕事 として衣服の手入れをとらえさせることも考えられる。 (2) 快適な住まい方について,次の事項を指導する。 ア 住まい方に関心をもって,整理・整頓や清掃の仕方が分かり工夫できるこ とん と。 イ 季節の変化に合わせた生活の大切さが分かり,快適な住まい方を工夫でき ること。 (内容の取扱い) (2) 「C快適な衣服と住まい」の(2)のイについては,主として暑さ・寒さ,通 風・換気及び採光を取り上げること。 ここでは,整理・整頓や清掃,季節の変化に合わせた住まい方に関する学習を通し とん て,日常の住まい方への関心を高め,住まい方に関する基礎的・基本的な知識及び技 能を身に付け,快適な住まい方を考え工夫する能力を育てることをねらいとしている。 --52/81-- -49- 今回の改訂では,住生活の学習における小学校と中学校の内容を整理し,これまで 課題選択としていた「暖かさ,風通し,明るさなど」に関する学習内容を「暑さ・寒 さ,通風・換気及び採光」と改め,いずれもすべての児童に学習させることとした。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように,C(1),(3)の項目やA(2)「家 庭生活と仕事」,D(2)「環境に配慮した生活の工夫」などとの関連を図り展開する ことが考えられる。例えば,C(1)の項目と関連させて,イの暑さ・寒さに関する住 まい方の工夫と暑さ・寒さを防ぐための着方の学習を組み合わせたり,A(2)「家庭 生活と仕事」と関連させて,アの整理・整頓や清掃を家庭で分担できる仕事や家族へ とん の協力につなげて実践させたりすることも考えられる。 ア 住まい方に関心をもって,整理・整頓や清掃の仕方が分かり工夫できること。 とん ここでは,身の回りの物を片付けたり清掃したりすることによって,気持ちよく生 活できることに気付き,身の回りの整理・整頓の仕方や清掃の仕方が分かり,身の回 とん りを快適に整えようと主体的に考え工夫できるようにする。 「住まい方に関心をもって」については,整理・整頓や清掃の学習を通して気持ち とん よく生活するための住まい方に目を向けるとともに,家族の生活に進んでかかわろう とするようにする。同じような住まいでも,整理・整頓などの工夫によって,その家 とん 族らしい住まい方が表れることや,住まい方を考え清掃など手入れを工夫することに よって,家族が楽しく快適に過ごせることに実感的に気付き,住まい方への関心を高 めるようにする。 「整理・整頓の仕方が分かり工夫できる」については,児童の身の回りの物,例え とん ば,学習用具,本や雑誌,衣類,洗面所の用具などの整理・整頓を取り上げる。物を とん 使う人や場所,その使用目的や頻度,大きさや形などによって整理・整頓の仕方を工 とん 夫する必要があることが分かり,何がどこにあるか,必要な物がすぐに取り出せるか, 空間を有効に使えるかなどの視点から工夫できるようにする。 「清掃の仕方が分かり工夫できる」については,児童が日常よく使う場所を取り上 げるようにする。学校や家庭での体験を基に清掃について見直し,なぜ汚れるのか, 何のために清掃するのかを考えさせるとともに,床や窓などの汚れの種類,汚れ方に --53/81-- -50- 応じた清掃の仕方が分かり,状況に応じた清掃の仕方を考え工夫して適切な清掃がで きるようにする。 整理・整頓の指導に当たっては,身の回りの物の分類の仕方や収納の仕方を考える とん など,児童それぞれの家庭生活に応じて工夫し,実践できるようにする。例えば,教 室や家庭科室の学習机や引き出し,本箱や棚,ロッカーなど,学校の施設・設備を用 いて実践する学習が考えられる。また,家族が共通して使う洗面所や玄関などを想定 して工夫することや,家庭での様々な収納の工夫を発表し合う活動なども考えられる。 清掃の指導に当たっては,例えば,学校内での汚れ調べの活動などを通して,汚れ の種類や汚れ方に応じた清掃の仕方を考え,身に付けるようにするとともに,汚れは 時間が経つと落ちにくくなることや,住居用洗剤は使い方の表示をよく見て使用する 必要があることなどにも気付くように配慮する。また,家庭によって清掃の仕方が異 なり,掃除用具やその使い方も多様であることから,学んだことを基に,児童一人一 人あるいはグループごとに課題を選択し,児童同士の発表や交流の場を設定するなど して,清掃の仕方について活用する力を育てる学習も考えられる。 この学習では,D(2)「環境に配慮した生活の工夫」の学習との関連を図り,市販 の清掃用具や洗剤を使わずに工夫して清掃するなど昔から伝わる先人の知恵や児童の 発想を生かして不用品を活用した学習も考えられる。また,A(2)「家庭生活と仕事」 の学習との関連を図り,家庭での清掃の経験をもとに,そこを使う家族の気持ちを想 像したり,協力して清掃をした感想を聞いたりするなど,実践する喜びや家族とのか かわりを感じながら学習を進めることも考えられる。 イ 季節の変化に合わせた生活の大切さが分かり,快適な住まい方を工夫できること。 我が国は四季の変化に富むことから,年間を通して快適な生活を送るためには,暑 さ・寒さへの対処の仕方などを適切に工夫する必要がある。そのために,ここでは, 暑さ・寒さへの対処の仕方及びそれらと通風・換気とのかかわり,適切な採光の必要 性などについて考え,自然をできるだけ生かして住まうことの大切さが分かり,より 快適な住まい方に関心をもって工夫できるようにする。 「季節の変化に合わせた生活の大切さが分かり」では,昔と今の住まいを比べるな --54/81-- -51- どの活動を取り入れるなどして,冷暖房機器にたよる生活を見直し,日光や風など自 然の力を効果的に活用する方法について考え,健康の視点から自然を生かした住まい 方の大切さが分かるようにする。 「快適な住まい方を工夫できる」については,身の回りを快適に整えるためにどの ような工夫が必要かを考えさせ,そのためには,主として室内の温度や湿度,空気の 流れを調節したり,適度な明るさを取り入れたりすることが大切であることが分かり, 学んだことを基にして工夫し,実践できるようにする。 暑さ・寒さへの対処の仕方については,室内の温度や湿度,空気の流れを調節する ことにより室内の環境を快適に保つことができることが分かるようにする。空気の流 れについては,夏季に涼しく過ごすための通風又は冬季における汚れた室内空気の入 れ換えとしての換気に関する方法が分かり,効果的な通風又は換気の仕方を工夫でき るようにする。さらに,夏季には太陽の熱をさえぎるとともに風通しをよくしたり, 一方冬季には太陽の暖かさを利用したりするなど,自然を上手に利用する方法が分か り,よりよい住まい方の工夫ができるようにする。 なお,地域によって,暑さ・寒さへの対処が必要となる度合いが異なることから, 夏季に暑さを防いで涼しく生活すること又は冬季に寒さを防いで暖かく生活すること のいずれかに重点を置いて題材を構成することが考えられる。