小学校学習指導要領解説 理科編 平成20年6月 文部科学省 --1/90-- 目次 第1章 総 説…………………………………………………………………………… 1 1 改訂の経緯……………………………………………………………………… 1 2 理科改訂の趣旨……………………………………………………………… 4 第2章 理科の目標及び内容…………………………………………………………… 10 第1節 理科の目標…………………………………………………………………… 10 第2節 理科の内容区分……………………………………………………………… 16 1 A物質・エネルギー…………………………………………………………… 16 2 B生命・地球…………………………………………………………………… 17 第3節 学年目標と学年内容の構成の考え方……………………………………… 22 1 学年目標の構成の考え方……………………………………………………… 22 2 学年内容の構成の考え方……………………………………………………… 23 第3章 各学年の目標及び内容………………………………………………………… 24 第1節 第3学年………………………………………………………………………… 24 1 目標……………………………………………………………………………… 24 2 内容……………………………………………………………………………… 26 第2節 第4学年………………………………………………………………………… 38 1 目標……………………………………………………………………………… 38 2 内容……………………………………………………………………………… 40 第3節 第5学年………………………………………………………………………… 51 1 目標……………………………………………………………………………… 51 2 内容……………………………………………………………………………… 53 --2/90-- 第4節 第6学年………………………………………………………………………… 64 1 目標……………………………………………………………………………… 64 2 内容……………………………………………………………………………… 66 第4章 指導計画の作成と内容の取扱い……………………………………………… 81 --3/90-- -1- 第1章総説 1 改訂の経緯 21世紀は,新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる 領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」の時 代であると言われている。このような知識基盤社会化やグローバル化は,アイディ アなど知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させる一方で,異なる文化や文 明との共存や国際協力の必要性を増大させている。このような状況において,確か な学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」をはぐくむことがま すます重要になっている。 他方,OECD(経済協力開発機構)のPISA調査など各種の調査からは,我 が国の児童生徒については,例えば, @ 思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用す る問題に課題, A 読解力で成績分布の分散が拡大しており,その背景には家庭での学習時間な どの学習意欲,学習習慣・生活習慣に課題, B 自分への自信の欠如や自らの将来への不安,体力の低下といった課題, が見られるところである。 このため,平成17年2月には,文部科学大臣から,21世紀を生きる子どもたちの 教育の充実を図るため,教員の資質・能力の向上や教育条件の整備などと併せて, 国の教育課程の基準全体の見直しについて検討するよう,中央教育審議会に対して 要請し,同年4月から審議を開始された。この間,教育基本法改正,学校教育法改 正が行われ,知・徳・体のバランス(教育基本法第2条第1号)とともに,基礎的 ・基本的な知識・技能,思考力・判断力・表現力等及び学習意欲を重視し(学校教 育法第30条第2項),学校教育においてはこれらを調和的にはぐくむことが必要で ある旨が法律上規定されたところである。中央教育審議会においては,このような --4/90-- -2- 教育の根本にさかのぼった法改正を踏まえた審議が行われ,2年10か月にわたる審 議の末,平成20年1月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の 学習指導要領等の改善について」答申を行った。 この答申においては,上記のような児童生徒の課題を踏まえ, @ 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂 A 「生きる力」という理念の共有 B 基礎的・基本的な知識・技能の習得 C 思考力・判断力・表現力等の育成 D 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保 E 学習意欲の向上や学習習慣の確立 F 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実 を基本的な考え方として,各学校段階や各教科等にわたる学習指導要領の改善の方 向性が示された。 具体的には,@については,教育基本法が約60年振りに改正され,21世紀を切り 拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指すという観点から,これからの教育の ひら 新しい理念が定められたことや学校教育法において教育基本法改正を受けて,新た に義務教育の目標が規定されるとともに,各学校段階の目的・目標規定が改正され たことを十分に踏まえた学習指導要領改訂であることを求めた。Bについては,読 み・書き・計算などの基礎的・基本的な知識・技能は,例えば,小学校低・中学年 では体験的な理解や繰り返し学習を重視するなど,発達の段階に応じて徹底して習 得させ,学習の基盤を構築していくことが大切との提言がなされた。この基盤の上 に,Cの思考力・判断力・表現力等をはぐくむために,観察・実験,レポートの作 成,論述など知識・技能の活用を図る学習活動を発達の段階に応じて充実させると ともに,これらの学習活動の基盤となる言語に関する能力の育成のために,小学校 低・中学年の国語科において音読・暗唱,漢字の読み書きなど基本的な力を定着さ せた上で,各教科等において,記録,要約,説明,論述といった学習活動に取り組 む必要があると指摘した。また,Fの豊かな心や健やかな体の育成のための指導の 充実については,徳育や体育の充実のほか,国語をはじめとする言語に関する能力 --5/90-- -3- の重視や体験活動の充実により,他者,社会,自然・環境とかかわる中で,これら とともに生きる自分への自信を持たせる必要があるとの提言がなされた。 この答申を踏まえ,平成20年3月28日に学校教育法施行規則を改正するとともに, 幼稚園教育要領,小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を公示した。小学校 学習指導要領は,平成21年4月1日から移行措置として算数,理科等を中心に内容 を前倒しして実施するとともに,平成23年4月1日から全面実施することとしてい る。 --6/90-- -4- 2 理科改訂の趣旨 (1)理科の改善の基本方針及び具体的事項 平成20年1月の中央教育審議会の答申において,教育課程の改訂の基本的な考え 方,今回の改訂で充実すべき重要事項等が示されるとともに,各教科別の主な改善事 項を示している。このたびの小学校理科の改訂は,これらを踏まえて行ったものであ る。 答申の中で,理科の改善の基本方針については,次のように示されている。 (@)改善の基本方針 (ア) 理科については,その課題を踏まえ,小・中・高等学校を通じ,発達の段 階に応じて,子どもたちが知的好奇心や探究心をもって,自然に親しみ,目 的意識をもった観察・実験を行うことにより,科学的に調べる能力や態度を 育てるとともに,科学的な認識の定着を図り,科学的な見方や考え方を養う ことができるよう改善を図る。 (イ) 理科の学習において基礎的・基本的な知識・技能は,実生活における活用 や論理的な思考力の基盤として重要な意味をもっている。また,科学技術の 進展などの中で,理数教育の国際的な通用性が一層問われている。このた め,科学的な概念の理解など基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着を図 る観点から,「エネルギー」,「粒子」,「生命」,「地球」などの科学の 基本的な見方や概念を柱として,子どもたちの発達の段階を踏まえ,小・中 ・高等学校を通じた理科の内容の構造化を図る方向で改善する。 (ウ) 科学的な思考力・表現力の育成を図る観点から,学年や発達の段階,指導 内容に応じて,例えば,観察・実験の結果を整理し考察する学習活動,科学 的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動,探究的な学習活動を 充実する方向で改善する。 (エ) 科学的な知識や概念の定着を図り,科学的な見方や考え方を育成するた --7/90-- -5- め,観察・実験や自然体験,科学的な体験を一層充実する方向で改善する。 (オ) 理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会をもたせ,科学への関心を 高める観点から,実社会・実生活との関連を重視する内容を充実する方向で 改善を図る。また,持続可能な社会の構築が求められている状況に鑑み,理 科についても,環境教育の充実を図る方向で改善する。 小学校,中学校,高等学校を通じた理科の改善について,児童生徒が知的好奇心や 探究心をもって,自然に親しみ,目的意識をもった観察・実験を行うことにより,科 学的に調べる能力や態度を育てるとともに,科学的な認識の定着を図り,科学的な見 方や考え方を養うと全体的に示した上で,基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着, 科学的な思考力や表現力の育成,観察,実験や自然体験,科学的な体験の一層の充実, 理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会をもたせ,科学への関心を高めること など,柱となる方針を示している。 次に,答申において,上記の基本方針を受けて小学校理科の改善の具体的事項とし て6項目述べている。以下に,その項目ごとの要点について考えることにする。 (A)改善の具体的事項 (小学校) 生活科の学習を踏まえ,身近な自然について児童が自ら問題を見いだし,見 通しをもった観察・実験などを通して問題解決の能力を育てるとともに,学習 内容を実生活と関連付けて実感を伴った理解を図り,自然環境や生命を尊重す る態度,科学的に探究する態度をはぐくみ,科学的な見方や考え方を養うこと を重視して,次のような改善を図る。 (ア)領域構成については,児童の学び方の特性や二つの分野で構成されている 中学校との接続などを考慮して,現行の「生物とその環境」,「物質とエネ ルギー」,「地球と宇宙」を改め,「物質・エネルギー」,「生命・地球」 とする。 --8/90-- -6- 現行学習指導要領の三つの領域構成は,昭和43年告示の学習指導要領で初めて採 用されたものである。これは,小学校の児童の発達の段階やものの見方や考え方の特 性に沿ったものである。今回,さらに,児童が自ら条件を制御して実験を行い,規則 性を帰納したり,一定の視点を意識しながら自然を全体と部分で観察して,特徴を整 理したりする児童の学び方の特性とともに,中学校の「第1分野」,「第2分野」と の整合性も加味して,新たに「物質・エネルギー」,「生命・地球」の二つの領域構 成とするものである。 (イ)「物質・エネルギー」については,児童が物質の性質やはたらき,状態の 変化について観察・実験を通して探究したり,物質の性質などを活用しても のづくりをしたりすることについての指導に重点を置いて内容を構成する。 また,「エネルギー」や「粒子」といった科学の基本的な見方や概念を柱と して内容が系統性をもつように留意する。 その際,例えば,風やゴムの働き,物と重さ,電気の利用などを指導す る。また,現行で課題選択となっている振り子と衝突については,振り子は 引き続き小学校で指導し,衝突は中学校に移行する。 (ウ)「生命・地球」については,児童が生物の生活や成長,体のつくり及び地 表,大気圏,天体に関する諸現象について観察やモデルなどを通して探究し たり,自然災害などの視点と関連付けて探究したりすることについての指導 に重点を置いて内容を構成する。また,「生命」や「地球」といった科学の 基本的な見方や概念を柱として内容が系統性をもつように留意する。 その際,例えば,自然の観察,人の体のつくりと運動,太陽と月などを指 導する。また,現行で課題選択となっている,卵の中の成長と母体内の成 長,地震と火山はいずれも指導する。 (イ)と(ウ)は,新しい領域構成「物質・エネルギー」,「生命・地球」のそれ ぞれについて,学習内容の特徴や指導の重点,科学の基本的な見方や概念との関係, 新しい学習内容の例,課題選択の見直しについて述べたものである。 --9/90-- -7- 理科の授業時数の増加に伴って追加された新たな学習内容について,それぞれの領 域構成において三つずつ示したものである。これらの新内容の中には,例えば第6学 年「月と太陽」のように,平成元年告示の学習指導要領の内容に類似したものがある が,扱う内容の範囲と程度が異なるとともに,内容の系統性という新たな視点が背景 としてあるため,指導の工夫と改善が必要となる。また,例えば第6学年「電気の利 用」のように,これまでに類似の内容のない新しいもので,新たな教材研究とともに 指導法の開発が必要となるものがある。 なお,現行で課題選択の扱いとなっていた第5学年の「物の運動」と「生命の誕 生」及び第6学年の「地震と火山」は,課題選択を見直し,「衝突」を中学校に移行 する以外は,全て小学校で学習するものである。 (エ)児童の科学的な見方や考え方が一層深まるように,観察・実験の結果を整 理し考察し表現する学習活動を重視する。また,各学年で重点を置いて育成 すべき問題解決の能力については,現行の考え方を踏襲しつつ,中学校との 接続も踏まえて見直す。 ここでは,言語活動の充実と中学校まで見据えた問題解決の能力について示してい る。観察,実験において結果を表やグラフに整理し,予想や仮説と関係付けながら考 察を言語化し,表現することを一層重視する必要がある。また,小学校では学年ごと に整理してある問題解決の能力を踏襲しつつ,第6学年では中学校との接続も考え見 直しを図るものである。 (オ)生活科との関連を考慮し,ものづくりなどの科学的な体験や身近な自然を 対象とした自然体験の充実を図るようにする。 生活科との関連を考慮し,科学的な体験や自然体験の充実を図るものである。科学 的な体験については,例えば,第3学年の「風やゴムの働き」が考えられる。風で動 くおもちゃやゴムで動くおもちゃをつくるものづくりの活動を通して,風力やゴムの --10/90-- --10/90-- -8- 伸びとおもちゃの動く距離とを関係付けて考えるなどの学習が考えられる。自然体験 については,例えば,第3学年の「身近な自然の観察」が考えられる。校庭や近くの 公園などで,そこで生息している生物の様子を調べ,土の様子や樹木の状況などの環 境とのかかわりについて体験的に学習を進めることが考えられる。 (カ)環境教育の一層の推進の観点から,地域の特性を生かし,その保全を考え た学習や,環境への負荷に留意した学習の充実を図る。 持続可能な社会の構築のために,各教科等において環境に関する学習の一層の推進 が重視されている。理科においては,例えば,第3学年「身近な自然の観察」の学習 は,「生態系」の学習の初歩と位置付けることにより,環境教育という観点から学習 の充実を図ることが考えられる。また,例えば,第6学年「水溶液の性質」の学習は, 児童とともに学習後の廃液の処理について考えることにより,環境への負荷に留意し た学習の充実を図ることが考えられる。さらに,生物を対象とした学習は,生命を尊 重しようとする態度の育成はもとより,環境保全の観点から,より充実した指導の工 夫,改善を考えていくことができる。 (2)小学校理科の内容の改善 小学校理科の内容の改善については,上記「理科の改善の基本方針及び具体的事 項」を踏まえ,問題解決の能力や自然を愛する心情を育て,自然の事物・現象につい ての実感を伴った理解を図り,科学的な見方や考え方を養うことを実現するために, 次のような内容の追加,移行及び中学校への移行統合を行った。 ○ 追加する内容 物と重さ(第3学年),風やゴムの働き(第3学年),身近な自然の観察(第3学 年),水の体積変化(第4学年),人の体のつくりと運動(第4学年),水中の小さ な生物(第5学年),川の上流,下流と川原の石(第5学年),雲と天気の変化(第 5学年),てこの利用(第6学年),電気の利用(第6学年),主な臓器の存在(第 6学年),水の通り道(第6学年),食べ物による生物の関係(第6学年),月と太 --11/90-- -9- 陽(第6学年) ○ 学年間で移行する内容 天気による1日の気温の変化〔第4学年(第5学年より移行)〕,電流の働き〔第 5学年(第6学年より移行)〕,てこの規則性〔第6学年(第5学年より移行)〕 ○ 中学校へ移行統合する内容 物の衝突(第5学年) --12/90-- -10- 第2章 理科の目標及び内容 第1節 理科の目標 小学校理科の教科の目標は,以下のとおりである。 自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,問題解決の能力と自然 を愛する心情を育てるとともに,自然の事物・現象についての実感を伴った理解 を図り,科学的な見方や考え方を養う。 目標の理解を深めるために,目標を構成している文章を文節に区切り,それぞれの 意図するものについて,以下に示すことにする。 ○ 自然に親しむこと 理科の学習は,児童が自然に親しむことから始まる。 ここで,「自然に親しむ」とは,単に自然に触れたり,慣れ親しんだりするという ことではない。それは,児童が関心や意欲をもって対象とかかわることにより,自ら 問題を見いだし,以降の学習活動の基盤を構築することである。 したがって,児童に自然の事物・現象を提示したり,自然の中に連れて行ったりす る際には,児童が対象である自然の事物・現象に関心や意欲を高めつつ,そこから問 題意識を醸成するように意図的な活動を工夫することが必要である。 ○ 見通しをもって観察,実験などを行うこと ここでは,「見通しをもつ」ことと「観察,実験などを行う」ことの二つの部分に 分けて考えることにする。 「見通しをもつ」とは,児童が自然に親しむことによって見いだした問題に対して, 予想や仮説をもち,それらを基にして観察,実験などの計画や方法を工夫して考える --13/90-- -11- ことである。児童が「見通しをもつ」ことには,以下のような意義が考えられる。 児童は,自らの生活経験や学習経験を基にしながら,問題の解決を図るために見通 しをもつことになる。ここでの「見通し」は,児童自らが発想したものであるため, 観察,実験が意欲的なものになることが考えられる。このような意欲的な観察,実験 の活動を行うことにより,その結果においても自らの活動の結果としての認識をもつ ことになる。このことにより,観察,実験は児童自らの主体的な問題解決の活動とな るのである。 また,児童が見通しをもつことにより,予想や仮説と観察,実験の結果の一致,不 一致が明確になる。両者が一致した場合には,児童は予想や仮説を確認したことにな る。一方,両者が一致しない場合には,児童は予想や仮説を振り返り,それらを見直 し,再検討を加えることになる。いずれの場合でも,予想や仮説の妥当性を検討した という意味において意義があり,価値があるものである。このような過程を通して, 児童は自らの考えを絶えず見直し,検討する態度を身に付けることになると考えられ る。 なお,児童がもつ見通しは一律ではなく,児童の発達や状況によってその精緻さな どが異なるものであることは,十分注意をする必要がある。 「観察,実験などを行う」ことには,以下のような意義が考えられる。 理科の観察,実験などの活動は,児童が自ら目的,問題意識をもって意図的に自然 の事物・現象に働きかけていく活動である。