小学校学習指導要領解説 社会編 平成 20 年6月 文部科学省 --1/128-- 目次 第1章 総説……………………………………………………………………… 1 1 改訂の経緯……………………………………………………………… 1 2 社会科改訂の趣旨……………………………………………………… 3 3 社会科改訂の要点……………………………………………………… 6 第2章 社会科の目標及び内容………………………………………………… 12 第1節 社会科の目標………………………………………………………… 12 1 教科の目標……………………………………………………………… 12 2 学年の目標……………………………………………………………… 15 第2節 社会科の内容………………………………………………………… 19 第3章 各学年の目標及び内容………………………………………………… 21 第1節 第3学年及び第4学年の目標と内容……………………………… 21 第2節 第5学年の目標と内容……………………………………………… 57 第3節 第6学年の目標と内容……………………………………………… 84 第4章 指導計画の作成と内容の取扱い……………………………………… 118 1 指導計画作成上の配慮事項…………………………………………… 118 2 各学年にわたる内容の取扱いと指導上の配慮事項………………… 124 --2/128-- -1- 第1章 総説 1 改訂の経緯 21 世紀は,新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆ る領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」の 時代であると言われている。このような知識基盤社会化やグローバル化は,アイデ ィアなど知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させる一方で,異なる文化や 文明との共存や国際協力の必要性を増大させている。このような状況において,確 かな学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」をはぐくむことが ますます重要になっている。 他方,OECD(経済協力開発機構)のPISA調査など各種の調査からは,我 が国の児童生徒については,例えば, @ 思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用す る問題に課題, A 読解力で成績分布の分散が拡大しており,その背景には家庭での学習時間な どの学習意欲,学習習慣・生活習慣に課題, B 自分への自信の欠如や自らの将来への不安,体力の低下といった課題, が見られるところである。 このため,平成 17 年2月には,文部科学大臣から, 21 世紀を生きる子どもたち の教育の充実を図るため, 教員の資質・能力の向上や教育条件の整備などと併せて, 国の教育課程の基準全体の見直しについて検討するよう,中央教育審議会に対して 要請し,同年4月から審議が開始された。この間,教育基本法改正,学校教育法改 正が行われ,知・徳・体のバランス(教育基本法第2条第1号)とともに,基礎的 ・基本的な知識・技能,思考力・判断力・表現力等及び学習意欲を重視し(学校教 育法第 30 条第2項) ,学校教育においてはこれらを調和的にはぐくむことが必要で ある旨が法律上規定されたところである。中央教育審議会においては,このような --3/128-- -2- 教育の根本にさかのぼった法改正を踏まえた審議が行われ,2年 10 か月にわたる 審議の末,平成 20 年1月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学 校の学習指導要領等の改善について」答申を行った。 この答申においては,上記のような児童生徒の課題を踏まえ, @ 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂 A 「生きる力」という理念の共有 B 基礎的・基本的な知識・技能の習得 C 思考力・判断力・表現力等の育成 D 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保 E 学習意欲の向上や学習習慣の確立 F 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実 を基本的な考え方として,各学校段階や各教科等にわたる学習指導要領の改善の方 向性が示された。 具体的には,@については,教育基本法が約 60年振りに改正され, 21 世紀を切 り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指すという観点から,これからの教育 ひら の新しい理念が定められたことや学校教育法において教育基本法改正を受けて,新 たに義務教育の目標が規定されるとともに,各学校段階の目的・目標規定が改正さ れたことを十分に踏まえた学習指導要領改訂であることを求めた。Bについては, 読み・書き・計算などの基礎的・基本的な知識・技能は,例えば,小学校低・中学 年では体験的な理解や繰り返し学習を重視するなど,発達の段階に応じて徹底して 習得させ,学習の基盤を構築していくことが大切との提言がなされた。この基盤の 上に,Cの思考力・判断力・表現力等をはぐくむために,観察・実験,レポートの 作成,論述など知識・技能の活用を図る学習活動を発達の段階に応じて充実させる とともに,これらの学習活動の基盤となる言語に関する能力の育成のために,小学 校低・中学年の国語科において音読・暗唱,漢字の読み書きなど基本的な力を定着 させた上で,各教科等において,記録,要約,説明,論述といった学習活動に取り 組む必要があると指摘した。また,Fの豊かな心や健やかな体の育成のための指導 の充実については,徳育や体育の充実のほか,国語をはじめとする言語に関する能 --4/128-- -3- 力の重視や体験活動の充実により,他者,社会,自然・環境とかかわる中で,これ らとともに生きる自分への自信を持たせる必要があるとの提言がなされた。 この答申を踏まえ,平成 20年3月 28日に学校教育法施行規則を改正するととも に,幼稚園教育要領,小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を公示した。小 学校学習指導要領は,平成 21年4月1日から移行措置として算数,理科等を中心 に内容を前倒しして実施するとともに,平成 23年4月1日から全面実施すること としている。 2 社会科改訂の趣旨 このたびの小学校社会科の改訂は,前述した中央教育審議会の答申を踏まえて行わ れたものである。 答申の中で,社会科,地理歴史科,公民科の改善の基本方針については,次のよう に示されている。 ()改善の基本方針 ○ 社会科,地理歴史科,公民科においては,その課題を踏まえ,小学校,中 学校及び高等学校を通じて,社会的事象に関心をもって多面的・多角的に考 察し,公正に判断する能力と態度を養い,社会的な見方や考え方を成長させ ることを一層重視する方向で改善を図る。 ○ 社会的事象に関する基礎的・基本的な知識, 概念や技能を確実に習得させ, それらを活用する力や課題を探究する力を育成する観点から,各学校段階の 特質に応じて,習得すべき知識,概念の明確化を図るとともに,コンピュー タなども活用しながら,地図や統計など各種の資料から必要な情報を集めて 読み取ること,社会的事象の意味,意義を解釈すること,事象の特色や事象 間の関連を説明すること,自分の考えを論述することを一層重視する方向で 改善を図る。 --5/128-- -4- ○ 我が国及び世界の成り立ちや地域構成,今日の社会経済システム,様々な 伝統や文化,宗教についての理解を通して,我が国の国土や歴史に対する愛 情をはぐくみ,日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きるとと もに,持続可能な社会の実現を目指すなど,公共的な事柄に自ら参画してい く資質や能力を育成することを重視する方向で改善を図る。 この基本方針の中では,児童生徒が社会的事象に関心をもって進んでかかわり,児 童生徒の発達の段階に応じて,それらの意味や働きを多面的・多角的に考え,公正に 判断できるようにするとともに,児童生徒一人一人に社会的な見方や考え方が次第に 養われるようにすることを一層求めている。また,児童生徒が社会的事象に関する基 礎的・基本的な知識,概念や技能を確実に習得し,それらを活用する力や課題を探究 する力を身に付けていくために,各学校段階の特質に応じて,習得すべき知識,概念 や技能を明確にするとともに,各種の資料を効果的に活用し,社会的事象の意味など を解釈したり事象の特色や事象間の関連を説明したりするなどの言語活動を重視して いる。さらには,我が国の国土や歴史に対する愛情をはぐくみ,日本人としての自覚 をもって国際社会で主体的に生きるとともに,持続可能な社会の実現を目指すなど, 公共的な事柄に自ら参画していく資質や能力を育成することを目指している。 次に,答申では,上記の基本方針を踏まえて,小学校社会科における改善の具体的 事項について,以下のように示している。 ()改善の具体的事項 (小学校) ○ 生活科の学習を踏まえ,児童の発達の段階に応じて,地域社会や我が国の 国土,歴史などに対する理解と愛情を深め,社会的な見方や考え方を養い, 身に付けた知識,概念や技能などを活用し,よりよい社会の形成に参画する 資質や能力の基礎を培うことを重視して改善を図る。 その際,作業的,体験的な学習や問題解決的な学習を一層充実させること により,学習や生活の基盤となる知識・技能を習得させるとともに,それら --6/128-- -5- を活用して観察・調査したり,各種の資料から必要な情報を集めて読み取っ たりしたことを的確に記録し,比較・関連付け・総合しながら再構成する学 習や考えたことを自分の言葉でまとめ伝え合うことによりお互いの考えを深 めていく学習の充実を図る。 (ア) 広い視野から地域社会や我が国の国土に対する理解を一層深め,日本人と しての自覚をもって国際社会で主体的に生きていくための基盤となる知識・ 技能を身に付けることを重視して改善を図る。例えば,地図帳や地球儀の活 用を一層重視する。また, 47 都道府県の名称と位置,世界の主な大陸や海 洋,主な国の名称と位置などを調べる学習を新たに加え,自分たちの住む県 (都,道,府)の位置,世界の中での我が国の位置及び領土をとらえること ができるようにする。 (イ) 我が国の歴史や文化を大切にし,日本人としての自覚をもつようにすると ともに,持続可能な社会の実現など,よりよい社会の形成に参画する資質や 能力の基礎を培うことを重視して改善を図る。例えば,縄文土器が使われて いたころの人々のくらしに関する内容を新たに加えたり,歴史的事象との関 連で取り上げる代表的な文化遺産を例示したりするなど,伝統や文化に関す る内容の充実を図る。また,社会生活を営む上で大切なルールや法及び経済 に関する基礎となる内容の充実を図るとともに,我が国の情報通信に関する 内容について,高度情報化の進展を踏まえつつ学習のねらいを一層明確にす る観点から改善を図る。 さらに,我が国の国土や地域に関する内容について, 環境保全,防災及び伝統や文化,景観,産物などの地域資源の保護・活用な どの観点を重視して再構成する。 このように,小学校社会科においては,前述した社会科,地理歴史科,公民科の改 善の基本方針を受け,地域社会や我が国の国土,歴史などに対する理解と愛情を深め ることを通して,社会的な見方や考え方を養い,そこで身に付けた知識,概念や技能 などを活用し,よりよい社会の形成に参画する資質や能力の基礎を培うことを重視し ている。 --7/128-- -6- そのために,広い視野から地域社会や我が国の国土に対する理解を一層深め,日本 人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きていくための基盤となる知識・技能 を身に付けることや,我が国の歴史や文化を大切にし,日本人としての自覚をもつよ うにするとともに,持続可能な社会の実現など,よりよい社会の形成に参画する資質 や能力の基礎を培うことを重視して,新たに必要となる内容を加えたり,内容の再構 成を図ったりすることを求めている。 また,実際の授業では,問題解決的な学習などを一層充実させることや,観察・調 査や資料活用を通して必要な情報を入手し的確に記録する学習,それらを比較・関連 付け・総合しながら再構成する学習,考えたことを自分の言葉でまとめ伝え合うこと によりお互いの考えを深めていく学習など言語活動の充実を図ることを求めている。 3 社会科改訂の要点 (1) 目標の改善について 小学校社会科においては,中央教育審議会の答申を踏まえて,教科の目標の趣 旨は現行どおりとしているが,教育基本法の規定を踏まえて,これまでの「民主 的,平和的な(国家・社会の形成者) 」を「平和で民主的な(国家・社会の形成者) 」 と改めた。また,各学年の目標については,次のような視点を一層重視して改善 を図った。 ○ 児童が社会生活や我が国の国土に対する理解と自然災害の防止の重要性に ついての関心を深めることができるようにすること。 ○ 基礎的・基本的な知識・技能を活用し,学習問題を追究・解決することが できるようにするために,各学年の段階に応じて,観察,調査したり,地図 や地球儀,統計,年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用したり,社会 的事象の意味や働きなどについて考え,表現したりする力を育てること。 これらを受けて,各学年の目標をこれまでのように理解・態度・能力の三つの 側面から構成し,それらを統一的に育成することを目指して,次のような改善を --8/128-- -7- 図った。 〔第3学年及び第4学年〕 地域の人々の健康な生活を守るための諸活動の理解に関する目標については, 新たに「良好な生活環境」を加えた。 能力に関する目標については,これまでの「調べたこと」に「考えたこと」を 加え, 「考えたことを表現する」ことを一層重視した。 〔第5学年〕 理解と態度に関する目標について,これまでの目標の( 2 )を( 1 )に,目標の( 1 )を ( 2 )に,それぞれ改めた。 我が国の国土の様子と国民生活との関連の理解と態度に関する目標については, 新たに「国土の環境と国民生活との関連(について理解できるようにし) 」と「自 然災害の防止(の重要性について関心を深める) 」を加えた。また,我が国の産業 の様子と国民生活との関連の理解と態度に関する目標については,新たに「社会 の情報化の進展(に関心をもつようにする) 」を加えた。 能力に関する目標については,新たに「地球儀(を効果的に活用し) 」を加える とともに,これまでの「調べたこと」に「考えたこと」を加え,他の学年と同様 に「考えたことを表現する」ことを一層重視した。 [第6学年] 能力に関する目標については,新たに「地球儀(を効果的に活用し) 」を加える とともに,これまでの「調べたこと」に「考えたこと」を加え,他の学年と同様 に「考えたことを表現する」ことを一層重視した。 (2) 内容の改善について 内容の改善に当たっては,広い視野から地域社会や我が国の国土に対する理解 を一層深め,日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きていくための 基盤となる知識・技能を身に付けること,及び我が国の歴史や文化を大切にし, 日本人としての自覚をもつようにするとともに,持続可能な社会の実現など,よ りよい社会の形成に参画する資質や能力の基礎を培うことができるように,以下 --9/128-- -8- に示すとおり,内容の構成は現行どおりとし,内容の一部を見直し,新たに必要 となる内容を加えた。 @ 地域社会に関する学習の改善 第3学年及び第4学年においては,各学校が2年間を見通して,地域の実態に 応じて内容の順序や教材の選定等を工夫するなど,地域に密着した学習が弾力的 に展開できるよう,2学年分の内容をまとめて示すことは従来どおりとし,次の ような改善を図った。 ・身近な地域や市(区,町,村)の地形,土地利用,公共施設などに関する内容 については,新たに「古くから残る建造物」を加えた。なお,内容の取扱いに おいては,新たに「方位や主な地図記号について扱うものとする」ことを加え た。 ・地域の生産や販売に携わっている人々の働きに関する内容については,内容の 取扱いにおいて,これまでの「農家,工場,商店などの中から選択して取り上 げる」ことを, 「 『生産』については,農家,工場などの中から選択して取り上 げること」 , 「 『販売』については,商店を取り上げ」ることと改めた。また, これまでの「地域の生産活動を取り上げる場合には自然環境との関係について, 販売を取り上げる場合には消費者としての工夫について,それぞれ触れるよう にすること」を「 『販売』については,商店を取り上げ,販売者の側の工夫を 消費者の側の工夫と関連付けて扱うようにすること」と改めた。 ・地域の人々の健康を守るための諸活動に関する内容については,新たに「資料 を活用したり(して調べること) 」や, 「良好な生活環境(の維持と向上に役立 っていることを考えるようにする) 」を加えた。なお,内容の取扱いにおいては, 新たに「節水や節電などの資源の有効な利用についても扱うこと」や, 「社会生 活を営む上で大切な法やきまりについて扱うものとする」を加えた。 ・地域の人々の安全を守るための諸活動に関する内容については, 「災害及び事故 から人々の安全を守る工夫」を「災害及び事故の防止」と, 「連絡を取り合いな がら」を「連携して」と,それぞれ改めた。また,新たに「資料を活用したり (して調べること) 」や, 「地域の人々(の工夫や努力を考えるようにする) 」 , --10/128-- --10/128-- -9- 「関係機関は地域の人々と協力して,災害や事故の防止に努めていること」を 加えた。なお,内容の取扱いにおいては,新たに「社会生活を営む上で大切な 法やきまりについて扱うものとする」を加えた。 ・地域の文化財や年中行事に関する内容については, 「地域に残る(文化財や年中 行事)」を「地域の人々が受け継いできた(文化財や年中行事) 」と改めた。 ・県(都,道,府)の地形や産業,県内の特色ある地域に関する内容については, 新たに「我が国における自分たちの県(都,道,府)の地理的位置」や, 「 47 都道府県の名称と位置」を加えた。なお,内容の取扱いにおいては,県内の特 色ある地域の事例の取り上げ方について, 「地形から見て特色ある地域」を第5 学年に移行統合し,新たに「自然環境,伝統や文化などの地域の資源を保護・ 活用している地域」を加えた。 A 我が国の国土と産業に関する学習の改善 第5学年においては,第3学年及び第4学年で学習する内容との円滑な接続や 第5学年で学習する内容相互の関連を考慮し,内容の( 4 )を( 1 ),( 1 )を( 2 ),( 2 )を ( 3 ),( 3 )を( 4 )とし,内容の示し方の順序を改めるとともに,次のような改善を図 った。 ・我が国の国土の様子と国民生活との関連に関する内容については,新たに「地 球儀(を活用して調べ) 」や, 「世界の主な大陸と海洋,主な国の名称と位置」 , 「自然災害の防止」を加えた。また,これまでの「国土の位置」については, それと関連付けて取り上げてきた「領土」を内容に位置付け「我が国の位置と 領土」とし, 「気候条件」については,第3学年及び第4学年から移行した「地 形条件」を含めて「自然条件」と改めた。なお,内容の取扱いにおいては,こ れまでの「 『国土の位置』の指導については,我が国の領土と近隣の諸国を取り 上げるものとすること」を「 『主な国』については,近隣の諸国を含めて取り上 げるものとすること」と改めた。 ・我が国の情報産業などの様子と国民生活との関連に関する内容については,こ れまでの「我が国の通信などの産業」を「我が国の情報産業や情報化した社会 の様子」とし, 「これらの産業(は国民の生活に大きな影響を及ぼしている) 」 --11/128-- -10- を「情報化の進展(は国民の生活に大きな影響を及ぼしている) 」と改めた。 また,これまでの「これらの産業に従事している人々の工夫や努力」を「情報 化した社会の様子と国民生活とのかかわり」と改めた。なお,内容の取扱いに おいては,これまでの「放送,新聞,電信電話などの中から一つを取り上げる ものとする」を「放送,新聞などの中から選択して取り上げること」と改める とともに,情報化した社会の様子と国民生活とのかかわりについての事例の取 り上げ方として,新たに「情報ネットワークを有効に活用して公共サービスの 向上に努めている教育,福祉,医療,防災などの中から選択して取り上げるこ と」を加えた。 B 我が国の歴史に関する学習の改善 第6学年の我が国の歴史学習においては,我が国の伝統や文化についての理解 を深め,尊重する態度を育てることを一層重視して,室町文化,町人の文化や新 しい学問に関する内容をそれぞれ独立した項目とするなど,内容の示し方を再構 成するとともに,次のような改善を図った。 ・内容の取扱いにおいて,新たに「例えば,国宝,重要文化財に指定されている ものや,そのうち世界文化遺産に登録されているものなどを取り上げ,我が国 の代表的な文化遺産を通して学習できるように配慮すること」を加えた。 ・大和朝廷による国土の統一に関する内容については,新たに「狩猟・採集」を 加え,これまでの「農耕の始まり」を「狩猟・採集や農耕の生活」と改めた。 ・室町文化,町人の文化や新しい学問に関する内容については, 「『建造物や絵画』 , 『歌舞伎や浮世絵』及び『国学や蘭学』については,それぞれいずれかを選択 して取り上げることができること」という内容の取扱いを削除した。 