いずれの場合にも温度 や湿度の調節と関連させて,室内空気の流れとして夏季の通風又は冬季の換気を扱う。 また,これらの学習については,例えば,安全な住まい方として,暖房機の安全な扱 い方について簡単に触れることなども考えられる。 採光については,勉強や読書をする場合を取り上げるなど,児童の身近な生活と眼 の健康とを関連させ,適度な明るさを確保する必要とその方法が分かるようにする。 採光の工夫については,窓の大きさや位置,窓ガラスの汚れ,天候の状況などによっ て,室内の明るさが異なることに気付くようにする。人工照明については,自然採光 が不足する場合と関連させて照明の必要に触れる程度とする。 指導に当たっては,住まい方は家庭や地域の環境によって異なるので,学校など身 近な環境を快適な空間にするためには何が必要かを考えさせ,課題をもたせるように するなど学習展開を工夫するように配慮する。例えば,学校の中の様々な場所の暖か --55/81-- -52- さや涼しさを調べて,日当たりの快適さへの影響やどのくらいの暖かさが適温かを考 えるなど具体的な学習活動を取り入れるようにする。暑さへの対処の仕方については, 窓の外側で太陽の熱をさえぎると暑さを防ぐ効果が大きいことや扇風機の風を涼しく 感じる理由を考え,夏の効果的な住まい方を自分なりに工夫する学習活動も考えられ る。同じように寒さへの対処の仕方については,暖房機を置く場所によって暖まり方 が違うことや換気によって湿気も防ぐことができることに気付かせる学習活動なども 考えられる。 この学習では,C(1)のアの事項との関連を図り,快適な温度の調整を衣服の 着方の学習と関連させて扱い,住まい方も着方も空気の流れの調整が相互に関連 していることに気付かせる学習展開も考えられる。また,D(2)「環境に配慮し た生活の工夫」との関連を図り,自分の生活と環境とのかかわりを冷暖房機器の 利用を視点として見直し,省エネルギーにつなげるなどの展開も考えられる。 なお,C(2)のイの学習の展開に当たっては,理科の第3学年,第4学年にお ける日なたと日陰,空気と温度に関する学習内容や,体育科の第3学年及び第4 学年における健康によい生活に関する学習内容との関連を図るように配慮する。 (3) 生活に役立つ物の製作について, 次の事項を指導する。 ア 布を用いて製作する物を考え, 形などを工夫し,製作計画を立てること。 イ 手縫いや,ミシンを用いた直線縫いにより目的に応じた縫い方を考えて製 作し,活用できること。 ウ 製作に必要な用具の安全な取扱いができること。 (指導計画の作成) (3) 「B日常の食事と調理の基礎」の(3)及び「C快適な衣服と住まい」の(3)に ついては,学習の効果を高めるため,2学年にわたって取り扱い,平易なもの から段階的に学習できるよう計画すること。 --56/81-- -53- ここでは,形などを工夫し布を用いて物を製作することを通して,布や生活に役立 つ物の製作に関心をもち,製作に関する基礎的・基本的な知識及び技能を身に付ける とともに,作る楽しさを実感し,日常生活で活用する能力を育てることをねらいとし ている。 「生活に役立つ物」とは, 身の回りの生活を快適にしたり, 便利にしたり, 楽しい 雰囲気を作り出したり, 人とのかかわりを深めたりする物など, 生活をよりよくする ための物である。 指導計画の作成に当たっては, 学習の効果を高めるため, 2学年間を見通した学習 が展開できるように配慮する。題材は指定していないので, 児童の実態に応じて段階 的に楽しく学習できるようにするとともに,知識及び技能や工夫する能力が十分に身 に付くように配慮する。また,基礎的・基本的な技能などについては繰り返し学習で きるように題材を配列することにより,それらの知識や技能を組み合わせ, 平易なも のから段階的に題材を発展させながら定着を図ることが大切である。自分が構想して 製作した物を生活の中で効果的に活用したり評価したりして,実際の製作や活用の場 面で生じた課題などが次の製作に生かされるように配慮する。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように,C(1), (2)又は(3)の項目につ いては, 適切な題材を設定し,内容相互の関連を図ることが考えられる。例えば,C (1)又は(2)の学習成果を生かして,製作する物を考えたり工夫したりすることが考え られる。 また,A(1)「自分の成長と家族」,(2)「家庭生活と仕事」,又はD(1)「物や金銭 の使い方と買物」,(2)「環境に配慮した生活の工夫」などの学習と関連を図ること も考えられる。例えば,D(1),(2)の学習と関連させて,材料見本を提示したり,家 庭にある布や不用な衣服の一部分を活用するなどの工夫をすることによって, 児童が 主体的に材料を選択できるようにすることが考えられる。 指導に当たっては,製作の基礎的・基本的な知識及び技能の定着を図るだけではな く,児童が自ら製作する喜びや友だちと協力して作業することの大切さに気付くとと もに, 誰かに贈ることにより感謝される喜びや共に使う楽しさなどに気付き, 製作へ --57/81-- -54- の自信と日常生活に活用しようとする意欲や態度を育てるように配慮する。 ア 布を用いて製作する物を考え, 形などを工夫し, 製作計画を立てること。 ここでは,身の回りの生活に役立つ布を用いた物に関心をもって,製作する物を考 え,形や大きさなどを工夫し,製作計画が立てられるようにする。 「布を用いて製作する物を考え」については, 家庭生活の中でどのように布が活用 されているか見直し,布を用いて何を製作するかを関心をもって考えるようにする。 その際,児童や家族の生活が便利になったり,楽しい雰囲気を作り出したり, 家族な どとの交流に役立ったりするなど,身の回りの生活をよりよくする物について考える ようにする。例えば, 整理・整頓や清掃, 買物などの仕事に役立つ物, 食事や団らん とん などの生活に役立つ物, 遊びに使う物, 家族に贈る物などが考えられる。また,生活 の中で役立っている物は使う人や場面などを考えて作られていることに気付くように する。 「形などを工夫し」については, どのような形や機能をもつ物にするかなどを具体 的に構想し, 目的に合っているか, 使って便利であるか, 好みの外観であるかなどを 考えて,適切な形や大きさなどを工夫できるようにする。 おおよその形や大きさなどを決めるためには, 例えば, 紙などを使って考えたり, 計ってみたり, 又は, すでにある物をよく観察してみたりするなどして, 具体的に試 行して確かめながら形や大きさなどを工夫できるようにする。