そこでは,児童は自らの予想や仮説に基 づいて,観察,実験などの計画や方法を工夫して考えることになる。観察,実験など の計画や方法は,予想や仮説を自然の事物・現象で検討するための手続き・手段であ り,理科における重要な検討の形式として考えることができる。 ここで,観察は,実際の時間,空間の中で具体的な自然の存在や変化をとらえるこ とである。視点を明確にもち,周辺の状況にも意識を払いつつ,その様相を自らの諸 感覚を通してとらえようとする活動である。一方,実験は,人為的に整えられた条件 の下で,装置を用いるなどしながら,自然の存在や変化をとらえることである。自然 からいくつかの変数を抽出し,それらを組み合わせ,意図的な操作を加える中で,結 果を得ようとする活動である。観察,実験は明確に切り分けられない部分もあるが, --14/90-- -12- それぞれの活動の特徴を意識しながら指導することが大切である。 なお,「観察,実験など」の「など」には,観察,実験の他に自然の性質や規則性 を適用したものづくりや,栽培,飼育の活動が含まれる。 ○ 問題解決の能力を育てること 児童が自然の事物・現象に親しむ中で興味・関心をもち,そこから問題を見いだし, 予想や仮説の基に観察,実験などを行い,結果を整理し,相互に話し合う中から結論 として科学的な見方や考え方をもつようになる過程が問題解決の過程として考えられ る。このような過程の中で,問題解決の能力が育成される。小学校では,学年を通し て育成する問題解決の能力が示されている。 小学校理科では,第3学年では身近な自然の事物・現象を比較しながら調べること が,第4学年では自然の事物・現象を働きや時間などと関係付けながら調べることが, 第5学年では自然の事物・現象の変化や働きをそれらにかかわる条件に目を向けなが ら調べることが,第6学年では,自然の事物・現象についての要因や規則性,関係を 推論しながら調べることが示されている。これらの問題解決の能力は,その学年で中 心的に育成するものであるが,下の学年の問題解決の能力は上の学年の問題解決の能 力の基盤となるものであることに留意する必要がある。また,内容区分や単元の特性 によって扱い方が異なることや,中学校における学習につなげていくことにも留意す る必要がある。 ○ 自然を愛する心情を育てること 植物の栽培や昆虫の飼育という体験活動を通して,その成長を喜んだり,昆虫の活 動の不思議さやおもしろさを感じたりする。また,植物を大切に育てたのに枯れてし まったり,昆虫を大切に育てたのに死んでしまったりするような体験をすることもあ る。このような体験を通して,その意義を児童に振り返らせることにより,生物を愛 護しようとする態度がはぐくまれてくる。 また,植物の結実の過程や動物の発生や成長について観察したり,調べたりするこ とにより生命の連続性や神秘性に思いをはせたり,自分自身を含む動植物は,お互い つながっており,周囲の環境との関係の中で生きていることに考え至ったりするよう な体験を通して,生命を尊重しようとする態度がはぐくまれてくる。 --15/90-- -13- 理科では,このような体験を通して,自然を愛する心情を育てることが大切である ことはいうまでもない。ただし,その際,人間を含めた生物が生きていくためには, 水や空気,食べ物,太陽のエネルギーなどが必要なことなどの理解も同時に大切にす る必要がある。 さらに,自然環境と人間との共生の手立てを考えながら自然を見直すことも,自然 を愛する心情を育てることにつながると考えられる。 なお,実験などを通して自然の秩序や規則性などに気付くことも,自然を愛する心 情を育てることにつながると考えられる。 ○ 自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図ること 児童は,自ら自然の事物・現象に働き掛け,問題を解決していくことにより,自然 の事物・現象の性質や規則性などを把握する。その際,あらかじめ児童がもっている 自然の事物・現象についてのイメージや素朴な概念などは,問題解決の過程を経るこ とにより,意味付け・関係付けが行われる。そして,学習後,児童は自然の事物・現 象についての新しいイメージや概念などを,より妥当性の高いものに更新していく。 それは,その段階での児童の発達や経験に依存したものであるが,自然の事物・現象 についての科学的な一つの理解と考えることができる。 今回,「自然の事物・現象の理解」に「実感を伴った」という文言を付加している。 この「実感を伴った理解」は,次のような三つの側面から考えることができる。 第一に,「実感を伴った理解」とは,具体的な体験を通して形づくられる理解であ る。児童が自らの諸感覚を働かせて,観察,実験などの具体的な体験を通して自然の 事物・現象について調べることにより,実感を伴った理解を図ることができる。これ は,自然に対する興味・関心を高めたり,適切な考察を行ったりする基盤となるもの である。 第二に,「実感を伴った理解」とは,主体的な問題解決を通して得られる理解であ る。自らの問題意識に支えられ,見通しをもって観察,実験を中心とした問題解決に 取り組むことにより,一人一人の児童が自ら問題解決を行ったという実感を伴った理 解を図ることができる。これは,理解がより確かなものになり,知識や技能の確実な 習得に資するものである。 --16/90-- -14- 第三に,「実感を伴った理解」とは,実際の自然や生活との関係への認識を含む理 解である。理科の学習で学んだ自然の事物・現象の性質や働き,規則性などが実際の 自然の中で成り立っていることに気付いたり,生活の中で役立てられていることを確 かめたりすることにより,実感を伴った理解を図ることができる。これは,理科を学 ぶことの意義や有用性を実感し,理科を学ぶ意欲や科学への関心を高めることにつな がるものと考えられる。 ○ 科学的な見方や考え方を養うこと ここでは,「科学」というものの考え方と「見方や考え方を養う」ことの二つの部 分に分けて考えることにする。 科学とは,人間が長い時間をかけて構築してきたものであり,一つの文化として考 えることができる。科学は,その扱う対象や方法論などの違いにより,専門的に分化 して存在し,それぞれ体系として緻密で一貫した構造をもっている。また,最近では 専門的な科学の分野が融合して,新たな科学の分野が生まれたりしている。 科学が,それ以外の文化と区別される基本的な条件としては,実証性,再現性,客 観性などが考えられる。「科学的」ということは,これらの条件を検討する手続きを 重視するという側面からとらえることができる。 実証性とは,考えられた仮説が観察,実験などによって検討することができるとい う条件である。再現性とは,仮説を観察,実験などを通して実証するとき,時間や場 所を変えて複数回行っても同一の実験条件下では同一の結果が得られるという条件で ある。客観性とは,実証性や再現性という条件を満足することにより,多くの人々に よって承認され,公認されるという条件である。 見方や考え方とは,問題解決の活動によって児童が身に付ける方法や手続きと,そ の方法や手続きによって得られた結果及び概念を包含する。すなわち,これまで述べ てきた問題解決の能力や自然を愛する心情,自然の事物・現象についての理解を基に して,見方や考え方が構築される。見方や考え方には,短い時間で習得されるものや 長い時間をかけて形成されるものなど,様々なものがある。 見方や考え方は,「A物質・エネルギー」,「B生命・地球」のそれぞれの内容区 分によっても異なっている。いずれにしても,理科の学習は,児童の既にもっている --17/90-- -15- 自然についての素朴な見方や考え方を,観察,実験などの問題解決の活動を通して, 少しずつ科学的なものに変容させていく営みであると考えることができる。 ここまで,目標についてその意図するところを詳しくみてきたが,これを問題解決 の流れに沿って考えると,次のような三つの重点に整理して考えることができる。 (1) 児童が身近な自然を対象として,自らの諸感覚を働かせ体験を通した自然との かかわりの中で,自然に接する関心や意欲を高め,そこから主体的に問題を見い だす学習活動を重視する。 (2) 児童が見通しをもって観察,実験などを行い,自然の事物・現象と科学的にか かわる中で,問題解決の能力や態度を育成する学習活動を重視する。 (3) 児童が観察,実験などの結果を整理し,考察,表現する活動を行い,学んだこ とを生活とのかかわりの中で見直し,自然の事物・現象についての実感を伴った 理解を図る学習活動を重視する。 以上の重点を踏まえて,これからの理科の学習指導においては,自然の事物・現象 とのかかわり,科学的なかかわり,生活とのかかわりを重視することにより,問題解 決の能力や自然を愛する心情を育て,実感を伴った理解を図り,科学的な見方や考え 方をもつことができるようにする。 --18/90-- -16- 第2節 理科の内容区分 理科では,様々な自然の事物・現象を対象にして学習を行う。そして,理科の学習 を通して,問題解決の能力や自然を愛する心情を育て,自然の事物・現象についての 実感を伴った理解を図り,科学的な見方や考え方を養うことを目標としている。自然 を対象として,このような目標を実現するために,対象の特性や児童の構築する見方 や考え方などに基づいて,次のような内容の区分に整理した。 1 A物質・エネルギー 身近な自然の事物・現象の多くは,時間,空間の尺度の小さい範囲内で直接実験を 行うことにより,対象の特徴や変化に伴う現象や働きを,何度も人為的に再現させて 調べることができやすいという特性をもっているものがある。児童は,このような特 性をもった対象に主体的,計画的に操作や制御を通して働きかけ,追究することによ り,対象の性質や働き,規則性などの見方や考え方を構築することができる。主にこ のような対象の特性や児童の構築する見方や考え方などに対応した学習の内容区分が 「A物質・エネルギー」である。なお,本内容区分は,基本的な考え方において,前 回の「B物質とエネルギー」を引き継いでいるものである。 「A物質・エネルギー」の指導に当たっては,実験の結果から得られた性質や働き, 規則性などを活用したものづくりを充実させるとともに,「エネルギー」,「粒子」 といった科学の基本的な見方や概念を柱として,内容の系統性が図られていることに 留意する必要がある。 「エネルギー」といった科学の基本的な見方や概念は,さらに「エネルギーの見 方」,「エネルギーの変換と保存」,「エネルギー資源の有効利用」に分けて考えら れる。「粒子」といった科学の基本的な見方や概念は,さらに「粒子の存在」,「粒 子の結合」,「粒子の保存性」,「粒子のもつエネルギー」に分けて考えられる。 なお,「エネルギー」,「粒子」といった科学の基本的な見方や概念は,基礎的・ 基本的な知識・技能の確実な定着を図る観点から,子どもたちの発達の段階を踏まえ, --19/90-- -17- 小・中・高等学校を通じた理科の内容の構造化を図るために設けられた柱である。 小学校及び中学校を通した「エネルギー」「粒子」を柱とした内容の構成を図1 (18,19ページ)に示す。 2 B生命・地球 自然の事物・現象の中には,生物のように環境とのかかわりの中で生命現象を維持 していたり,地層や天体などのように時間や空間のスケールが大きいという特性をも ったりしているものがある。児童は,このような特性をもった対象に主体的・計画的 に諸感覚を通して働きかけ,追究することにより,対象の成長や働き,環境とのかか わりなどの見方や考え方を構築することができる。主にこのような対象の特性や児童 の構築する見方や考え方などに対応した学習の内容区分が「B生命・地球」である。 なお,本内容区分は,前回の「A生物とその環境」,「C地球と宇宙」を基本的な考 え方において引き継いでいるものである。 「B生命・地球」の指導に当たっては,自然環境の保全に関する態度を養うととも に,「生命」,「地球」といった科学の基本的な見方や概念を柱として,内容の系統 性が図られていることに留意する必要がある。 「生命」といった科学の基本的な見方や概念は,さらに「生物の構造と機能」, 「生物の多様性と共通性」,「生命の連続性」,「生物と環境のかかわり」に分けて 考えられる。「地球」といった科学の基本的な見方や概念は,さらに「地球の内部」, 「地球の表面」,「地球の周辺」に分けて考えられる。 なお,「生命」,「地球」といった科学の基本的な見方や概念は,基礎的・基本的 な知識・技能の確実な定着を図る観点から,子どもたちの発達の段階を踏まえ,小・ 中・高等学校を通じた理科の内容の構造化を図るために設けられた柱である。 小学校及び中学校を通した「生命」「地球」を柱とした内容の構成を図2(20,21 ページ)に示す。 --20/90-- --20/90-- 図1 小学校・中学校理科の「エネルギー」「粒子」を柱とした内容の構成 エネルギー 校 種学 年 エネルギーの見方            エネルギーの変換と保存        エネルギー資源の有効利用 や ム第3学年 ・風の働ぎ Eゴムの働き 光の性質 E光の反射・集光 E光の当て方と明 @るさや暖かさ 礁石の性賃 E磁石に引きつけられる物 E異極と同極 電気の逓り遭 E電気を通すつなぎ方 E電気を通す物 第4学年電気の●き E乾電池の数とつなぎ方 E光電池の働き 小学校 第5学年撮り子の運動 E振り子の運動☆ 量遜の鋤豊・鉄心の磁化,極の変化(小6から移行)                 一・電磁石の強さ(小6から移行) てこの規則性 . 第6学年 ・てこのつり合いの規則性 ・てこのつり合いと重さ(小5から移行) 女」・5から移行) 三 魍・発電・蓄電 ・電気の変璽(光 音 熱などへの変撰) ・てこの利用(身の回りにあるてこを利用・電気による発熱 盟 電気の利用・     (身の巨:りにある電気を利用した道) カと圧力 E力の働き(力とばね 第1学年 の伸び, フ違いを含む) E圧力(水圧を含む) 遡一 光と音・光の反射・屈折 E凸レンズの働き E音の性質 第2学年 電流 Eコ路と電流・電圧 E電流・電圧と抵抗 E電気とそのエネルギー E静電気と電流       一(電子を含む) (電力量, 熱量を含む)一 電流と嶺界 E電流がっくる磁界 E磁界中の電流が受ける力 E電磁誘導と発電(魎を含む) 中学校 ・運動の速さと宣き E力と運動 運動の規則性 @(力の合成・分解を含む) 第3学年 力学的エネルギー E竺塁とエネルギー @(衝突(小5から移行), E力学的エネルギーの保存 仕事率を含む)様々なエネルギーとその変換(熱の伝わり方. m至を含む) C エネルギー E                     エネルギー  の エネルギー資源(放射線を含む) 科学按術の発震 E科学技術の発展☆ 自  境の 全と 学按術の田 ・自然環境の保全と’ 技’の利用 ュ第2 野と共’〉 --21/90-- 塞趣は,新規項目。破惣は,移行項目。☆印は,選択から必修とする項目。 粒   子 粒子の存在            粒子の結合           粒子の保存性          粒子のもつエネルギー 雌・狸・壁 空気と水の性質 E空気の圧縮 E水の圧縮 金属,水,空気と温屋 E温度と体積の変化 E温まり方の違い E水の三態変化 物の溶け方 E物が水に溶ける量の限度 E物が水に溶ける量の変化 E重さの保存 燃焼の仕組み E燃焼の仕絶み 水溶液の性賃 E酸性,アルカリ性,中性 E気体が溶けている水溶液 E金属を変化させる水溶液 ・気体の発生と性質 物質のすがた E身の回りの物質とその性質 @(プラスチックを含む) 水溶液 E物質の溶解 E溶解度と再結晶 状態変化 E状態変化と熱 E物質の融点と沸点 物賃の域り立ち E物質の分解 E原子・分子 化学変化 E化合 E酸化と還元(中3から移行) E化学変化と熱(中3から移行) 化学変化と物質の賃量 E化学変化と質量の保存 E質量変化の規則性 とイオン醸∴Z’kカユとイオン ・水 液の 智伝 E一 ・ の成り立ちとイオン ・酸・アルカリ(中1から移行) o    暫 ・    ρ    P 駒       虚 --22/90-- 図2 小学校・中学校理科の「生命」「地球」を柱とした内容の構成 生  命 校 種学 年 生物の構造と機能       生物の多様性と共通性        生命の連続性        生物と環境のかかわり 近な  の 第3学年 尾虫と櫨物 E昆虫の成長と体のつくり E植物の成長と体のつくり ・身の回りの生物の様子 E の・りの生物と環境とのか かわり 人の のつくりと第4学年 ・旦幽・骨と筋肉の 含む}き(越 季節と生物 E動物の活動と季節 E植物の成長と季節 動物の誕生 E卵の中の成 キ☆ E水中の小さ 小学校第5学年 植物の発芽, ャ長,結突 E種子の中の {分 E発芽の条件 E成長の条件 E植物の受粉, 去タ な生物 E母体内の成 キ☆ 第6学年 人の体のつくり ニ働き E呼吸 E消化・吸収 E血液循環 E主な臓器の存在 植物の養 ェと水の り道 Eでんぷん フでき方 E水の通り 生物と環境 E生物と水,空気とのかかわり E べ物による生物の関係 幽聾 H 導 植物の体のつくりと働き E花のつくりと働き E葉・茎・根のつくりと働き 植物の仲閣 E種子植物の仲問 E種子をつくらない植物の{問 生物の観察・生物の観察 第1学年 動物の体のつくりと働き E生命を維持する働き E刺激と反応 ≦…複ζ禦輿・生惣立麺壁よ虫鍾こう登行ユ 第2学年動物の仲閥 E脊椎動物の仲間 E無脊椎動物の仲間 の  と中学校 ・生物の 遷と 化 生物の成長と殖え方・細胞分裂と生物の成長 E生物の殖え方 生物と環境・自然界のつり合い E自然環境の調査と畷境保全 H,外来種を含む〕 の 1 と  子 ・伝の 貝1性と 伝(DNA 第3学年 を含む} 自然の憲みと災■ E自然の恵みと災害☆ の  と    の 盟・自然環境の保全と科学技術の 用く第1分野と共’〉 --23/90-- 墾は,新規項目。破盤は,移行項目。☆印は,選択から必修とする項目。 地   球 地球の内部                 地球の表置                 地球の周辺 太●と地面の様子 E日陰の位置と太陽の動き E地面の暖かさや湿り気の違い 天気の様子 E天簸三占ゑ1景⊆〜1墓塾優変ゴh @{小5から移行) 冒 一 〇 , , 曹 o ・ . 璽 ■ 一 曹 一 璽 一 一 一 E水の自然蒸発と結露 月と星 E月の形と勤き E星の明るさ,色 E星の動き 流水の働き E流れる水の働き{侵食,運搬,堆積》 E川の上流・下流と川原の石 E雨の降り方と増水 天気の変化・雲と天気の変化 E天気の変化の予想 土地のつくりと変化 E土地の構成物と地層の広がり E地層のでき方と化石 E火山の噴火や地震による土地の変化☆ 幽・月の位置や形と太陽の位置 E旦璽 曾 r一 .r   一 ‘r 火山と地震 E火山活動と火成岩 E地震の伝わり方と地球内部の働き 地層の重なりと過去の様子 E地層の重なりと過去の様子 気象朝測・気象観測 天気の変化・霧や雲の発生 E前線の通過と天気の変化 遡・日本の天気の 徴・大倉の きど洋の 天体の動きと地球の自転・公転・日周運動と自転 E年周運動と公転 太●系と恒墨 E太陽の様子 E の淫動と見え方(旦倉.、墨を含む〕 E惑星と恒星(銀河系の存在を含む) --24/90-- -22- 第3節 学年目標と学年内容の構成の考え方 1 学年目標の構成の考え方 各学年の目標は,それぞれの学年の学習を積み上げることによって,児童が教科の 目標である,問題解決の能力や自然を愛する心情の育成,自然の事物・現象について の実感を伴った理解,科学的な見方や考え方の構築ができるように構成されている。 また,各学年の目標は,対象の特性や児童の構築する見方や考え方を考慮して,「A 物質・エネルギー」,「B生命・地球」の二つの内容区分に対応させるとともに,働 き掛ける自然の事物・現象とその扱いの程度を示している。 各学年のA,Bのそれぞれの内容の目標には,以下の諸点が共通して取り上げられ ている。 (1) 各学年ごとに,例えば,「……ときの現象を……」,「……日なたと日陰の地面 を……」などのように,児童が働き掛ける対象を,また,「……を比較しながら… …」,「……と関係付けながら……」などのように児童が対象に働き掛ける視点を,あ わせて示している。 (2) 教科の目標で問題解決の能力の育成を重視していることを受けて,児童が事物・ 現象を比べたり,変化とその要因とを関係付けたり,条件制御をしながら観察,実 験を行ったり,推論したりするなど,各学年で重点を置いて育成すべき問題解決の 能力を目標として位置付けている。 (3) 教科の目標については,科学的な見方や考え方を養うことが掲げられていること を受けて,学年の目標に各学年で構築することが期待される科学的な見方や考え方 を示している。 (4) 教科の目標で実感を伴った理解を重視していることに伴い,各学年の「A物質・ エネルギー」に関する目標に,ものづくりを位置付けている。 (5) 教科の目標で自然を愛する心情を重視したことに伴い,各学年の「B生命・地 球」に関する目標に,生物を愛護する態度や生命を尊重する態度を位置付けている。 --25/90-- --25/90-- -23- 2 学年内容の構成の考え方 各学年の内容は,児童が「A物質・エネルギー」,「B生命・地球」にかかわる対 象について問題解決の活動を進め,それぞれの学年の状況に応じてその目標を達成で きるように,原則として次の観点と順序により構成されている。 (1) 初めに「植物を育て,……」のように,学習の対象と行動を示す。 (2) 次に「それらの変化の様子を調べ,……」のように,学習の視点を示す。 (3) そして「……の性質についての考えをもつことができるようにする。」のように, 学習の過程や結果から,児童がもつことが期待される考えを示す。 (4) ア,イ,……の内容は,学習の結果として児童がもつことが期待される対象につ いての考えの内容を示す。 (5) 主体的な問題解決の活動を具体化するため,児童が自然の事物・現象に働き掛け, 科学的な見方や考え方をもつことができる内容で構成する。 --26/90-- -24- 第3章 各学年の目標及び内容 第1節 第3学年 1目標 (1) 物の重さ,風やゴムの力並びに光,磁石及び電気を働かせたときの現象を比 較しながら調べ,見いだした問題を興味・関心をもって追究したりものづくり をしたりする活動を通して,それらの性質や働きについての見方や考え方を養 う。 (2) 身近に見られる動物や植物,日なたと日陰の地面を比較しながら調べ,見い だした問題を興味・関心をもって追究する活動を通して,生物を愛護する態度 を育てるとともに,生物の成長のきまりや体のつくり,生物と環境とのかかわ り,太陽と地面の様子との関係についての見方や考え方を養う。 第3学年の目標は,自然の事物・現象を差異点や共通点という視点から比較しなが ら調べ,問題を見いだし,見いだした問題を興味・関心をもって追究する活動を通し て,物の性質やその働きについての見方や考え方,自然の事物・現象に見られる共通 性や相互のかかわり,関係などについての見方や考え方を養うことである。 特に,本学年では,学習の過程において,自然の事物・現象の差異点や共通点に気 付いたり,比較したりする能力を育成することに重点が置かれている。 (1) 「A物質・エネルギー」にかかわる目標 本区分では,物の重さ,風やゴムの力を比較したり,光,磁石及び電気を働かせた ときの現象を比較したりしながら調べ,見いだした問題を興味・関心をもって追究し たりものづくりをしたりして,それらの性質や働きについての見方や考え方を養うこ --27/90-- -25- とが目標である。 ここでは,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (1)物と重さ」を設定する。「A(1)物と重さ」については,粘土などを使い,物の重 さや体積を比較しながら調べ,物の形や体積と重さの関係をとらえるようにする。 また,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (2)風やゴムの働き」,「A(3)光の性質」,「A(4)磁石の性質」及び「A(5)電気の 通り道」を設定する。「A(2)風やゴムの働き」については,風やゴムで物が動く様子 を比較しながら調べ,風やゴムの働きをとらえるようにする。「A(3)光の性質」につ いては,鏡などを使い,光の進み方や物に光が当たったときの明るさや暖かさを比較 しながら調べ,光の性質をとらえるようにする。「A(4)磁石の性質」については,磁 石に付く物や磁石の働きを比較しながら調べ,磁石の性質をとらえるようにする。 「A(5)電気の通り道」については,乾電池に豆電球などをつなぎ,電気を通すつなぎ 方や電気を通す物を比較しながら調べ,電気の回路をとらえるようにする。 (2) 「B生命・地球」にかかわる目標 本区分では,身近に見られる動物や植物,日なたと日陰の地面を比較しながら調べ, 見いだした問題を興味・関心をもって追究する活動を通して,生物を愛護する態度を 育てるとともに,生物の成長のきまりや体のつくり,生物と環境とのかかわり,太陽 と地面の様子との関係についての見方や考え方を養うことが目標である。 ここでは,「生命」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (1)昆虫と植物」及び「A(2)身近な自然の観察」を設定する。「A(1)昆虫と植物」に ついては,身近に見られる昆虫や植物を探したり育てたりして比較しながら調べ,昆 虫や植物の育ち方や体のつくりをとらえるようにする。「A(2)身近な自然の観察」に ついては,身の回りの生物の様子を比較しながら調べ,生物の様子やその周辺の環境 との関係をとらえるようにする。これらの活動を通して,生物を愛護する態度を育て るようにする。 また,「地球」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A(3)太陽 と地面の様子」を設定する。「A(3)太陽と地面の様子」については,日陰の位置と太 陽の位置との関係や,日なたと日陰の地面の暖かさや湿り気を比較しながら調べ,太 --28/90-- -26- 陽と地面の様子との関係をとらえるようにする。 2内容 A 物質・エネルギー (1) 物と重さ 粘土などを使い,物の重さや体積を調べ,物の性質についての考えをもつこと ができるようにする。 ア 物は,形が変わっても重さは変わらないこと。 イ 物は,体積が同じでも重さは違うことがあること。 本内容は,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子 の保存性」にかかわるものであり,第5学年「A(1)物の溶け方」の学習につながるも のである。 ここでは,物と重さについて興味・関心をもって追究する活動を通して,物の形や 体積,重さなどの性質の違いを比較する能力を育てるとともに,それらの関係の理解 を図り,物の性質についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねら いである。 ア 物の形と重さの関係について,粘土などの身の回りにある物を広げたり,丸め たりするなどして形を変え,手ごたえなどの体感を基にしながら重さの違いを比 較する。また,てんびんを用いたり,自動上皿はかりを用いたりして重さを数値 化することで,物は形が変わっても重さが変わらないことをとらえるようにする。 イ 体積と重さの関係について,粘土や砂などの身の回りにある物で,体積を同じ にしたときの重さの違いを,手ごたえなどの体感を基にしながら比較する。また, --29/90-- -27- てんびんを用いて比べたり,自動上皿はかりを用いて重さを数値化したりするこ とで,体積が同じでも物によって重さが違うことをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,例えば,粘土やアルミニウム箔などを用いて,広げたり, 丸めたりすることで形を変えたときの重さの違いを調べることが考えられる。また, 同体積の木球や金属球などを用いたり,身の回りにあるいろいろな物を測定したりし て重さの違いを調べることが考えられる。 ここでの指導に当たっては,物の形や重さなどについて体感を通して調べるととも に,てんびんや自動上皿はかりを用いて数値化を行い,物の重さを比較するようにす る。その際,これらの機器の使用や重さの単位については,算数科の学習との関連を 図るようにする。 (2) 風やゴムの働き 風やゴムで物が動く様子を調べ,風やゴムの働きについての考えをもつことが できるようにする。 ア 風の力は,物を動かすことができること。 イ ゴムの力は,物を動かすことができること。 本内容は,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの 「エネルギーの見方」にかかわるものであり,第5学年「A(2)振り子の運動」の学習 につながるものである。 ここでは,風やゴムの働きについて興味・関心をもって追究する活動を通して,風 やゴムの力を働かせたときの現象の違いを比較する能力を育てるとともに,それらに ついての理解を図り,風やゴムの働きについての見方や考え方をもつことができるよ うにすることがねらいである。 ア 風の力で動く物をつくり,風を当てたときの物の動く様子を比較しながら,風 の強さによって物の動く様子に違いがあることを調べ,風の力は物を動かすこと ができることをとらえるようにする。 イ ゴムの力で動く物をつくり,ゴムを引っぱったり,ねじったりしたときの物の --30/90-- --30/90-- -28- 動く様子を比較しながら,ゴムの元に戻ろうとする力の強さによって物の動く様子に 違いがあることを調べ,ゴムの力は物を動かすことができることをとらえるようにす る。 ここで扱う対象としては,風については,例えば,送風器などを用いて風を起こし て,風の強さを変えることが考えられる。また,ゴムについては,例えば,ゴムの長 さを変えずに,ゴムを二重にすることによって,その強さを変えることが考えられる。 ここでの指導に当たっては,生活科の学習との関連を考慮しながら,風を受けたと きやゴムを働かせたときの手ごたえなどの体感を基にした活動を重視するようにする。 また,風の強さやゴムの伸びなどと物の動きとの関係を表に整理することを通して, 風やゴムの働きについてとらえるようにする。さらに,風やゴムの力で動く物の動き や動く距離を変えるなど活動の目的によって,風やゴムの力を調整することが考えら れる。 なお,ゴムを扱う際には,安全な使用に配慮するように指導する。 (3) 光の性質 鏡などを使い,光の進み方や物に光が当たったときの明るさや暖かさを調べ, 光の性質についての考えをもつことができるようにする。 ア 日光は集めたり反射させたりできること。 イ 物に日光を当てると,物の明るさや暖かさが変わること。 本内容は,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの 「エネルギーの見方」にかかわるものであり,中学校第1学年「光と音」の学習につ ながるものである。 ここでは,光の性質について興味・関心をもって追究する活動を通して,光の明る さや暖かさの違いを比較する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り, 光の性質についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 平面鏡に日光を当てたときの様子について調べ,平面鏡に日光を当てると日光 が反射して直進することをとらえるようにする。また,何枚かの平面鏡を使い, --31/90-- -29- その向きを工夫することにより,反射した日光を重ねることができることをとら えるようにする。さらに,虫眼鏡に日光を当てると日光が集まることなどをとら えるようにする。 イ 日光を重ねたときの物の明るさや暖かさの違いを比べて,日光の当て方と物の 明るさや暖かさとのかかわりをとらえるようにする。また,虫眼鏡では,日光が 集まったところを小さくすると明るさや暖かさが増し,黒い紙などが焦げること があることもとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,日光を扱うようにし,地面の温度の測定の際には,放射 温度計などを利用することが考えられる。また,平面鏡の代わりに,アルミニウム板 などの光を反射させることができる物の使用が考えられる。 ここでの指導に当たっては,鏡1枚を使用したときの現象と,複数枚使用したとき の現象を比較することができるようにする。 生活との関連として,日光を当てると物が暖かくなることが,太陽熱温水器などに 活用されていることを取り上げることが考えられる。 なお,平面鏡や虫眼鏡などを扱う際には,破損して,指を切ったり手を傷つけたり する危険が伴うので,その扱い方には十分気を付けるようにする。また,直接目で太 陽を見たり,反射させた日光を人の顔に当てたり,虫眼鏡で集めた日光を衣服や生物 に当てたりしないように安全に配慮するように指導する。 (4) 磁石の性質 磁石に付く物や磁石の働きを調べ,磁石の性質についての考えをもつことがで きるようにする。 ア 物には,磁石に引き付けられる物と引き付けられない物があること。また, 磁石に引き付けられる物には,磁石に付けると磁石になる物があること。 イ 磁石の異極は引き合い,同極は退け合うこと。 本内容は,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの 「エネルギーの見方」,「エネルギーの変換と保存」にかかわるものであり,第5学 --32/90-- -30- 年「A(3)電流の働き」の学習につながるものである。 ここでは,磁石の性質について興味・関心をもって追究する活動を通して,磁石に 付く物と付かない物を比較する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り, 磁石の性質についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいであ る。 ア 身の回りのいろいろな物に磁石を近付け,磁石に引き付けられる物や引き付け られない物を探したり,集めたりする活動を通して調べ,物には,磁石に引き付 けられる物と引き付けられない物があることをとらえるようにする。また,物が 引き付けられる力を手ごたえで感じとり,磁石と物との間を開けても引き付ける 力が働いていることなどをとらえるようにする。さらに,磁石に引き付けられる 物には,磁石に付けると磁石になる物があることをとらえるようにする。 イ 磁石を自由に動くようにしておくと,磁石の形や大きさが違ってもいつも南北 の向きに止まるという現象が見られる。その際,北の方向を指している端をN極, 南の方向を指している端をS極と名付けている。二つの磁石を近付け,相互に引 き合ったり退け合ったりする現象を調べ,N極とS極は引き合い,N極とN極, S極とS極は退け合うことをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,児童が扱いやすい棒磁石やU字型磁石などが考えられる。 これらを使用する際には,コンピュータなど磁気の影響を受けやすい物に近づけない など,適切な取り扱いについて指導する。 ここでの指導に当たっては,磁石に付く物,付かない物を調べる際に,実験の結果 を表などに分類,整理することで,物の性質をとらえることができるようにする。 生活との関連において,身の回りの道具などには,磁石の性質を利用した物が多数 あることを取り上げることが考えられる。 (5) 電気の通り道 乾電池に豆電球などをつなぎ,電気を通すつなぎ方や電気を通す物を調べ,電 気の回路についての考えをもつことができるようにする。 ア 電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があること。 --33/90-- -31- イ 電気を通す物と通さない物があること。 本内容は,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの 「エネルギーの変換と保存」にかかわるものであり,第4学年「A(3)電気の働き」の 学習につながるものである。 ここでは,電気の通り道について興味・関心をもって追究する活動を通して,電気 を通すつなぎ方と通さないつなぎ方,電気を通す物と通さない物を比較する能力を育 てるとともに,それらについての理解を図り,電気の回路についての見方や考え方を もつことができるようにすることがねらいである。 ア 乾電池1個と豆電球1個を導線でつなぎ,回路ができると電気が通り,豆電球 が点灯することをとらえるようにする。また,乾電池と豆電球と導線を使い,豆 電球が点灯するつなぎ方と点灯しないつなぎ方を比較し,回路ができると電気が 通り,豆電球が点灯することをとらえるようにする。さらに,導線を乾電池の二 つの極以外につないだり,導線と乾電池がつながっていなかったり,回路の一部 が切れていたりすると豆電球は点灯しないこともとらえるようにする。 イ 回路の一部に,身の回りにあるいろいろな物を入れ,豆電球が点灯するかどう かを調べ,豆電球が点灯するときはその物は電気を通す物であり,点灯しないと きは電気を通さない物であることをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,児童の身の回りにある物で,鉄やアルミニウム,ガラス や木などが考えられる。 ここでの指導に当たっては,電気を通す物と通さない物を調べる際に,実験の結果 を表などに整理することで,物の性質をとらえることができるようにする。また,実 験の結果を考察する場面では,豆電球などが点灯したり,点灯しなかったりする現象 を「回路」という言葉を使用して考察し,適切に説明できるようにすることが考えら れる。 なお,豆電球を使わないで,乾電池の二つの極を直接導線でつなぐことのないよう に安全に配慮するように指導する。 (内容の取扱い) --34/90-- -32- (1) 内容の「A物質・エネルギー」の指導に当たっては,3種類以上のものづく りを行うものとする。 物と重さの関係を活用したものづくりとしては,物の重さを測定するという観点か ら,例えば,てんびんばかりなどが考えられる。 風やゴムの働きを活用したものづくりとしては,風やゴムの力を動力に変換すると いう観点から,例えば,風やゴムの力で動く自動車や風車などが考えられる。 光の性質を活用したものづくりとしては,日光により物の明るさや暖かさが変わる という観点から,例えば,平面鏡を使って物を明るくしたり暖かくしたりする装置な どが考えられる。 磁石の性質を活用したものづくりとしては,磁石の異極は引き合い,同極は退け合 うという観点から,例えば,極の働きや性質を使って動く自動車や船などが考えられ る。 乾電池や豆電球を使った,電気の性質を活用したものづくりとしては,回路ができ ると電気が通るという観点から,例えば,回路を切ったりつないだりできるスイッチ, 電気を通す物であるかどうかを調べるテスターなどが考えられる。 B 生命・地球 (1) 昆虫と植物 身近な昆虫や植物を探したり育てたりして,成長の過程や体のつくりを調べ, それらの成長のきまりや体のつくりについての考えをもつことができるようにす る。 ア 昆虫の育ち方には一定の順序があり,成虫の体は頭,胸及び腹からできてい ること。 イ 植物の育ち方には一定の順序があり,その体は根,茎及び葉からできている --35/90-- -33- こと。 (内容の取扱い) (2) 内容の「B生命・地球」の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア ア及びイについては,飼育,栽培を通して行うこと。 イ イの「植物の育ち方」については,夏生一年生の双子葉植物を扱うこと。 本内容は,「生命」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生物 の構造と機能」,「生物の多様性と共通性」にかかわるものであり,第4学年「B (1)人の体のつくりと運動」,第4学年「B(2)季節と生物」の学習につながるもので ある。 ここでは,身近な昆虫や植物について興味・関心をもって追究する活動を通して, 昆虫や植物の成長過程と体のつくりを比較する能力を育てるとともに,それらについ ての理解を図り,生物を愛護する態度を育て,昆虫や植物の成長のきまりや体のつく りについての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 昆虫の育ち方には,「卵→幼虫→蛹→成虫」というような一定の順序があるこ とや,幼虫の時期には食べ物を食べ,脱皮をして成長し,蛹の時期には食べ物を 食べないで成虫への準備をし,成虫になることをとらえるようにする。また, 「卵→幼虫→蛹→成虫」や「卵→幼虫→成虫」などの変態の仕方の違う昆虫を用 意し,育ち方の過程が異なるものがあることにも触れるようにする。さらに,昆 虫の成虫の体は頭,胸,腹の三つの部分からできていて,頭には目や触覚,口が あること,胸には3対6本のあしがあり,はねのついているものがあること,腹 はいくつかの節からできていることなどの体のつくりの特徴をとらえるようにす る。 なお,昆虫の体のつくりについては,複数の種類の昆虫の体のつくりを比較し て観察し,共通性があることをとらえるようにする。 