C 我が国の政治の働きに関する学習の改善 我が国の政治の働きに関する内容については,これまでの「政治の制度や機構 に深入りしないように配慮すること」という内容の取扱いを削除し,新たに「国 会と内閣と裁判所の三権相互の関連,国民の司法参加」を加えた。また,地方公 共団体や国の政治の働きに関する事例については,これまでの「身近な公共施設 の建設,地域の開発,災害復旧の取組(などの中から選択して取り上げ) 」という --12/128-- -11- 内容の取扱いを「社会保障,災害復旧の取組,地域の開発(などの中から選択し て取り上げ) 」と改めた。 D 国際理解に関する学習の改善 我が国とつながりの深い国の人々の生活の様子,国際社会における我が国の役 割に関する内容については,新たに「地球儀(を活用したりして調べ) 」を加えた。 --13/128-- -12- 第2章 社会科の目標及び内容 第1節 社会科の目標 1 教科の目標 社会生活についての理解を図り,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を 育て,国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民 的資質の基礎を養う。 小学校の教育課程において,教科の役割や性格を明確にし,簡潔に表現しているの が,教科の目標である。 小学校社会科の教科の目標は, 「社会生活についての理解を図り,我が国の国土と 歴史に対する理解と愛情を育て」という部分と, 「国際社会に生きる平和で民主的な 国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」という部分から構成され ている。 このうち,前者は,小学校社会科のねらいの特色を示すものであり,小学校段階に おける社会科の理解や心情についてのねらいを示している。これは, 「社会生活につ いての理解を図り」という部分と, 「我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て」 という部分に分けることができる。 「社会生活についての理解を図り」とは,地域社 会や我が国における人々の社会生活の様子や特色などについて総合的な理解を深める ことを指し, 「我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て」ることと併せて,小 学校社会科の固有のねらいとなっている。 後者の「国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的 資質の基礎を養う」とは,小学校及び中学校の社会科の共通のねらいであり,小学校 及び中学校における社会科の指導を通して,その実現を目指す究極的なねらいを示し ている。 --14/128-- -13- このように,小学校社会科は,地域社会や我が国における人々の社会生活を広い視 野からとらえ総合的に理解することを通して,公民的資質の基礎を養うことを究極的 なねらいとしている教科である。 ここに,参考までに中学校社会科の教科の目標を示す。 「広い視野に立って,社会に対する関心を高め,諸資料に基づいて多面的・多角的 に考察し,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め,公民としての基礎的教養 を培い,国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的資 質の基礎を養う。 」 中学校と小学校の教科の目標を比較してみると,小学校の目標をより明確にとらえ ることができる。すなわち,小学校では前述のとおり社会生活を総合的に理解するこ とを通して,中学校では地理,歴史,公民の三分野のねらいの実現を通して,いずれ も公民的資質の基礎を養うことをねらいとしている。 このように,小学校,中学校の各学校段階における社会科の特質を確認するととも に,相互の関連を踏まえて指導に当たることが大切である。 (1) 社会生活についての理解 社会生活についての理解を図るということは,社会科の発足以来,教科の目標とし て位置付けられてきた。社会生活についての理解とは,人々が相互に様々なかかわり をもちながら生活を営んでいることを理解するとともに,自らが社会生活に適応し, 地域社会や国家の発展に貢献しようとする態度を育てることを目指すものである。 「社会生活」とは,社会とのかかわりの中での人々の生活のことであり,地域の地 理的環境や組織的な諸活動の様子などとともに,我が国の国土の地理的環境や産業と 国民生活との関連,我が国の歴史的背景などを含んでいる。 小学校の社会科は,第3学年からの4年間を通して社会生活について総合的に理解 することを通して,公民的資質の基礎を養うことねらいとしている。 (2) 我が国の国土と歴史に対する理解と愛情 「我が国の国土に対する理解と愛情」については,身近な地域や市(区 ,町,村), 県(都,道,府)の様子についての指導を踏まえて,我が国の国土の地理的環境とそ --15/128-- -14- こで営まれている産業の様子などの理解を図り,我が国の国土に対する愛情を育てる ことをねらいとしている。また, 「我が国の歴史に対する理解と愛情」についても, 市を中心とした地域の人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きの指導を 踏まえ,我が国の歴史に対する理解を深めるとともに,我が国の歴史に対する愛情を 育てることをねらいとしている。 以上のように,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情は,地域社会や我が国の国 土の地理的環境,産業の様子及び先人の働きなどについての学習を通して育てられる ものである。小学校社会科は,身近な地域や市や県についての理解を深め,地域社会 に対する誇りと愛情を育てるとともに,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育 てることをねらいとしているのである。 (3) 公民的資質の基礎 「公民的資質」とは,国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者,すな わち市民・国民として行動する上で必要とされる資質を意味している。したがって, 公民的資質は,平和で民主的な国家・社会の形成者としての自覚をもち,自他の人格 を互いに尊重し合うこと,社会的義務や責任を果たそうとすること,社会生活の様々 な場面で多面的に考えたり,公正に判断したりすることなどの態度や能力であると考 えられる。こうした公民的資質は,日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に 生きるとともに,持続可能な社会の実現を目指すなど,よりよい社会の形成に参画す る資質や能力の基礎をも含むものであると考えられる。 このように,社会科の学習では,社会生活についての理解を深め,我が国の国土と 歴史に対する理解と愛情を育てることを通して,国家・社会の形成者として,その発 展に貢献しようとする態度や能力を育てようとしているのである。社会科の究極的な ねらいである公民的資質の基礎を養うことは,教科としての社会科の基本的性格を一 層明確にしているものである。 したがって,平和で民主的な国家・社会の形成者としてふさわしい市民・国民を育 てるためには,各学年の目標に示されている理解,態度,能力に関する目標を統一的 に身に付けるようにすることが重要である。 児童一人一人に公民的資質の基礎を養うためには,社会科の学習指導において,地 --16/128-- -15- 域社会や我が国の国土,産業,歴史などに対する理解と愛情を育て,社会的な見方や 考え方を養うとともに,問題解決的な学習を一層充実させ,よりよい社会の形成に参 画する資質や能力の基礎を培うことを一層重視することが大切である。 2 学年の目標 (1) 学年の目標の構造 各学年の目標は,小学校社会科の究極的なねらいである公民的資質の基礎を養うこ とを実現するため,指導内容と児童の発達の段階を考慮し,理解,態度,能力の統一 的な育成を目指して,それぞれに関する目標から構成されている。 すなわち,第3学年及び第4学年では自分たちの住んでいる地域社会(市や県)の 学習を通して,第5学年では国民生活の舞台である国土の地理的環境とそこで営まれ ている産業に関する学習を通して,第6学年では我が国の歴史,政治及び国際理解に 関する学習を通して,児童に育成する理解,態度,能力に関する目標が掲げられてい る。 なお,第3学年及び第4学年においては共に地域社会を対象に学習が行われること を考慮して,目標が2学年まとめて示されている。これは,2年間を見通して指導計 画を作成することによって,学校や地域の実態により密着した特色ある社会科の学習 を弾力的に進めることができるようにするためである。各学校では,第3学年,第4 学年のそれぞれの目標を設定する必要がある。 (2) 各学年の目標の系統 各学年の目標の系統を,理解に関する目標,態度に関する目標,能力に関する目標 に分けて示すと,次のようになる。 @ 理解に関する目標 理解に関する目標については,第3学年及び第4学年,第5学年,第6学年の目標 の(1)及び( 2)の,それぞれ前半に示されている事項が該当する。 理解に関する目標を学年順に示してみると,次のようになる。 ○ 第3学年及び第4学年 --17/128-- -16- ・地域の産業や消費生活の様子,人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守 るための諸活動について理解できるようにする。 ・地域の地理的環境,人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについ て理解できるようにする。 ○ 第5学年 ・我が国の国土の様子,国土の環境と国民生活との関連について理解できるように する。 ・我が国の産業の様子,産業と国民生活との関連について理解できるようにする。 ○ 第6学年 ・国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について興味 ・関心と理解を深めるようにする。 ・日常生活における政治の働きと我が国の政治の考え方及び我が国と関係の深い国 の生活や国際社会における我が国の役割を理解できるようにする。 これらのことから分かるように,理解に関する目標については,理解する内容が, 次のように系統的,段階的に示されている。すなわち,第3学年及び第4学年での, 自分たちの住んでいる市や県を中心とした地域の人々の生活や諸活動,その生活舞台 である地域の地理的環境と,地域の人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の 働きについての理解から始まり,第5学年では,国民生活の舞台である国土とそこで 営まれている産業の様子についての理解へ,そして第6学年では,我が国の国家・社 会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産についての理解と,国民生 活の向上・発展にかかわりをもつ政治の働きと我が国の政治の考え方や,我が国と関 係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割の理解へと発展するようになって いる。 A 態度に関する目標 態度に関する目標については,第3学年及び第4学年,第5学年,第6学年の目標 の(1)及び( 2)の,それぞれ後半に示されている事項が該当する。 態度に関する目標は, 理解に関する目標において示されている事項と密接に関連しているものであり,児童 の発達の段階を踏まえて,それとのかかわりで系統的,段階的に示されている。 --18/128-- -17- 態度に関する目標を学年順に示してみると,次のようになる。 ○ 第3学年及び第4学年 ・地域社会の一員としての自覚をもつようにする。 ・地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。 ○ 第5学年 ・環境の保全や自然災害の防止の重要性について関心を深め,国土に対する愛情を 育てるようにする。 ・我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにする。 ○ 第6学年 ・我が国の歴史や伝統を大切にし,国を愛する心情を育てるようにする。 ・平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であるこ とを自覚できるようにする。 これらのことから分かるように,態度に関する目標については,第3学年及び第4 学年での,地域社会の一員としての自覚をもつことや,地域社会に対する誇りと愛情 を育てることから始まって,第5学年では,環境の保全や自然災害の防止の重要性, 我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつことや,国土に対する愛情を 育てること,そして第6学年では,我が国の歴史や伝統を大切にし,国を愛する心情 を育てるとともに,平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくこと が大切であることを自覚できるようにすることへと発展するようになっている。 B 能力に関する目標 能力に関する目標については,第3学年及び第4学年,第5学年,第6学年の目標 の( 3)に示されている事項が該当する。能力に関する目標は,各学年のすべての内容 とかかわっており,理解に関する目標や態度に関する目標と相互に関連をもちながら 育成されるものである。また,児童の発達の段階や学習経験に応じて,系統的,段階 的に育成されるものである。 能力に関する目標を学年順に示してみると,次のようになる。 ○ 第3学年及び第4学年 ・地域における社会的事象を観察,調査するとともに,地図や各種の具体的資料を --19/128-- -18- 効果的に活用し,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える 力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。 ○ 第5学年 ・社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や地球儀,統計などの各種の基礎 的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味について考える力,調べたことや考 えたことを表現する力を育てるようにする。 ○ 第6学年 ・社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や地球儀,年表などの各種の基礎 的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味をより広い視野から考える力,調べ たことや考えたことを表現する力を育てるようにする。 これらのことから分かるように,能力に関する目標については,児童の発達の段階 を踏まえて,次のように系統的,段階的に示されている。 観察力や資料活用力について,第3学年及び第4学年では,地域における社会的事 象を観察,調査するとともに,地図(絵地図を含む)や各種の具体的資料を効果的に 活用することができるようにすることを,第5学年では,社会的事象を具体的に調査 するとともに,地図や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用すること ができるようにすることを,そして第6学年では,社会的事象を具体的に調査すると ともに,地図や地球儀,年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用することができ るようにすることを求めている。 社会的な思考力や判断力について,第3学年及び第4学年では,地域社会の社会的 事象の特色や相互の関連などについて考える力を,第5学年では,社会的事象の意味 について考える力を,第6学年では,社会的事象の意味をより広い視野から考える力 を育てるようにすることを求めている。 表現力については,いずれの学年においても,調べたことや考えたことを表現する 力を育てるようにすることを求めている。 --20/128-- --20/128-- -19- 第2節 社会科の内容 社会科の内容については, 第3学年及び第4学年において地域社会に関する内容を, 第5学年において我が国の国土と産業に関する内容を,第6学年において我が国の歴 史と政治,国際理解に関する内容を,それぞれ取り上げている。 1 第3学年及び第4学年の内容 第3学年及び第4学年の内容は,地域社会の社会的事象について,次の六つの項目 から構成されている。 ア 身近な地域や市の地形,土地利用,公共施設などの様子 イ 地域の生産や販売に携わっている人々の働き ウ 地域の人々の健康な生活や良好な生活環境を守るための諸活動 エ 地域の人々の安全を守るための諸活動 オ 地域の古い道具,文化財や年中行事,地域の発展に尽くした先人の具体的事例 カ 県の地形や産業,県内の特色ある地域 第3学年及び第4学年では,これらの内容を取り上げ,自分たちの住んでいる地域 の社会生活を総合的に理解できるようにするとともに,地域社会の一員としての自覚 をもち,地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。 各学校においては,地域の実態を踏まえ,2年間を見通して,それぞれの学年でど の内容を取り上げ,どのように配列するのかを工夫することが大切である。 2 第5学年の内容 第5学年の内容は,我が国の国土や産業にかかわって,次の四つの項目から構成さ れている。 ア 我が国の国土の様子と国民生活との関連 イ 我が国の農業や水産業(食料生産)の様子と国民生活との関連 ウ 我が国の工業の様子と国民生活との関連 --21/128-- -20- エ 我が国の情報産業などの様子と国民生活との関連 なお,アの内容は国土の地理的環境の理解に関する内容であり,イからエの各内容 は,我が国の主な産業の様子や,それらと国民生活との関連を理解する内容である。 第5学年では,これらの内容を取り上げ,我が国の国土と産業の様子や特色を総合 的に理解できるようにするとともに,国土の環境保全や自然災害の防止の重要性,我 が国の産業の発展と社会の情報化の進展についての関心と国土に対する愛情を育てる ようにする。 3 第6学年の内容 第6学年の内容は,我が国の歴史,政治及び国際理解の三つの項目から構成されて いる。 ア 我が国の歴史上の主な事象 イ 我が国の政治の働き,日本国憲法の考え方 ウ 我が国とつながりの深い国の人々の生活の様子,国際社会における我が国の役 割 第6学年では,これらの内容を取り上げ,我が国の歴史や政治の働き,我が国と関 係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割について理解できるようにすると ともに,我が国の歴史や伝統を大切にし国を愛する心情や,平和を願う日本人として 世界の国々の人々と共に生きていこうとする自覚を育てるようにする。 --22/128-- -21- 第3章 各学年の目標及び内容 第1節 第3学年及び第4学年の目標と内容 1目標 ( 1) 地域の産業や消費生活の様子,人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全 を守るための諸活動について理解できるようにし,地域社会の一員としての自 覚をもつようにする。 これは,自分たちの住んでいる地域の産業や消費生活の様子,人々の健康な生活や 良好な生活環境及び安全を守るための諸活動について理解できるようにし,地域社会 の一員としての自覚をもつようにすることをねらいとしており,第3学年及び第4学 年の内容の( 2),(3 ),(4)及び( 6)の一部にかかわる理解と態度に関する目標を示して いる。 理解に関する目標にある「地域の産業や消費生活の様子」については,地域の人々 の生産活動や販売活動の様子には特色があることや,県(都,道,府)内には特色あ る産業があることを理解できるようにすることにねらいがある。 また,「人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守るための諸活動」につい ては,地域の人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守るために関係機関と地 域の人々が互いに協力していることや,関係機関に従事している人々や地域の人々が 様々な工夫や努力をしていること,それらの諸活動は地域の人々の健康で安全な生活 や良好な生活環境の維持と向上に役立っていることを理解できるようにすることにね らいがある。 態度に関する目標である「地域社会の一員としての自覚をもつようにする」とは, 児童一人一人が地域社会の一員であるという意識や,地域の人々の健康な生活や良好 な生活環境,安全な社会を実現していくために共に努力し,協力しようとする意識を --23/128-- -22- 育てるようにすることである。 この目標を実現するためには,内容の( 2 ),(3),( 4)及び( 6)の一部の指導を通して, 地域社会の人々は様々な工夫や努力,協力をしていること,その結果,人々の健康で 安全な生活や良好な生活環境の維持と向上が図られていることを理解できるようにす るとともに,地域社会の一員としての自覚を育てるようにすることが大切である。 ( 2) 地域の地理的環境,人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きに ついて理解できるようにし, 地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。 これは,自分たちの住んでいる身近な地域や市(区,町,村)や県(都,道,府) の地理的環境,人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解で きるようにし,地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにすることをねらいとして おり,第3学年及び第4学年の内容の( 1),( 5 )及び( 6 )にかかわる理解と態度に関す る目標を示している。 理解に関する目標にある「地域の地理的環境」については,身近な地域や市の様子 は場所によって違いがあることや,県の地理的位置や地形の様子,県内には自然環境 を保護・活用している地域が見られることを理解できるようにすることにねらいがあ る。 また,「人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働き」については,地域 の人々の生活の様子が大きく変化してきたことや,地域の人々が伝統や文化を保護・ 活用し,大切に守り受け継いでいること,地域の発展に尽くした先人の働きや苦心を 理解できるようにすることにねらいがある。 態度に関する目標である「地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする」とは, 現在及び過去の地域の人々の工夫や努力によって生み出された,地域社会の特色やよ さへの理解に基づいて,自分たちの住んでいる地域社会に対する誇りと愛情を育てる ようにすることである。 この目標を実現するためには,内容の( 1),( 5 )及び( 6 )の指導を通して,地域社会 --24/128-- -23- の特色が現在及び過去の人々の働きによって生み出されていることを理解できるよう にするとともに, 地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにすることが大切である。 ( 3) 地域における社会的事象を観察,調査するとともに,地図や各種の具体的資 料を効果的に活用し,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて 考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。 これは,第3学年及び第4学年の内容全体にかかわる能力に関する目標を示してお り,自分たちの住んでいる身近な地域や市(区,町,村) ,県(都,道,府)の学習 を通して,社会的事象を観察,調査するとともに,地図や各種の具体的資料を効果的 に活用し,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力や,調べ たことや考えたことを表現する力を育てるようにすることをねらいとしている。 「地域における社会的事象を観察,調査する」とは,地域の地理的環境や人々の社 会生活の様子を具体的にとらえたり,その特色や相互の関連などについて考えたりす るために, 地域における社会的事象を自分の目でよく見たり調べたりすることである。 例えば,次のような観察や調査を行うことが考えられる。 ・ありのままに観察する。 ・数や量に着目して調査する。 ・観点に基づいて観察,調査する。 ・他の事象と対比しながら観察,調査する。 ・まわりの諸条件と関係付けて観察,調査する。 「地図や各種の具体的資料を効果的に活用」するとは,地域の人々の社会生活の様 子をとらえたり,その特色や相互の関連などについて考えたりするために,地図(以 下,絵地図を含む)や各種の具体的資料を効果的に活用することである。資料を例に すると,第3学年及び第4学年においては,次のように活用することが考えられる。 ・資料から必要な情報を読み取る。 ・資料に表されている事柄の全体的な傾向をとらえる。 --25/128-- -24- ・必要な資料を収集する。 「地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力」 を育てるとは, 自分たちの住んでいる市と県内の他地域との比較などによって人々の生活の特色につ いて考える力や,地域の人々の生活と自然環境,伝統や文化などとの関連,願いを実 現していく地域の人々の工夫や努力,協力と生活や生活環境の維持と向上との関連, 地域の人々の生活や産業と国内の他地域や外国との結び付きなどについて考える力を 育てるようにすることである。 「調べたことや考えたことを表現する力」を育てるとは,地域における社会的事象 を観察,調査したり,地図や各種の具体的資料を効果的に活用したりして調べたこと や,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考えたことを表現する力 を育てるようにすることである。 この目標を実現するためには,第3学年及び第4学年の内容全体の指導を通して, 自分たちの住んでいる身近な地域や市,県の社会的事象を,学習問題に即して意欲的 に観察,調査したり,地図や各種の具体的資料を活用したりして調べることができる ようにする必要がある。また,調べたことや地域社会の社会的事象の特色や相互の関 連などについて考えたことを相手にも分かるように表現することができるようにする ことが大切である。 なお,能力に関する目標については,第3学年及び第4学年の2年間で目標を実現 するという趣旨に基づき,児童の発達の段階や学習経験に応じて,系統的,段階的に 育てていくことが大切である。 --26/128-- -25- 2内容 ( 1) 自分たちの住んでいる身近な地域や市(区,町,村)について,次のことを 観察,調査したり白地図にまとめたりして調べ,地域の様子は場所によって違 いがあることを考えるようにする。 「自分たちの住んでいる身近な地域や市(区,町,村) 」とは,自分たちが通う学 校の周りの地域や自分たちの住んでいる市を指している。身近な地域とは,地形の様 子,土地の使われ方,市街地の広がり,主な公共施設のある場所など,児童が直接, 観察できる範囲である。ここでは,学校の周りの地域の様子を調べ,それに続けて市 といった行政的な範囲に広げていくようにする必要がある。市の範囲や広がりをとら えさせることは,生活舞台である地域社会の生産や販売,健康な生活や良好な生活環 境及び安全を守るための諸活動それぞれにおける他地域との結び付きや協力の様子を 理解する上で基礎となるものである。 なお,ここで示している区とは,東京都の特別区( 23区)を指している。 「次のこと」とは, 「身近な地域や市(区,町,村)の特色ある地形,土地利用の 様子,主な公共施設などの場所と働き,交通の様子,古くから残る建造物など」を指 している。これらは,自分たちの住んでいる身近な地域や市について学習する際に調 べる具体的な対象である。 「観察,調査したり白地図にまとめたりして調べ」とは,ここでの学習の仕方を示 している。身近な地域の様子については,児童の発達の段階や学習経験を十分に考慮 して,社会的事象を観察したり,聞き取りなどの調査を行ったりして,その結果を絵 地図や地図記号を使った平面地図にまとめる活動を行うようにする。市の様子につい ては,市の特色ある地形や土地利用などが見られる場所の地図や写真などを活用して 調べ,白地図に書き表す活動が考えられる。 「地域の様子は場所によって違いがあることを考えるようにする」とは,観察,調 査したり,白地図にまとめたりしたことをもとにして,身近な地域や市の様子は,場 --27/128-- -26- 所によって違いがあることを具体的に考えることができるようにすることである。こ こでいう場所による違いとは,例えば,土地の高低や海岸沿いなど地形的な条件によ るものや,駅前,大きな道路に面したところ,新興住宅地など社会的な条件によるも のが考えられる。 ア 身近な地域や市(区,町,村)の特色ある地形,土地利用の様子,主な公共 施設などの場所と働き,交通の様子,古くから残る建造物など ここでは,自分たちの住んでいる身近な地域や市について学習する際に,地域の様 子は場所によって違いがあることを考える手掛かりとして,身近な地域や市の特色あ る地形,土地利用の様子,主な公共施設などの場所と働き,交通の様子,古くから残 る建造物などを調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導する 際には,次のことをおさえる必要がある。 「身近な地域や市(区,町,村)の特色ある地形」を調べるとは,土地の低いとこ ろや高いところ,広々と開けた土地や山々に囲まれた土地,川の流れているところや 海辺に面したところなどに着目し,観察,調査したり地図などを活用したりして,自 分たちの住んでいる身近な地域や市の土地の様子を具体的に調べ,白地図に書き表す ことである。 「土地利用の様子」を調べるとは,田や畑の広がり,住宅や商店,工場の分布など に着目し,観察,調査したり地図などを活用したりして,身近な地域や市で生活して いる人々がその地域の土地をどのように利用しているのかを具体的に調べ,白地図に 書き表すことである。 その際,特色ある地形や交通などの様子と結び付けて,身近な地域や市の土地利用 は地形的な条件や社会的な条件ともかかわりがあることに気付くようにする。 「主な公共施設などの場所と働き」を調べるとは,身近な地域や市で生活している 人々が利用する主な公共施設などを取り上げ,観察,調査したり地図などを活用した りして,施設の名称と位置,働きなどを調べ,白地図に書き表すことである。 ここで取り上げる施設としては,例えば,市(区)役所や町(村)役場をはじめ, --28/128-- -27- 学校,公園,公民館,図書館,児童館,体育館,美術館,博物館,郷土資料館,文化 会館,消防署,警察署,裁判所,検察庁などの公共施設に加え,駅,病院,福祉施設, デパート,スーパーマーケット,銀行など,多くの市民が利用している施設が考えら れる。 「交通の様子」を調べるとは,身近な地域や市で生活している人々などが利用して いる主な道路や鉄道などを取り上げ,観察,調査したり地図などを活用したりして, それらの名称や主な経路などを具体的に調べ,白地図に書き表すことである。 交通の様子について調べる際には,身近な駅やバス停とその周りの様子を観察,調 査したり電車やバスなどの路線図や時刻表を手掛かりにしたりして,自分たちの住ん でいる市と近隣の市との結び付きに気付くようにすることが考えられる。また,主な 道路と市内の工場の分布,主な駅と商店の分布など,土地利用の様子を交通の様子と 関連付けて考え,相互のかかわりに気付くようにすることも考えられる。 「古くから残る建造物」を調べるとは,身近な地域や市に古くから残る建造物を取 り上げ,観察したり聞き取り調査を行ったりして,その位置や昔の様子,いわれなど を調べ,白地図に書き表すことである。 ここで取り上げる建造物としては,例えば,神社,寺院,伝統的な家屋などが考え られる。また,地域の特色に応じて門前町,城下町,宿場町などの伝統的な家並を取 り上げることも考えられる。 実際の指導に当たっては,例えば,屋上や小高い山など高いところから身近な地域 の景観を展望,観察したり,市の鳥瞰図や立体地図,空中(航空)写真などを活用 ちょ うかん したりして,身近な地域の絵地図から,市全体の平面地図へ無理なく移行するよう配 慮する必要がある。また,市全体を表す地図を用いて自分たちの学校や学校のある地 域が市のどのあたりにあるのかを確かめその位置を言い表す活動や,身近な地域と市 全体の地形や土地利用の特徴を比べたり類似点や相違点を整理したりする活動を通し て,身近な地域や市全体の地理的環境について理解を深めるようにすることが大切で ある。 これらの学習を通して,地域の様子は場所によって違いがあることを考えることが できるようにする。 --29/128-- -28- (内容の取扱い) ( 1) 内容の(1) については,方位や主な地図記号について扱うものとする。 これは,内容の( 1)の指導において,方位や主な地図記号について扱うようにす ることを示したものである。 ここでは,自分たちの住んでいる身近な地域や市の様子に関する内容の指導におい て,観察,調査した結果を地図に表したり地図を読み取ったりする際に必要となる方 位や主な地図記号を理解し活用できるようにすることを求めている。 方位については,四方位と八方位を扱う。その際,児童の実態等を考慮に入れ,最 初に四方位を取り上げ,八方位については,ここでの学習も含めて第4学年修了まで に身に付けるようにする。 主な地図記号については,身近な地域の様子を地図に表したり,地図から市の様子 を読み取ったりする際に必要なものを扱うようにする。具体的には,取り上げた公共 施設などとの関連に留意して,学校,警察署,消防署,工場,神社,寺院,市役所や 町役場などの建物・施設にかかわるもの,田,畑,果樹園などの土地利用にかかわる もの,鉄道,駅,道路などの交通にかかわるものが考えられる。 --30/128-- --30/128-- -29- ( 2) 地域の人々の生産や販売について,次のことを見学したり調査したりして調 べ,それらの仕事に携わっている人々の工夫を考えるようにする。 「地域の人々の生産や販売」とは,身近な地域や市(区,町,村)の人々の農作物 や工業製品などの生産に関する仕事や販売に関する仕事を指している。地域の人々の 生産に関する仕事については,農作物や工業製品をつくる仕事のほかに,木を育てる 仕事,魚や貝などを採ったり育てたりする仕事などが考えられる。 「次のこと」とは, 「地域には生産や販売に関する仕事があり,それらは自分たち の生活を支えていること」 「地域の人々の生産や販売に見られる仕事の特色及び国内 の他地域などとのかかわり」の二つを指している。これらは,地域の人々の生産や販 売について学習する際に調べる具体的な対象である。 「見学したり調査したりして調べ」とは,ここでの学習の仕方を示している。ここ では,地域の人々の生産や販売の様子を見学して調べることや,生産や販売の仕事に 携わっている人々から話を聞いて調べること,原材料や商品の仕入先や生産物の出荷 先,働く人の通勤圏などを聞き取り調査することが考えられる。 「それらの仕事に携わっている人々の工夫を考えるようにする」とは,農作物や工 業製品などの生産に関する仕事や販売に関する仕事に携わっている人々が,それぞれ の仕事の特色に応じて,他地域などとのかかわりをもちながら,様々な工夫をしてい ることを具体的に考えることができるようにすることである。 ア 地域には生産や販売に関する仕事があり,それらは自分たちの生活を支えて いること。 ここでは,地域の人々の生産や販売について学習する際に,それらの仕事に携わっ ている人々の工夫を考える手掛かりとして, 地域には生産や販売に関する仕事があり, それらは自分たちの生活を支えていることを調べる対象として挙げている。ここに示 された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 --31/128-- -30- 「地域には生産や販売に関する仕事があること」を調べるとは,自分たちの住んで いる身近な地域や市の人々の生産や販売に関する仕事の種類や分布を取り上げ,身近 な地域や市には生産や販売に関する様々な仕事があることを具体的に調べることであ る。 ここで取り上げる生産に関する仕事としては,米や野菜,果物などをつくる農家の 仕事や物をつくる工場の仕事などが, また, 販売に関する仕事としては近所の小売店, スーパーマーケット,コンビニエンスストア,デパート,移動販売などの日常生活に 必要な商品を販売する仕事が考えられる。 「それらは自分たちの生活を支えていること」を調べるとは,地域の生産や販売に 関する仕事と自分たちの生活とのかかわりについて取り上げ,自分たちの住んでいる 身近な地域や市の人々の生産や販売に関する仕事が自分たちの生活を支えていること などを具体的に調べることである。 ここでは,生産に関する仕事が自分たちの市の産業として地域に根ざしていること や,地域で生産されている物が自分たちの生活に使われていること,地域の商店など から自分たちの生活に必要なものを購入したりサービスを受けたりしていること,工 場などが地域の人々の働く場所になっていることなどを取り上げることが考えられ る。 実際の指導に当たっては,見学や調査,作業的な活動などを取り入れて具体的に調 べるようにすることが大切である。例えば,市内の農家や工場,商店などの分布につ いて調査したり,資料を活用したりして白地図にまとめる活動が考えられる。また, 農家や工場,商店の仕事の様子を観察したり仕事に携わっている人から話を聞いたり する活動を通して,生産や販売の仕事の工夫と自分たちの生活とのかかわりについて 気付くようにすることも考えられる。なお,販売の仕事と自分たちの生活とのかかわ りを調べる学習においては,個人のプライバシーに十分配慮する必要がある。 これらの学習を通して,地域の生産や販売の仕事に携わっている人々の工夫を考え る手掛かりにする。 --32/128-- -31- イ 地域の人々の生産や販売に見られる仕事の特色及び国内の他地域などとのか かわり ここでは,地域の人々の生産や販売について学習する際に,それらの仕事に携わっ ている人々の工夫を考える手掛かりとして,地域の人々の生産や販売に見られる仕事 の特色及び国内の他地域などとのかかわりを調べる対象として挙げている。ここに示 された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「地域の人々の生産や販売に見られる仕事の特色」を調べるとは,地域の人々の生 産活動や販売の仕事に見られる工夫を取り上げ,それぞれの仕事の特色を具体的に調 べることである。 農家の仕事については地形や気候など自然条件とのかかわり,施設・設備,働く人 の仕事の進め方,生産物の販売などに見られる仕事の工夫を,工場の仕事については 原材料の仕入,生産のおよその工程,働く人の服装や仕事の進め方,製品の販売など に見られる仕事の工夫を,それぞれ取り上げることが考えられる。また,商店などの 販売の仕事については商品の品質管理,売り場での並べ方や値段の付け方,宣伝の仕 方などに見られる仕事の工夫を取り上げることが考えられる。その際,販売者の側の 工夫と関連付けて消費者の側の工夫を取り上げるようにする。 「国内の他地域などとのかかわり」を調べるとは,原材料や商品の仕入,生産物の 出荷,働く人の通勤圏などに見られる国内の他地域などとの結び付きを取り上げ,地 域の人々の生産や販売の仕事が様々な面で国内の他地域などとかかわりをもっている ことを具体的に調べることである。 国内の他地域などとのかかわりについて取り上げる視点としては,人と物の二つが 考えられる。人によるかかわりについては,地域の工場で働く人や商店に買い物に来 る人が,自分たちの市以外のところに住んでいる場合がある。物によるかかわりにつ いては,自分たちの市の生産物が他の市へ出荷されたり,工場の原材料や商店の商品 が他の市で生産されたりしている。このような他地域とのかかわりは,県内はもとよ り広く国内の他地域や外国にも及ぶ場合がある。これらのことに留意して地域の人々 --33/128-- -32- の生産や販売に見られる国内の他地域などとのかかわりを具体的に調べることが大切 である。 実際の指導に当たっては,生産については農家や工場などの中から選択して,販売 については商店の仕事をそれぞれ取り上げ,学習が具体的に展開できるようにする。 例えば,農家や工場,商店などの仕事を見学して働く人の様子を具体的に調べる活動 が考えられる。また,聞き取り調査などを通して人や物による他地域との結び付きを 調べ,白地図にまとめる活動も考えられる。 これらの学習を通して,地域の生産や販売の仕事に携わっている人々の工夫を考え ることができるようにする。 (内容の取扱い) (2) 内容の(2)のイについては,次のとおり取り扱うものとする。 ア 「生産」については,農家,工場などの中から選択して取り上げること。 イ 「販売」については,商店を取り上げ,販売者の側の工夫を消費者の側の 工夫と関連付けて扱うようにすること。 ウ 「国内の他地域など」については,外国とのかかわりにも気付くよう配慮 すること。 内容の取扱いの( 2)のアは,内容の( 2)のイの指導において,取り上げる地域の生産 活動の範囲を示したものである。 地域の生産活動については,例えば,地域の実態に応じた学習が展開できるか,身 近な地域や市の人々の仕事の特色を具体的にとらえることができるかなどに留意し, 農家の仕事,工場の仕事,木を育てる仕事,魚や貝などを採ったり育てたりする仕事 などの中から一つを取り上げることが考えられる。 内容の取扱いの( 2 )のイは,内容の( 2)のイの「販売」については,商店を取り上げ, 販売者の側の工夫を消費者の側の工夫と関連付けて扱うようにすることを示したもの --34/128-- -33- である。 ここでは,消費者の信頼を損なうことなく売上げを高めるための販売者の工夫は, 商品の品質や価格などを考えて店や商品を選んで購入している消費者の工夫にも結び 付いていることについて指導することが考えられる。 内容の取扱いの( 2)のウは,内容の( 2)のイの「国内の他地域など」については県 (都,道,府)内や国内の他地域だけでなく,外国ともかかわりがあることにも気付 くように配慮することを示したものである。 