その際, 余裕をもって 出し入れできるようゆとりが必要なこと,また,でき上がりの大きさに縫いしろを加 える必要があることなどが分かり, 自分の作品に生かせるようにする。 なお,自分で製作する物の形などを考え決める過程において,生活に役立つ様々な 布を用いた物に積極的にかかわるようにすることにより,その後の製作活動への意欲 を高めるようにすることが大切である。 「製作計画を立てる」については, 構想した物の目的や形,大きさに基づいて,製 作手順や製作計画を考え,でき上がりを想定してその見通しがもてるようにする。ま た,製作に必要な材料や用具等が準備できるようにする。 指導に当たっては, 例えば,家庭で使用している生活に役立つ物を持ち寄り, 形や --58/81-- -55- 縫い方, 適した布の種類などを調べたり, 製作物の見本を観察したりするなど, 具体 的に確かめながら形を構想できるように配慮する。また, 材料の布は,しるしが付け やすい,裁ちやすい,ほつれにくい,縫いやすいなど,児童が扱いやすい性質のもの, 例えば,木綿などを選択するようにする。さらに, 製作する物が汚れやすい物であれ ば洗濯に対して丈夫な布にするなど, 目的に応じた材料を選択するようにする。 また, 製作計画については,児童が自分の製作目的や課題を確認しながら製作を進 めることができるように工夫し,製作過程で進度の確認や評価をすることによって途 中で計画を修正したり,最後まで製作する目的を意識したりして活動できるように配 慮する。 なお,この学習では, 紙などの他の材料と布との扱いの違いや特性を知り,布の使 い方を考えるようにすることに配慮する。 イ 手縫いや,ミシンを用いた直線縫いにより目的に応じた縫い方を考えて製作し, 活用できること。 ここでは,製作することを通して,作る楽しさを実感するとともに,目的に応じた 手縫いや,ミシン縫いを用いた直線縫いの仕方を知り,それらを活用して適切な縫い 方を考えて製作できるようにする。また,製作した物を日常生活で活用することを通 して,布製品を評価する力を高めるようにする。 「手縫い」には, 手で縫い針に糸を通したり, 糸端を玉結びや玉どめにしたり, 布 を合わせて縫ったりすることなどがある。 ここでは, 児童の実態に応じた無理のない手縫いとして,なみ縫い, 返し縫い, か がり縫いなどの縫い方を扱い, なみ縫いについては, 2〜3針続けて縫う程度でもよ いと考えられる。 「ミシンを用いた直線縫い」ができるとは, ミシンの使い方が分かり, ミシン縫い ができることである。ミシン縫いは丈夫で速く縫えるので, 必要に応じて取り入れる ようにする。ミシンの使い方については, 上糸, 下糸の準備の仕方や縫い始めや縫い 終わりや角の縫い方を考えた処理の仕方など,直線縫いをするために必要な基本的な 操作の学習を中心に行う。 --59/81-- -56- 「目的に応じた縫い方を考えて製作し,活用できる」については, 製作する物や縫 う部分によって, 丈夫に縫ったり, 針目を変えて縫ったり, ほつれやすい布端を始末 したりするなど,目的に応じた縫い方があることを知り,それらを活用してその部分 にふさわしい縫い方を考え,手縫いやミシン縫いを用いて製作ができるようにする。 また, 仕上がった作品を日常生活で活用することにより,手作りのよさを味わった り,製作方法や仕上がりの結果を評価したりすることができる。その際,自分で見付 けた改善点を次の製作に生かすように促し,次の製作への意欲をもつようにする。な お,これらの学習を通して,身の回りにある布製品を評価する力を高めるようにする。 指導に当たっては, 児童の実態を考慮し, 細かな技法を一方的に教え込むことがな いようにし, 製作の喜びを味わいながら手縫いなどの基礎的・基本的な知識及び技能 が身に付くように配慮する。例えば, 身近にある衣服や布製の小物などを観察して, 児童自身が縫い方の工夫などに気付くようにすることなどが考えられる。 また,縫う経験が少ない児童には, 共に試行したり助言したりするだけではなく, 自分で課題の解決ができるように学習環境を整備する必要がある。例えば, 製作物の 見本や製作の順序に応じた標本, 分解標本, VTR, 試行用の教材などを準備し, いつ でも活用できるようにするなどの工夫が考えられる。 さらに, 布製品を評価する力を高めるために,製作した物を実際に使ってみて, 自 分や家族の感想を発表し合い,相互に評価し, よりよい活用や改善の方法を探る活動 などを工夫することも考えられる。 この学習では, C(1), (2)の項目と関連させるとともに, A(3)のア「家族との触 れ合いや団らん」と関連させて,家族の団らんに役に立つ物を製作して活用し,その 評価を家族と話し合ったり,その結果を発表するなどの活動も考えられる。 ウ 製作に必要な用具の安全な取扱いができること。 「製作に必要な用具の安全な取扱いができる」については,製作に当たっては適切 な用具を正しく使うことが作業を効果的に進める上で大切であることに気付くととも に,製作に必要な用具について知り,安全に十分留意しながら使用することができる ようにする。 --60/81-- --60/81-- -57- 特に, 針類, はさみ類, アイロン, ミシンなどの用具は危険を伴うので, 安全で適 切な取扱い方を製作を通して身に付けるようにする。例えば, 慎重な針の扱い, はさ みの安全な使い方や手渡し方, 火傷や電源に留意した機器の扱い, ミシンの移動や出 し入れなどが考えられる。 指導に当たっては,児童は用具を扱った経験が少ないことが予想されるので, 他教 科や家庭生活などでの経験と関連させて, 危険防止や安全点検の確認を習慣化できる ようにする。そのため, 製作の準備から後始末まで, 児童一人一人が責任をもって安 全に留意して行うことができるように配慮する。 この学習では,第3の3(1),(2)にある実習の指導の配慮事項を十分参考にするよ うにする。 --61/81-- -58- D 身近な消費生活と環境 「身近な消費生活と環境」の内容は,(1)「物や金銭の使い方と買物」,(2)「環境 に配慮した生活の工夫」の2項目で構成されている。 ここでは,身近な生活における消費と環境の学習を通して,物や金銭の使い方への 関心を高め,環境に配慮することの大切さに気付くとともに,物の選択,購入及び活 用に関する基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,身近な消費生活や環境をより よくしようと工夫する能力と実践的な態度を育てることをねらいとしている。 これらの内容の構成は,現代の消費生活が環境と深くかかわっていることから,消 費生活と環境に関する学習を統合して1つにまとめている。これにより,衣食住など 他の内容との関連を明確にし,物や金銭の活用の視点から生活を見つめ,限りある物 や金銭が大切であることに気付くことができるようにしている。