イ 植物の育ち方には,種子から発芽し子葉が出て,葉がしげり,花が咲き,花が --36/90-- -34- 果実になった後に個体は枯死するという,一定の順序があるということをとらえ るようにする。また,植物の体は根,茎及び葉からできていて,根は地中にある こと,茎は葉や花をつけることなどの体のつくりの特徴をとらえるようにする。 なお,植物の体のつくりについては,複数の種類の植物の体のつくりを比較し て観察し,共通性があることをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,植物については,栽培が簡単で,身近に見られるもので, 夏生一年生の双子葉植物を扱うようにする。昆虫については,飼育が簡単で,身近に 見られるものを扱うようにする。 ここでの指導に当たっては,昆虫の卵や幼虫を探し,それらを飼育し観察したり, 植物を栽培し観察したりする活動を通して,昆虫や植物の育ち方や体のつくりについ ての理解の充実を図る。また,生物の観察においては,継続的に観察を行うとともに, 虫眼鏡などを必要に応じて使用し,細かい部分を拡大したりして,生物の特徴を図や 絵で記録できるようにする。さらに,昆虫の体のつくりを調べる際には,頭,胸,腹 の三つの部分から体ができていて,胸には3対6本のあしがあるものを「昆虫」とい う名称を使用して考察し,適切に説明できるようにすることが考えられる。 なお,野外での学習に際しては,毒をもつ生物に注意するとともに事故に遭わない ように安全に配慮するように指導する。 (2) 身近な自然の観察 身の回りの生物の様子を調べ,生物とその周辺の環境との関係についての考え をもつことができるようにする。 ア 生物は,色,形,大きさなどの姿が違うこと。 イ 生物は,その周辺の環境とかかわって生きていること。 本内容は,「生命」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生物 と環境のかかわり」にかかわるものであり,第6学年「B(3)生物と環境」の学習につ ながるものである。 ここでは,身の回りの生物の様子やその周辺の環境について興味・関心をもって追 --37/90-- -35- 究する活動を通して,身の回りの生物の様子やその周辺の環境とのかかわりを比較す る能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,生物を愛護する態度を育て, 身の回りの生物の様子やその周辺の環境との関係についての見方や考え方をもつこと ができるようにすることがねらいである。 ア 児童の身の回りには,植物と動物が存在する。植物については,例えば,タン ポポやチューリップなどの様々な種類の植物を観察し,それぞれに固有の形態が あることをとらえるようにする。また,動物についてもアリやカエルなどの様々 な種類の動物を観察し,それぞれに固有の形態があることをとらえるようにする。 このように,様々な種類の植物や動物を見たり触れたりするなど直接観察する ことを通して,生物の色,形,大きさ,手触りなど諸感覚で確認できる特徴をと らえるようにする。 イ 例えば、植物に集まる昆虫や植物に生息する昆虫の様子を観察し,昆虫には植 物の花の蜜を吸ったり,植物の葉などを食べたりして生活しているものがいるこ とや,植物やその生育する場所をすみかにしているものがいることに気付くよう にすることが考えられる。このような活動から,生物は,その周辺の環境とかか わって生きていることをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,アについては,学校で栽培している植物に加え,校庭な どの身近な場所に生育する野草,例えば,キク科の植物などが考えられる。イについ ては,昆虫とのかかわりがよく分かるような植物としては,例えば,アブラナ科,ミ カン科の植物などが考えられる。環境とのかかわりがよく分かるような動物としては, 例えば,身近な昆虫やダンゴムシなどの節足動物が考えられる。 ここでの指導に当たっては,生活科の学習との関連を考慮しながら,理科の学習の 基盤となる自然体験活動を充実するために,児童の野外での発見や気付きを学習に生 かすような自然の観察を取り入れるようにする。また,直接観察することに加え,細 かい部分を拡大する,例えば,虫眼鏡や携帯型の顕微鏡などの使用が考えられる。野 外での学習に際しては,毒をもつ生物に注意するとともに事故に遭わないように安全 に配慮するように指導する。 なお,自然環境の中で,生物の採取は必要最小限にとどめるなど,生態系の維持に --38/90-- -36- 配慮するようにし,環境保全の態度を育てるようにする。 (3) 太陽と地面の様子 日陰の位置の変化や,日なたと日陰の地面の様子を調べ,太陽と地面の様子と の関係についての考えをもつことができるようにする。 ア 日陰は太陽の光を遮るとでき,日陰の位置は太陽の動きによって変わるこ と。 イ 地面は太陽によって暖められ,日なたと日陰では地面の暖かさや湿り気に違 いがあること。 (内容の取扱い) (3) 内容の「B生命・地球」の(3)のアの「太陽の動き」については,太陽が東か ら南を通って西に動くことを取り扱うものとする。また,太陽の動きを調べる ときの方位は東,西,南,北を扱うものとする。 本内容は,「地球」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「地球 の表面」,「地球の周辺」にかかわるものであり,第4学年「B(3)天気の様子」,第 4学年「B(4)月と星」の学習につながるものである。 ここでは,太陽と地面の様子について興味・関心をもって追究する活動を通して, 日陰の位置の変化と太陽の動きとを関係付けたり,日なたと日陰の地面の様子の違い を比較したりする能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,太陽と地面 の様子との関係についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらい である。 ア 建物によってできる日陰や,物によってできる影を継続的に観察して,太陽が 影の反対側にあることをとらえるようにする。また,太陽の位置については影を つくっている物を目印にして継続的に調べ,地面にできる影の位置の変化と太陽 の位置の変化との関係をとらえるようにする。このとき,太陽の位置を午前から --39/90-- -37- 午後にわたって数回調べ,太陽が東の方から南の空を通って西の方に動くことを とらえるようにする。 イ 太陽の光が当たっている地面と当たっていない地面の暖かさや湿り気を体感や 温度計などで調べ,それらに違いがあることをとらえるようにする。また,太陽 の光がよく当たる場所で,朝と昼頃の地面の温度を測って比較し,太陽の光が地 面を暖めていることをとらえるようにする。日なたと日陰の地面の暖かさを調べ る活動については,手や足で地面に触れるなど体感を通して感じとるようにする とともに,温度計を用いて地面の温度を測定し,比較できるようにする。 ここで扱う温度計については,地面の温度を測定する際に地中温度計や放射温度計 などの使用が考えられる。 ここでの指導に当たっては,日陰の位置の変化や日なたと日陰の地面の様子を資料 や映像で調べるだけでなく,太陽の位置を方位で記録したり,固定した物の影の位置 を時間をおいて地面に描いたりする活動を通して,日陰の位置の変化と太陽の位置の 変化との関係をとらえるようにする。また,太陽や影の位置の変化を調べる活動にお いては,方位磁針を用いて方位を調べ,東,西,南,北で空間をとらえるようにする。 さらに,方位については,生活との関連を図り,日常において意識できるようにする。 なお,太陽の観察においては,JIS規格の遮光板を用いるようにし,安全に配慮する ように指導する。 --40/90-- --40/90-- --40/90-- -38- 第2節 第4学年 1目標 (1) 空気や水,物の状態の変化,電気による現象を力,熱,電気の働きと関係付 けながら調べ,見いだした問題を興味・関心をもって追究したりものづくりを したりする活動を通して,それらの性質や働きについての見方や考え方を養 う。 (2) 人の体のつくり,動物の活動や植物の成長,天気の様子,月や星の位置の変 化を運動,季節,気温,時間などと関係付けながら調べ,見いだした問題を興 味・関心をもって追究する活動を通して,生物を愛護する態度を育てるととも に,人の体のつくりと運動,動物の活動や植物の成長と環境とのかかわり,気 象現象,月や星の動きについての見方や考え方を養う。 第4学年の目標は,自然の事物・現象の変化に着目し,変化とそれにかかわる要因 とを関係付けながら調べ,問題を見いだし,見いだした問題を興味・関心をもって追 究する活動を通して,物の性質やその働きについての見方や考え方,自然の事物・現 象に見られる規則性や関係についての見方や考え方を養うことである。 特に,本学年では,学習の過程において,前学年で培った,自然の事物・現象の差 異点や共通点に気付いたり,比較したりする能力に加えて,自然の事物・現象の変化 とその要因とを関係付ける能力を育成することに重点が置かれている。 (1) 「A物質・エネルギー」にかかわる目標 本区分では,空気や水,物の状態の変化,電気による現象を力,熱,電気の働きと 関係付けながら調べ,見いだした問題を興味・関心をもって追究したりものづくりを したりする活動を通して,それらの性質や働きについての見方や考え方を養うことが 目標である。 ここでは,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A --41/90-- -39- (1)空気と水の性質」及び「A(2)金属,水,空気と温度」を設定する。「A(1)空気と 水の性質」については,閉じ込めた空気や水に力を加え,空気や水の体積変化と圧し 返す力の違いとを関係付けながら調べ,空気と水の性質の違いをとらえるようにする。 「A(2)金属,水,空気と温度」については,金属,水,空気を温めたり,冷やしたり して,その時の物の状態と温度変化とを関係付けながら調べ,熱によって物の体積が 変わることや,物によって体積変化の程度に違いがあることなど,物の状態変化や熱 の働きをとらえるようにする。 また,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (3)電気の働き」を設定する。「A(3)電気の働き」は,乾電池や光電池に豆電球やモ ーターなどをつなぎ,乾電池や光電池の働きと乾電池の数や光の強さとを関係付けな がら調べ,電気の働きをとらえるようにする。 (2) 「B生命・地球」にかかわる目標 本区分では,人の体のつくり,動物の活動や植物の成長,天気の様子,月や星の位 置の変化を運動,季節,気温,時間などと関係付けながら調べ,見いだした問題を興 味・関心をもって追究する活動を通して,生物を愛護する態度を育てるとともに,人 の体のつくりと運動,動物の活動や植物の成長と環境とのかかわり,気象現象,月や 星の動きについての見方や考え方を養うことが目標である。 ここでは,「生命」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「B (1)人の体のつくりと運動」及び「B(2)季節と生物」を設定する。「B(1)人の体のつ くりと運動」については,人や他の動物の体の動きを観察したり資料を活用したりし て,骨や筋肉のつくりや働きとそれらの動きとを関係付けながら調べ,人の体のつく りと運動とのかかわりをとらえるようにする。「B(2)季節と生物」については,季節 の変化と動物の活動や植物の成長の様子とを関係付けながら調べ,それらの活動や成 長と季節とのかかわりをとらえるようにする。これらの活動を通して,生物を愛護す る態度を育てるようにする。 また,「地球」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「B(3)天 気の様子」及び「B(4)月と星」を設定する。「B(3)天気の様子」については,1日 の気温の変化,水が水蒸気や氷になる様子を観察し,天気や水の変化と温度とを関係 --42/90-- -40- 付けながら調べ,天気の変化と自然蒸発などの水の状態変化についてとらえるように する。「B(4)月と星」については,月や星を観察し,月の位置や星の明るさ,色及び 位置を時間と関係付けながら調べ,月の動きや星の特徴と動きをとらえるようにする。 2内容 A 物質・エネルギー (1) 空気と水の性質 閉じ込めた空気及び水に力を加え,その体積や圧し返す力の変化を調べ,空気 お 及び水の性質についての考えをもつことができるようにする。 ア 閉じ込めた空気を圧すと,体積は小さくなるが,圧し返す力は大きくなるこ おお と。 イ 閉じ込めた空気は圧し縮められるが,水は圧し縮められないこと。 おお 本内容は,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子 の存在」にかかわるものである。 ここでは,空気及び水の性質について興味・関心をもって追究する活動を通して, 空気及び水の体積の変化や圧し返す力とそれらの性質とを関係付ける能力を育てると ともに,それらについての理解を図り,空気及び水の性質についての見方や考え方を もつことができるようにすることがねらいである。 ア 容器に閉じ込めた空気を圧し縮めたときの手ごたえや体積の変化を調べ,空気 は圧されると体積が小さくなるが,元に戻ろうして手ごたえが大きくなる性質が あることから,空気の体積変化と圧し返す力とを関係付けてとらえるようにする。 イ 容器に閉じ込めた空気に力を加えたときの体積や圧し返す力の変化と容器に閉 --43/90-- -41- じ込めた水に力を加えたときの体積や圧し返す力の変化を比較し,閉じ込めた空 気は圧し縮められるが,水は圧しても体積は変わらないことをとらえるようにす る。 ここで扱う容器は,空気を閉じ込めても圧し縮めることが容易にできる物や,体積 の変化が容易にとらえられる物が考えられる。 ここでの指導に当たっては,空気と水の性質の違いを力を加えたときに手ごたえな どの体感を基にしながら比較できるようにする。また,力を加える前後の空気の体積 変化について説明するために,図や絵を用いて表現することができるようにする。 なお,容器に閉じ込めた空気を圧し縮める際には,容器が破損したり,飛び出した 容器などの一部が顔や体などに当たらないようにするなど、安全に配慮するように指 導する。 (2) 金属,水,空気と温度 金属,水及び空気を温めたり冷やしたりして,それらの変化の様子を調べ,金 属,水及び空気の性質についての考えをもつことができるようにする。 ア 金属,水及び空気は,温めたり冷やしたりすると,その体積が変わること。 イ 金属は熱せられた部分から順に温まるが,水や空気は熱せられた部分が移動 して全体が温まること。 ウ 水は,温度によって水蒸気や氷に変わること。また,水が氷になると体積が 増えること。 本内容は,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子 のもつエネルギー」にかかわるものであり,中学校第1分野「(2)ウ 状態変化」の 学習につながるものである。 ここでは,金属,水及び空気の性質について興味・関心をもって追究する活動を通 して,温度の変化と金属,水及び空気の温まり方や体積の変化とを関係付ける能力を 育てるとともに,それらについての理解を図り,金属,水及び空気の性質についての 見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 --44/90-- -42- ア 金属,水及び空気を温めると,それらの体積は膨張し,冷やすと収縮する。そ の体積の変化の様子は,金属,水及び空気によって違いがあり,これらの中では, 空気の温度による体積の変化が最も大きいことを実験結果に基づいてとらえ,温 度変化と物の体積の変化との関係をとらえるようにする。 イ 金属はその一端を熱しても,中央を熱しても,熱した部分から順に温まってい くことや,水や空気は熱した部分が上方に移動して全体が温まっていくことを調 べ,物によってその温まり方には違いがあることをとらえるようにする。 ウ 水を熱していき,100℃近くになると沸騰した水の中から盛んに泡が出てくる。 児童の中には,この泡を水の中から出てきた空気であるという見方や考え方をし ているものがいる。この泡を集めて冷やすと水になることから,この泡は空気で はなく水が変化したものであることに気付くようにする。このことから,見えな い水蒸気の存在を温度の変化と関係付けてとらえるようにする。また,寒剤を使 って水の温度を0℃まで下げると,水が凍って氷に変わることもとらえるように する。さらに,水が氷になると体積が増えることもとらえるようにする。 これらのことから,水は温度によって液体,気体,または固体に状態が変化す るということをとらえるようにする。 ここでの指導に当たっては,水の温度の変化をとらえる際に,実験の結果をグラフ で表現することなどが考えられる。 生活との関連として,鉄道のレールの膨張などを取り上げることが考えられる。 なお,火を使用して実験したり,熱した湯の様子を観察したりする際に火傷などの 危険を伴うので,器具の点検や取扱い上の注意など安全に配慮するように指導する。 (3) 電気の働き 乾電池や光電池に豆電球やモーターなどをつなぎ,乾電池や光電池の働きを調 べ,電気の働きについての考えをもつことができるようにする。 ア 乾電池の数やつなぎ方を変えると,豆電球の明るさやモーターの回り方が変 わること。 イ 光電池を使ってモーターを回すことなどができること。 --45/90-- -43- (内容の取扱い) (1) 内容の「A物質・エネルギー」の(3)のアについては,直列つなぎと並列つな ぎを扱うものとする。 本内容は,第3学年「A(5)電気の通り道」の学習を踏まえて,「エネルギー」につ いての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「エネルギーの変換と保存」にか かわるものであり,第5学年「A(3)電流の働き」の学習につながるものである。 ここでは,電気の働きについて興味・関心をもって追究する活動を通して,乾電池 のつなぎ方や光電池に当てる光の強さと回路を流れる電流の強さとを関係付ける能力 を育てるとともに,それらについての理解を図り,電気の働きについての見方や考え 方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 乾電池の数を1個から2個に増やして豆電球を点灯させたり,モーターを回し たりすると,その明るさや回転数が増す場合と,乾電池1個につないだときと変 わらない場合があることなどから,電球の明るさやモーターの回り方の変化を電 流の強さと関係付けながらとらえるようにする。また,乾電池の向きを変えると モーターが逆に回ることから,電流の向きについてもとらえるようにする。その 際,例えば,簡易検流計などを用いて,これらの現象と電流の強さや向きとを関 係付けながら調べるようにする。 イ 光電池にモーターなどをつないで,光電池は電気を起こす働きがあることをと らえるようにする。また,光電池に当てる光の強さを変えるとモーターの回り方 が変わることなどから,光電池に当てる光の強さと回路を流れる電流の強さとを 関係付けてとらえるようにする。さらに,これらのことをブザーを鳴らしたり, 発光ダイオードを点灯させたりすることによって確認することが考えられる。 ここでの指導に当たっては,「直列つなぎ」と「並列つなぎ」という言葉を使用し て考察し,適切に説明できるようにする。また,実験の結果を整理する際に,乾電池, 豆電球,スイッチについて,電気用図記号(回路図記号)を扱うことが考えられる。 --46/90-- -44- さらに,電流の向きを確認する際には,発光ダイオードが電流の向きによって点灯し たり,点灯しなかったりすることを用いることが考えられる。 なお,乾電池をつなぐ際には,単一の回路で違う種類の電池が混在しないように注 意するように指導する。 (内容の取扱い) (2) 内容の「A物質・エネルギー」の指導に当たっては,2種類以上のものづく りを行うものとする。 空気や水の性質を活用したものづくりとしては,空気は圧し縮められるが,水は圧 し縮められないという観点から,例えば,空気でっぽうや水でっぽうなどが考えられ る。 また,物の温まり方を活用したものづくりとしては,物には熱に対する性質の違い があるという観点から,例えば,ソーラーバルーンや体積変化を利用した温度計が考 えられる。 