ここでは,例えば,生産活動における原材料の仕入先や生産物の出荷先,販売にお ける商品の仕入先を調べる際,それぞれにおいて結び付きの見られる県や国の名称と 位置を地図などで確かめる活動を行い,生産や販売を通して自分たちの地域が県内だ けでなく国内の他地域や外国ともかかわりがあることに気付くように配慮して指導す る必要がある。 --35/128-- -34- ( 3) 地域の人々の生活にとって必要な飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理 について,次のことを見学,調査したり資料を活用したりして調べ,これらの 対策や事業は地域の人々の健康な生活や良好な生活環境の維持と向上に役立っ ていることを考えるようにする。 「地域の人々の生活にとって必要な飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理」と は,地域社会の人々の健康な生活や良好な生活環境の維持と向上を図る上で欠かすこ とのできない飲料水,電気,ガスの確保,及びごみ,下水などの廃棄物の処理にかか わる対策や事業を指している。 飲料水の確保については,水源を確保するための対策や水源地から各家庭や工場な どに供給されるまでの事業を,電気の確保については,発電に必要なエネルギー源を 確保するための対策や発電所から各家庭や工場などに送電されるまでの事業を,ガス の確保については,原料の確保や保安にかかわる対策やガスを製造する工場から各家 庭や工場などに供給されるまでの事業を,また,ごみや下水などの廃棄物については, その処理にかかわる対策や事業を,それぞれ指している。 「次のこと」とは, 「飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理と自分たちの生活 や産業とのかかわり」 「これらの対策や事業は計画的,協力的に進められていること」 の二つを指している。これらは,地域の人々の生活にとって必要な飲料水,電気,ガ スの確保や廃棄物の処理について学習する際に調べる具体的な対象である。なお,飲 料水,電気,ガスについては,それらの中から一つを,廃棄物の処理については,ご み,下水のいずれかを,それぞれ選択して取り上げるようにする。 「見学,調査したり,資料を活用したりして調べ」とは,ここでの学習の仕方を示 している。ここでは,飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理にかかわる対策や事 業を進める上で欠かすことのできないダムや貯水池,浄水場,発電所,ガスの製造工 場,清掃工場,下水処理場などの施設を見学したり,そこで働く人々から聞き取り調 査したりする活動が考えられる。 「これらの対策や事業は地域の人々の健康な生活や良好な生活環境の維持と向上に --36/128-- -35- 役立っていることを考えるようにする」とは,飲料水,電気,ガスについては,それ らの安定供給を図るために,また,廃棄物の処理については,それらを衛生的に処理 するために,それぞれ様々な対策や事業が広く他地域の人々の協力を得ながら計画的 に進められていることや,そのことによって地域の人々が住みよい環境の中で健康な 生活を営むことができることを考えるようにすることである。 ア 飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理と自分たちの生活や産業とのかか わり ここでは,地域の人々の生活にとって必要な飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の 処理について学習する際に,これらの対策や事業が地域の人々の健康な生活や良好な 生活環境の維持と向上に役立っていることを考える手掛かりとして,飲料水,電気, ガスの確保や廃棄物の処理と自分たちの生活や産業とのかかわりを調べる対象として 挙げている。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要 がある。 「飲料水,電気,ガスの確保」と「自分たちの生活や産業とのかかわり」を調べる とは,地域の人々による飲料水,電気,ガスの使われ方や使用量などを取り上げ,人 々の生活や産業に欠かすことのできない飲料水,電気,ガスがいつでも使えるように 必要な量が確保されていることを具体的に調べることである。 飲料水については,炊事,洗濯,風呂などの家庭生活や商店,工場などの産業,学 校など様々な場面で使われ,市全体では大量に使用されていることや,必要な量の飲 料水がいつでも使えるように確保されていることなどを取り上げることが考えられ る。電気やガスの場合も飲料水と同様に,生活や産業に欠かすことができないもので あることや,必要な量の電気やガスがいつでも使えるように確保されていることなど を取り上げることが考えられる。 「廃棄物の処理と自分たちの生活や産業とのかかわり」を調べるとは,地域の家庭, 学校,商店などから出される廃棄物の種類や量などを取り上げ,廃棄物の処理にかか わる対策や事業が地域の人々の健康な生活や良好な生活環境を守るために欠かすこと --37/128-- -36- ができないことを具体的に調べることである。 実際の指導に当たっては,飲料水,電気,ガスのいずれかを取り上げ,家庭や学校 など身近な生活における使われ方や使用量とその変化などを調べる活動が考えられ る。また,ごみ,下水のいずれかを取り上げ,廃棄物の行方を調査する活動や,処理 場に集められる廃棄物の量やその変化などを調べる活動が考えられる。なお,家庭に おける飲料水の使われ方や廃棄物の処理の仕方などを取り上げる際には,個人のプラ イバシーに十分配慮する必要がある。 これらの学習を通して,飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理にかかわる対策 や事業は地域の人々の健康な生活や良好な生活環境の維持と向上に役立っていること を考えることができるようにする。 イ これらの対策や事業は計画的,協力的に進められていること。 ここでは,地域の人々の生活にとって必要な飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の 処理について学習する際に,これらの対策や事業が地域の人々の健康な生活や良好な 生活環境の維持と向上に役立っていることを考える手掛かりとして,これらの対策や 事業は計画的,協力的に進められていることを調べる対象として挙げている。ここに 示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「これらの対策や事業は計画的,協力的に進められていること」を調べるとは,飲 料水,電気,ガスについては生活や産業に必要な量を常に確保し安定供給を図るため の対策や事業を,廃棄物の処理については健康な生活や良好な生活環境を維持するた めの対策や事業を,それぞれ取り上げ,これらの対策や事業が計画的に,広く他地域 の人々の協力を得ながら進められていることを具体的に調べることである。 飲料水の確保については,需要の増加に対して,水源を確保・維持するために森林 が保全されていること,ダムや浄水場などの建設が計画的に進められていること,そ れらの対策や事業は他の市や県の人々の協力を得ながら行われていること,地域の人 々も節水や水の再利用などに協力していることを取り上げることが考えられる。 電気の確保については,需要の増加に対して,主として火力,原子力,水力の発電 --38/128-- -37- 所から送り出される電気によって安定供給が図られていること,燃料や水資源の確保 のための対策や発電所から消費地に送電されるまでの事業が計画的に進められている こと,地域の人々が節電や太陽エネルギーの利用に努めるなどの工夫や協力をしてい ることを取り上げることが考えられる。その際,火力発電の燃料である液化天然ガス や重油,原子力発電の燃料であるウランなどを外国から輸入していること,火力発電 所や原子力発電所においては環境に配慮していることや安全性の確保に努めているこ とについて取り上げることも考えられる。ガスの確保については,原料の液化天然ガ スなどを外国から輸入していること,安全確保に努めていることなどを取り上げるこ とが考えられる。 廃棄物の処理については,増え続ける廃棄物の処理にかかわる対策や事業として, 廃棄物の処理の仕方の工夫,廃棄物を資源として活用する取組,最終処分場の確保に かかわる計画的,協力的な取組などを取り上げることが考えられる。その際,これら の対策や事業については,地域の人々はもとより広く他の市(区,町,村)や県(都, 道,府)の協力を得ながら進められていることにも触れるようにする。 実際の指導に当たっては,例えば,飲料水,電気,ガスを供給する仕事に携わる人 々から消費地に供給されるまでの対策や事業について話を聞いたり,浄水場や発電所 などの施設を見学したりして具体的に調べる活動,市(区)役所や町(村)役場,廃 棄物の処理施設の人から処理にかかわるきまりについて話を聞く活動,節水や節電, 廃棄物の再利用などを呼びかけるポスターや広報などを活用して資源の有効な利用の 具体的な取組やその必要性などを話し合う活動が考えられる。 これらの学習を通して,飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理にかかわる対策 や事業は,地域の人々の健康な生活や良好な生活環境の維持と向上に役立っているこ とを考えることができるようにする。 --39/128-- -38- (内容の取扱い) ( 3) 内容の( 3)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア 「飲料水,電気,ガス」については,それらの中から選択して取り上げ, 節水や節電などの資源の有効な利用についても扱うこと。 イ 「廃棄物の処理」については,ごみ,下水のいずれかを選択して取り上げ, 廃棄物を資源として活用していることについても扱うこと。 内容の取扱いの( 3 )のアは,内容の(3 )の指導において,取り上げる対象の範囲と「飲 料水,電気,ガス」について指導する際の取扱いについて示したものである。 ここでは,「飲料水,電気,ガス」の中から一つを選択して取り上げることが考え られる。また, 「節水や節電などの資源の有効な利用についても扱うこと」について は,例えば,家庭や学校,公共施設,会社や工場などで取り組んでいる節水や節電の ための工夫や努力を取り上げ,飲料水や電気をつくるために必要な資源には限りがあ ること,飲料水や電気,ガスなどの無駄な使い方を見直し有効に利用することが大切 であることに気付くようにすることが考えられる。これらの指導を通して,資源・エ ネルギー問題に対する関心をもち,自らも節水や節電に協力しようとする態度を育て るように配慮することが大切である。 内容の取扱いの( 3)のイは,内容の( 3)の指導において,取り上げる対象の範囲と廃 棄物の処理について指導する際の取扱いについて示したものである。 ここでは,ごみ,下水のいずれかを選択して取り上げる。また, 「廃棄物を資源と して活用していることについても扱うこと」については,例えば,ペットボトルやア ルミ缶などの資源ごみを分別収集し,資源として再利用したり,下水を処理浄化して 再利用したりするなど,廃棄物を資源として活用していることについて取り上げ,資 源ごみを回収して有効に活用することや再生された製品を利用することの大切さに気 付くようにする。これらの指導を通して,地域の環境保全に対する意識を高め,自ら も廃棄物の適切な処理や再利用などに協力しようとする態度を育てるように配慮する ことが大切である。 --40/128-- --40/128-- -39- (内容の取扱い) ( 5) 内容の(3 )及び(4)にかかわって,地域の社会生活を営む上で大切な法やきま りについて扱うものとする。 これは,内容の( 3)及び( 4 )の指導において,地域の社会生活を営む上で大切な法や きまりについて扱うようにすることを示したものである。 内容の( 3)については,例えば, 「廃棄物の処理」にかかわって,ごみの出し方や 生活排水の処理,資源の再利用などに関する法やきまりを取り上げるなど,地域の人 々の健康な生活や良好な生活環境の維持と向上を図るための法やきまりを扱うように する。 その際,例えば, 「廃棄物の処理」では,市役所や町役場や町内会などが地域の人 々と協力して,ごみの出し方や集積所などに関するきまりを決めていることや,地域 の人々が資源の再利用や生活排水の適正な処理などに関する法やきまりを守って生活 していることを取り上げ,法や自分たちが決めたきまりを守ることが地域の健康な生 活や良好な生活環境の維持と向上を図る上で大切であることに気付くようにする必要 がある。 --41/128-- -40- ( 4) 地域社会における災害及び事故の防止について,次のことを見学,調査した り資料を活用したりして調べ,人々の安全を守るための関係機関の働きとそこ に従事している人々や地域の人々の工夫や努力を考えるようにする。 「地域社会における災害及び事故の防止」とは,地域の消防署や警察署などの関係 機関に従事する人々が相互に連携し,地域の人々と協力して,災害や事故から人々の 安全を守る工夫や努力をしていることを指している。ここで取り上げる災害や事故と は,地域の人々の生命や財産を脅かす火災,風水害,地震などの災害,及び交通事故 と犯罪の事故や事件である。これらの災害や事故から人々の安全を守ることは,地域 社会での安全な生活を保障するものであり, 地域住民の強い願いに基づくものである。 「次のこと」とは, 「関係機関は地域の人々と協力して,災害及び事故の防止に努 めていること」と「関係の諸機関が相互に連携して,緊急に対処する体制をとってい ること」の二つを指している。これは,地域社会における災害や事故の防止について 学習する際に調べる具体的な対象である。なお,災害については,火災,風水害,地 震などの中から選択して取り上げ,事故の防止については,交通事故などの事故防止 と防犯を取り上げるようにする。 「見学,調査したり資料を活用したりして調べ」とは,ここでの学習の仕方を示し ている。ここでは,消防署や警察署などの関係機関を見学したり調査したりして具体 的に調べることが大切である。例えば,地域の消防署を見学し,そこにある様々な施 設・設備を観察したり,そこで働く人々から聞き取り調査を行ったりして,災害や事 故防止のための日常の取組,緊急事態に対する備え,災害や事故発生時の組織的な対 処などについて調べることが考えられる。また,消火栓やガードレール,水防倉庫, 飲料水や食料の備蓄倉庫, 緊急避難場所などの施設・設備の位置や働きなどを調査し, 地域における日ごろの備えを具体的に調べることも考えられる。 「人々の安全を守るための関係機関の働き」を考えるようにするとは,消防署や警 察署,市役所などの関係機関が,各部署の役割を生かし,平素から災害や事故の防止 に努めるとともに,火災,交通事故,犯罪など緊急事態が発生した時には一刻を争っ --42/128-- -41- て事態に対処していることを手掛かりにして,人々の安全を守るために関係機関がど のような働きをしているのかを具体的に考えることができるようにすることである。 「そこに従事している人々や地域の人々の工夫や努力を考えるようにする」とは, 災害や事故が発生した時には近隣の消防署や警察署に連絡し協力を得ていることはも とより,市(区)役所や町(村)役場,病院,放送局が協力していることや,消防団 や水防団など地域の人々が組織する諸団体が緊急事態に対処していることなど,関係 機関の働きとそこに従事している人々や地域の人々の工夫や努力を具体的に考えるこ とができるようにすることである。 ア 関係機関は地域の人々と協力して,災害や事故の防止に努めていること。 ここでは,地域社会における災害や事故から人々の安全を守るための関係機関の働 きとそこに従事している人々や地域の人々の工夫や努力を考える手掛かりとして,関 係機関は地域の人々と協力して,災害や事故の防止に努めていることを調べる対象と して挙げている。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる 必要がある。 「関係機関は地域の人々と協力して,災害や事故の防止に努めていること」を調べ るとは,災害の防止と事故の防止の事例をいずれも取り上げ,消防署や警察署などの 関係機関が地域の人々と協力して,災害や事故による被害を未然に防ぐ努力をしてい ることを具体的に調べることである。 災害の防止について,火災を取り上げた場合には,消防署を中心に,警察署,市役 所や町役場,病院,放送局,学校,電気・ガス・水を供給している機関などが普段か ら施設・設備の整備や点検,訓練,広報活動などに取り組み,火災の予防や発生時に 対する備えをしていることや,地域の人々が消防署への火災通報,避難訓練の実施, 地域の消防団による防火を呼びかける活動などの火災予防に協力していることを取り 上げることが考えられる。風水害を取り上げた場合には,国や県(都,道,府)の働 きや近隣の市(区,町,村)の協力により,がけ崩れの防止や河川改修,水防倉庫の 設置,避難場所の確保など,風水害を未然に防ぐ努力をしていることや,避難訓練の --43/128-- -42- 実施,地域の水防団による危険箇所の見回りや点検など,地域の住民が風水害防止に 協力していることを取り上げることが考えられる。地震を取り上げた場合には,国と 県と市の協力による地震情報の提供,緊急避難場所の指定や備蓄倉庫の設置,地震の 発生を想定した緊急時の連絡体制などの整備,及び救助計画,避難訓練などへの地域 の人々の協力と参加を取り上げることが考えられる。 事故の防止については,警察署が中心となって,消防署,市役所や町役場,病院, 放送局,地域の町内会や自治会,PTAその他関係の諸団体が協力,連携して交通安 全運動や防犯活動を展開していることや,PTAによる地域巡回, 「子ども110番 の家」など,地域の人々が事故防止や防犯に協力していることを取り上げることが考 えられる。なお,ここで事故の防止と防犯を取り上げるようにしているのは,地域の 人々の生命,身体,財産などを守るために活動している警察の働きについて理解でき るようにすることを意図していることに留意する必要がある。 実際の指導に当たっては,例えば,災害や事故に備えるための機関や施設・設備な どの位置や分布,働きなどを調査する活動や,消防署や警察署,市役所や町役場の職 員から聞き取り調査する活動が考えられる。また,地域の防災や防犯に協力している 人や消防団の仕事に従事している人から話を聞いたり,それらの活動の様子を視聴覚 資料で調べたりする活動も考えられる。その際,地域の安全は互いに協力したり共に 助け合ったりして守ること,自分も地域社会の一員として自分の安全は自分で守るこ と,が大切であることにも気付くように配慮する。 これらの学習を通して,人々の安全を守るための関係機関の働きとそこに従事して いる人々や地域の人々の工夫や努力を考えることができるようにする。 イ 関係の諸機関が相互に連携して,緊急に対処する体制をとっていること。 ここでは,地域社会における災害や事故から人々の安全を守るための関係機関の働 きとそこに従事している人々や地域の人々の工夫や努力を考える手掛かりとして,関 係の諸機関が相互に連携して,緊急に対処する体制をとっていることを調べる対象と して挙げている。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる --44/128-- -43- 必要がある。 「関係の諸機関が相互に連携して,緊急に対処する体制をとっていること」を調べ るとは,災害と事故の事例をいずれも取り上げ,消防署や警察署などの関係の諸機関 が相互に連携して,緊急事態が発生した時には一刻を争って事態に対処していること を具体的に調べることである。 災害について,火災を取り上げた場合には,その発生時において,関係の諸機関が 相互に連携して消火や救助に当たるなど,一刻を争って事態に対処していることを取 り上げることが考えられる。風水害を取り上げた場合には,その発生時において,関 係の諸機関が相互に連絡を取り合い,地域の人々を安全に避難させるために活動して いることを取り上げることが考えられる。地震を取り上げた場合には,その発生時に おいて,関係の諸機関が相互に連携して,地震情報の提供,被災者への救援や救助, 緊急避難場所の設営などを行い,地域の人々の生命を守り,安全を確保するために活 動していることを取り上げることが考えられる。 事故については,事故や犯罪の発生時において,警察署が中心となり,関係の諸機 関と連携して,事故や事件の処理・捜査に当たっていることを取り上げることが考え られる。 実際の指導に当たっては,例えば,消防署,警察や交番などを見学し,そこに従事 している人から話を聞いて調べる活動が考えられる。また,災害発生時の一刻を争う 対処の様子を視聴覚資料を活用したり資料を収集したりして調べる活動も考えられ る。 これらの学習を通して,地域の人々の安全を守るための関係機関の働きと,そこに 従事している人々の工夫や努力を考えることができるようにする。 --45/128-- -44- (内容の取扱い) ( 4) 内容の( 4 )の「災害」については,火災,風水害,地震などの中から選択し て取り上げ, 「事故の防止」については,交通事故などの事故防止や防犯を取 り上げるものとする。 これは,内容の( 4)の指導において, 「災害」を取り上げる際の対象の範囲,及び 「事故の防止」を取り上げる際の内容を示したものである。 「災害」については,地域の実態や児童の生活経験,関心などを踏まえて,火災, 風水害,地震などの中から一つを選択して取り上げることが考えられる。なお,地震 との関連で火災を取り上げるなど,関連的に扱うことも考えられる。例示した火災, 風水害,地震のほかに,がけ崩れや土石流,火山の噴火,津波などを取り上げること も考えられる。 