また,自分の生活が 身近な環境に与える影響に気付き,主体的に生活を工夫できる消費者としての素地を 育てることを意図している。 内容の指導に当たっては,A(3)「家族や近隣の人々とのかかわり」や,「B日常 の食事と調理の基礎」又は「C快適な衣服と住まい」の内容と関連を図ることにより, 衣食住などの生活で使う身近な物などを取り上げ,児童や家族の生活と結び付けて考 え,実践的に学習できるようにする。 また,社会科や理科などの教科や総合的な学習の時間との関連を考慮するとともに, 中学校技術・家庭科との円滑な接続のために,基礎的・基本的な内容の確実な定着を 図るように配慮する。 --62/81-- -59- (1) 物や金銭の使い方と買物について,次の事項を指導する。 ア 物や金銭の大切さに気付き,計画的な使い方を考えること。 イ 身近な物の選び方,買い方を考え,適切に購入できること。 (内容の取扱い) ア (1)のイについては,「A家庭生活と家族」の(3),「B日常の食事と調理の 基礎」の(3)並びに「C快適な衣服と住まい」の(2)及び(3)で扱う用具や実習 材料などの身近な物を取り上げること。 ここでは,物や金銭の使い方と買物などの学習を通して,家族の生活を支えている 物や金銭の大切さへの関心を高め,物の選び方や買い方に関する基礎的・基本的な知 識及び技能を身に付けるとともに,計画的な使い方を考え購入できる能力や実践的な 態度を育てることをねらいとしている。 題材構成に当たっては,第3の1(1)にあるように,A(3)「家族や近隣の人々との かかわり」,B(3)「調理の基礎」,C(2)「快適な住まい方」又は(3)「生活に役立つ 物の製作」などと関連を図り展開することが考えられる。 例えば,調理実習や生活に役立つ物の製作の学習において使う用具や材料を計画を 立てて購入したり,身の回りの整理・整頓の学習で出た不用な物を持ち寄り,物の使 とん い方や購入の仕方について振り返ったりする学習を行うことなどが考えられる。また, 遠足や宿泊学習などの際に金銭を使う機会があれば,関連を図って展開する学習も考 えられる。 なお,この学習は,児童を取り巻く環境に十分配慮しながら扱うことが大切である。 ア 物や金銭の大切さに気付き,計画的な使い方を考えること。 ここでは,自分の生活とかかわらせて具体的に学習することにより,物や金銭の大 切さを実感し,限りある物や金銭を生かして使う必要性や方法を知り,計画的な使い --63/81-- -60- 方を考えることができるようにする。 「物や金銭の大切さに気付き」については,家庭で扱う金銭は家族が働くことによ って得られた限りあるものであり,物や金銭が自分と家族の生活を支えていることか ら,それらを有効に使うことの重要性に気付くようにする。 「物や金銭の計画的な使い方を考える」については,児童が衣食住などの生活で使 う身近な物に着目し,日常生活の中で有効に活用できているか,使い方に問題はない か,購入した物は自分の生活にとって必要かどうかなどを考えるようにする。 物が必要になった時には,新しい物を購入する以外に,家庭にある物を活用したり, 知人から譲ってもらったりするなどの方法もあることに気付くようにする。また,物 を長く大切に使う方法を工夫するようにする。 金銭の使い方では,こづかいなど児童に取扱いが任された金銭に着目し,購入の時 期や金額を考えたり,購入のための貯蓄をしたりして,無駄のない使い方を考えられ るようにする。 指導に当たっては,身近な消費生活における自分の課題に気付き,進んで計画的な 使い方を考えることができるように配慮する。例えば,学用品の使い方を振り返り, 物を粗末に扱ったり,不用な物まで購入したり,使える物まで捨てたりしていないか など,生活を見直す活動を行うことなどが考えられる。また,ノートなどの使い方を 取り上げ,自分なりの工夫や効果的な使い方を発表し,意見を交換し合うなどの活動 も考えられる。 なお,プリペイドカードなどは,金銭と同じ価値があるので,使い方においても金 銭同様に配慮する必要があることに触れるようにする。 イ 身近な物の選び方,買い方を考え,適切に購入できること。 ここでは,購入しようとする物の品質や価格などの情報を集めることを通して,物 の選び方や買い方を考え,目的に合った品質のよいものを選んで適切に購入できるよ うにする。 さらに,購入の仕方だけではなく,購入した後どのように活用したか,使ってみて どうだったかを振り返ることにより,次の購入に生かせるようにする。 --64/81-- -61- 「身近な物の選び方,買い方を考え」については,児童が使う身近な物について取 り上げ,購入する時は,店の人から話を聞いたり,広告などを活用したりして整理し, 選び方についてよく考えるとともに,購入の時期や場所など買い方を具体的に考える ことができるようにする。 「適切に購入できる」については,食品等に付けられた日付などの簡単な表示やマ ークなどを自分の目で確かめ,目的に合った品質のよい物を無駄なく購入することが できるようにする。買い方については,現金による店頭での買物を中心とする。通信 販売については,地域や児童の実態に応じて触れることも考えられる。 指導に当たっては,身近な物を実際に購入する場面を想定し,日常生活で実践でき るように配慮する。例えば,調理実習や製作に使う材料や用具を購入する場面を想定 して,物の選び方,買い方を模擬的に体験したり,買物の実習を行ったりするなどの 活動が考えられる。また,よりよい物の選び方について考え,理由を挙げて意見を交 換し合う学習なども考えられる。さらに,これまでの買物の体験で役立ったことなど を発表し,買物のメモを作るなど計画を立てることのよさに気付いたり,買物の記録 やレシートなどの保存の意義に気付いたりする学習なども考えられる。 買物の学習では,実際に物を選んだり買ったりする体験が効果的であることから, A(3)「家族や近隣の人々とのかかわり」での団らんのための買物や「B日常の食事 と調理の基礎」での調理の材料の選択や購入,C(2)「快適な住まい方」での整理・ 整頓の学習での持ち物の見直し,C(3)「生活に役立つ物の製作」で用いる材料や用 とん 具の選択や購入などと関連させて学習を展開することが考えられる。 --65/81-- -62- (2) 環境に配慮した生活の工夫について,次の事項を指導する。 ア 自分の生活と身近な環境とのかかわりに気付き,物の使い方などを工夫で きること。 (内容の取扱い) イ (2)については,「B日常の食事と調理の基礎」又は「C快適な衣服と住ま い」との関連を図り,実践的に学習できるようにすること。 ここでは,物の活用などに関する学習を通して,自分の生活と身近な環境とのかか わりに関心をもち,環境に配慮した生活を工夫するための基礎的・基本的な知識及び 技能を身に付けるようにする。