さらに,電気の働きを活用したものづくりとしては,例えば,乾電池や光電池など を用いた自動車やメリーゴーラウンドなどが考えられる。 B 生命・地球 (1) 人の体のつくりと運動 人や他の動物の体の動きを観察したり資料を活用したりして,骨や筋肉の動き を調べ,人の体のつくりと運動とのかかわりについての考えをもつことができる ようにする。 ア 人の体には骨と筋肉があること。 イ 人が体を動かすことができるのは,骨,筋肉の働きによること。 --47/90-- -45- (内容の取扱い) (3) 内容の「B生命・地球」の(1)のイについては,関節の働きを扱うものとす る。 本内容は,第3学年「B(1)昆虫と植物」の学習を踏まえて,「生命」についての基 本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生物の構造と機能」にかかわるものであ り,第6学年「B(1)人の体のつくりと働き」の学習につながるものである。 ここでは,人や他の動物の骨や筋肉の動きについて興味・関心をもって追究する活 動を通して,人や他の動物の体のつくりと運動とを関係付ける能力を育てるとともに, それらについての理解を図り,生命を尊重する態度を育て,人の体のつくりと運動と のかかわりについての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいであ る。 ア 人や他の動物が活動するための運動器官として,骨や筋肉がある。ここでは, 児童が自分の体に直接触れることを手掛かりとして,骨の位置や筋肉の存在を調 べるようにする。体の各部分を触ってみると,硬い部分としての骨と柔らかい部 分としての筋肉があることに気付く。このように,人や他の動物の体には,体を 支えたり体を動かしたりするときに使われる骨と筋肉があることをとらえるよう にする。 イ 人や他の動物が体を動かすことができるのは,骨と筋肉が関係していることを 自分の体を動かしたり,他の動物が運動しているところを観察したりしてとらえ るようにする。例えば,実際に腕で物を持ち上げてみると,筋肉の硬さが増して いることが分かる。また,体の各部には,手や足のように曲がるところと曲がら ないところがあり,曲がるところを関節ということをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,骨や筋肉の存在を調べる際には,自分の体を中心に扱う ようにし,他の動物としては,骨や筋肉の動きが調べられる身近で安全な哺乳類,例 えば,学校飼育動物の観察などが考えられる。また,体の各部にある曲がるところを 「関節」という名称を使用して考察し,適切に説明できるようにすることが考えられ --48/90-- -46- る。 ここでの指導に当たっては,人の体の骨や筋肉の動きを資料を使って調べるだけで はなく,他の動物の体のつくりや体の動き,運動を観察したり,実際に触れながら比 較したり,映像や模型などを活用したりしながら,人の体のつくりと運動とのかかわ りについてとらえることができるようにする。 なお,他の動物の骨と筋肉の存在や運動について調べる際に,動物園などの施設の 活用が考えられる。 (2) 季節と生物 身近な動物や植物を探したり育てたりして,季節ごとの動物の活動や植物の成 長を調べ,それらの活動や成長と環境とのかかわりについての考えをもつことが できるようにする。 ア 動物の活動は,暖かい季節,寒い季節などによって違いがあること。 イ 植物の成長は,暖かい季節,寒い季節などによって違いがあること。 [内容の取扱い] (4) 内容の「B生命・地球」の(2)については,1年を通して動物の活動や植物の 成長をそれぞれ2種類以上観察するものとする。 本内容は,第3学年「B(1)昆虫と植物」の学習を踏まえて,「生命」についての基 本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生物の多様性と共通性」,「生命の連続 性」にかかわるものである。 ここでは,季節ごとの動物の活動や植物の成長について興味・関心をもって追究す る活動を通して,動物の活動や植物の成長を季節と関係付ける能力を育てるとともに, それらについての理解を図り,生物を愛護する態度を育て,動物の活動や植物の成長 と環境とのかかわりについての見方や考え方をもつことができるようにすることがね らいである。 --49/90-- -47- ア 身近に見られる動物は,暖かい季節には出現する数も多く活発に活動するが, 寒い季節には活動が鈍くなったり,卵で越冬したりするなど,それぞれに適した 姿で越冬状態となるものが多い。また,魚類や両生類は季節による水温の変化に よって活動の様子などに違いがある。さらに,鳥類は季節によって見られる種類 や産卵,巣立ちなどに違いがある。 このようなの活動の様子を観察することを通して,動物にはそれぞれ活動に適 した季節があり,それによって活動の様子に違いがあることをとらえるようにす る。 イ 植物を育てたり,身近な植物を一年を通して定期的に観察したりして,その成 長と季節とのかかわりをとらえられるようにする。暖かくなる夏までは体全体の 成長が顕著に見られ,寒くなり始めると体全体の成長はほとんど見られないが結 実するなど季節によって植物の成長の仕方に違いがあることや,冬になると種子 をつくって枯れたり形態を変えて越冬したりすることなど,観察を通して季節に よる植物の成長の様子をとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,アについては身近で危険のない動物,イについては身近 で季節によって成長に伴う変化が明確な植物について,動植物それぞれ2種類以上観 察するようにする。また,地域性を生かし,地域の特徴的な動植物を取り上げること を通して,身近な自然に愛着をもつようにすることが考えられる。 ここでの指導に当たっては,植物の成長について,同地点で同一の対象を定期的に 観察するようにする。また,動物の活動や植物の成長については,観察したことを図 や表などに整理することが考えられる。さらに,観察の時期については,「暖かい季 節」,「寒い季節」として,それぞれ夏,冬を想定しているが,春や秋を含めること が考えられる。 なお,野外での学習に際しては,毒をもつ生物に注意するとともに事故に遭わない ように安全に配慮するように指導する。 (3) 天気の様子 1日の気温の変化や水が蒸発する様子などを観察し,天気や気温の変化,水と --50/90-- --50/90-- -48- 水蒸気との関係を調べ,天気の様子や自然界の水の変化についての考えをもつこ とができるようにする。 ア 天気によって1日の気温の変化の仕方に違いがあること。 イ 水は,水面や地面などから蒸発し,水蒸気になって空気中に含まれていくこ と。また,空気中の水蒸気は,結露して再び水になって現れることがあるこ と。 本内容は,第3学年「B(3)太陽と地面の様子」の学習を踏まえて,「地球」につい ての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「地球の表面」にかかわるものであ り,第5学年「B(4)天気の変化」につながるものである。 ここでは,身近な天気の様子や自然界の水の変化が起こる様子について興味・関心 をもって追究する活動を通して,天気と気温の変化や,水と水蒸気とを関係付ける能 力を育てるとともに,それらについての理解を図り,天気の様子や自然界の水の変化 についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 1日の気温の変化の様子を調べてグラフに表すと,太陽が出ている晴れた穏や かな日には日中に気温が上がる山型のグラフになり,太陽が雲などでさえぎられ ている曇りや雨の日には高低差の小さい型のグラフになることがある。これらの ことから,1日の気温の変化の仕方は天気によって違いがあることをとらえるよ うにする。 イ 身の回りでは,溜まった水の水位が低下したり,ぬれた地面や洗濯物が乾いた りして水の自然蒸発が起こっている。例えば,水を入れた容器に覆いをしておく と,やがて内側に水滴が付いて曇ってくることがある。このような現象を観察す ることから,自然界では水面や地面などから水が蒸発していることをとらえるよ うにする。また,冷えた物を常温の空気中に置くとその表面に水滴が付く現象な どから,空気中には蒸発した水が水蒸気として存在していることや,冷やすと結 露して再び水になって現れることがあることをとらえるようにする。 ここでの指導に当たっては,気温の適切な測り方について,例えば,百葉箱の中に 設置した温度計などを利用して定点での観測の方法が身に付くようにする。また,天 --51/90-- -49- 気や気温を定点で観測したり,空気の湿り気について体感を基にして感じとったりす ることで身近な天気の様子をとらえることが考えられる。さらに,1日の気温の変化 の様子を調べる際には,グラフを用いて表したり,変化の特徴を読み取ったりするこ とについて,算数科の学習との関連を図るようにする。 生活との関連として,窓ガラスの内側の曇りなど,身の回りで見られる結露の現象 を取り上げることが考えられる。 (4) 月と星 月や星を観察し,月の位置と星の明るさや色及び位置を調べ,月や星の特徴や 動きについての考えをもつことができるようにする。 ア 月は日によって形が変わって見え,1日のうちでも時刻によって位置が変わ ること。 イ 空には,明るさや色の違う星があること。 ウ 星の集まりは,1日のうちでも時刻によって,並び方は変わらないが,位置 が変わること。 本内容は,第3学年「B(3)太陽と地面の様子」の学習を踏まえて,「地球」につい ての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「地球の周辺」にかかわるものであ り,第6学年「B(5)月と太陽」の学習につながるものである。 ここでは,天体について興味・関心をもって追究する活動を通して,月や星の動き と時間の経過とを関係付ける能力を育てるとともに,それらについての理解を図り, 月や星に対する豊かな心情を育て,月や星の特徴や動きについての見方や考え方をも つことができるようにすることがねらいである。 ア 地球から見た月は,東の方から昇り,南の空を通って西の方に沈むように見え る。また,月は三日月や満月など日によって形が変わって見える。 ここでは,任意の時刻における月の位置を,木や建物など地上の物を目印にし て調べたり,方位で表したりする活動を行い,月の位置が時間の経過に伴って変 わることをとらえるようにする。 --52/90-- -50- なお,太陽と月の位置や月の形の見え方との関係については,第6学年「B (5) 月と太陽」で扱う。 イ 夜空の星を観察することによって,いくつかの明るく輝く星や明るさの違う星 が散らばっていること,星には青白い色や赤い色など色の違いがあることをとら えるようにする。また,このような星の特徴について児童が直接観察する機会を 多くもつようにして,夜空に輝く無数の星に対する豊かな心情と天体に対する興 味・関心をもつようにする。 ウ 夜空の星を観察して,明るく輝く星をいくつか結んで何かの形に表すと星の集 まりをつくることができ,それらの星の集まりを数時間後に観察すると位置を変 えていることをとらえるようにする。ここでは,月の観察と同様に,星の集まり を観察し,木や建物など地上の物を目印にして調べたり,方位で表したりする活 動を行い,時間の経過に伴って並び方は変わらないが位置が変化していることを とらえるようにする。 ここでの指導に当たっては,実際に月や星を観察する機会を多くもつようにし,天 体の美しさを感じとる体験の充実を図る。また,方位磁針による方位の確認や観察の 時間の間隔など,定点観察の方法が身に付くようにする。月や星の動きについて,映 像や模型などを活用することが考えられる。さらに,移動教室など宿泊を伴う学習の 機会を生かすとともに,プラネタリウムなどを積極的に活用することが考えられる なお,夜間の観察の際には,安全を第一に考え,事故防止に配慮するように指導す る。 --53/90-- -51- 第3節 第5学年 1目標 (1) 物の溶け方,振り子の運動,電磁石の変化や働きをそれらにかかわる条件に 目を向けながら調べ,見いだした問題を計画的に追究したりものづくりをした りする活動を通して,物の変化の規則性についての見方や考え方を養う。 (2) 植物の発芽から結実までの過程,動物の発生や成長,流水の様子,天気の変 化を条件,時間,水量,自然災害などに目を向けながら調べ,見いだした問題 を計画的に追究する活動を通して,生命を尊重する態度を育てるとともに,生 命の連続性,流水の働き,気象現象の規則性についての見方や考え方を養う。 第5学年の目標は,自然の事物・現象をそれらにかかわる条件に目を向けたり,量 的変化や時間的変化に着目したりして調べ,問題を見いだし,見いだした問題を計画 的に追究する活動を通して,自然の事物・現象の規則性についての見方や考え方,生 命の連続性についての見方や考え方を養うことである。 特に,本学年では,学習の過程において,前学年で培った,自然の事物・現象の変 化とその要因とを関係付ける能力に加えて,変化させる要因と変化させない要因を区 別しながら,観察,実験などを計画的に行っていく条件制御の能力を育成することに 重点が置かれている。 (1) 「A物質・エネルギー」にかかわる目標 本区分では,物の溶け方,振り子の運動,電磁石の変化や働きをそれらにかかわる 条件に目を向けながら調べ,見いだした問題を計画的に追究したりものづくりをした りする活動を通して,物の変化の規則性についての見方や考え方を養うことが目標で ある。 ここでは,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (1)物の溶け方」を設定する。「A(1)物の溶け方」については,物の溶け方にかかわ --54/90-- -52- る条件を制御しながら調べ,水の温度や水の量と物の溶ける量との関係や,全体の重 さが変わらないことをとらえるようにする。 また,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (2)振り子の運動」及び「A(3)電流の働き」を設定する。「A(2)振り子の運動」につ いては,おもりを使い,おもりの重さや糸の長さなどを変えるなど振り子の運動にか かわる条件を制御しながら調べ,振り子の運動の変化とその要因の関係をとらえるよ うにする。「A(3)電流の働き」については,電磁石の導線に電流を流し,電磁石の強 さの変化にかかわる条件を制御しながら,電流の働きをとらえるようにする。 (2) 「B生命・地球」にかかわる目標 本区分では,植物の発芽から結実までの過程,動物の発生や成長,流水の様子,天 気の変化を条件,時間,水量,自然災害などに目を向けながら調べ,見いだした問題 を計画的に追究する活動を通して,生命を尊重する態度を育てるとともに,生命の連 続性,流水の働き,気象現象の規則性についての見方や考え方を養うことが目標であ る。 ここでは,「生命」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「B (1)植物の発芽,成長,結実」及び「B(2)動物の誕生」を設定する。「B(1)植物の発 芽,成長,結実」については,植物にかかわる観察,実験を通して,種子の中の養分 と発芽の関係,発芽と水,空気及び温度の条件の関係,植物の成長に関する条件,受 粉と結実の関係などをとらえるようにする。「B(2)動物の誕生」については,魚を育 てたり,人の発生についての資料を調べたりして魚の雌雄や受精卵の発生の過程,人 の母体内での成長や誕生についてとらえるようにする。これらの活動を通して,生命 の神秘に気付き,生命を尊重する態度を育てるようにする。 また,「地球」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「B(3)流水 の働き」及び「B(4)天気の変化」を設定する。「B(3)流水の働き」については,流 れる水の様子を観察し,侵食,運搬,堆積などの水の働きや,雨の降り方と流水の速 さや水の量の関係,増水と土地の様子の変化などとのかかわりをとらえるようにする。 「B(4)天気の変化」については,雲の動きや向きを観測したり,映像情報などを活用 したり,雲の動きや天気の変化を予想したりするなどして,気象現象の規則性をとら --55/90-- -53- えるようにする。 2内容 A 物質・エネルギー (1) 物の溶け方 物を水に溶かし,水の温度や量による溶け方の違いを調べ,物の溶け方の規則 性についての考えをもつことができるようにする。 ア 物が水に溶ける量には限度があること。 イ 物が水に溶ける量は水の温度や量,溶ける物によって違うこと。また,この 性質を利用して,溶けている物を取り出すことができること。 ウ 物が水に溶けても,水と物とを合わせた重さは変わらないこと。 本内容は,第3学年「A(1)物と重さ」の学習を踏まえて,「粒子」についての基本 的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子の保存性」にかかわるものであり,第 6学年「A(2)水溶液の性質」につながるものである。 ここでは,物の溶け方について興味・関心をもって追究する活動を通して,物が水 に溶ける規則性について条件を制御して調べる能力を育てるとともに,それらについ ての理解を図り,物の溶け方の規則性についての見方や考え方をもつことができるよ うにすることがねらいである。 ア 一定温度で,一定量の水に物を少しずつ溶かしていくと,次第に物が溶け残る ようになることや,さらにその水溶液に水を加えると溶け残った物が溶けること などを調べ,物が一定量の水に溶ける量には限度があることをとらえるようにす る。 --56/90-- -54- イ 水の温度を一定にして,水の量を増やして物の溶ける量の変化を調べ,水の量 が増えると溶ける量も増えることをとらえるようにする。また,水溶液の水を蒸 発させると,溶けていた物が出てくることなどをとらえるようにする。さらに, 一定量の水を加熱して物の溶ける量の変化を調べ,水の温度が上昇すると,溶け る量も増えることをとらえるようにする。その際,高い温度で物を溶かした水溶 液を冷やすと,溶けた物が出てくることもあわせてとらえるようにする。 ウ 溶かす前の物の重さに水の重さを加えた全体の重さと,溶かした後の水溶液の 重さを測定し,物を溶かす前と後でその重さは変わらないことをとらえるように する。 ここで扱う対象としては,水の温度や溶かす物の違いによって,溶ける量の違いが 顕著に観察できるように,水の温度によって溶ける量の変化が大きい物と変化の小さ い物を用いることが考えられる。また,加熱によって分解しにくく,安全性の高い物 を扱うようにする。 ここでの指導に当たっては,水の量を増やす際には,水の温度を一定にするなど変 える条件と変えない条件を制御して実験を行うようにする。物を溶かす前と後でその 重さは変わらないことについて,定量的な実験を通してとらえるようにすることが考 えられる。その際,図や絵などを用いて表現するなどして考察し,適切に説明できる ようにすることが考えられる。 なお,実験を行う際には,液量計やはかり,ろ過器具,加熱器具,温度計などの器 具の適切な操作について安全に配慮するように指導する。 (2) 振り子の運動 おもりを使い,おもりの重さや糸の長さなどを変えて振り子の動く様子を調 べ,振り子の運動の規則性についての考えをもつことができるようにする。 ア 糸につるしたおもりが1往復する時間は,おもりの重さなどによっては変わ らないが,糸の長さによって変わること。 本内容は,第3学年「A(2)風やゴムの働き」の学習を踏まえて,「エネルギー」 --57/90-- -55- についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「エネルギーの見方」にかか わるものである。 ここでは,振り子の運動の規則性について興味・関心をもって追究する活動を通し て,振り子の運動の規則性について条件を制御して調べる能力を育てるとともに,そ れらについての理解を図り,振り子の運動の規則性についての見方や考え方をもつこ とができるようにすることがねらいである。 ア 振り子の運動の変化に関係する条件として,児童が想定するものとしては,お もりの重さ,糸の長さ,振れ幅が考えられる。ここでは,糸におもりをつるし, おもりの重さ,または糸の長さを変えながら,おもりの1往復する時間を測定す る。おもりの重さを変えて調べるときには,糸の長さやおもりの振れ幅など他の 条件は一定にして調べる必要がある。