また,「事故の防止」については,地域の人々の生命,身体,財産などを守るため に活動している警察の働きを理解できるようにするため,交通事故などの事故防止や 防犯を取り上げることとしている。 (内容の取扱い) ( 5) 内容の(3 )及び(4)にかかわって,地域の社会生活を営む上で大切な法やきま りについて扱うものとする。 これは,内容の( 3)及び( 4 )の指導において,地域の社会生活を営む上で大切な法や きまりについて扱うものとすることを示したものである。 内容の( 4)については,例えば, 「事故の防止」にかかわって,登下校のきまりや 交通事故の防止などに関する法やきまりを取り上げるなど,地域の人々の安全な生活 の維持と向上を図るための法やきまりを扱うようにする。 その際,例えば, 「事故の防止」では,地域の人々が関係機関と協力して法やきま --46/128-- -45- りを守ることを呼びかけたり子どもたちに教えたりして,地域の事故防止や防犯に努 めていることなどを取り上げ,法やきまりを守ることが地域の安全な生活を営む上で 大切であることに気付くようにする必要がある。 --47/128-- -46- ( 5) 地域の人々の生活について,次のことを見学,調査したり年表にまとめたり して調べ,人々の生活の変化や人々の願い,地域の人々の生活の向上に尽くし た先人の働きや苦心を考えるようにする。 「地域の人々の生活」とは,自分たちの祖先や地域の発展に尽くした先人の働きの 上に成り立っている地域の人々の生活の様子を指している。ここでは,その歴史的背 景に目を向け,「地域の人々の生活」の移り変わりについて学習する。 「次のこと」とは, 「古くから残る暮らしにかかわる道具,それらを使っていたこ ろの暮らしの様子」 「地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事」 「地域の発展 に尽くした先人の具体的事例」の三つを指している。これらは,地域の人々の生活の 移り変わりについて学習する際に調べる具体的な対象である。 なお, 取り上げる地域の範囲については, 調べる対象や事例によって違いが生じる。 例えば,「古くから残る暮らしにかかわる道具,それらを使っていたころの暮らしの 様子」と「地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事」を調べる際に,調べる対 象や事例が身近な地域に見られる場合には,市(区,町,村)を中心とした地域を範 囲にすることができる。また, 「地域の発展に尽くした先人の具体的事例」を調べる 際には,先人の働きが人々の生活に影響を及ぼした範囲を考慮し,また,適切な事例 が身近な地域や市に見られない場合には,県(都,道,府)内から選定することも考 えられる。 「見学,調査したり年表にまとめたりして調べ」とは,ここでの学習の仕方を示し ている。ここでは,博物館や郷土資料館などを見学し,道具を観察したり,それらの 道具が使われていたころの生活の様子,古くから伝わる文化財や年中行事の内容やい われなどを聞き取ったりすることや,調べたことを時間の経過に沿って整理し,今昔 の違いや移り変わりの様子をまとめたりすることなどが考えられる。 「人々の生活の変化」を考えるようにするとは,昔の道具やそれらを使っていたこ ろの暮らしの様子を調べることによって,地域の人々の生活の今昔の違いや変化,過 去の生活における人々の生活の知恵を考えることができるようにすることである。ま --48/128-- -47- た「人々の願い」を考えるとは,地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事には, 地域の発展やまとまりなどへの人々の願いが込められていることなどを考え,人々の 生き方に触れるようにすることである。さらに「地域の人々の生活の向上に尽くした 先人の働きや苦心を考えるようにする」とは,開発,教育,文化,産業などの地域の 発展に尽くした先人を取り上げ,それらの先人の働きや苦心が地域の人々の生活の向 上に大きな影響を及ぼしたことを具体的に考えることができるようにすることであ る。 こうした過去の生活における人々の知恵や願い,地域の発展に尽くした先人の働き について学習することは,地域の伝統や文化を受け継いできた人々の生き方に触れ, 地域社会に対する誇りと愛情を育てることにつながるものである。 ア 古くから残る暮らしにかかわる道具,それらを使っていたころの暮らしの様 子 ここでは,地域の人々の生活の変化を考える手掛かりとして,古くから残る暮らし にかかわる道具と,それらを使っていたころの暮らしの様子を調べる対象として挙げ ている。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要があ る。 「古くから残る暮らしにかかわる道具」を調べるとは,現在も残っている暮らしに 使われた昔の道具を取り上げ,道具の様子やそれらの使い方などを具体的に調べるこ とである。 ここで取り上げる道具は,日常の生活と密着した道具が適当である。例えば,暖房 に使われてきた道具を見ると,いろり,火鉢,こたつ,ストーブ,エアコンなどとい ろいろに変化してきている。ここでは,道具そのものの変遷を学習することで終わる ことなく,それに伴って,地域の人々の生活がどのように変化してきたのかを考える ことができるようにすることが大切である。 「それらを使っていたころの暮らしの様子」を調べるとは,古くから残る暮らしにか かわる道具を使っていたころの人々の暮らしの様子を取り上げ,地域の人々の生活が --49/128-- -48- 変わってきたことを具体的に調べることである。 暮らしを取り扱う時期については,例えば,地域の高齢者が子どものころ,父母が 子どものころ,及び現在の時期が考えられる。高齢者や父母から,古い道具を通して 子どものころの暮らしの様子を聞き取り,それらと現在の自分たちの生活の様子を比 べながら,地域の人々の生活が変化してきたことを考えるようにする。また,ここで は,現在の自分たちの生活は祖先の努力の上に成り立っているという歴史的背景に関 心をもつようにすることも大切である。 実際の指導に当たっては,社会科を学習する児童にとって初めての歴史的な内容で あることに配慮し,見学や体験を取り入れるなど,学習が具体的に展開できるように する必要がある。例えば,地域の博物館や郷土資料館などにある昔の道具を観察した り,高齢者や父母からかつて生活に使用していた道具の使い方を教わり体験したりす る活動が考えられる。 これらの学習を通して,過去の生活における人々の知恵や工夫に気付いたり,地域 の人々の生活の変化や人々の願いを考えたりするとともに,地域の変化や地域社会の 発展を願ってきた人々の生き方に触れるようにする。 イ 地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事 ここでは,地域の人々の願いを考える手掛かりとして,地域の人々が受け継いでき た文化財や年中行事を調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指 導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事」を調べるとは,古くから伝わる 文化財や年中行事を取り上げ,これらの内容やいわれ,地域の人々がそれらを大切に 保存し継承するための取組などを具体的に調べることである。 ここでは,民俗芸能などの文化財が地域の歴史を伝えるとともに,そこにはそれら の保存に取り組んでいる人々の努力が見られることや,地域の人々が楽しみにしてい る祭りなどの年中行事には地域の生産活動や町の発展,人々のまとまりなどへの願い が見られることなどを取り上げ,生活の安定と向上に対する地域の人々の願いや保存 --50/128-- --50/128-- -49- ・継承するための工夫や努力を考えることができるようにすることが大切である。 実際の指導に当たっては,例えば,文化財を見学,調査する活動や,文化財や年中 行事の保存・継承に携わる人から話を聞く活動,古くから伝統的に伝わっている行事 や節句などの様子を調べる活動が考えられる。また,実際に行事に参加したことのあ る児童の体験談を紹介し合う活動は,自分たちも地域の伝統や文化を受け継いでいく 一人であるという意識を養い,参加意欲を高めることにもなり,地域社会の一員とし ての自覚を育てることにつながるものである。 これらの学習を通して,地域の人々の願いを考えることができるようにする。 ウ 地域の発展に尽くした先人の具体的事例 ここでは,地域の人々の生活の向上に尽くした先人の働きや苦心を考える手掛かり として,地域の発展に尽くした先人の具体的事例を調べる対象として挙げている。こ こに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「地域の発展に尽くした先人の具体的事例」を調べるとは,開発,教育,文化,産業 などの面で地域の発展に尽くした先人の具体的事例のいずれかを取り上げ,地域の発 展に対する先人の願いや工夫・努力,苦心,地域の人々の生活が向上したことなどを 具体的に調べることである。 ここでは,用水路を開く,藩校や私塾を設ける,新聞を発刊する,新たに産業を興 すなど,地域の発展に貢献してきた人々が,強い信念をもって情熱を傾け,よりよい 生活を求めて努力したことや,これらの先人の働きや苦心によって地域の人々の生活 が向上したことなどを取り上げることが考えられる。 実際の指導に当たっては,先人の具体的事例を選択して取り上げ,学習が具体的に 展開できるようにする。例えば,博物館や郷土資料館などを訪ね,当時使われていた 道具を調べたり,実際に触れたり使ったりする活動を通して,先人の工夫や努力,当 時の人々の生活の様子などを具体的に調べることが考えられる。 これらの学習を通して,地域の人々の生活の向上に尽くした先人の働きや苦心を考 えることができるようにする。 --51/128-- -50- (内容の取扱い) ( 6) 内容の( 5 )のウの「具体的事例」については,開発,教育,文化,産業などの 地域の発展に尽くした先人の中から選択して取り上げるものとする。 これは,内容の( 5 )のウの「地域の発展に尽くした先人の具体的事例」の指導にお いて,取り上げる具体的事例の範囲を示したものである。 ここでの事例については,例えば,用水路の開削や農地の開拓などを行って地域を 興した人,藩校や私塾などを設けて教育を発展させた人,新聞社を興すなど文化を広 めた人,地域の農業・漁業・工業などの産業の発展に尽くした人など,開発,教育, 文化,産業などの面で地域の発展や技術の開発に尽くした先人の具体的事例の中から 一つを選択して取り上げることが考えられる。その際,地域や児童の実態を考慮し, 児童が先人の働きと地域の人々の生活の向上とを関連付けて考えることができる事例 を選択して,その人物の業績を中心に学習できるよう配慮する必要がある。 --52/128-- -51- (6 ) 県(都,道,府)の様子について,次のことを資料を活用したり白地図に まとめたりして調べ,県(都,道,府)の特色を考えるようにする。 「県(都,道,府)の様子」とは,県の地形や産業などの概要とそこに見られる人 々の生活の様子を指している。 「次のこと」とは, 「県(都,道,府)内における自分たちの市(区,町,村)及 び我が国における自分たちの県(都,道,府)の地理的位置, 47都道府県の名称と 位置」 「県(都,道,府)全体の地形や主な産業の概要,交通網の様子や主な都市の 位置」 「県(都,道,府)内の特色ある地域の人々の生活」「人々の生活や産業と国 内の他地域や外国とのかかわり」の四つを指している。これらは,自分たちの住んで いる県の様子について学習する際に調べる具体的な対象である。 「資料を活用したり白地図にまとめたりして調べ」とは,ここでの学習の仕方を示 している。ここでは,作業的な学習を取り入れたり実物を活用したりして,学習が具 体的に展開できるようにすることが大切である。例えば,県の地図や教科用図書「地 図」 (以下「地図帳」 ) ,収集した各種の資料などを活用し,調べたことを白地図にま とめることや,県内で生産された農作物や製品の実物などを活用することが考えられ る。 「県(都,道,府)の特色を考えるようにする」とは,県の地形や産業などの概要 や分布などに見られる特色,及び地域の自然環境,伝統や文化などの地域の資源を保 護・活用している地域やそこで生活している人々の生活に見られる特色やよさを具体 的に考えることができるようにすることである。 こうした学習を通して,自分たちの住んでいる県に対する誇りと愛情をもつように することが大切である。 ア 県(都,道,府)内における自分たちの市(区,町,村)及び我が国におけ る自分たちの県(都,道,府)の地理的位置, 47都道府県の名称と位置 --53/128-- -52- ここでは,県の様子について学習する際に,県の特色を考える手掛かりとして,県 内における自分たちの市及び我が国における自分たちの県の地理的位置, 47都道府 県の名称と位置を調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導す る際には,次のことをおさえる必要がある。 「県 (都,道,府) 内における自分たちの市 (区,町,村) 及び我が国における自 分たちの県(都,道,府)の地理的位置」を調べるとは,県内における自分たちの市 の位置,国内における自分たちの県の位置を取り上げて調べ,隣接する市や県との位 置関係や日本全体から見た位置などについて,方位などを用いて言い表すことを通し て,自分たちの市や県の位置を広い視野からとらえることができるようにすることで ある。 位置の表し方としては,「わたしたちの市は,A市やB市と隣り合っている」「わた したちの市は,県のほぼ中央にある」「わたしたちの市は,県庁のあるC市のほぼ北の 方角にある」「わたしたちの県は,D県やE県,F県に囲まれている」 「わたしたち の県は,日本全体から見ると南の方にある」などが考えられる。その際,地図に掲載 されている距離を表す目盛りを用いて二つの地点間の距離を求める方法があることに ついて取り上げることも考えられる。 「 47都道府県の名称と位置」を調べるとは,我が国が 47の都道府県によって構成さ れていることが分かり,都道府県の名称と位置を一つ一つ地図帳で確かめ,日本地図 (白地図)上で指摘できるようにすることである。 実際の指導に当たっては,県の地図や地図帳を十分に活用することが大切である。 例えば, 地図から自分たちの市や県を見つける活動,市や県の位置を言い表す活動, 47 都道府県の名称と位置を地図帳で確かめ,その名称を白地図に書き表す活動などが考 えられる。 これらの学習を通して,自分たちの住んでいる県の位置を広い視野からとらえ,そ の特色を考える手掛かりとなるようにする。 なお, 47都道府県の名称と位置については各学年においても指導し,小学校修了 までには確実に身に付け,活用できるようにする必要がある。 --54/128-- -53- イ 県(都,道,府)全体の地形や主な産業の概要,交通網の様子や主な都市の 位置 ここでは,県の様子について学習する際に,県の特色を考える手掛かりとして,県 全体の地形や主な産業の概要,交通網の様子や主な都市の位置を調べる対象として挙 げている。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要が ある。 「県(都,道,府)全体の地形や主な産業の概要」を調べるとは,県全体の主な山地 や平地,半島,川,湖,海などの位置や広がりの様子と,県全体に見られる主な産業 の概要や分布を取り上げて調べ,白地図に書き表すことである。 産業の概要としては,例えば,全国的に見て生産量の多い産業やその地域独自の特 色ある産業などが考えられる。 「交通網の様子や主な都市の位置」を調べるとは,県内を通る主な道路や鉄道などの 交通網,主な港や空港の位置,主な都市の位置を取り上げて調べ,白地図に書き表す ことである。 主な道路としては高速道路,主な国道や県道などが,主な都市としては県庁のある 市や人口が集中している市,交通の要衝となっている市などが, それぞれ考えられる。 実際の指導に当たっては,県の地図や立体地図などを活用して,主な地形や産業, 道路や鉄道,都市などを調べ,白地図に書き表す活動を通して,県全体の特色をとら えるようにすることが考えられる。 これらの学習を通して,自分たちの住んでいる県の地形や産業などの特色を考える ことができるようにする。 ウ 県(都,道,府)内の特色ある地域の人々の生活 ここでは,県の様子について学習する際に,県の特色を考える手掛かりとして,県 内の特色ある地域の人々の生活を調べる対象として挙げている。ここに示された事項 --55/128-- -54- について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「県(都,道,府)内の特色ある地域の人々の生活」を調べるとは,県内の特色ある 地域の人々の生活の様子を取り上げ,自然環境,伝統や文化などの地域の資源を保護 ・活用している地域やそこに見られる人々の生活の特色を具体的に調べることであ る。 ここで取り上げる「県(都,道,府)内の特色ある地域」としては,伝統的な工業な どの地場産業の盛んな地域のほか,例えば,渓谷や森林,高原や湿原,河川や海辺な どの豊かな自然を守りながら,あるいは,歴史ある建造物や街並み,祭りなどの地域 の伝統や文化を受け継ぎ保護・活用しながら,地域の人々が互いに協力して,特色あ るまちづくりや観光などの産業の発展に努めている地域が考えられる。 実際の指導に当たっては,県内の特色ある地域を選択して取り上げ,人々の生活の 様子を具体的に学習できるようにする。例えば,取り上げた地域の市役所などに問い 合わせたりインターネットを活用したりして県内の特色ある地域に関する資料を収集 し,有効に活用することが考えられる。また,地域の伝統や文化を生かしたまちづく りに取り組んでいる地域や伝統的な工業などの地場産業の盛んな地域については,見 学や調査などの体験的な活動を取り入れることも有効である。 これらの学習を通して,自分たちの住んでいる県の特色を考えることができるよう にする。 エ 人々の生活や産業と国内の他地域や外国とのかかわり ここでは,県の様子について学習する際に,県の特色を考える手掛かりとして,人 々の生活や産業と国内の他地域や外国とのかかわりを調べる対象として挙げている。 ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「人々の生活や産業と国内の他地域や外国とのかかわり」を調べるとは,生活や産業 に見られる他地域とのかかわりを取り上げ,県内の人々の生活や産業は,県内だけで なく,広く国内の他地域や外国とも結び付いていることを具体的に調べることである。 県内の人々の生活や産業と他地域とのかかわりについては,例えば,姉妹都市提携 --56/128-- -55- を結び外国の都市と様々な交流事業を行っていること,船や飛行機,鉄道,自動車な どの交通手段を利用して国内の他地域や外国との行き来が盛んに行われていること, 外国や他の県から観光客を招き入れていること,農業や工業において原材料の仕入や 生産物の出荷などの面で国内の他地域や外国と結び付いていることなどを取り上げて 調べることが考えられる。 実際の指導に当たっては,県内の人々の生活や産業が,県内や国内の他地域,外国 とも結び付いていることを交通網や産業,特色ある地域の人々の生活などの学習と関 連付けて取り上げることが考えられる。 これらの学習を通して,自分たちの住んでいる県の特色を,より広い視野から考え ることができるようにする。 (内容の取扱い) ( 7) 内容の( 6)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア ウについては,自然環境,伝統や文化などの地域の資源を保護・活用して いる地域を取り上げること。その際,伝統的な工業などの地場産業の盛んな 地域を含めること。 イ エについては,我が国や外国には国旗があることを理解させ,それを尊重 する態度を育てるよう配慮すること。 内容の取扱いの( 7 )のアは,内容の( 6 )のウの指導において,事例として取り上げ る地域を選択する際の留意事項を示したものである。 ここでは,伝統的な工業などの地場産業の盛んな地域を含めて,自然環境,伝統や 文化などの地域の資源を保護・活用している地域の中から二つ程度を選択して取り上 げることが考えられる。 「伝統的な工業などの地場産業の盛んな地域」とは,県内で古くから伝わっている技 術や技法を受け継いで行われている工業や地域の特性を生かして独自の製品をつくっ ている工業など,地域に密着した産業の盛んな地域を指している。伝統的な工業には, --57/128-- -56- 例えば,陶磁器,塗り物,織物,和紙,人形,筆など,今でも優れた技術が継承され ているものが考えられ,それらの盛んな地域を取り上げることになる。 「自然環境,伝統や文化などの地域の資源を保護・活用している地域」とは,人々 に様々な恵みをもたらしている自然の風景や歴史的な景観,文化財や年中行事,その 土地の特性を生かした産物などを地域の資源として保護・活用し,地域の活性化に努 めている地域が考えられる。 特色ある地域を選定する際には,学校が置かれている市の特色などを考慮し,例え ば,自然環境,伝統や文化,産業などから見て自分たちの住んでいる市とは異なる地 域を選択し,比較しながら,県全体の特色をとらえることができるように配慮する必 要がある。 内容の取扱いの( 7)のイは,内容の( 6)のエの「人々の生活や産業と国内の他地域や 外国とのかかわり」において外国を取り上げる際,我が国や外国には国旗があること を理解させ,それを尊重する態度を育てるようにすることを示したものである。 