また,近隣の人々と共に地域で快適に生活していくた めに家庭生活の様々な場面で物の使い方などを考え実践しようとする態度を育てるこ とをねらいとしている。 この学習については,「B日常の食事と調理の基礎」,「C快適な衣服と住まい」の 内容との関連を図り,調理の材料や製作で使用する布などの具体的な物を対象として, 実践的な学習が展開できるようにする。 題材構成に当たっては,B(3)「調理の基礎」の学習との関連を図って実習材料な どを無駄なく使うことを考えさせたり,C(2)「快適な住まい方」の整理・整頓や清 とん 掃の学習と関連させて,ごみの分別や減量の仕方を工夫させたり,C(3)「生活に役 立つ物の製作」の布の扱い方の学習と関連させたりして,効果的に学習を展開するこ とが考えられる。 ア 自分の生活と身近な環境とのかかわりに気付き,物の使い方などを工夫できるこ と。 「自分の生活と身近な環境とのかかわりに気付き」については,自分の生活を見直 すことを通して,多くの物を使っていることや,自分の生活が,身近な環境から影響 --66/81-- -63- を受けたり,逆に影響を与えていたりしていることに関心をもち,自分と家庭生活を 取り巻く身近な環境とのかかわりが実感できるようにする。 「物の使い方などを工夫できる」については,環境にできるだけ負荷をかけないよ うに,物を長く大切に活用したり,無駄なく使い切ったり,使い終わった物を他の用 途に再利用したりするなどの工夫ができるようにする。また,リサイクル活動などの 環境に配慮した地域の取組にも関心をもち,進んで協力できるようにする。 指導に当たっては,常に自分の生活との結び付きに気付くようにし,一人一人が課 題をもって調べたり,工夫したりして主体的に学習し実践できるように配慮する。 --67/81-- -64- 第3章 指導計画の作成と内容の取扱い 第1章では,学習指導要領改訂の趣旨と要点,第2章では教科の目標と学年の目標 及び内容を示している。実際の指導においては,家庭科の目標,内容の構成,内容の 取扱いなどについて理解を深め,改訂の趣旨に沿った指導計画を作成し,指導を行う 必要がある。 第3章では,学習指導に当たって特に留意するものとして,1指導計画作成上の留 意点,2内容の取扱いと指導上の留意点,3実習の指導,4家庭との連携,5言語活 動の充実と家庭科を取り上げている。家庭科の目標を実現するため,教科の特質を踏 まえ,一層効果的な学習指導が行われるように留意する。 1 指導計画作成上の配慮事項 1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。 (1) 題材の構成に当たっては,児童の実態を的確にとらえるとともに,内容相 互の関連を図り,指導の効果を高めるようにすること。 (2) 「A家庭生活と家族」の(1)のアについては,第4学年までの学習を踏ま え2学年間の学習の見通しを立てさせるために,第5学年の最初に履修させ るとともに,「A家庭生活と家族」から「D身近な消費生活と環境」までの 学習と関連させるようにすること。 (3) 「B日常の食事と調理の基礎」の(3)及び「C快適な衣服と住まい」の(3) については,学習の効果を高めるため,2学年にわたって取り扱い,平易な ものから段階的に学習できるよう計画すること。 (4) 第1章総則の第1の2及び第3章道徳の第1に示す道徳教育の目標に基づ き,道徳の時間などとの関連を考慮しながら,第3章道徳の第2に示す内容 について,家庭科の特質に応じて適切な指導をすること。 --68/81-- -65- 今回の改訂においては,2学年にわたって学習する内容を「A家庭生活と家族」か ら「D身近な消費生活と環境」で示しているが,これらは,指導の順序や4つの内容 別に指導をすることを示しているものではない。指導に当たっては,各内容項目の指 導の順序及び各事項の重点の置き方に工夫を加え,教科の目標や学年の目標を達成し, 効果的な学習指導ができるように題材を構成し,2学年にわたって適切に配列して, 年間指導計画を作成するようにする。 (1) 題材の構成 題材の構成に当たっては,育成する資質や能力を明確にし,その育成が図れるよう に,内容や方法を吟味する。題材の構成に当たっては,関連する内容を続けて学習し たり,関連する内容を組み合わせたりするなどして,効果的な学習指導が進められる ように工夫する。 児童の家庭生活の在り方,生活経験の有無などにより,児童の生活に対する興味・ 関心,学習意欲,思考の仕方,身に付いている知識や技能などは様々である。したが って,学習に際しては,内容に関する児童の実態を多様な方法で的確にとらえ,育成 すべき資質や能力が育つよう個に応じた指導を心掛ける必要がある。すなわち,一人 一人の児童が自分を生かすことができるように,題材構成や使用する教材を個に応じ て工夫したり,問題解決的な学習により個に応じた課題を選択し追究したりするなど, 弾力的な学習ができるようにする。 場合によっては,児童が別々の教材を選んで学習を進めることも含めて,学習を通 して児童が充実感や達成感を味わえるよう教材を工夫する。また,集団で学習するよ さも考え,共通に学ぶ部分と個別に学ぶ部分を組み合わせた題材構成に配慮すること も必要である。 また,家庭生活は総合的なものであり,児童の家庭生活に対する意識は,衣,食, 住を分化してとらえているわけではないので,「A家庭生活と家族」から「D身近な 消費生活と環境」の各内容項目間の関連に着目した視点で題材を構成する工夫も考え られる。 年間標準授業時数は,第5学年は60単位,第6学年は55単位と定められていること --69/81-- -66- を考慮し,実践的・体験的な活動をより一層充実させるためにも,各題材に適切な時 間を配分するように留意する。さらに,学校や児童の実態を考慮し,教科のねらいを 踏まえて適切な授業時数を割り振る。 (2) 「A家庭生活と家族」の(1)のアの指導 「A家庭生活と家族」の(1)のアの学習については,小学校第4学年までの学習を 踏まえ,2学年間の学習の見通しをもたせるためのガイダンスとして取り扱い,第5 学年の最初に履修させるようにする。その際,指導者が題材間の関連を図り全体とし てつながりのある年間指導計画を立てるように配慮する。 併せて,A(1)のアの事項については,「A家庭生活と家族」から「D身近な消費 生活と環境」の各内容と関連させて扱う事項として位置付けられている。そのため, 2学年間を見通して,学期や学年の区切りなどの適切な時期に自分と家庭のつながり や成長した自分を確認できるように,他の内容と関連させた題材を効果的に配列する ようにする。なお,このことは,「自分の成長」がAからDの各内容を貫く視点とし て位置付けられていることを意味している。 (3) 段階的な題材の配列 B(3)「調理の基礎」及びC(3)「生活に役立つ物の製作」については,基礎的・基 本的な知識及び技能の定着を図り,学習が無理なく効果的に進められるようにするた めに,2学年にわたって扱うようにする。基礎的なものから応用的なものへ,簡単な ものから難しいものへ,要素的なものから複合的なものへと次第に発展するように, 段階的に題材を配列する。また,反復が必要なものについては,学習における題材の 位置付けを明確にして指導計画に盛り込むなど工夫する。なお,身に付けた知識及び 技能は実際の生活に活用したり,授業の中で,応用,発展させて総合的に用いる学習 活動を組んだりすることにより定着が図られるものと考えられるので,学んだことを 基に活用する場面なども意図した指導計画を立てるように留意する。 B(3)「調理の基礎」及びC(3)「生活に役立つ物の製作」以外の項目で構成された 題材についても,学年の発展性や系統性,季節,学校行事,地域等との関連を考え配 --70/81-- --70/81-- -67- 列する。 また,2学年間を見通して,他教科等との関連を図り,題材を配列することも大切 である。 (4) 道徳との関連 学習指導要領の第1章総則の第1の2においては,「学校における道徳教育は,道 徳の時間を 要 として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳の時間はも かなめ とより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に 応じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行わなければならない」と規定 されている。 これを受けて,家庭科の指導においては,その特質に応じて,道徳について適切に 指導する必要があることを示すものである。 家庭科における道徳教育の指導においては,学習活動や学習態度への配慮,教師の 態度や行動による感化とともに,以下に示すような家庭科の目標と道徳教育との関連 を明確に意識しながら,適切な指導を行う必要がある。 家庭科においては,目標を「衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して, 日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付けるとともに,家庭生活を 大切にする心情をはぐくみ,家族の一員として生活をよりよくしようとする実践的な 態度を育てる。」と示している。 日常生活に必要な基礎的な知識や技能を身に付け,生活をよりよくしようとする態 度を育てることは,生活習慣の大切さを知り,自分の生活を見直すことにつながるも のである。また,家庭生活を大切にする心情をはぐくむことは,家族を敬愛し,楽し い家庭をつくり,家族の役に立つことをしようとすることにつながるものである。 次に,道徳教育の 要 としての道徳の時間の指導との関連を考慮する必要がある。 かなめ 家庭科で扱った内容や教材の中で適切なものを,道徳の時間に活用することが効果的 な場合もある。また,道徳の時間で取り上げたことに関係のある内容や教材を家庭科 で扱う場合には,道徳の時間における指導の成果を生かすように工夫することも考え られる。そのためにも,家庭科の年間指導計画の作成などに際して,道徳教育の全体 --71/81-- -68- 計画との関連,指導の内容及び時期等に配慮し,両者が相互に効果を高め合うように することが大切である。 --72/81-- -69- 2 内容の取扱いと指導上の配慮事項 2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。 (1) 「B日常の食事と調理の基礎」については,次のとおり取り扱うこと。 ア (2)のア及びイについては,五大栄養素と食品の体内での主な働きを中 心に扱うこと。 イ (3)のエについては,米飯やみそ汁が我が国の伝統的な日常食であるこ とにも触れること。 ウ 食に関する指導については,家庭科の特質に応じて,食育の充実に資す るよう配慮すること。 (2) 「C快適な衣服と住まい」の(2)のイについては,主として暑さ・寒さ, 通風・換気及び採光を取り上げること。 (3) 「D身近な消費生活と環境」については,次のとおり取り扱うこと。 ア (1)のイについては,「A家庭生活と家族」の(3),「B日常の食事と調 理の基礎」の(3)並びに「C快適な衣服と住まい」の(2)及び(3)で扱う用 具や実習材料など身近な物を取り上げること。 イ (2)については,「B日常の食事と調理の基礎」又は「C快適な衣服と 住まい」との関連を図り,実践的に学習できるようにすること。 ここでは,内容の取扱いのうち,範囲や程度について示している。詳細については, 第2章において,関連する内容に含めて解説をしている。 いずれも,中学校技術・家庭科で扱う内容との関連を踏まえて,家庭科の目標から 外れないように留意している。 --73/81-- -70- 3 実習の指導 3 実習の指導については,次の事項に配慮するものとする。 (1) 服装を整え,用具の手入れや保管を適切に行うこと。 (2) 事故の防止に留意して,熱源や用具,機械などを取り扱うこと。 (3) 調理に用いる食品については,生の魚や肉は扱わないなど,安全・衛生に 留意すること。 ここでは,実習の指導について,特に配慮することについて述べている。家庭科は 実践的・体験的な活動を通して学習することを特徴としているので,その中心的な学 習活動である製作や調理などの実習を安全かつ効果的に進めるために,事故の防止に 留意する必要がある。 服装を整え,用具の手入れや保管を適切にすることが学習の効果を高めることや, 熱源,用具,機械などの扱い方や用具の配置の仕方が仕事の能率や事故の防止に役立 つことに気付かせ,その適切な扱い方や手入れ,収納の仕方などを指導するようにす る。また,食品についても安全・衛生に十分留意して扱うことを徹底する。 実習では,児童が自分の活動に集中して周りの環境に気付かなかったり,慣れない 用具を扱ったりして,危険を伴うことが予想されるので,指導者はそれらを見通して 安全確認をし,家庭科室全体の用具等の配置や熱源,用具,機械などの扱い方を掲示 して注意を促すなど学習環境を整え事故の防止に十分留意する必要がある。 (1) 服装を整え,用具の手入れや保管を適切に行うこと。 服装については,活動がしやすく安全性に配慮したものを準備して着用するように 指導する。例えば,調理実習での服装は,清潔で,付いた汚れが分かりやすいエプロ ン等を身に付けさせたり,袖口をまくったり腕カバーを付けたりするなどして作業に 適したものを用いることや,髪の毛などが食品や調理器具などに触れないように三角 巾を着けるなどの工夫をさせる。 --74/81-- -71- なお,製作や調理実習の前には手指を十分に洗うなど衛生面にも留意するように指 導する。 用具の手入れについては次のことを指導する。調理実習等においては,こんろは回 りの汚れを拭き取る。調理用具は使用したらなるべく早く丁寧に洗い,よく水気を取 るようにする。油の汚れは紙や古い布などで拭き取ってから洗うようにする。包丁は, 安全に気を付けてよく洗い,水気を拭き取る。まな板は,使用後,流し水をかけなが ら洗い,十分乾燥する。ふきんについては,洗剤液などで洗い,直射日光に当てて乾 燥するなど,衛生的な扱いに配慮する。 用具の保管については,安全や衛生に留意して収納させる。例えば,調理実習後, 茶碗などを重ねすぎないようにしたり,清潔な場所に収納したりするようにする。製 作実習で使用する針類, はさみ類, アイロン, ミシンなどの用具の安全な保管方法の 指導についても徹底する。例えば,アイロンは冷めてから収納場所に保管する,包丁 やはさみは本数を確認し,保管箱に入れたりカバーを付けたりするなど,保管には十 分留意し,常に安全管理に努めるように指導する。 (2) 事故の防止に留意して,熱源や用具,機械などを取り扱うこと。 熱源や用具,機械などについては,取扱いを誤ると危険を伴うものがあるので,常 に安全管理と事故の防止に努めることが大切であることを理解させ,それらを安全に 扱うことができるようにし,基本的な操作を身に付けるように指導する。さらに,使 用場所や用具の配置の仕方で仕事の能率や事故の防止にも役立つことに気付かせるよ うにする。事故の防止のためには落ち着いた雰囲気の中で学習が進められるように工 夫することも重要である。なお,洗剤類の保管についても,誤用のないように十分留 意する。 調理実習では,調理台の整理・整頓や用具の配置などを工夫させる。また,熱源の とん 回りにふきんやノート類などの燃えやすい物を置かないことや,熱源の適切な点火・ 消火の確認や調理中の換気について指導する。こんろや調理器具の余熱にも注意させ る。 製作実習では,針の本数の確認や折れた針の始末などを徹底させる。また,アイロ --75/81-- --75/81-- -72- ンは,使用場所や置き方に留意し,火傷などを引き起こさないように指導する。 機械については,例えば,ミシンなど重量のある物の配置,コードの取扱い方など について十分に配慮させる。 (3) 調理に用いる食品については,生の魚や肉は扱わないなど,安全・衛生に留意す ること。 米飯とみそ汁以外は題材を指定していないため,地域や学校,児童の実態に応じた 多様な食品を用いることになる。調理に用いる材料は安全や衛生を考えて選択するよ うにする。児童が家庭から持参する場合は,実習の前に指導者が腐敗していないか匂 いや色などを確かめたり,実習時間までの保管に十分留意したりする。特に,生の魚 や肉については調理の基礎的事項を学習しておらず,扱いや衛生面での管理が難しい ので用いないようにする。卵を用いる場合には,新鮮であることを確認し,加熱調理 をするように指導する。 --76/81-- -73- 4 家庭との連携 4 家庭との連携を図り,児童が身に付けた知識及び技能などを日常生活に活用 するよう配慮するものとする。 家庭科で学習する知識と技能などは,繰り返して学習したり日常生活で活用したり して定着を図ることができる。学習したことを基に家庭生活に生かし,継続的に実践 できるようにするために,家庭との連携を積極的に図る必要がある。 家庭との連携を進めるためには,例えば,家庭科の学習のねらいや内容について, 授業参観や学年だより,学級だより等を通して情報を提供するなど,家族が家庭科の 学習の意義や内容を理解できるようにする。また,家庭での実践が計画されているこ とを事前に伝えたり,協力を依頼したりすることなども考えられる。 そのことによって,家庭での実践への理解が深まり,児童が家庭の協力を得て,日 常生活や長期休業中の家庭生活で充実した実践ができるようになる。 このようにして児童の家庭での体験が多くなれば,学習した知識及び技能などの一 層の定着を図ることができるようになるとともに,学習内容が広がり,衣食住などの 生活における自立の基礎が培われることとなる。 指導に当たっては,家庭での実践の結果を発表するようにしたり,その成果を賞賛 したりすることなどによって,家庭で実践する喜びや自信を育てるように配慮する。 その他,家族をはじめ近隣の人々の協力を得て,衣食住の生活に関する知恵や生活 技術などを学ぶ機会を設けることも考えられる。 なお,家庭生活は個々の家庭によって異なることから,児童を取り巻く環境に十分 配慮して学習を進めるようにする。 --77/81-- -74- 5 言語活動の充実と家庭科 5 各内容の指導に当たっては,衣食住など生活の中の様々な言葉を実感を伴っ て理解する学習活動や,自分の生活における課題を解決するために言葉や図表 などを用いて生活をよりよくする方法を考えたり,説明したりするなどの学習 活動が充実するよう配慮するものとする。 言語活動の充実は,教科指導を貫く重要な要素である。また,言語は,獲得した言 葉を駆使して自分の考えをまとめたり発表したりするなどの知的活動の基盤であり, 人と人とをつなぐ意思の伝達機能,さらには,感性・情緒の基盤としての役割をもつ。 家庭科では,国語科において培われた言語の基礎的・基本的な能力を基に,製作や 調理などにおける体験を通して生活の中の様々な言葉を実感を伴って理解するように したり,観察や実習の際のレポート作成や考察,思考したことを発表したりするなど の言語活動によって,教科のねらいをより確実に定着させることができる。また,言 語を活用することは,思考そのものの深まりを促す視点もあり,学んだ知識と技能を 生活に生かす際の工夫する能力にもつながっていく。 そこで,家庭科で用いる「団らん」,「健康」,「手入れ」,「快適さ」,「ゆでる」な どの生活に関連の深い様々な言葉が,児童自身の中で実態を伴った明確な概念として 形作られるようにすること,つまり,生活の中で生きた言葉となるように配慮するこ とが求められる。児童がこれらの言葉に触れ,製作や調理などの実習を行ったり,目 的をもって学習対象を観察したり,触れたり,味わったりするなどの実践的・体験的 な活動を行うことによって,様々な驚きや感動とともに,1つ1つの言葉が児童自身 の生活の中で生きた言葉へと変化すると考えられる。 例えば,「沸騰」という言葉を日常的に使っていても,沸騰した状態を具体的にイ メージできる児童は少ないものである。ほうれん草を沸騰したお湯の中でゆでて味わ ってみるという活動を通して,「ほうれん草をおいしくゆでることができた」という 感動とともに,「沸騰」という言葉が,児童の生活の中で初めて実感を伴う生きた言 --78/81-- -75- 葉となる。