それらの測定結果から,糸につるしたおも りの1往復する時間は,おもりの重さなどによっては変わらないが,糸の長さに よって変わることをとらえるようにする。 ここでの指導に当たっては,糸の長さや振れ幅を一定にしておもりの重さを変える など,変える条件と変えない条件を制御して実験を行うことによって,実験結果を適 切に処理し,考察することができるようにする。その際,適切な振れ幅で実験を行い, 振れ幅が極端に大きくならないようにする。また,伸びの少ない糸を用い,糸の長さ は糸をつるした位置からおもりの重心までであることに留意する。さらに,実験を複 数回行い,その結果を処理する際には,算数科の学習と関連付けて適切に処理するよ うにする。 (3) 電流の働き 電磁石の導線に電流を流し,電磁石の強さの変化を調べ,電流の働きについて の考えをもつことができるようにする。 ア 電流の流れているコイルは,鉄心を磁化する働きがあり,電流の向きが変わ ると,電磁石の極が変わること。 イ 電磁石の強さは,電流の強さや導線の巻数によって変わること。 --58/90-- -56- 本内容は,第4学年「A(3)電気の働き」の学習を踏まえて,「エネルギー」につい ての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「エネルギーの変換と保存」にかか わるものであり,第6学年「A(4)電気の利用」の学習につながるものである。 ここでは,電磁石の導線に電流を流し,電磁石の強さの変化について興味・関心を もって追究する活動を通して,電流の働きについて条件を制御して調べる能力を育て るとともに,それらについての理解を図り,電流の働きについての見方や考え方をも つことができるようにすることがねらいである。 ア コイルに鉄心を入れて電流を流すと,鉄心は磁石になる。また,コイルを乾電 池につないで,乾電池の極を変えると電磁石の極が変わる。これらのことから, 電流には磁力を発生させる働きがあるとともに,電流の向きを変えると電磁石の 極が変わることをとらえるようにする。 イ 電磁石をつくり,乾電池を直列につないで電流の強さを変えると電磁石の強さ が変わる。また,導線の長さを同じにして,巻数の異なる二つの電磁石をつくり, 一定の電流を流すと,電磁石の強さに違いがでる。これらのことから,電磁石の 強さは,電流の強さや導線の巻数によって変わることをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,乾電池のほかに充電式電池が考えられる。ただし,単一 の回路では,違う種類の電池が混在しないように十分注意する。 ここでの指導に当たっては,電磁石の強さについて,導線の巻数を一定にして電流 の強さを変えるなど,変える条件と変えない条件を制御して実験を行うことによって, 実験の結果を的確に処理し,考察することができるようにする。 なお,身の回りでは,様々な電磁石が利用されていることを生活と関連させて取り 上げたり,科学館を利用して調べたりすることが考えられる。 (内容の取扱い) (1) 内容の「A物質・エネルギー」の指導に当たっては,2種類以上のものづく りを行うものとする。 振り子の運動の規則性を活用したものづくりとしては,振り子の周期を変えるとい --59/90-- -57- う観点から,例えば,簡易メトロノームなどが考えられる。 また,電流の働きを利用したものづくりとしては,電磁石の強さを変えるという観 点から,例えば,モーター,クレーンなどが考えられる。 B 生命・地球 (1) 植物の発芽,成長,結実 植物を育て,植物の発芽,成長及び結実の様子を調べ,植物の発芽,成長及び 結実とその条件についての考えをもつことができるようにする。 ア 植物は,種子の中の養分を基にして発芽すること。 イ 植物の発芽には,水,空気及び温度が関係していること。 ウ 植物の成長には,日光や肥料などが関係していること。 エ 花にはおしべやめしべなどがあり,花粉がめしべの先に付くとめしべのもと が実になり,実の中に種子ができること。 (内容の取扱い) (2) 内容の「B生命・地球」の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア アの「種子の中の養分」については,でんぷんを扱うこと。 イ エについては,おしべ,めしべ,がく及び花びらを扱うこと。また,受粉 については,風や昆虫などが関係していることにも触れること。 本内容は,第4学年「B(2)季節と生物」の学習を踏まえて,「生命」についての基 本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生命の連続性」にかかわるものである。 ここでは,植物の発芽,成長及び結実の様子について興味・関心をもって追究する 活動を通して,植物の発芽や成長,受粉と結実が関係していることについて条件を制 御して調べる能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,生命を尊重する --60/90-- --60/90-- -58- 態度を育て,植物の発芽,成長及び結実とその条件についての見方や考え方をもつこ とができるようにすることがねらいである。 ア 適当な温度下で種子に水を与えると,種子は水を吸い,種子の中の養分を使っ て根や芽を外に出す発芽をし始めることから,発芽前後の種子の中の養分の存在 を調べ,発芽と種子の養分との関係をとらえるようにする。種子が発芽するため の養分についてはでんぷんを扱う。 なお,でんぷんの検出には希釈したヨウ素液などの使用が考えられる。 イ 身近な植物の種子を用いて,植物の種子が発芽するために必要な環境条件を調 べることについては,例えば,水や空気の条件を一定にして,温度の条件を変え るなど,条件を制御しながら発芽の様子を調べ,発芽には水,空気及び適当な温 度が必要なことをとらえるようにする。 ウ 植物が成長するのに必要な日光や肥料などの環境条件については,適した場合 とそうでない場合を設定するなど条件を制御しながら育て,両者の成長の様子を 比較しながら調べ,植物の成長は,日光や肥料などに関係することをとらえるよ うにする。 エ 身近な植物について,おしべやめしべなど花のつくりを調べたり花粉を観察し たりするとともに,花粉をめしべの先に付けた場合と付けない場合で実のでき方 を比較しながら調べ,結実するには受粉することが必要であることをとらえるよ うにする。また,ここで扱った植物が,自然の中では,風や昆虫などによって花 粉が運ばれて受粉し結実することにも触れるようにする。 ここで扱う対象としては,ア,イでは,種子が大きく,観察しやすいものを取り上 げる。また,ウでは,生命尊重の立場から,成長との関係が確認できたところで実験 を終了し,花壇などに植え替えるなどして,実験に利用した植物を枯らさないように 配慮することが望ましい。さらに,ア,イ,ウでは,養分などの要因によって発芽や 成長にかかわる環境条件の制御が困難になることがないようにするため,養分の含ま れていない保水性のある基質を使用することが考えられる。エについては,受粉と結 実の関係を調べる実験を中心に扱い,花のつくりについては,おしべ,めしべ,がく 及び花びらの存在を確かめるようにする。受粉と結実の関係を調べるためには,おば --61/90-- -59- な,めばなのある植物を扱うことが考えられる。 ここでの指導に当たっては,発芽の条件と成長の条件について混同しやすいので, 発芽と成長の意味を観察,実験を通してとらえるとともに,条件については,変える 条件と変えない条件を区別し,その操作と関連付けてその意味をとらえるようにする。 また,発芽や成長の条件を考察していく際には,予想や仮説と照らし合わせながら, 観察,実験の条件や結果を表に整理する活動などを取り入れていくことが考えられる。 なお,花粉の観察においては,顕微鏡を適切に操作して,花粉の特徴をとらえるこ とが考えられる。 (2) 動物の誕生 魚を育てたり人の発生についての資料を活用したりして,卵の変化の様子や 水中の小さな生物を調べ,動物の発生や成長についての考えをもつことができ るようにする。 ア 魚には雌雄があり,生まれた卵は日がたつにつれて中の様子が変化してか えること。 イ 魚は,水中の小さな生物を食べ物にして生きていること。 ウ 人は,母体内で成長して生まれること。 (内容の取扱い) (3) 内容の「B生命・地球」の(2)のウについては,受精に至る過程は取り扱わ ないものとする。 本内容は第4学年「B(2)季節と生物」の学習を踏まえて,「生命」についての基本 的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生命の連続性」にかかわるものである。 ここでは,動物の発生や成長について興味・関心をもって追究する活動を通して, 動物の発生や成長について推論しながら追究する能力を育てるとともに,それらにつ いての理解を図り,生命を尊重する態度を育て,動物の発生や成長についての見方や --62/90-- -60- 考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 魚を育て,観察することを通して,雌雄では体の形状が異なることをとらえる ようにする。また,産んだ卵中の変化を継続して観察し,日が経つにつれて卵の 中が変化する様子やふ化する様子をとらえるようにする。その際,卵の中には育 つための養分が含まれていることもとらえるようにする。 イ 池や川などの水を採取し,顕微鏡などを使って,水中の小さな生物を観察する ことによって,魚は,水中にいる小さな生物を食べて生きていることをとらえる ようにする。 ウ 人が母体内で成長して生まれることについては,資料を基にして調べ,受精し た卵が母体内で少しずつ成長して体ができていくことや,母体内でへその緒を通 して養分をもらって成長することをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,アについては,内部の変化の様子をとらえやすい魚の卵 が適しており,これらを顕微鏡などを用いて観察していくようにする。イについては, 肉眼では観察が困難な小さな生物も対象としているので,顕微鏡などを使って観察し たり,図鑑などで調べたりするようにする。ウについては,母体内の成長を直接観察 することが困難なので,映像や模型,その他の資料を活用して調べるようにする。 ここでの指導に当たっては,魚の卵の中の変化や水中の小さな生物を観察する際に, 顕微鏡などの観察器具を適切に操作できるように指導する。また,母体内での成長に ついては,直接観察することが難しく,連続的に成長していくことをとらえにくいの で,魚の卵の成長と関係付けながらとらえるようにする。 なお,ここでは,卵と精子が受精に至る過程については取り扱わないものとする。 (3) 流水の働き 地面を流れる水や川の様子を観察し,流れる水の速さや量による働きの違い を調べ,流れる水の働きと土地の変化の関係についての考えをもつことができ るようにする。 ア 流れる水には,土地を侵食したり,石や土などを運搬したり堆積させたり たい する働きがあること。 --63/90-- -61- イ 川の上流と下流によって,川原の石の大きさや形に違いがあること。 ウ 雨の降り方によって,流れる水の速さや水の量が変わり,増水により土地 の様子が大きく変化する場合があること。 本内容は,第4学年「B(3)天気の様子」の学習を踏まえ,「地球」についての基本 的な見方や概念を柱とした内容のうちの「地球の内部」,「地球の表面」にかかわる ものである。 ここでは,地面を流れる水や川の働きについて興味・関心をもって追究する活動を 通して,流水の働きと土地の変化の関係について条件を制御して調べる能力を育てる とともに,それらについての理解を図り,流水の働きと土地の変化の関係についての 見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 雨水が地面を流れていく様子や雨上がりの地面の様子を観察し,流れる水には 地面を侵食したり,石や土,砂,泥などを運搬したり堆積させたりする働きがあ ることをとらえるようにする。このことについては,人工の流れをつくって,実 験により確かめることが考えられる。 イ 実際の川の観察では,上流には大きな角張った石が見られることや,下流には 小さな丸みのある石が見られることなどから,上流と下流の石の大きさや形の違 いをとらえるようにする。また,上流から下流まで,川を全体としてとらえ,上 流では侵食の働きがよく見られ,下流では堆積の働きがよく見られることなど, 流れる水の働きの違いによる川の様子の違いをとらえるようにする。 ウ 雨が短時間に多量に降ったり,長時間降り続いたりしたときの雨水の流れや川 の流れの様子を観察し,水の速さや量が増し,地面を大きく侵食したり,石や土 を多量に運搬したり堆積させたりして,土地の様子を大きく変化させていること をとらえるようにする。このことについて,人工の流れをつくり,流れる水の速 さや量を変え,地面の変化の様子を調べることで確かめることもできる。 このように,雨の降り方によって,流れる水の速さや量が変わり,増水で土地 が変化することをとらえるとともに,流れる水の力の大きさを感じとるようにす る。 --64/90-- -62- ここでの指導に当たっては,野外での直接観察のほか,適宜,人工の流れをつくっ たモデル実験を取り入れて,流れる水の働きについての理解の充実を図ることが考え られる。その際,観察,実験の結果と実際の川の様子を関係付けてとらえたり,長雨 や集中豪雨により増水した川の様子をとらえたりするために,コンピュータシミュレ ーションや映像,図書などの資料を活用することが考えられる。 生活との関連としては,長雨や集中豪雨がもたらす川の増水による自然災害などを 取り上げることが考えられる。 なお,川の現地学習に当たっては,気象情報に注意するとともに,事故防止に配慮 するように指導する。 (4) 天気の変化 1日の雲の様子を観測したり,映像などの情報を活用したりして,雲の動き などを調べ,天気の変化の仕方についての考えをもつことができるようにす る。 ア 雲の量や動きは,天気の変化と関係があること。 イ 天気の変化は,映像などの気象情報を用いて予想できること。 (内容の取扱い) (4) 内容の「B生命・地球」の(4)のイについては,台風の進路による天気の変 化や台風と降雨との関係についても触れるものとする。 本内容は,第4学年「B(3)天気の様子」の学習を踏まえて,「地球」についての基 本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「地球の表面」にかかわるものである。 ここでは,天気の変化について興味・関心をもって追究する活動を通して,気象情 報を生活に活用する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,天気の変 化についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 実際に空を観察しながら,1日の雲の量や動きを調べ,天気の変化と雲の量や --65/90-- -63- 動きが関係していることをとらえるようにする。また,実際に観察した結果と気 象衛星からの情報などを関連付けながら,雲の形や量,動きの多様さに触れ,雲 には様々なものがあることをとらえるようにする。ここでは,雨に関係する雲と して,例えば,乱層雲などを扱うことが考えられる。 イ テレビや新聞,インターネットを活用し,数日間の天気の様子を調べ,天気は およそ西から東へ変化していくという規則性があることをとらえるようにする。 また,台風の進路についてはこの規則性が当てはまらないことや,台風がもたら す降雨は短時間に多量になることなどをとらえるようにする。 ここでの指導に当たっては,身近な自然現象としての雲を観察することにより,気 象現象に興味・関心をもち,天気を予想することができるようにする。その際,テレ ビや新聞,インターネットから得られる気象情報を活用することが考えられる。 生活との関連としては,長雨や集中豪雨,台風などの気象情報から,自然災害を取 り上げることが考えられる。 なお,雲を野外で観察する際には,気象情報に注意するとともに,事故防止に配慮 するように指導する。 --66/90-- -64- 第4節 第6学年 1目標 (1) 燃焼,水溶液,てこ及び電気による現象についての要因や規則性を推論しな がら調べ,見いだした問題を計画的に追究したりものづくりをしたりする活動 を通して,物の性質や規則性についての見方や考え方を養う。 (2) 生物の体のつくりと働き,生物と環境,土地のつくりと変化の様子,月と太 陽の関係を推論しながら調べ,見いだした問題を計画的に追究する活動を通し て,生命を尊重する態度を育てるとともに,生物の体の働き,生物と環境との かかわり,土地のつくりと変化のきまり,月の位置や特徴についての見方や考 え方を養う。 第6学年の目標は,自然の事物・現象の変化や働きをその要因や規則性,関係を推 論しながら調べ,問題を見いだし,見いだした問題を計画的に追究する活動を通して, 物の性質や規則性についての見方や考え方,自然の事物・現象の変化や相互関係につ いての見方や考え方を養うことである。 本学年では,学習の過程において,前学年で培った,変化させる要因と変化させな い要因とを区別しながら,観察,実験などを計画的に行っていく条件制御の能力に加 えて,自然の事物・現象の変化や働きについてその要因や規則性,関係を推論する能 力を育成することに重点が置かれている。 (1) 「A物質・エネルギー」にかかわる目標 本区分では,燃焼,水溶液,てこ及び電気による現象についての要因や規則性を推 論しながら調べ,見いだした問題を計画的に追究したりものづくりをしたりする活動 を通して,物の性質や規則性についての見方や考え方を養うことが目標である。 ここでは,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (1)燃焼の仕組み」及び「A(2)水溶液の性質」を設定する。「A(1)燃焼の仕組み」に --67/90-- -65- ついては,燃焼に伴う物と空気の変化の観察などから燃焼の要因を推論しながら調べ, 燃焼の仕組みをとらえるようにする。「A(2)水溶液の性質」については,水溶液から 気体を発生させたり,水溶液が金属を変化させたりする様子などから水溶液の性質を 推論しながら調べ,水溶液の性質をとらえるようにする。 また,「エネルギー」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「A (3)てこの規則性」及び「A(4)電気の利用」を設定する。「A(3)てこの規則性」につ いては,てこを使い,力の加わる位置や大きさを変えて,てこの仕組みや働きを推論 しながら調べ,てこの規則性をとらえるようにする。「A(4)電気の利用」については, 手回し発電機などを使い,電気の利用の仕方などを推論しながら調べ,電気の性質や 働きをとらえるようにする。 (2) 「B生命・地球」にかかわる目標 本区分では,生物の体のつくりと働き,生物と環境,土地のつくりと変化の様子, 月と太陽の関係を推論しながら調べ,見いだした問題を計画的に追究する活動を通し て,生命を尊重する態度を育てるとともに,生物の体の働き,生物と環境とのかかわ り,土地のつくりと変化のきまり,月の位置や特徴についての見方や考え方を養うこ とが目標である。 ここでは,「生命」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「B (1)人の体のつくりと働き」,「B(2)植物の養分と水の通り道」及び「B(3)生物と環 境」を設定する。「B(1)人の体のつくりと働き」については,人及び他の動物を観察 したり資料を活用したりして,呼吸,消化,排出及び循環の働きを推論しながら調べ, 人及び動物の体のつくりと働きをとらえるようにする。「B(2)植物の養分と水の通り 道」については,植物を観察し,植物の体内の水などの行方や葉で養分をつくる働き を推論しながら調べ,植物の体のつくりと働きをとらえるようにする。「B(3)生物と 環境」については,動物や植物の生活を観察したり,資料を活用したりして推論しな がら調べ,生物と環境とのかかわりをとらえるようにする。これらの活動を通して, 生命を尊重する態度を育てるようにする。 また,「地球」についての基本的な見方や概念を柱とした内容として,「B(4)土地 のつくりと変化」及び「B(5)月と太陽」を設定する。「B(4)土地のつくりと変化」 --68/90-- -66- については,土地の様子や土地をつくっている物を推論しながら調べ,そのつくりや 変化の様子を自然災害と関係付けて,土地のつくりと変化の規則性をとらえるように する。