ここでは,我が国や外国には国旗があること,いずれの国でも国旗を大切にしてい ること,及び我が国の国旗を尊重するとともに,外国の国旗を尊重することが大切で あることなどを指導することが大切である。 その際,取り上げた外国の名称と位置,国旗を地図帳や地球儀などで確認するなど, 具体的な活動を通して指導するように配慮する必要がある。 --58/128-- -57- 第2節 第5学年の目標と内容 1目標 ( 1) 我が国の国土の様子,国土の環境と国民生活との関連について理解できるよ うにし,環境の保全や自然災害の防止の重要性について関心を深め,国土に対 する愛情を育てるようにする。 これは,我が国の国土の様子,国土の環境と国民生活との関連について理解できる ようにし,環境の保全や自然災害の防止の重要性について関心を深め,国土に対する 愛情を育てるようにすることをねらいとしており,内容の( 1)にかかわる理解と態度 に関する目標を示している。 理解に関する目標にある「我が国の国土の様子」については,国民生活の舞台であ る我が国の国土の自然やそこに見られる生活の様子などを取り上げ,自然環境として の国土の様子や特色を,広い視野から理解できるようにすることにねらいがある。ま た, 「国土の環境と国民生活との関連」については,国土の環境と国民の生活や産業 との間には様々な関連が見られることを,具体的に理解できるようにすることにねら いがある。 態度に関する目標である「環境の保全や自然災害の防止の重要性について関心を深 め,国土に対する愛情を育てるようにする」とは,国土の環境が国民生活や産業の発 展に大きな役割を果たしており,その保全や自然災害の防止に努めることが国民生活 の維持と向上にとって重要であることに関心をもつようにするとともに,我が国の国 土の特色やよさを理解し,国土に対する愛情をもつようにすることである。 この目標を実現するためには,内容の( 1 )の指導を通して,国土の環境が国民の生 活や産業と密接な関連をもっていることを考えるようにするとともに,環境の保全や 自然災害の防止が大切であることに気付くようにする。また,我が国の国土の特色や よさ,それを生かした人々の生活,国土の環境の保全や自然災害の防止への工夫や努 --59/128-- -58- 力を理解できるようにするとともに,国土に対する愛情を育てるようにすることが大 切である。 ( 2) 我が国の産業の様子, 産業と国民生活との関連について理解できるようにし, 我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにする。 これは,我が国の産業の様子や産業と国民生活との関連について理解できるように し,我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにすることをねらい としており,内容の( 2)から( 4)にかかわる理解と態度に関する目標を示している。 理解に関する目標にある「我が国の産業の様子」については,農業や水産業などの 食料生産にかかわる産業,工業生産にかかわる産業を取り上げ,これらの産業の特色 と貿易や運輸などの働き,産業に従事している人々の工夫や努力を理解できるように することにねらいがある。 また,「産業と国民生活との関連」については,我が国の食料生産や工業生産にか かわる産業が国民生活を支える重要な役割を果たしていることや,国土の環境と深い かかわりをもって営まれていること,我が国の情報産業が国民生活に大きな影響を及 ぼしていることを理解できるようにすることにねらいがある。 態度に関する目標である「我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつ ようにする」とは,我が国の産業がそれに従事している人々の様々な工夫や努力によ って発展していることや,そのことによって国民生活の維持と向上が図られているこ と,社会の情報化が進展していることや情報化した社会においては情報の有効な活用 が大切であることに関心をもつようにすることである。 この目標を実現するためには,内容の( 2)から( 4 )の指導を通して,我が国の食料生 産や工業生産に従事している人々の様々な工夫や努力によって国民生活の維持と向上 が図られていること,情報産業や情報ネットワークの働きを理解できるようにすると ともに,我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにすることが大 切である。 --60/128-- --60/128-- -59- ( 3) 社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や地球儀,統計などの各種の 基礎的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味について考える力,調べたこ とや考えたことを表現する力を育てるようにする。 これは,第5学年の内容全体にかかわる能力に関する目標を示しており,我が国の 国土や産業に関する学習を通して,社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や 地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味について 考える力や,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにすることをねらい としている。 「社会的事象を具体的に調査する」とは,我が国の国土や産業に関する社会的事象 を具体的にとらえたり,その意味について考えたりするために,観点や質問事項を決 めて,詳しく見たり聞いたりするなどの調査を行うことである。 「地図や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用」するとは,我が国 の国土や産業に関する社会的事象を具体的にとらえたり,その意味について考えたり するために,地図帳や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用すること である。資料を例にすると,第5学年においては,次のように活用することが考えら れる。 ・資料から必要な情報を読み取る。 ・資料に表されている事柄の全体的な傾向をとらえる。 ・複数の資料を関連付けて読み取る。 ・必要な資料を収集したり選択したりする。 ・資料を整理したり再構成したりする。 「社会的事象の意味について考える力」を育てるとは,国土の環境保全や自然災害 の防止の重要性を国民生活と結び付けて考える力,我が国の農業や水産業などの食料 生産にかかわる産業,工業生産にかかわる産業,情報産業が国民生活の維持と向上に 役立っていることを考える力を育てるようにすることである。 「調べたことや考えたことを表現する力」を育てるとは,社会的事象を具体的に調 --61/128-- -60- 査したり,地図帳や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用したりして 調べたことや,社会的事象の意味について考えたことを表現する力を育てるようにす ることである。 この目標を実現するためには,第5学年の内容全体の指導を通して,我が国の国土 や産業に関する社会的事象について,学習問題に即して具体的に調査したり,地図帳 や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を活用したりして調べることができるように する必要がある。また,調べたことや社会的事象の意味について考えたことを,根拠 や解釈を示しながら図や文章などで表現し説明することができるようにすることが大 切である。 --62/128-- -61- 2内容 ( 1) 我が国の国土の自然などの様子について,次のことを地図や地球儀,資料な どを活用して調べ,国土の環境が人々の生活や産業と密接な関連をもっている ことを考えるようにする。 「我が国の国土の自然などの様子」とは,広い視野からとらえた国土の自然環境や これに適応しながら生活している人々の様子,国土の環境保全に欠かすことのできな い森林資源の働きなどを指している。 「次のこと」とは, 「世界の主な大陸と海洋,主な国の名称と位置,我が国の位置 と領土」 「国土の地形や気候の概要,自然条件から見て特色ある地域の人々の生活」 「公害から国民の健康や生活環境を守ることの大切さ」 「国土の保全などのための森 林資源の働き及び自然災害の防止」の四つを指している。これらは,我が国の国土の 自然などの様子について学習する際に調べる具体的な対象である。 「地図や地球儀,資料などを活用して調べ」とは,ここでの学習の仕方を示してい る。ここでは,地図帳や地球儀,統計などの各種の資料,立体模型などを活用して学 習を進めるようにする。世界の主な大陸と海洋,主な国の名称と位置,我が国の位置 と領土,国旗,国土の地形や気候の概要などについて地図帳や地球儀,統計資料など を活用して調べることが考えられる。 「国土の環境が人々の生活や産業と密接な関連をもっていることを考えるようにす る」とは,人々が国土の自然環境に適応しながら生活や産業を営んでいることや,国 土の環境を守り健康な生活を維持・向上させていくために公害の防止に努めているこ と,国土の保全などのために森林資源の育成や保護,自然災害の防止に努めているこ とを手掛かりにして,国土の環境が人々の生活や産業と密接な関連をもっていること を具体的に考えることができるようにすることである。 --63/128-- -62- ア 世界の主な大陸と海洋,主な国の名称と位置,我が国の位置と領土 ここでは,我が国の国土の自然などの様子について学習する際に,国土の環境が人 々の生活や産業と密接な関連をもっていることを考える手掛かりとして,世界の主な 大陸と海洋,主な国の名称と位置,我が国の位置と領土を調べる対象として挙げてい る。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「世界の主な大陸と海洋」を調べるとは,ユーラシア大陸,北アメリカ大陸,南ア メリカ大陸,アフリカ大陸,オーストラリア大陸,南極大陸の六大陸と,太平洋,大 西洋,インド洋の三海洋の名称と位置や広がりを取り上げ,地図帳や地球儀などで調 べ,白地図などに書き表すことである。その際,世界の中の我が国の位置を確認させ, 世界の大陸や海洋と我が国の国土との位置関係や,我が国は周囲が海に囲まれた島国 であることなど日本列島の特色を理解できるようにする。 「主な国の名称と位置」を調べるとは,世界の主な国を取り上げ,その国の名称と 位置を地図帳や地球儀などで調べ,白地図などに書き表すことである。その際,我が 国とそれらの国との位置関係を確認させ,産業に関する学習などにおいて活用できる ようにする。 「我が国の位置と領土」を調べるとは,我が国の国土を構成する北海道,本州,四 国,九州,沖縄島,北方領土などの主な島の名称と位置,我が国の領土の北端,南端, 東端,西端,日本列島の周りの海を取り上げ,地図帳や地球儀などで具体的に調べ, 白地図などに書き表すことにより,我が国の位置と領土を具体的にとらえることであ る。その際,領土については,北方領土の問題についても取り上げ,我が国固有の領 土である,歯舞群島,色丹島,国後島,択 捉 島が現在ロシア連邦によって不法に占 はぼまい しこたん くなしり え とろふ 拠されていることや,我が国はその返還を求めていることなどについて触れるように する。 実際の指導に当たっては,児童が地図帳や地球儀を活用したり,調べて確認したこ とを白地図にまとめたりするなどの具体的な活動を取り入れることが大切である。ま た,ここでは,例えば, 「我が国は北半球にあり,ユーラシア大陸の東方に位置し, --64/128-- -63- 太平洋と日本海などに囲まれている」 「南北に連なる大小の島々で構成された島国で あり,大韓民国,中華人民共和国,ロシア連邦と隣り合っている」などのように,我 が国の位置を世界の広がりの中でとらえ,言い表すことができるようにすることが大 切である。その際,位置の表し方については,他との関係で位置を示す方法や,緯度 と経度で示す方法があることについても取り上げるようにする。 これらの学習を通して,国土の環境が人々の生活や産業と密接な関連をもっている ことを,広い視野から考える手掛かりとなるようにする。 イ 国土の地形や気候の概要,自然条件から見て特色ある地域の人々の生活 ここでは,我が国の国土の自然などの様子について学習する際に,国土の環境が人 々の生活や産業と密接な関連をもっていることを考える手掛かりとして,国土の地形 や気候の概要,自然条件から見て特色ある地域の人々の生活を調べる対象として挙げ ている。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要があ る。 「国土の地形や気候の概要」を調べるとは,国土の主な山地や山脈,平野,川などの 地形や地域による気温と降水量の違いなどの気候の概要を取り上げ,我が国の地形を 全体としてみると山がちで大きな平野が少ないことや,我が国の気候については四季 の変化が見られること,国土の南と北,太平洋側と日本海側では気候が異なることな ど,国土全体の地形や気候の大まかな様子や特色を調べることである。 「自然条件から見て特色ある地域の人々の生活」を調べるとは,地形条件や気候条件 から見て特色ある地域を取り上げ,自然環境に適応しながら生活している人々の工夫 を具体的に調べることである。 ここでは,地形や気候に合わせた住まいや学校生活などの日常生活の様子,地形や 気候の特色を生かした野菜や果物,花卉の栽培,酪農,観光などの産業を取り上げる き ことが考えられる。 実際の指導に当たっては,国土の地形や気候の概要については地図帳,立体模型を 活用して調べ, 白地図にまとめるなどの作業的な学習を取り入れることが考えられる。 --65/128-- -64- また,自然条件から見て特色ある地域の人々の生活の様子については事例地を選択し て取り上げ,自然環境に適応しながら生活している人々の工夫を具体的に調べるよう にする。 その際,現地に問い合わせて収集した資料などを活用することが考えられる。 これらの学習を通して,国土の環境が人々の生活や産業と密接な関連をもっている ことを考えることができるようにする。 ウ 公害から国民の健康や生活環境を守ることの大切さ ここでは,我が国の国土の自然などの様子について学習する際に,国土の環境が人 々の生活や産業と密接な関連をもっていることを考える手掛かりとして,公害から国 民の健康や生活環境を守ることの大切さを調べる対象として挙げている。ここに示さ れた事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「公害から国民の健康や生活環境を守ることの大切さ」を調べるとは,大気の汚染, 水質の汚濁などの中から具体的事例を取り上げ,公害と国民の健康や生活環境とのか かわりについて調べ,公害を防止することが大切であることを理解できるようにする ことである。 ここでは,産業の発展,生活様式の変化や都市化の進展などにより増加した廃棄物 の不適切な処理の結果として人々に有害な影響を及ぼす公害が発生し,国民の健康や 生活環境が脅かされてきたことや,関係の諸機関をはじめ多くの人々の様々な努力に より公害の防止や生活環境の改善が図られていることなどを取り上げることが考えら れる。 実際の指導に当たっては,国民の健康や生活環境に及ぼす影響,公害の防止や生活 環境の改善などの取組に見られる人々の努力などについて,取り上げた事例に即して 具体的に調べるようにする。その際,公害の問題を国土の環境保全の観点から扱うよ うにするとともに,自分自身や自分の生活とのかかわりでとらえることにより,公害 から国民の健康や生活環境の維持・改善に配慮した行動が求められるなど,国民一人 一人の協力が必要であることに気付くようにすることが大切である。 これらの学習を通して,国土の環境が人々の生活や産業と密接な関連をもっている --66/128-- -65- ことを考えることができるようにする。 エ 国土の保全などのための森林資源の働き及び自然災害の防止 ここでは,我が国の国土の自然などの様子について学習する際に,国土の環境が人 々の生活や産業と密接な関連をもっていることを考える手掛かりとして,国土の保全 などのための森林資源の働き及び自然災害の防止を調べる対象として挙げている。こ こに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「国土の保全などのための森林資源の働き」を調べるとは,森林資源の働きと国民生 活とのかかわりを取り上げ,国土に広がる森林が,国民生活の舞台である国土の保全 などに欠かすことのできない資源として重要な役割を果たしていることを調べること である。 森林資源の働きと国民生活とのかかわりについては,国土の土地利用全体に占める 森林面積の割合や森林の分布の現状,国土の保全や水資源の涵養などの森林資源の働 かん き,森林資源の育成や保護に従事している人々の工夫や努力などを取り上げることが 考えられる。 「自然災害の防止」を調べるとは,自然災害の防止と国民生活とのかかわりを取り 上げ,我が国の国土では地震や津波,風水害,土砂災害,雪害などの様々な自然災害 が起こりやすいこと,その被害を防止するために国や県(都,道,府)などが様々な 対策や事業を進めていることなどを調べることである。 自然災害の防止と国民生活とのかかわりについては,地震や津波,火山活動,台風 や長雨による水害や土砂崩れ,雪害などの被害の様子,国や県などが進めてきた砂防 ダムや堤防などの整備,ハザードマップの作成などの対策や事業を取り上げることが 考えられる。 実際の指導に当たっては,地図や統計,写真などの資料を活用したり,関係機関に 従事する人に聞き取り調査したり,インターネットなどで自然災害の防止に関する情 報を集めたりして具体的に調べるようにする。そして,ここでの学習を通して,環境 保全のためには国民一人一人の協力が必要であることや,自然災害が起こりやすい我 --67/128-- -66- が国においては,日ごろから防災に関する情報などに関心をもつなど,国民一人一人 が防災意識を高めることが大切であることについても気付くように配慮することが大 切である。 これらの学習を通して,国土の環境が人々の生活や産業と密接な関連をもっている ことを考えることができるようにする。 (内容の取扱い) ( 1) 内容の( 1)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア アの「主な国」については,近隣の諸国を含めて取り上げるものとするこ と。その際,我が国や諸外国には国旗があることを理解するとともに,それ を尊重する態度を育てるよう配慮すること。 イ イの「自然条件から見て特色ある地域」については,事例地を選択して取 り上げ,自然環境に適応しながら生活している人々の工夫を具体的に扱うこ と。 ウ ウについては,大気の汚染,水質の汚濁などの中から具体的事例を選択し て取り上げること。 エ エについては,我が国の国土保全等の観点から扱うようにし,森林資源の 育成や保護に従事している人々の工夫や努力及び環境保全のための国民一人 一人の協力の必要性に気付くよう配慮すること。 内容の取扱いの( 1)のアは,内容の( 1)のアの「主な国」についての指導において取 り上げる国の範囲と,それを取り扱う際の配慮事項を示したものである。 「主な国」の取り上げ方としては,例えば,近隣の諸国を含めてユーラシア大陸や その周りに位置する国々の中から 10か国程度,北アメリカ,南アメリカ,アフリカ, オーストラリアなどの大陸やその周りに位置する国々の中からそれぞれ2か国程度を 選択することが考えられる。 指導に当たっては,地図帳や地球儀などを活用しながら取り上げた国の名称と位置 --68/128-- -67- を確認するようにする。その際,近隣の諸国については正式な国名が分かるようにす る。また,我が国や諸外国には国旗があることやいずれの国でも国旗を大切にしてい ることが分かり,我が国の国旗を尊重するとともに,外国の国旗を尊重する態度を育 てるようにすることが大切である。 内容の取扱いの( 1)のイは,内容の( 1)のイの「自然条件から見て特色ある地域」に ついての指導における配慮事項を示したものである。 事例地の選定に当たっては,自分たちの住んでいる地域の自然条件に配慮する必要 がある。また,児童の学習負担を軽減する観点から,例えば,山地や低地などの特色 ある地形条件をもつ地域と,温暖多雨や寒冷多雪などの特色ある気候条件をもつ地域 の中からそれぞれ一つ取り上げ,自然環境に適応しながら生活している人々の工夫を 具体的に学習できるようにすることが考えられる。 内容の取扱いの( 1)のウは,内容の( 1)のウの公害についての指導において,取り上 げる公害の範囲を示したものである。 環境基本法においては,公害として,大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染,騒音, 振動,地盤の沈下及び悪臭が挙げられているが,ここでは,大気の汚染,水質の汚濁 などの中から具体的事例を一つ選択して取り上げることが考えられる。 事例の選択に当たっては,例えば,生活様式の変化や都市化の進展などがもたらし た都市・生活型の公害,あるいは産業がもたらした公害などが考えられる。ここでは, 取り上げた事例について,公害の防止や環境改善に向けて成果を上げてきた関係の諸 機関や人々の努力の様子などを調査したり資料を活用したりして具体的に調べること が大切である。 