このように,生活の様々な事象を実感の伴う生きた言葉として理解するこ とにより,人が生活を営むことのよさやその価値に触れ,生活への感性を高めていく ことができるようになる。 また,言葉や図表,概念などを用いて,自分の課題に基づき生活をよりよくする方 法を考えたり,実習などで体験したことを説明したり,表現したり,話し合ったりす るなどの学習活動を充実するように配慮することが求められる。 例えば,自分の生活における課題を解決するための学習活動として,「衣服の手入 れ」の学習を行う場合,まず,家庭での洗濯についての問題点を児童の具体的な生活 経験と関連付けながら家族へのインタビューなどから探ったり,汚れた靴下を試し洗 いしたりすることで課題をつかむようにする。次に,その課題を追究する場面では, 比較実験や調べる活動を行い,その結果から分かったことや考えたことを図表やグラ フ,言葉にまとめ,それを発表し合い活用の仕方を考えるなどの学習活動を行うこと が考えられる。このような学習を通して,身近な生活への理解が深まるとともに,生 活をよりよくしようとする意欲や生活で活用する能力などを身に付けることができる ようになる。 以上のように,実践的・体験的な活動や問題解決的な学習を通して,言語活動の充 実を図りながら家庭科の学習指導を進めていくことによって,生活への感性が高まる とともに,日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能やそれらを活用する能力 が身に付き,生活をよりよくしようとする実践的な態度をはぐくむことができる。 --79/81-- -76- 小学校家庭,中学校技術・家庭家庭分野の内容一覧 小学校 中学校(家庭分野) 衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して,(分野の目標)衣食住などに関する実践的・体験的な学習活動 日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身 を通して,生活の自立に必要な基礎的・基本的な知識及び技術 に付けるとともに,家庭生活を大切にする心情をはぐ を習得するとともに,家庭の機能について理解を深め,これか くみ,家族の一員として生活をよりよくしようとする らの生活を展望して,課題をもって生活をよりよくしようとす 実践的な態度を育てる。 る能力と態度を育てる。 A 家庭生活と家族 A 家族・家庭と子どもの成長 (1) 自分の成長と家族 (1) 自分の成長と家族 ア 成長の自覚,家庭生活と家族の大切さア 自分の成長と家族や家庭生活とのかかわり (2) 家庭生活と仕事 (2) 家庭と家族関係 ア 家庭の仕事と分担 ア 家庭や家族の基本的な機能,家庭生活と地域のかかわり イ 生活時間の工夫 イ これからの自分と家族,家族関係をよりよくする方法 (3) 家族や近隣の人々とのかかわり(3) 幼児の生活と家族 ア 家族との触れ合いや団らん ア 幼児の発達と生活の特徴,家族の役割 イ 近隣の人々とのかかわり イ 幼児の観察や遊び道具の製作,幼児の遊びの意義 ウ 幼児との触れ合い,かかわり方の工夫 エ 家族又は幼児の生活についての課題と実践 B 日常の食事と調理の基礎B 食生活と自立 (1) 食事の役割 (1) 中学生の食生活と栄養 ア 食事の役割と日常の食事の大切さア 食事が果たす役割,健康によい食習慣 イ 楽しく食事をするための工夫 イ 栄養素の種類と働き,中学生の栄養の特徴 (2) 栄養を考えた食事 (2) 日常食の献立と食品の選び方 ア 体に必要な栄養素の種類と働き ア 食品の栄養的特質,中学生の1日に必要な食品の種類と イ 食品の栄養的な特徴と組合せ 概量 ウ 1食分の献立 イ 中学生の1日分の献立 (3) 調理の基礎 ウ 食品の選択 ア 調理への関心と調理計画 (3) 日常食の調理と地域の食文化 イ 材料の洗い方,切り方,味の付け方,盛り付け, ア 基礎的な日常食の調理,食品や調理用具等の適切な管理 配膳及び後片付け イ 地域の食材を生かした調理,地域の食文化 ウ ゆでたり,いためたりする調理 ウ 食生活についての課題と実践 エ 米飯及びみそ汁の調理 オ 用具や食器の安全で衛生的な取扱い,こんろの 安全な取扱い C 快適な衣服と住まい C 衣生活・住生活と自立 (1) 衣服の着用と手入れ (1) 衣服の選択と手入れ ア 衣服の働きと快適な着方の工夫 ア 衣服と社会生活とのかかわり,目的に応じた着用や個性 イ 日常着の手入れとボタン付け及び洗濯を生かす着用の工夫 (2) 快適な住まい方 イ 衣服の計画的な活用や選択 ア 住まい方への関心,整理・整頓及び清掃の仕 ウ 衣服の材料や状態に応じた日常着の手入れ 方と工夫 (2) 住居の機能と住まい方 イ 季節の変化に合わせた生活の大切さ,快適な住 ア 住居の基本的な機能 まい方の工夫 イ 安全な室内環境の整え方,快適な住まい方の工夫 (3) 生活に役立つ物の製作 (3) 衣生活,住生活などの生活の工夫 ア 形などの工夫と製作計画 ア 布を用いた物の製作,生活を豊かにするための工夫 イ 手縫いやミシン縫いによる製作・活用イ 衣生活又は住生活についての課題と実践 ウ 用具の安全な取扱い D 身近な消費生活と環境 D 身近な消費生活と環境 (1) 物や金銭の使い方と買物 (1) 家庭生活と消費 ア 物や金銭の大切さ,計画的な使い方ア 消費者の基本的な権利と責任 イ 身近な物の選び方,買い方 イ 販売方法の特徴,物資・サービスの選択,購入及び活用 (2) 環境に配慮した生活の工夫 (2) 家庭生活と環境 ア 身近な環境とのかかわり,物の使い方の工夫 ア 環境に配慮した消費生活の工夫と実践 ※枠囲みは選択事項。3学年間で1〜2事項を選択 --80/81-- 小学校学習指導要領解説家庭編作成協力者(五十音順) (職名は平成20年6月末日現在) 飯 島 典 子 東京都大田区立大森第一小学校主幹教諭 内 野 紀 子 日本女子大学教授 春 日 文 隆 宮城県仙台市教育委員会管理主事 勝 田 映 子 筑波大学附属小学校教諭 金 子 佳代子 横浜国立大学教授 栗 原 恵 子 茨城県教育研修センター指導主事 酒 井 陽 子 横浜市立下郷小学校主幹教諭 鈴 木 明 子 広島大学大学院准教授 鈴 木 美 幸 埼玉県久喜市立太田小学校教諭 染 谷 和 美 埼玉県教育委員会指導主事 中 林 由美子 神奈川県教育委員会指導主事 長 澤 由喜子 岩手大学教授 藤 原 孝 子 東京都台東区立黒門小学校長 安 田 憲 司 前独立行政法人国民生活センター教務課課長補佐 なお,文部科学省においては,次の者が本書の編集に当たった。 橋 道 和 初等中等教育局教育課程課長 牛 尾 則 文 初等中等教育局視学官 小 幡 泰 弘 初等中等教育局教育課程課課長補佐 岡 陽 子 初等中等教育局教育課程課教科調査官 --81/81--