「B(5)月と太陽」については,月と太陽を観察し,月の位置や形と太陽の位置 を推論しながら調べ,月の形の見え方や表面の様子をとらえるようにする。 2内容 A 物質・エネルギー (1) 燃焼の仕組み 物を燃やし,物や空気の変化を調べ,燃焼の仕組みについての考えをもつこと ができるようにする。 ア 植物体が燃えるときには,空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができるこ と。 本内容は,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子 の存在」,「粒子の結合」にかかわるものであり,中学校第1分野「(4)化学変化」の 学習につながるものである。 ここでは,物の燃焼の仕組みについて興味・関心をもって追究する活動を通して, 物の燃焼と空気の変化とを関係付けて,物の質的変化について推論する能力を育てる とともに,それらについての理解を図り,燃焼の仕組みについての見方や考え方をも つことができるようにすることがねらいである。 ア 植物体を空気中で燃やすと,空気の入れ替わるところでは燃えるが,入れ替わ らないところでは燃えなくなってしまう現象が見られる。このことから,植物体 が燃える前後の空気の性質を調べ,植物体が燃えるときには,空気に含まれる酸 --69/90-- -67- 素の一部が使われ二酸化炭素ができることや,酸素には物を燃やす働きがあるこ と,燃えた後の植物体の様子も変化していることについて推論を通してとらえる ようにする。また,実験結果や資料を基にして調べ,空気には,主に,窒素,酸 素,二酸化炭素が含まれていることをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,燃焼の様子を観察しやすい植物体として,例えば,木片 のほかに,紙などが考えられる。また,植物体が燃える前後の空気の性質を調べるた めには,石灰水を使用し,燃える前の空気は物を燃やす働きがあり石灰水を白濁させ ないが,燃えた後の空気は物を燃やす働きがなく石灰水を白濁させる性質を活用する。 さらに,酸素や二酸化炭素の割合が変化していることをとらえるようにするためには, 気体検知管による測定が考えられる。 ここでの指導に当たっては,生活の中で物を燃やす体験が少ない現状を踏まえ,物 が燃える現象を十分に観察できるような場を設定する。また,物が燃える際に,酸素 が使われ二酸化炭素ができることを気体検知管や石灰水などを用いて調べ,その結果 を図や絵,文を用いて表現できるようにする。 なお,燃焼実験の際には,加熱方法,気体検知管の扱い方などについて安全に配慮 するように指導する。 (2) 水溶液の性質 いろいろな水溶液を使い,その性質や金属を変化させる様子を調べ,水溶液の 性質や働きについての考えをもつことができるようにする。 ア 水溶液には,酸性,アルカリ性及び中性のものがあること。 イ 水溶液には,気体が溶けているものがあること。 ウ 水溶液には,金属を変化させるものがあること。 本内容は,第5学年「A(1)物の溶け方」の学習を踏まえて,「粒子」についての基 本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子の結合」,「粒子の保存性」にかか わるものである。 ここでは,いろいろな水溶液の性質や金属を変化させる様子について興味・関心を --70/90-- --70/90-- -68- もって追究する活動を通して,水溶液の性質について推論する能力を育てるとともに, それらについての理解を図り,水溶液の性質や働きについての見方や考え方をもつこ とができるようにすることがねらいである。 ア 水溶液には,色やにおいなどの異なるものがある。また,同じように無色透明 な水溶液でも,溶けている物を取り出すと違った物が出てくることがある。この ようないろいろな水溶液をリトマス紙などを用いて調べ,色の変化によって酸性, アルカリ性,中性の三つの性質にまとめられることをとらえるようにする。 イ 水溶液には,液を振り動かしたり温めたりすると,気体を発生するものがある。 発生した気体を容器に集めてその性質を空気と比較して調べると,空気とは異な る性質を示すものがある。また,集めた気体を水に入れると再び水に溶けてしま う。さらに,水溶液を加熱すると,固体が溶けている場合と違って溶けている物 も水も空気中へ蒸発して何も残らないものがある。これらの実験から,水溶液に は気体が溶けているものがあることをとらえるようにする。 ウ 水溶液には,金属を入れると金属が溶けて気体を発生したり,金属の表面の様 子を変化させたりするものがあることをとらえるようにする。また,金属が溶け た水溶液から溶けている物を取り出して調べると,元の金属とは違う新しい物が できていることがある。これらの実験から,水溶液には金属と触れ合うと金属を 変化させるものがあることをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,例えば,薄い塩酸,薄い水酸化ナトリウム水溶液などが 考えられる。これらの水溶液の使用に当たっては,その危険性や扱い方について十分 指導するとともに,保護眼鏡を使用するなど安全に配慮するように指導する。 また,ここで扱う金属については,例えば,鉄やアルミニウムなど,生活の中でよ く見かけるもので性質や変化がとらえやすいものを使用することが考えられる。 ここでの指導に当たっては,水溶液の性質や金属の質的変化について十分に説明す るために,推論したことを図や絵,文を用いて表現することが考えられる。 なお,実験に使用する薬品については,事故のないように配慮し管理するとともに, 使用した廃液などについても,環境に配慮し適切に処理する必要があることを指導す る。 --71/90-- -69- (3) てこの規則性 てこを使い,力の加わる位置や大きさを変えて,てこの仕組みや働きを調べ, てこの規則性についての考えをもつことができるようにする。 ア 水平につり合った棒の支点から等距離に物をつるして棒が水平になったと き,物の重さは等しいこと。 イ 力を加える位置や力の大きさを変えると,てこを傾ける働きが変わり,てこ がつり合うときにはそれらの間に規則性があること。 ウ 身の回りには,てこの規則性を利用した道具があること。 本内容は,第5学年「A(2)振り子の運動」の学習を踏まえて,「エネルギー」につ いての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「エネルギーの見方」にかかわる ものであり,中学校第1分野「(5)イ 力学的エネルギー」の学習につながるものである。 ここでは,生活に見られるてこについて興味・関心をもって追究する活動を通して, てこの規則性について推論する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り, てこの規則性についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいで ある。 ア 1カ所で支えて水平になった棒の支点から左右に等距離の位置に物をつり下げ, 棒が水平になるかどうかを調べて,棒が水平になってつり合えば,両側の物の重 さは等しいことを実験を通してとらえるようにする。 イ てこを用い物を動かすとき,動かす物の重さが同じでも,てこに加える力の位 置を変えると物を動かす働きが変わる。また,同じ位置でも力の大きさを変える と物を動かす働きが変わる。これらのことから,力を加える位置や大きさを変え ると,てこを傾ける働きが変わることをとらえるようにする。 このことを基にしながら,てこ実験器などを用いててこの両側におもりをつる し,おもりの重さやおもりの位置を変えて,てこのつり合いの条件を調べるよう にする。その際,てこ実験器の左側のおもりの数と右側のおもりの数が異なって いてもつり合っている場合に,「左側の(力点にかかるおもりの重さ)×(支点 --72/90-- -70- から力点までの距離)=右側の(力点にかかるおもりの重さ)×(支点から力点 までの距離)」という関係式が成立することをとらえるようにする。このことか ら,てこを傾ける働きの大きさが,(力点にかかるおもりの重さ)×(支点から 力点までの距離)できまり,両側のてこを傾ける働きの大きさが等しいときにつ り合うことをとらえるようにする。 ウ 小さな力で重い物を動かすなどのてこの働きといった視点で観察することによ り,身の回りの様々な道具で,てこの規則性が利用されていることをとらえるよ うにする。 ここでの指導に当たっては,てこ実験器を使って行った実験の結果について,支点 からの距離とおもりの重さの関係を表などに整理することを通して,てこの規則性を とらえるようにする。その際,算数科の反比例の学習と関連を図ることが考えられる。 (4) 電気の利用 手回し発電機などを使い,電気の利用の仕方を調べ,電気の性質や働きについ ての考えをもつことができるようにする。 ア 電気は,つくりだしたり蓄えたりすることができること。 イ 電気は,光,音,熱などに変えることができること。 ウ 電熱線の発熱は,その太さによって変わること。 エ 身の回りには,電気の性質や働きを利用した道具があること。 本内容は,第5学年「A(3)電流の働き」の学習を踏まえて,「エネルギー」につい ての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「エネルギーの変換と保存」,「エ ネルギー資源の有効利用」にかかわるものである。 ここでは,生活に見られる電気の利用について興味・関心をもって追究する活動を 通して,電気の性質や働きについて推論する能力を育てるとともに,それらについて の理解を図り,電気はつくったり蓄えたり変換したりできるという見方や考え方をも つことができるようにすることがねらいである。 ア 手回し発電機などを使って,電気をつくりだしたり,蓄電器などに電気を蓄え --73/90-- -71- たりすることができることを,豆電球や発光ダイオードの点灯やモーターの回転 によってとらえるようにする。 イ 手回し発電機などを豆電球につないで点灯させたり,電子オルゴールにつない で音を出したり,電熱線につないで発熱させたりすることなどから,電気は,光, 音,熱などに変えることができることをとらえるようにする。 ウ 電熱線に電流を流すと発熱するが,電熱線の長さを一定にして,電熱線の太さ を変えると発熱する程度が変わることをとらえるようにする。 エ 身の回りには,電気をつくりだしたり蓄えたり,変換したりするなどの電気の 性質や働きを利用した様々な道具があることをとらえるようにする。 ここで扱う対象としては,電気を蓄えるものとして,例えば,コンデンサなどの蓄 電器が考えられる。 ここでの指導に当たっては,児童が自分で電気をつくりだしたり蓄えたり,変換し たりすることにより,エネルギーが蓄えられることや変換されることについて体験的 にとらえるようにする。また,発熱の実験で使用する電熱線については,発熱の程度 を考え,安全に配慮するように指導する。 生活との関連としては,エネルギー資源の有効利用という観点から,電気の効率的 な利用についてとらえるようにする。このことについて,例えば,手回し発電機や蓄 電器を用いて,発光ダイオードと豆電球の点灯時間を比較すると,発光ダイオードが 豆電球より長く点灯することなどからとらえるようにすることが考えられる。 なお,電気の利用について学習する際に,科学館などの施設の利用が考えられる。 (内容の取扱い) (1) 内容の「A物質・エネルギー」の指導に当たっては,2種類以上のものづく りを行うものとする。 てこの規則性を活用したものづくりとしては,てこの働きを利用するという観点か らてこやてんびんを利用したはかりなどが考えられる。 また,電気の働きを活用したものづくりとしては,風力発電や蓄電器を利用した自 --74/90-- -72- 動車などが考えられる。 B 生命・地球 (1) 人の体のつくりと働き 人や他の動物を観察したり資料を活用したりして,呼吸,消化,排出及び循環 の働きを調べ,人や他の動物の体のつくりと働きについての考えをもつことがで きるようにする。 ア 体内に酸素が取り入れられ,体外に二酸化炭素などが出されていること。 イ 食べ物は,口,胃,腸などを通る間に消化,吸収され,吸収されなかった物 は排出されること。 ウ 血液は,心臓の働きで体内を巡り,養分,酸素及び二酸化炭素などを運んで いること。 エ 体内には,生命活動を維持するための様々な臓器があること。 (内容の取扱い) (2) 内容の「B生命・地球」の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア ウについては,心臓の拍動と脈拍が関係することにも触れること。 イ エについては,主な臓器として,肺,胃,小腸,大腸,肝臓,腎臓,心臓 じん を扱うこと。 本内容は,第4学年「B(1)人の体のつくりと運動」の学習を踏まえて,「生命」に ついての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生物の構造と機能」にかかわ るものである。 ここでは,人や他の動物の体のつくりについて興味・関心をもって追究する活動を 通して,人や他の動物の体のつくりと働きについて推論する能力を育てるとともに, --75/90-- -73- それらについての理解を図り,生命を尊重する態度を育て,人や他の動物の体のつく りと働きについての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 人や他の動物の吸気と呼気の成分などを調べ,肺を通して血液中に酸素を取り 入れ,血液中の二酸化炭素などを体外に排出するという呼吸の働きをとらえるよ うにする。また,他の動物も人と同じように呼吸していることをとらえるように する。 イ 人や他の動物の消化の働きについて,食べた物はどこを通ってどのように変化 し体内に取り入れられているかを調べ,食べた物は口から,食道,胃,小腸,大 腸へと移動する間に消化されていくことをとらえるようにする。また,口では咀 そ 嚼 が行われ,消化された養分は腸から吸収されて血液中に入り,吸収されなかっ しやく た物はふんとして肛門から排出されることをとらえるようにする。 ウ 血液は,心臓の働きで体内を循環しながら,養分,酸素,二酸化炭素などを運 んでいる。肺から心臓に戻る血液には,酸素が多く含まれ,全身から心臓に戻る 血液には,二酸化炭素が多く含まれる。ここでは,血液に入った養分,酸素の行 方や肺から取り入れられた酸素の行方などについてコンピュータシミュレーショ ンや映像,図書などの資料を基にして調べ,血液が,体内を巡り酸素などを体の すみずみまで運んでいることや二酸化炭素を体のすみずみから運び出しているこ とをとらえるようにする。また,人や他の動物は心臓の拍動数と脈拍数が関係す ることから,心臓の動きと血液の流れとを関係付けながらとらえるようにする。 エ 人や他の動物の体内には,様々な働きをもつ臓器が存在している。ここでは, 呼吸には肺が関係し,消化,吸収,排出には主に胃,小腸,大腸,肝臓が関係し, 血液の循環には心臓が関係し,腎臓は尿をつくることに関係していることをとら えるようにする。また,これらの臓器の名称ととともに,体内における位置をと らえるようにする。 ここで扱う他の動物としては,呼吸の状態が調べられる身近で安全な哺乳類や魚類 が考えられる。また,人や他の動物の呼吸を調べる活動では,指示薬または気体検知 管などによる酸素や二酸化炭素などの測定が考えられる。さらに,体内の観察につい ては,魚の解剖や標本などの活用が考えられる。 --76/90-- -74- ここでの指導に当たっては,人や他の動物の体のつくりや働きについての児童の理 解の充実を図るために,映像や模型などを活用しながら推論することが考えられる。 また,呼吸,消化,吸収,排出,血液の循環を独立して扱うのでなく,相互の働きを 関係付け,意味付けていくなど,総合的な理解を図ることが考えられる。 なお,生活との関連として,水中での酸素ボンベの使用や水槽でのエアーポンプの 使用などを取り上げることが考えられる。 (2) 植物の養分と水の通り道 植物を観察し,植物の体内の水などの行方や葉で養分をつくる働きを調べ,植 物の体のつくりと働きについての考えをもつことができるようにする。 ア 植物の葉に日光が当たるとでんぷんができること。 イ 根,茎及び葉には,水の通り道があり,根から吸い上げられた水は主に葉か ら蒸散していること。 本内容は,第4学年「B(1)人の体のつくりと運動」の学習を踏まえて,「生命」に ついての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生物の構造と機能」にかかわ るものである。 ここでは,植物の体内の水などの行方や葉で養分をつくる働きについて興味・関心 をもって追究する活動を通して,植物の体内のつくりと働きについて推論する能力を 育てるとともに,それらについての理解を図り,生命を尊重する態度を育て,植物の 体のつくりと働きについての見方や考え方をもつことができるようにすることがねら いである。 ア 日光とでんぷんのでき方の関係を調べるため,日光が当たっている何枚かの葉 で,アルミニウム箔などを被せて遮光した葉と遮光しない葉の対照実験を行い, ヨウ素デンプン反応によって日光が当たっている葉の中のでんぷんの存在を調べ, 植物が自ら体内ででんぷんをつくりだしていることを推論を通してとらえるよう にする。 イ 植物に着色した水を吸わせ,茎や葉などを切って,その体の内部のつくりを観 --77/90-- -75- 察することから,植物の体内には水の通り道があり,すみずみまで水が行きわた っていることをとらえるようにする。また,何枚かの葉に透明な袋で覆いをして 袋につく水の量を観察することから,根から吸い上げられた水は主に葉から水蒸 気として排出されていることをとらえるようにする。さらに,蒸散する水の量を 調べる際には,気温が高い晴れの日を選ぶように配慮する。 ここで扱う対象としては,アについては,身近で入手が比較的簡単で,葉ででんぷ んがつくられる植物を扱う。 ここでの指導に当たっては,児童の理解の充実を図るために,観察,実験とともに, 映像や模型,その他の資料を活用することが考えられる。 (3) 生物と環境 動物や植物の生活を観察したり,資料を活用したりして調べ,生物と環境との かかわりについての考えをもつことができるようにする。 ア 生物は,水及び空気を通して周囲の環境とかかわって生きていること。 イ 生物の間には,食う食われるという関係があること。 (内容の取扱い) (3) 内容の「B生命・地球」の(3)のアについては,水が循環していることにも触 れるものとする。 本内容は,第3学年「B(2)身近な自然の観察」の学習を踏まえて,「生命」につい ての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「生物と環境のかかわり」にかかわ るものである。 ここでは,生物と環境のかかわりについて興味・関心をもって追究する活動を通し て,生物と環境のかかわりを推論する能力を育てるとともに,それらについての理解 を図り,環境を保全する態度を育て,生物と環境のかかわりについての見方や考え方 をもつことができるようにすることがねらいである。 --78/90-- -76- ア 動物や植物の生活を観察したり資料を活用したりして調べ,動物は,水及び空 気がないと生きていくことができないことや,植物は水が不足すると枯れてしま うことなどから,生物は水及び空気を通して周囲の環境とかかわって生きている ことをとらえるようにする。その際,地球上の水は,海や川などから蒸発し,水 蒸気や雲となり,雨となるなど循環していることをとらえるようにする。また, 生物は酸素を吸って二酸化炭素をはき出しているが,植物は光が当たると二酸化 炭素を取り入れて酸素を出すことなど,生物が空気を通して周囲の環境とかかわ って生きていることをとらえるようにする。 これらのことから,生物は,水及び空気を通して,かかわって生きていること をとらえるようにする。 イ 植物を食べている動物がいることや,その動物も他の動物に食べられることが あることを調べ,生物には食う食われるという関係があることをとらえるように する。 ここで扱う対象としては,アについては,できるだけ具体的な事物・現象を取り上 げるようにする。例えば,呼気に何が含まれているかを調べるために,石灰水に息を 通したり気体検知管を活用したりして,酸素や二酸化炭素の検出を行うことが考えら れる。