内容の取扱いの( 1)のエは,内容の( 1)のエの森林資源の働きについての指導におけ る配慮事項を示したものである。 森林資源の働きについての指導に当たっては,森林で働く人々の仕事を具体的に取 り上げ,それらに従事している人々の工夫や努力に気付くようにするとともに,森林 資源の育成や保護が大切であることについて考えることができるようにする。ここで の指導を通して,森林資源を守ることは環境保全につながることや,環境保全を図る ためには国民一人一人の協力が必要であることに気付くようにすることが大切であ --69/128-- -68- る。なお,森林による自然災害の防止には限界があることについても触れるようにす る。 --70/128-- --70/128-- -69- ( 2) 我が国の農業や水産業について,次のことを調査したり地図や地球儀,資料 などを活用したりして調べ,それらは国民の食料を確保する重要な役割を果た していることや自然環境と深いかかわりをもって営まれていることを考えるよ うにする。 「我が国の農業や水産業」とは,米,野菜,果物などの農産物や畜産物を生産する 農業や, 魚介類を採ったり養殖したりする水産業を指している。 これらの食料生産は, 国土の自然環境を生かして営まれ,国民の食生活と密接なかかわりをもつ重要な産業 である。 「次のこと」とは, 「様々な食料生産が国民の食生活を支えていること,食料の中 には外国から輸入しているものがあること」 「我が国の主な食料生産物の分布や土地 利用の特色など」 「食料生産に従事している人々の工夫や努力,生産地と消費地を結 ぶ運輸などの働き」の三つを指している。これらは,我が国の農業や水産業について 学習する際に調べる具体的な対象である。 「調査したり地図や地球儀,資料などを活用したりして調べ」とは,ここでの学習 の仕方を示している。ここでは,例えば,地図帳や地球儀を活用して学校給食の食材 の産地を調べることや,地図帳や統計などの各種の資料を活用して我が国の主な農産 物や畜産物とその分布,土地利用の特色,主な漁港や漁場など我が国の食料生産の概 要,農業や水産業の盛んな地域における生産や輸送の面での工夫を調べることなどが 考えられる。 「国民の食料を確保する重要な役割を果たしていること」を考えるようにするとは, 我が国の農業や水産業の盛んな地域では,国民の主食である米をはじめ,食生活に欠 かすことができない野菜,果物,畜産物,水産物などを生産し,消費地に送り出すこ とにより,国民の食生活を支えているという,食料生産の意味を考えることができる ようにすることである。また, 「自然環境と深いかかわりをもって営まれていること を考えるようにする」とは,我が国の農業や水産業に従事している人々が地形や気候 などの自然環境を生かすなど,生産を高める工夫や努力をしていることを具体的に考 --71/128-- -70- えることができるようにすることである。 ア 様々な食料生産が国民の食生活を支えていること,食料の中には外国から輸 入しているものがあること。 ここでは,我が国の農業や水産業について学習する際に,それらは国民の食料を確 保する重要な役割を果たしていることを考える手掛かりとして,様々な食料生産が国 民の食生活を支えていること,食料の中には外国から輸入しているものがあることを 調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導する際には,次のこ とをおさえる必要がある。 「様々な食料生産が国民の食生活を支えていること」を調べるとは,様々な食料生 産と国民の食生活とのかかわりについて取り上げ,国民の食生活が主食である米をは じめ,野菜,果物,畜産物,水産物などの主な食料を生産する農業や水産業などによ って支えられていることを具体的に調べることである。 「食料の中には外国から輸入しているものがあること」を調べるとは,主な食料の 自給率や主な輸入先などを取り上げ,国民の食生活を支えている主な食料の中には, 国内の各地で生産されたものだけでなく,外国からの輸入に依存しているものがある ことを具体的に調べることである。 実際の指導に当たっては,例えば,商店の広告のちらしを手掛かりにして主な食料 の生産地を調査して白地図に書き表す活動や,地図帳や地球儀,統計資料などを活用 して主な食料のうち自給率の低い食料の品目や輸入先などを調べる活動が考えられ る。また,ここでの学習と関連付けて,我が国の貿易の役割について扱うことも考え られる。 これらの学習を通して,我が国の農業や水産業は国民の食料を確保する重要な役割 を果たしていることを考えることができるようにする。 --72/128-- -71- イ 我が国の主な食料生産物の分布や土地利用の特色など ここでは,我が国の農業や水産業について学習する際に,それらは国民の食料を確 保する重要な役割を果たしていることや,自然環境と深いかかわりをもって営まれて いることを考える手掛かりとして,我が国の主な食料生産物の分布や土地利用の特色 などを調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導する際には, 次のことをおさえる必要がある。 「我が国の主な食料生産物の分布や土地利用の特色など」を調べるとは,我が国 における主な農産物や畜産物の生産量や主な産地,土地利用の特色,及び主な水産物 の漁獲量や主な漁港,漁場などの分布を取り上げ,我が国の農業や水産業の概要やそ こに見られる特色を具体的に調べることである。 実際の指導に当たっては,我が国の農業や水産業の様子を概観し,そこに見られ る大まかな特色を調べるために,地図帳や学校図書館の図書,資料などに掲載されて いる各種の統計資料や分布図などを活用する必要がある。その際,例えば,我が国の 主な農産物の分布図と気候に関する資料,主な漁港と海流に関する資料など,複数の 資料を関連付けて読み取る活動が考えられる。 これらの学習を通して,我が国の農業や水産業は国民の食料を確保する重要な役割 を果たしていることや,自然環境と深いかかわりをもって営まれていることを考える ことができるようにする。 ウ 食料生産に従事している人々の工夫や努力,生産地と消費地を結ぶ運輸など の働き ここでは,我が国の農業や水産業について学習する際に,それらは国民の食料を確 保する重要な役割を果たしていることや,自然環境と深いかかわりをもって営まれて いることを考える手掛かりとして,食料生産に従事している人々の工夫や努力,生産 地と消費地を結ぶ運輸などの働きを調べる対象として挙げている。ここに示された事 --73/128-- -72- 項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「食料生産に従事している人々の工夫や努力」を調べるとは,稲作,野菜,果物, 畜産物などを生産する農業や水産業の盛んな地域の具体的事例を取り上げ,農業や水 産業の盛んな地域の人々が,消費者の需要にこたえ,新鮮で良質な物を生産し出荷す るために様々な工夫や努力をしていることや,地形や気候などの自然環境や社会的な 条件を生かして生産を高める工夫や努力をしていることを具体的に調べることであ る。 稲作については品種改良や生産の効率を高めるための技術の改良を進めていること や,味の向上や食の安全確保に努めながら生産や出荷を工夫していることを取り上げ ることが考えられる。野菜や果物の生産については新鮮で良質な野菜や果物を生産し 出荷するために,畜産物の生産については新鮮な牛乳や肉,卵などを生産し出荷する ために,それぞれ様々な工夫や努力をしていることを取り上げることが考えられる。 また,水産業については漁業技術の改善に努めるとともに,水産資源の保護,育成を 図るために栽培漁業などに取り組んでいることを取り上げることが考えられる。 「生産地と消費地を結ぶ運輸などの働き」を調べるとは,農業や水産業の盛んな地 域では,運輸の働きにより鮮度を保ちながら生産物を早く消費地へ届ける努力をして いることや,生産物の輸送手段や経路,出荷先や出荷量などを判断するために情報を 収集していることなどを取り上げ,生産地と消費地を結ぶ運輸の働きや情報の利用の 様子を具体的に調べることである。 ここでは,食料を生産する活動とそれらの生産物を運ぶ仕事を関連付けることによ り,生産地と消費地を結ぶ運輸の働きを具体的にとらえさせ,運輸業について理解で きるようにする必要がある。例えば,野菜の生産に従事している人々が,その鮮度を 保つために運輸に携わっている人々と協力して,トラックや鉄道,カーフェリー,飛 行機などを利用して遠距離の消費地に出荷していることを取り上げ,生産地と消費地 を結ぶ陸上輸送や海上輸送,航空輸送の働きを具体的に調べることが考えられる。そ の際,野菜の生産に従事している人々が,インターネットを活用して相場の情報を市 場からいち早く入手し,出荷する場所,量,種類,時期を判断していることなど,農 業における情報の利用について取り上げることが考えられる。 --74/128-- -73- 実際の指導に当たっては,農業や水産業の盛んな地域の具体的事例の中から我が国 の食料生産を理解する上で典型となる地域の事例を取り上げ,例えば,食料生産の盛 んな地域で生産に従事している人々に手紙などで調査したり,インターネットで生産 地が発信する情報を集めたりするなど,具体的な活動を通して調べるようにする。 これらの学習を通して,我が国の農業や水産業は国民の食料を確保する重要な役割 を果たしていることや,自然環境と深いかかわりをもって営まれていることを考える ことができるようにする。 (内容の取扱い) ( 2) 内容の( 2 )のウについては,農業や水産業の盛んな地域の具体的事例を通し て調べることとし,稲作のほか,野菜,果物,畜産物,水産物などの生産の中 から一つを取り上げるものとする。 これは,内容の( 2 )のウの食料生産に従事している人々の工夫や努力についての指 導における配慮事項と,取り上げる具体的事例の範囲と選択の仕方を示したものであ る。 食料生産に従事している人々の工夫や努力については,農業や水産業の盛んな地域 の具体的事例を通して調べるようにする。その際,国民の主食を確保する上で重要な 役割を果たしている稲作については必ず取り上げる。また,国民の食生活とかかわり の深い野菜,果物,畜産物,水産物などについては,それらの中から一つを選択して 取り上げるようにする。 稲作以外の事例の選択においては,児童の興味・関心や学習経験の広がりなどを考 慮し,第3学年及び第4学年において,どのような事例を取り上げていたのかに配慮 する必要がある。地域の農業にかかわる生産活動として,例えば,野菜の生産を取り 上げて学習してきた場合には,果物,畜産物,水産物などの生産の中から事例を選択 することが考えられる。 なお,第3学年及び第4学年では,地域の生産活動を通して地域社会に対する理解 --75/128-- -74- を深めることに, 第5学年では我が国の農業や水産業についての理解を深めることに, それぞれのねらいがあることに留意することが大切である。 (内容の取扱い) ( 4) 内容の(2 )のウ及び(3 )のウにかかわって,価格や費用,交通網について取り 扱うものとする。 これは,内容の( 2)のウ及び( 3)のウの指導において,価格や費用,交通網について 取り扱うようにすることを示したものである。 内容の( 2)のウにおいては,生産を高める工夫や生産地と消費地を結ぶ運輸の働き などと関連付けて,価格や費用,交通網について取り扱うようにする。 価格や費用については,例えば,野菜や魚など生鮮食料品の価格は時期や場所によ って変わること,生産の過程で様々な費用がかかることや生産物を消費地まで運ぶた めには費用がかかることなどを取り上げ,消費者の需要にこたえる生産や運輸の工夫 に気付くようにすることが考えられる。 また,交通網については,生産地と消費地を結ぶ運輸の働きを扱う際に,我が国の 各種の交通網にかかわる資料を活用するようにする。具体的には,例えば,陸上輸送 について主な高速道路網や鉄道網の資料を,海上輸送や航空輸送について主な航路の 資料をそれぞれ活用しながら,生産物が生産地から消費地までどのように運ばれるの か,およその輸送経路や輸送手段を調べる活動を取り入れることが考えられる。 --76/128-- -75- ( 3) 我が国の工業生産について,次のことを調査したり地図や地球儀,資料など を活用したりして調べ,それらは国民生活を支える重要な役割を果たしている ことを考えるようにする。 「我が国の工業生産」とは,我が国における工場での生産活動であり,原材料を加 工しその形や性質を変えたり,部品を組み立てたりして生活や産業に役立つ製品をつ くり出している工業を指している。それらは,生産する製品の種類によって,金属工 業,機械工業,石油化学工業,食料品工業などに分類されている。 「次のこと」とは, 「様々な工業製品が国民生活を支えていること」 「我が国の各 種の工業生産や工業地域の分布など」 「工業生産に従事している人々の工夫や努力, 工業生産を支える貿易や運輸などの働き」の三つを指している。これらは,我が国の 工業生産について学習する際に調べる具体的な対象である。 「調査したり地図や地球儀,資料などを活用したりして調べ」とは,ここでの学習 の仕方を示している。ここでは,例えば,工業生産の現状や特色,工業生産に従事し ている人々の工夫や努力を調査したり資料を活用したりして具体的に調べることや, 地図帳や地球儀を用いて原材料や製品の輸出入先の国や地域の位置を確認することな どが考えられる。 「それらは国民生活を支える重要な役割を果たしていることを考えるようにする」 とは,国民の生活や産業を支えている各種の工業製品が,それに従事している人々の 様々な工夫や努力,貿易や運輸などの働きに支えられて生産されていることや,国民 は様々な工業製品によって便利で快適な生活を送っていることなどを手掛かりにし て,我が国の工業生産が国民生活の向上や産業の発展に果たしている役割を考えるこ とができるようにすることである。 ア 様々な工業製品が国民生活を支えていること。 ここでは,我が国の工業生産について学習する際に,それらは国民生活を支える重 --77/128-- -76- 要な役割を果たしていることを考える手掛かりとして,様々な工業製品が国民生活を 支えていることを調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導す る際には,次のことをおさえる必要がある。 「様々な工業製品が国民生活を支えていること」を調べるとは,我が国の工業生産 と国民生活とのかかわりを取り上げ,様々な工業製品が国民生活を支えていることを 具体的に調べることである。 ここでは,我が国の国民は様々な工業製品を利用して日常の生活を営んでいること や,国民生活とかかわりの深い農業や水産業,工業など様々な産業においても工業製 品を利用して生産活動を営んでいることを取り上げることが考えられる。 実際の指導に当たっては,例えば,暮らしの中でどのような工業製品が使われてい るのかを調査する活動やそれらを工業の種類別に分類・整理する活動などを通して我 が国の工業生産と国民生活とのかかわりを具体的に調べることや,我が国の農業や水 産業,工業などの中で使われている工業製品を取り上げ,それらの工業製品が産業の 発展に果たしている役割を具体的に調べることなどが考えられる。 これらの学習を通して,我が国の工業生産は国民生活を支える重要な役割を果たし ていることを考えることができるようにする。 イ 我が国の各種の工業生産や工業地域の分布など ここでは,我が国の工業生産について学習する際に,それらは国民生活を支える重 要な役割を果たしていることを考える手掛かりとして,我が国の各種の工業生産や工 業地域の分布などを調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導 する際には,次のことをおさえる必要がある。 「我が国の各種の工業生産や工業地域の分布など」を調べるとは,我が国の主な工 業生産の種類,工業地帯や主な工業地域の分布などを取り上げ,我が国全体の工業生 産の現状や特色を具体的に調べることである。 実際の指導に当たっては,分布図や統計資料などの活用を図り,例えば,我が国の 工業の種類別や規模別の生産額,工場数,工業地帯や主な工業地域の分布,立地など --78/128-- -77- を調べ,我が国全体の工業生産の現状や特色を具体的にとらえられるようにすること が考えられる。 これらの学習を通して,我が国の工業生産は国民生活を支える重要な役割を果たし ていることを考えることができるようにする。 ウ 工業生産に従事している人々の工夫や努力,工業生産を支える貿易や運輸な どの働き ここでは,我が国の工業生産について学習する際に,それらは国民生活を支える重 要な役割を果たしていることを考える手掛かりとして,工業生産に従事している人々 の工夫や努力と,工業生産を支える貿易や運輸などの働きを調べる対象として挙げて いる。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「工業生産に従事している人々の工夫や努力」を調べるとは,工業の盛んな地域の 事例を取り上げ,我が国の工業生産に従事している人々が,消費者の多様な需要にこ たえ,環境に配慮しながら,優れた製品を生産するために様々な工夫や努力をしてい ることを具体的に調べることである。 ここでは,原材料の確保や製造の過程,製品の販売や消費地への輸送,新しい技術 の開発,資源の有効な利用と確保,環境保全への取組などに見られる工夫や努力を取 り上げることが考えられる。 「工業生産を支える貿易や運輸などの働き」を調べるとは,原材料の確保や製品の 販売などに見られる貿易や運輸などの働きを取り上げ,貿易や運輸などが工業生産を 支える大切な働きをしていることについて具体的に調べることである。 ここでは,例えば,自動車の生産に必要な鋼板の原料となる鉄鉱石が外国から船で 運ばれ輸入されていることや,我が国で生産された自動車が国内だけでなく世界の様 々な国や地域に輸出されていることを取り上げることが考えられる。また,貿易や運 輸のほかにも工業生産を支えるものとして,情報の働きについて取り上げることも考 えられる。 実際の指導に当たっては,工業の盛んな地域の事例を取り上げ,見学を取り入れた --79/128-- -78- り視聴覚資料を活用したりして具体的に調べられるようにする。その際,原材料の確 保や製品の販売と輸送に見られる工夫については貿易や運輸などの働きとの関連を図 ること,製造の過程に見られる生産の工夫として製品の研究開発などを取り上げるこ となどが考えられる。 これらの学習を通して,我が国の工業生産は,国民生活を支える重要な役割を果た していることを考えることができるようにする。 (内容の取扱い) (3) 内容の(3)のウについては,工業の盛んな地域の具体的事例を通して調べる こととし,金属工業,機械工業,石油化学工業,食料品工業などの中から一つ を取り上げるものとする。 これは,内容の( 3 )のウの工業生産に従事している人々の工夫や努力について指導 する際の配慮事項と, 取り上げる具体的事例の範囲や選択の仕方を示したものである。 工業生産に従事している人々の工夫や努力については,原材料を加工したり部品を 組み立てたりして優れた製品を生産していること,生産にかかわりのある諸条件を生 かしながら生産を高める工夫や努力をしていることなどについて工業の盛んな地域の 事例を通して調べ,具体的に理解できるようにする。 具体的事例については,金属工業,機械工業,石油化学工業,食料品工業などの中 から一つを選択して取り上げるようにする。その際,児童の興味・関心や学習経験の 広がりを考慮し,第3学年及び第4学年において,どのような事例を取り上げていた のかに配慮する必要がある。例えば,第3学年及び第4学年において食料品の工場を 取り上げて学習してきた場合には,金属工業,機械工業,石油化学工業などの中から 事例を選択することが考えられる。 なお,第3学年及び第4学年では,地域の生産活動を通して地域社会に対する理解 を深めることに,第5学年では,我が国の工業生産について理解を深めることに,そ れぞれのねらいがあることに留意することが大切である。 --80/128-- --80/128-- -79- (内容の取扱い) ( 4) 内容の(2 )のウ及び内容の( 3 )のウにかかわって,価格や費用,交通網につい て取り扱うものとする。 これは,内容の( 2)のウ及び内容の( 3)のウの指導において,価格や費用,交通網に ついて取り扱うようにすることを示したものである。 内容の( 3)のウにおいては,生産を高める工夫や原材料の確保,製品の輸送などと 関連付けて価格や費用,交通網について取り扱うようにする。 価格や費用については,製造の過程で様々な費用がかかること,原材料の確保や製 品の輸送のための費用がかかることやそれらの費用が価格に影響を与えていることな どを取り上げることが考えられる。 交通網については,我が国の各種の交通網にかかわる資料を活用するようにする。 具体的には,例えば,陸上輸送について主な高速道路網や鉄道網の資料を,海上輸送, 航空輸送について主な航路の資料を,それぞれ活用しながら,工場で使用する原材料 がどこの国や地域からどのように運ばれてくるのか,また,工場で生産した製品がど この国や地域にどのように運ばれるのかについて,それぞれおよその輸送経路や輸送 手段を調べる活動を取り入れることが考えられる。 --81/128-- -80- ( 4) 我が国の情報産業や情報化した社会の様子について,次のことを調査したり 資料を活用したりして調べ,情報化の進展は国民の生活に大きな影響を及ぼし ていることや情報の有効な活用が大切であることを考えるようにする。 「我が国の情報産業」とは,多種多様な情報を収集し,選択・加工して提供してい る放送,新聞などのマスメディアや,インターネットなどの情報ネットワークを形成 して情報を文字,音声,映像などで瞬時に伝えるサービスを提供している産業を指し ている。 