また,これまでに学習してきた昆虫や魚などが,水及び空気を通して,環境と かかわって生きていることを想起するなど,生物と環境とのかかわりについて推論す るようにする。イについては,例えば,植物体を食べる身近な動物については,昆虫 や草食性の哺乳類などを扱うようにする。動物を食べる動物については,肉食性の哺 乳類や水中の小魚や小さな生物を食べる節足動物などを扱うようにする。 ここでの指導に当たっては,生物と環境のかかわりについて,観察,実験が行いに くいので,児童の理解の充実を図るために,映像や模型などを活用することが考えら れる。また,水の循環や酸素,二酸化炭素の出入りについて図で表現することを通し て,生物と環境とのかかわりを整理し理解できるようにすることが考えられる。植物 は自分ででんぷんをつくりだしているが,人や他の動物は植物あるいは動物を食べて いることから,食べ物を通して生物がかかわり合って生きていることを整理し,相互 の関係付けを図って理解できるようにする。 --79/90-- -77- 本内容は,持続可能な社会の構築という観点から,水や空気に関する環境問題との 関連で扱うことが考えられる。 (4) 土地のつくりと変化 土地やその中に含まれる物を観察し,土地のつくりや土地のでき方を調べ,土 地のつくりと変化についての考えをもつことができるようにする。 ア 土地は,礫,砂,泥,火山灰及び岩石からできており,層をつくって広がっ れき ているものがあること。 イ 地層は,流れる水の働きや火山の噴火によってでき,化石が含まれているも のがあること。 ウ 土地は,火山の噴火や地震によって変化すること。 (内容の取扱い) (4) 内容の「B生命・地球」の(4)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア アについては,岩石として礫岩,砂岩及び泥岩を扱うこと。 れき イ イの「化石」については,地層が流れる水の働きによって堆積したことを たい 示す証拠として扱うこと。 本内容は,第5学年「B(3)流水の働き」の学習を踏まえて,「地球」についての基 本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「地球の内部」にかかわるものである。 ここでは,土地のつくりや土地のでき方について興味・関心をもって追究する活動 を通して,土地のつくりと変化を推論する能力を育てるとともに,それらについての 理解を図り,土地のつくりと変化についての見方や考え方をもつことができるように することがねらいである。 ア 崖や切り通しなどで土地の構成物を観察することによって,土地は,礫,砂, 泥,火山灰,岩石からできており,幾重にも層状に重なって地層をつくっている ものがあることをとらえるようにする。また,各地点の地層のつくりを相互に関 --80/90-- --80/90-- -78- 係付けて調べ,ある地点で観察した層あるいはその構成物の色や形の特徴が他の 地点でも観察できることから,地層は各地点を連ねるように広がりをもって分布 していることをとらえるようにする。ここで扱う岩石は,礫岩,砂岩及び泥岩と する。 なお,土地の構成物を調べる際には,例えば,地質ボーリングの資料を利用す ることが考えられる。 イ 土地の構成物に目を向けながら地層を観察すると,地層には角がとれ丸みを帯 びた礫や砂などが含まれていることに気付く。それらの構成物の特徴は,流れる 水の働きによってできた川原の石によく似ている。また,地層を構成しているも のの中には貝などの化石が見つかることがある。これらのことから,地層が流れ る水の働きによってつくられたものであることをとらえるようにする。一方,火 山灰や多くの穴をもつ石が地層の中に含まれていることから,火山の噴火によっ てつくられた地層もあることをとらえるようにする。このように,地層に含まれ る構成物と関連付けて,地層が流れる水の働きや火山の噴火によってできたこと について推論を通してとらえるようにする。 ウ 土地は流れる水の働きだけでなく,火山の活動や地震によっても変化する。火 山の活動が見られる地域では,火山の噴火によって溶岩が流れ出したり,火山灰 が噴き出したりして,そのまわりの土地の様子が大きく変化することがある。ま た,大きな地震によって,土地に地割れが生じたり,断層が現れたり,崖が崩れ たりする。その結果,土地の様子が大きく変化することがある。ここでは,自然 災害と関係付けながら火山の活動や地震によって土地が変化した様子を観察した り,コンピュータシミュレーションや映像,図書などの資料を基に調べたりして, 過去に起こった火山の活動や大きな地震によって土地が変化したことを推論する とともに,将来にも起こる可能性を考え,土地が変化することをとらえるように する。 ここでの指導に当たっては,児童が土地のつくりや変化について実際に地層を観察 する機会をもつようにするとともに,映像,模型,標本などの資料を活用することが 考えられる。また,遠足や移動教室などあらゆる機会を生かすとともに,博物館や資 --81/90-- -79- 料館などの社会教育施設を活用することが考えられる。 なお,土地の観察に当たっては,それぞれの地域に応じた指導を工夫するようにす るとともに,岩石サンプルを取る際に保護眼鏡を使用するなど安全や事故防止に配慮 するように指導する。 (5) 月と太陽 月と太陽を観察し,月の位置や形と太陽の位置を調べ,月の形の見え方や表面 の様子についての考えをもつことができるようにする。 ア 月の輝いている側に太陽があること。また,月の形の見え方は,太陽と月の 位置関係によって変わること。 イ 月の表面の様子は,太陽と違いがあること。 (内容の取扱い) (5) 内容の「B生命・地球」の(5)のアについては,地球から見た太陽と月の位置 関係で扱うものとする。 本内容は,第4学年「B(4)月と星」の学習を踏まえて,「地球」についての基本的 な見方や概念を柱とした内容のうちの「地球の周辺」にかかわるものである。 ここでは,天体について興味・関心をもって追究する活動を通して,月の位置や形 と太陽の位置の関係を推論する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り, 月や太陽に対する豊かな心情を育て,月の形の見え方や表面の様子についての見方や 考え方をもつことができるようにすることがねらいである。 ア 月は日によって形が変わって見え,月の輝いている側に太陽があることを月と 太陽の位置関係との関連でとらえるようにする。月に見立てたボールに光を当て るなどのモデル実験をして,太陽と月の位置と月の見え方の関係を調べ,月は日 によって形が変わって見え,月の輝いている側に太陽があることをとらえるよう にする。ただし,地球から見た太陽と月の位置関係で扱うものとする。 --82/90-- -80- なお,地球の外から月や太陽を見る見方については,中学校第3学年第2分野 「(6) 地球と宇宙」で扱う。 イ 月は太陽の光を反射しているが,太陽は自ら光を発している。また,月の表面 にはクレーターなどが見える。これらのことを月の観察や映像,模型,資料の活 用によりとらえるようにする。月の表面の様子は,双眼鏡や望遠鏡で観察するこ とが考えられる。 ここでの指導に当たっては,月の形や位置と太陽の位置の関係を推論し,モデルや 図によって表現する活動を通して,天体における月と太陽の位置関係についてとらえ ることができるようにする。また,児童の天体に対する興味・関心を高め,理解を深 めるために,移動教室など宿泊を伴う学習の機会を生かすとともに,プラネタリウム などを活用することが考えられる。 なお,夜間に野外で観察する際には,安全を第一に考え,事故防止に配慮するとと もに,太陽の表面の観察に当たっては,直接太陽を観察しないようにするなど安全に 配慮するように指導する。 --83/90-- -81- 第4章 指導計画の作成と内容の取扱い 1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。 (1) 第2の各学年の内容を通じて観察,実験や自然体験,科学的な体験を充実さ せることによって,科学的な知識や概念の定着を図り,科学的な見方や考え方 を育成するよう配慮すること。 今回の改訂では,児童が自然とのかかわりの中で問題を見いだし,見通しをもった 観察,実験などを通して自然の事物・現象と科学的にかかわり,結果や結論を生活と のかかわりの中で見直し,実感を伴った理解を図ることを重視している。 そのため,指導計画の作成に当たっては,自然の事物・現象を対象として観察,実 験や自然体験,科学的な体験を充実させるような工夫が必要となる。児童が具体的な 自然の事物・現象に,関心や意欲をもってかかわり,体験を通して問題を見いだすこ とは,以降の問題解決の学習の基盤をなすものである。 このような基盤の上に,科学的な知識や概念の定着,科学的な見方や考え方の育成 を図るようにすることが必要である。指導計画の作成に当たっては,観察,実験など の結果を一人一人の児童が自らのものとして大切にしつつ,予想や仮説との関係で比 較し検討したり,他の児童の結果と比較し検討したりして考察を深めるような工夫を 行うことによって,最終的に科学的な知識や概念の定着を図ることができるようにす ることが大切である。これらの知識や概念を基に,生活を見直し,自然とかかわろう とする学習の充実を図ることによって,問題解決の能力や自然を愛する心情を培い, 科学的な見方や考え方の育成を図ることができる。 各学校で年間指導計画を作成するに当たっては,地域の特色を生かし,他教科との 関連を図りながら,児童の学習活動が主体的になるように展開を工夫することが求め られる。 --84/90-- -82- (2) 観察,実験の結果を整理し考察する学習活動や,科学的な言葉や概念を使用 して考えたり説明したりするなどの学習活動が充実するよう配慮すること。 理科の学習においては,予想や仮説を立てて観察,実験を行うだけではなく,その 結果について考察を行う学習活動を充実させることにより,科学的な思考力や表現力 の育成を図ることが大切である。自らの観察記録や実験データを表に整理したりグラ フに処理したりすることにより,考察を充実させることができる。また,それらの表 やグラフなどを活用しつつ科学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したりするな どの学習活動により,考察を深めることができる。このような学習活動が,学級の中 のグループや学級全体での話し合いの中で行われ,繰り返されることにより考察が充 実し,深まっていくように指導することが重要である。 (3) 博物館や科学学習センターなどと連携,協力を図りながら,それらを積極的 に活用するよう配慮すること。 理科の学習を効果的に行い,児童の実感を伴った理解を図るために,それぞれの地 域にある博物館や科学学習センター,植物園,動物園,水族館,プラネタリウムなど の施設や設備を活用することが考えられる。これらの施設や設備は,学校では体験す ることが困難な自然や科学に関する豊富な情報を提供してくれる貴重な存在である。 これらの施設や設備の活用に際しては,指導計画に位置付けるとともに,実地踏査や 学芸員などとの事前の打合せなどを充実させる必要がある。 また,最近では学校教育に対して積極的に支援を行っている大学や研究機関,企業 などもあり,これらと連携,協力することにより,学習活動をさらに充実させていく ことが考えられる。 (4) 第1章総則の第1の2及び第3章道徳の第1に示す道徳教育の目標に基づ き,道徳の時間などとの関連を考慮しながら,第3章道徳の第2に示す内容に ついて,理科の特質に応じて適切な指導をすること。 --85/90-- -83- 学習指導要領の第1章総則の第1の2においては,「学校における道徳教育は,道 徳の時間を 要 として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳の時間はもと かなめ より,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応 じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行わなければならない」と規定さ れている。 これを受けて,理科の指導においては,その特質に応じて,道徳について適切に指 導する必要があることを示すものである。 理科における道徳教育の指導においては,学習活動や学習態度への配慮,教師の態 度や行動による感化とともに,以下に示すような理科の目標と道徳教育との関連を明 確に意識しながら,適切な指導を行う必要がある。 理科においては,目標を「自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い, 問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに,自然の事物・現象についての 実感を伴った理解を図り,科学的な見方や考え方を養う。」と示している。 栽培や飼育などの体験活動を通して自然を愛する心情を育てることは,生命を尊重 し,自然環境を大切にする態度の育成につながるものである。また,見通しをもって 観察,実験を行うことや,問題解決の能力を育て,科学的な見方や考え方を養うこと は,道徳的判断力や真理を大切にしようとする態度の育成にも資するものである。 次に,道徳教育の 要 としての道徳の時間の指導との関連を考慮する必要がある。 かなめ 理科で扱った内容や教材の中で適切なものを,道徳の時間に活用することが効果的な 場合もある。また,道徳の時間で取り上げたことに関係のある内容や教材を理科で扱 う場合には,道徳の時間における指導の成果を生かすように工夫することも考えられ る。そのためにも,理科の年間指導計画の作成などに際して,道徳教育の全体計画と の関連,指導の内容及び時期等に配慮し,両者が相互に効果を高め合うようにするこ とが大切である。 2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。 (1) 観察,実験,栽培,飼育及びものづくりの指導については,指導内容に応じ --86/90-- -84- てコンピュータ,視聴覚機器などを適切に活用できるようにすること。また, 事故の防止に十分留意すること。 観察,実験などの指導に当たっては,直接体験が基本であるが,適宜コンピュータ や視聴覚機器などを組み合わせ,活用することによって学習の一層の充実を図ること ができる。 コンピュータや視聴覚機器などで扱われる映像情報については,それぞれの特性を よく理解し,活用することが大切である。例えば,第4学年「B(1) 人の体のつくり と運動」においては,骨格模型や人体模型などを中心にして学習が展開されることに なるが,そこにコンピュータシミュレーションなどの動画を組み合わせることによっ て,骨と筋肉のつくりと動きの関係の理解の充実を図ることができる。 また,第6学年「B(4) 土地のつくりと変化」においては,実際の地層の観察が大 切なことはいうまでもないが,複数の視点からの地層の静止画を組み合わせることな どによって,一層の理解の充実を図ることができる。 学習を深めていく過程で,児童が相互に情報を交換したり,説明したりする手段と して,プロジェクタをはじめとする様々な視聴覚機器を活用することが考えられる。 これらの機器を活用する場合は,その操作について適切な指導を心掛けることが必要 である。 さらに,安全管理という観点から,加熱,燃焼,気体の発生などの実験,ガラス器 具や刃物などの操作,薬品の管理,取扱い,処理などには十分に注意を払うことが求 められる。特に,塩酸や水酸化ナトリウムなどの劇物の薬品は,毒物及び劇物取締法 に従って取り扱うことが必要である。また,野外での観察,採集,観測などでは事前 に現地調査を行い,危険箇所の有無などを十分に確認して,適切な事前指導を行い, 事故防止に努めることが必要である。 なお,状況に応じて保護眼鏡の着用など,安全への配慮を十分に行うことが必要で ある。 (2) 生物,天気,川,土地などの指導については,野外に出掛け地域の自然に親 --87/90-- -85- しむ活動や体験的な活動を多く取り入れるとともに,自然環境を大切にし,そ の保全に寄与しようとする態度を育成するようにすること。 理科の学習においては,自然に直接かかわることが重要である。こうした直接体験 を充実するために,それぞれの地域でも自然の事物・現象を教材化し,それらの積極 的な活用を図ることが求められる。中でも,生物,天気,川,土地,天体などの学習 においては,学習の対象とする教材に地域差があることを考慮し,その地域の実情に 応じて適切に教材を選び,児童が主体的な問題解決の活動ができるように指導の工夫 改善を図ることが重要である。 野外での学習活動では,自然の事物・現象を断片的にとらえるのではなく,それら の相互の関係を一体的にとらえるようにすることが大切である。そのことが,自然を 愛する心情や態度などを養うことにもつながる。また,野外に出掛け,地域の自然に 直接触れることは,学習したことを実際の生活環境と結び付けて考えるよい機会にな るとともに,自分の生活している地域を見直し理解を深め,地域の自然への関心を高 めることにもなりうる。 こうした体験は,自然環境を大切にし,その保全に寄与しようとする態度の育成に つながるものであり,持続可能な社会で重視される環境教育の基盤になるものといえ る。また,野外での活動に限らず,学校に飼育舎やビオトープなどを設置し,その活 用の充実を図る工夫が考えられる。 さらに,地域教材を扱う理科の学習では,できるだけ地域の自然と触れ合える野外 での学習活動を取り入れるとともに,遠足や野外体験教室,臨海学校などの自然に触 れ合う体験活動を積極的に活用することが重要である。 なお,このような野外での学習活動でも,事前に危険箇所の有無などの調査を行う とともに,適切に指導し,安全への配慮を十分に行うことが必要である。 (3) 個々の児童が主体的に問題解決活動を進めるとともに,学習の成果と日常生 活との関連を図り,自然の事物・現象について実感を伴って理解できるように すること。 --88/90-- -86- 理科の学習で重要なことは,児童が主体的に問題解決の活動を行い,その学習の成 果を生活とのかかわりの中でとらえ直し,実感を伴った理解ができるようにすること である。学習したことを生活とのかかわりの中でとらえ直すことで,理科の学習の有 用性を感じることができ,学習に対する意欲も増進する。 ここでいう主体的な問題解決の活動とは,児童自らが自然の事物・現象に興味・関 心をもち,問題を見いだし,問題解決の一連の過程を経験することである。理科の学 習では,問題解決はこれまでも重視されてきたことであるが,その過程だけが形式化 され,教師の指示に従うだけの活動になり,本来の意味での主体的な問題解決の活動 にならない場合もあった。 そこで,主体的な問題解決の活動を進めるために,教師は児童がこれまでにもって いた見方や考え方では説明できない事物・現象を提示するなど,児童自らが自然の事 物・現象に興味・関心をもち,問題を見いだす状況をつくる工夫が必要である。また, 問題解決に対する見通しを明確に意識させるとともに,多様な学習形態を取り入れ児 童相互の情報交換も適宜行い,児童自らが問題解決を行うことができる状況をつくる ことが必要である。 --89/90-- 小学校学習指導要領解説理科編作成協力者(五十音順) (職名は平成20年6月末日現在) 市 川 智 史 滋賀大学准教授 牛 島 薫 千葉県船橋市立丸山小学校教頭 楳 内 典 明 岩手県奥州市立前沢小学校教頭 角 屋 重 樹 広島大学大学院教授 高 垣 マユミ 鎌倉女子大学大学院教授 田 中 薫 子 東京都板橋区立常盤台小学校教諭 塚 田 昭 一 埼玉県新座市教育委員会指導主事 林 禎 久 東京都世田谷区教育委員会指導主事 星 野 昌 治 帝京大学准教授 村 山 哲 哉 東京都墨田区教育委員会統括指導主事 森 本 信 也 横浜国立大学教授 八 嶋 真理子 神奈川県横浜市立都筑小学校副校長 矢 野 英 明 麻布大学非常勤講師 山 谷 陽 子 北海道札幌市立中央小学校教諭 渡 辺 径 子 新潟県糸魚川市立中能生小学校教諭 国立教育政策研究所において、次の者が本書の作成に携わった。 猿 田 祐 嗣 教育課程研究センター総括研究官 なお,文部科学省においては,次の者が本書の編集に当たった。 橋 道 和 初等中等教育局教育課程課長 牛 尾 則 文 初等中等教育局視学官 日 置 光 久 初等中等教育局視学官 神 山 弘 初等中等教育局教育課程課専門官 坂 下 裕 一 金沢大学研究国際部学術国際課長 (前初等中等教育局教育課程課専門官) --90/90--