「情報化した社会の様子」とは,通信技術の発達と高度化によって情報の生 産や相互のやりとりが大量・高速・広域化し,教育,文化,産業,日常生活などの様 々な場面において大きな変化が見られることを指している。 「次のこと」とは, 「放送,新聞などの産業と国民生活とのかかわり」 「情報化し た社会の様子と国民生活とのかかわり」の二つを指している。これらは,我が国の情 報産業や情報化した社会の様子について学習する際に調べる具体的な対象である。 「調査したり資料を活用したりして調べ」とは,ここでの学習の仕方を示している。 ここでは,例えば,人々が日常の生活や産業で必要な情報をどのように入手し活用し ているのかを調査したり資料を活用したりして調べること,放送,新聞などの産業で は多種多様な情報を収集し,選択・加工して提供していることを視聴覚教材などを活 用して調べること,情報ネットワークを有効に活用して公共サービスの向上に努めて いる人から話を聞いたり資料を活用したりして調べることなどが考えられる。 「情報化の進展は国民の生活に大きな影響を及ぼしていること」を考えるようにす るとは,我が国の情報産業が様々な情報を提供し,国民の多くがそれらを多方面で利 用していることや,情報ネットワークの働きが公共サービスの向上のために利用され ていることなどを手掛かりにして,情報化の進展が国民生活の向上や産業の発展に大 きな影響を及ぼしていることについて考えることができるようにすることである。 「情報の有効な活用が大切であることを考えるようにする」とは,情報の有用性や 役割,情報の適切な収集・活用,発信や伝達の仕方,情報化のもたらす様々な影響な どをもとに,情報化した社会において人々が主体的に生きていくためには情報を有効 --82/128-- -81- に活用することが大切であることについて考えるとともに,様々な情報に対して適切 に判断し,望ましい行動をしようとする能力や態度を身に付けることである。 ア 放送,新聞などの産業と国民生活とのかかわり ここでは,我が国の情報産業や情報化した社会の様子について学習する際に,情報 化の進展は国民の生活に大きな影響を及ぼしていることや情報の有効な活用が大切で あることを考える手掛かりとして,放送,新聞などのマスメディアを通して情報を提 供している産業と国民生活とのかかわりを調べる対象として挙げている。ここに示さ れた事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「放送,新聞などの産業と国民生活とのかかわり」を調べるとは,日常の生活や産 業における情報手段や情報の利用の様子を取り上げ,放送,新聞などの産業と国民生 活とのかかわりを具体的に調べることである。 ここでは,近年の情報化の進展に伴い,我が国ではテレビやラジオ,新聞,電話, コンピュータなどの様々な情報手段が普及していることや,人々は放送や新聞などの 産業が発信する情報を日常の生活や産業活動の多方面で活用し,様々な影響を受けて いることなどを取り上げることが考えられる。 実際の指導に当たっては,人々が日常の生活や産業活動において必要な情報をどの ように入手しどのように生かしているのかなどについて具体的に調べることが考えら れる。その際,例えば,それらマスメディアの働きや,それを通して送り出された情 報が国民生活に大きな影響を及ぼしていることを調べ,情報を発信する側に求められ る役割や責任の大きさ,情報を受け取る側の正しい判断の必要性などについて考えを まとめることが大切である。 これらの学習を通して,情報化の進展は国民の生活に大きな影響を及ぼしているこ とや情報の有効な活用が大切であることを考えることができるようにする。 --83/128-- -82- イ 情報化した社会の様子と国民生活とのかかわり ここでは,我が国の情報産業や情報化した社会の様子について学習する際に,情報 化の進展が国民の生活に大きな影響を及ぼしていることや情報の有効な活用が大切で あることを考える手掛かりとして,情報化した社会の様子と国民生活とのかかわりを 調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導する際には,次のこ とをおさえる必要がある。 「情報化した社会の様子と国民生活とのかかわり」を調べるとは,情報ネットワー クを有効に活用して公共サービスの向上に努めている教育,福祉,医療,防災などの 事例のいずれかを取り上げ,多種多様な情報を必要に応じて瞬時に受信したり発信し たりすることができる情報ネットワークの働きが公共サービスの向上のために利用さ れ,国民生活に様々な影響を及ぼしていることを具体的に調べることである。 ここでは,情報ネットワークの利便性に目を向け,情報化の進展によって人々の生 活の向上が図られていることを具体的に調べることにより,情報を有効に活用しなが ら生活する必要があることや,情報の送り手として,発信する情報に責任をもつこと が大切であることについても触れるようにする。 実際の指導に当たっては,例えば,公共サービスにかかわる仕事に従事している人 から話を聞いたり,パンフレットなどの資料を効果的に活用したりすることが考えら れる。また,コンピュータを実際に使ってインターネットで情報を収集したり発信し たりする活動を取り入れることも考えられる。 これらの学習を通して,情報化の進展は,国民の生活に大きな影響を及ぼしている ことや情報の有効な活用が大切であることを考えることができるようにする。 --84/128-- -83- (内容の取扱い) ( 5) 内容の( 4)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア アについては,放送,新聞などの中から選択して取り上げること。 イ イについては,情報ネットワークを有効に活用して公共サービスの向上に 努めている教育,福祉,医療,防災などの中から選択して取り上げること。 内容の取扱いの( 5)のアは,内容の( 4)のアの指導において,事例として取り上げる 産業の範囲を示したものである。 ここでは,放送,新聞などの中から一つを選択して取り上げ,そのメディアのもつ 働き,国民生活とのかかわりについて具体的に調べられるようにする。事例の選択に 当たっては,地域の実態や児童の興味・関心,教材の収集状況などから判断するよう にする。 内容の取扱いの( 5)のイは,内容の( 4)のイの指導において,情報ネットワークを有 効に活用して公共サービスの向上に努めている事例の範囲を示したものである。 ここで取り上げる事例としては,インターネットを活用して遠隔地の学校と授業を 行っている事例,福祉や医療などの施設や機関が情報を共有し,地域の人々へのサー ビスの向上に努めている事例,地震や土砂災害,犯罪の発生を即時に知らせる取組の 事例などが考えられる。事例の選択に当たっては,学校,保育所や福祉センター,病 院,地域の人々が参加している防災関係の取組など,児童やその家族,身近な地域の 人々の日常生活との結び付きが見られるものを取り上げることが大切である。 --85/128-- -84- 第3節 第6学年の目標と内容 1目標 ( 1) 国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について 興味・関心と理解を深めるようにするとともに,我が国の歴史や伝統を大切に し,国を愛する心情を育てるようにする。 これは,国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産につい て興味・関心と理解を深めるようにするとともに,我が国の歴史や伝統を大切にし, 国を愛する心情を育てるようにすることをねらいとしており,内容の( 1 )にかかわる 理解と態度に関する目標を示している。 「国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について興味 ・関心と理解を深めるようにする」とは,国民生活の歴史的背景としての我が国の今 日までの歴史に目を向け,国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた 文化遺産について興味・関心をもつようにするとともに,先人の業績については,歴 史上の人物が当時の世の中の課題を解決し人々の願いを実現していったことを調べた り,調べたことをまとめたりしながら,人物の働きを共感的に理解できるようにする こと,また,優れた文化遺産についても,当時の人々の願いやものの考え方が具現化 されたものであることを理解できるようにすることである。 なお,戦後の歴史に関する内容においては,国際社会が進展する中で,我が国が国 際交流や国際貢献の面で重要な役割を果たしてきたことについての理解を深めるよう にすることが大切である。 態度に関する目標である「我が国の歴史や伝統を大切にし,国を愛する心情を育て るようにする」とは,今日の国民生活は国家・社会の発展に貢献した先人によってつ くりだされた歴史や伝統の上に成り立っているものであり,このような歴史や伝統を 大切にし,国を愛する心情や,将来に向けて平和で民主的な国家・社会の進展に一層 --86/128-- -85- 努力していこうとする態度を育てるようにすることである。 この目標を実現するためには,内容の( 1)の指導を通して,それぞれの先人がその 時代その時代の課題を解決し,人々の願いを実現するために様々な知恵を出し合いな がら,国家・社会の発展に大きな働きをしてきたことや,様々な工夫や努力をしなが ら優れた文化遺産を生み出したことを理解できるようにすることが大切である。 このことによって,歴史上の人物の働きや文化遺産のもつ価値を理解し,それらに 興味・関心をもつようにするとともに,先人によってつくられてきた我が国の歴史や 伝統を大切にしようとする態度や,国を愛する心情を育てるようにすることが大切で ある。このことは,日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きていくため に必要な資質や能力の基礎を培うことにつながるものである。 ( 2) 日常生活における政治の働きと我が国の政治の考え方及び我が国と関係の深 い国の生活や国際社会における我が国の役割を理解できるようにし,平和を願 う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であることを自 覚できるようにする。 これは,日常生活における政治の働きと我が国の政治の考え方,我が国と関係の深 い国の生活や国際社会における我が国の役割を理解できるようにし,平和を願う日本 人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であることを自覚できるよう にすることをねらいとしており,内容の( 2)及び( 3 )にかかわる理解と態度に関する目 標を示している。 理解に関する目標にある「日常生活における政治の働きと我が国の政治の考え方」 については,日常生活の中で見られる政治の働きについて具体的に理解できるように することや,我が国の民主政治が国民生活の安定と向上を図るために大切な働きをし ていることを理解できるようにするとともに,我が国の民主政治の考え方が日本国憲 法の基本的な考え方に基づいていることを理解できるようにすることにねらいがあ る。 --87/128-- -86- また,「我が国と関係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割」について は,我が国と関係の深い国の生活や文化と我が国のそれらとの相互理解を図ることが 大切であることや,今日我が国は経済や文化の交流などで世界の国々と深いつながり をもっていることを理解できるようにするとともに,我が国は平和な国際社会の実現 に向けて国際交流や国際協力を行っていることや,我が国が国際社会において重要な 役割を果たしていることを理解できるようにすることにねらいがある。 態度に関する目標である「平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きて いくことが大切であることを自覚できるようにする」とは,我が国は日本国憲法に基 づいて戦後一貫して平和な国際社会の実現を目指して努力してきており,これからも 国際社会の一員としてその努力を続けていくことが必要であるという自覚や,そのた めには平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切である という自覚を育てるようにすることである。 この目標を実現するためには,内容の( 2)の指導を通して,国民生活の安定と向上 を図るための政治の働きを理解できるようにするとともに,身近な日常生活における 政治の働きへの関心をもつようにする。また,内容の( 3 )の指導を通して,平和な国 際社会の実現のためには国際理解,国際交流,国際協力が大切であることや,そのた めの我が国の役割を理解し,平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きて いくことが大切であることを自覚できるようにすることが大切である。 ( 3) 社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や地球儀,年表などの各種の 基礎的資料を効果的に活用し, 社会的事象の意味をより広い視野から考える力, 調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。 これは,第6学年の内容全体にかかわる能力に関する目標を示しており,我が国の 歴史と政治及び国際理解に関する学習を通して,社会的事象を具体的に調査するとと もに,地図や地球儀,年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用し,社会的事象の 意味をより広い視野から考える力や,調べたことや考えたことを表現する力を育てる --88/128-- -87- ようにすることをねらいとしている。 「社会的事象を具体的に調査する」とは,我が国の歴史と政治及び国際理解に関す る社会的事象を具体的にとらえたり,その意味をより広い視野から考えたりするため に,観点や質問事項を決めて,詳しく見たり聞いたりするなどの調査を行うことであ る。 「地図や地球儀,年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用」するとは,我が国 の歴史と政治及び国際理解に関する社会的事象を具体的にとらえたり,その意味をよ り広い視野から考えたりするために,地図帳や地球儀,年表などの各種の基礎的資料 を効果的に活用することである。資料を例にすると,第6学年においては,次のよう に活用することが考えられる。 ・資料から必要な情報を的確に読み取る。 ・資料に表されている事柄の全体的な傾向をとらえる。 ・複数の資料を関連付けて読み取る。 ・資料の特徴に応じて読み取る。 ・必要な資料を収集・選択したり吟味したりする。 ・資料を整理したり再構成したりする。 「社会的事象の意味をより広い視野から考える力」を育てるとは,歴史上の主な事 象にかかわる先人の業績や代表的な文化遺産について,それらが我が国の国家・社会 の発展に果たした役割や文化遺産のもつ意味を考える力や,国民生活と民主政治の関 係について,政治は国民生活の安定と向上に役立っていることを考える力,さらに, 我が国と関係の深い国の人々の生活や国際社会における我が国の役割について,国際 社会の一員としての立場から平和な国際社会の実現のための我が国の役割を考える力 を育てるようにすることである。 「調べたことや考えたことを表現する力」を育てるとは,我が国の歴史と政治及び 国際理解に関する社会的事象について具体的に調査したり,地図帳や地球儀,年表な どの各種の基礎的資料を効果的に活用したりして調べたことや,社会的事象の意味を より広い視野から考えたことを表現する力を育てるようにすることである。 この目標を実現するためには,第6学年の内容全体の指導を通して,我が国の歴史 --89/128-- -88- と政治及び国際理解に関する社会的事象について,学習問題に即して具体的に調査し たり,地図帳や地球儀,年表などの各種の基礎的資料を活用したりして調べることが できるようにする必要がある。また,調べたことや社会的事象の意味について広い視 野から考えたことを,根拠や解釈を示しながら図や文章などで表現し説明することが できるようにすることが大切である。 --90/128-- --90/128-- -89- 2内容 ( 1) 我が国の歴史上の主な事象について,人物の働きや代表的な文化遺産を中心 に遺跡や文化財,資料などを活用して調べ,歴史を学ぶ意味を考えるようにす るとともに,自分たちの生活の歴史的背景,我が国の歴史や先人の働きについ て理解と関心を深めるようにする。 「我が国の歴史上の主な事象」とは,我が国の歴史の進展に大きな影響を与えた各時 代の代表的な歴史的事象のことであり,具体的には内容の( 1)のアからケの各項目に 示された歴史的事象を指している。アからケに示された歴史的事象は,我が国の歴史 を学習する際に調べる具体的な対象である。 「人物の働き」とは,国家・社会の発展に貢献した先人の働きのことである。内容の (1)のアからクに示された歴史的事象を調べる際には,内容の取扱いの( 1)のエに示さ れた,これらの歴史的事象とかかわりの深い人物の働きを中心にして,具体的に調べ ることが大切である。 「代表的な文化遺産」とは,内容の取扱いの( 1)のオに示された,例えば,国宝,重 要文化財に指定されているものや, そのうち世界文化遺産に登録されているものなど, 人々の工夫や努力によって生み出され,保存・保護されてきた国家・社会の発展を象 徴する優れた文化遺産のことである。これらの文化遺産については,歴史的事象や人 物の働きとの関連に配慮して児童が理解しやすいものを選択して取り上げ,具体的に 調べることができるようにする。 「遺跡や文化財,資料などを活用して調べ」とは,ここでの学習の仕方を示してい る。小学校の歴史学習では,通史的に展開し知識を網羅的に覚えさせるのではなく, 国土に残る遺跡や文化財を調べたり,年表や文章資料などの資料を活用したりして, 人物の願いや働き,文化遺産の意味などを考え,我が国の歴史に対する興味・関心や 愛情を育てるようにすることを求めている。資料の活用に当たっては,人物の肖像画 や伝記,エピソード(逸話)などによって人物への興味・関心を高めることも大切で --91/128-- -90- ある。また,地域の博物館や郷土資料館などの学芸員から話を聞くことは,歴史的事 象を具体的に理解する上で有効な学習である。 「歴史を学ぶ意味を考えるようにする」とは,単に過去のできごとを理解するだけ でなく,現在の自分たちの生活や国家・社会の発展の基盤がどこにあるのかを考えた り過去のできごとを現在及び将来の発展に生かすことを考えたりすることができるよ うにすることである。それは,歴史学習を通して,児童一人一人が,なぜ歴史を学ぶ のかについて考えることができるようにすることである。 「自分たちの生活の歴史的背景,我が国の歴史や先人の働きについて理解と関心を 深めるようにする」とは,歴史学習を通して児童に身に付けさせたいことである。人 物の働きや代表的な文化遺産を中心に歴史を学ぶことによって,今日の自分たちの生 活は,長い間の我が国の歴史や先人たちの働きの上に成り立っていることや,遠い祖 先の生活が自分たちの生活と深くかかわっていることを理解できるようにする。 また, 我が国の歴史は各時代において様々な課題の解決や人々の願いの実現に向けて努力し た先人の働きによって発展してきたことを理解できるようにし,我が国の歴史への興 味・関心を深めるようにすることが大切である。このことは,我が国の歴史や伝統を 大切にし,国を愛する心情を育てることにつながるものである。 本内容の指導に当たっては,人物の働きや代表的な文化遺産を中心とした学習を通 してねらいが効果的に実現できるようにするために,内容の( 1)のアからケに示した 歴史的事象の扱い方などに留意し,取扱う時数に軽重をつけるなど,単元の構成を工 夫する必要がある。 ア 狩猟・採集や農耕の生活,古墳について調べ,大和朝廷による国土の統一の 様子が分かること。その際,神話・伝承を調べ,国の形成に関する考え方など に関心をもつこと。 この内容は,我が国の歴史が形づくられた時期までを取り扱い,狩猟・採集や農耕 の生活,古墳の二つの歴史的事象を取り上げ,これらについて具体的に調べることを 通して,大和朝廷による国土の統一の様子が分かるようにすることをねらいとしてい --92/128-- -91- る。 「狩猟・採集や農耕の生活」について調べるとは,例えば,貝塚や集落跡などの遺 跡,土器などの遺物を取り上げて調べ,日本列島では長い期間,豊かな自然の中で狩 猟や採集の生活が営まれていたことが分かるようにするとともに,水田跡の遺跡や農 具などの遺物を取り上げて調べ,農耕が始まったころの人々の生活や社会の様子が分 かるようにすることである。 「古墳」について調べるとは,例えば,古墳の規模やその出土品,古墳の広がりな どを取り上げて調べ,各地に大きな力をもつ豪族が出現し,やがて大和朝廷により国 土が統一されたことが分かるようにすることである。その際,国土の統一の様子を物 語る神話・伝承を取り上げて,児童の関心を深めるようにすることが大切である。 「大和朝廷による国土の統一の様子が分かる」とは,各地に支配者が現れ,大和朝 廷による国土の統一が進められたことが分かるようにすることである。 「神話・伝承を調べ,国の形成に関する考え方などに関心をもつ」とは,神話・伝 承に見られる国の形成について,当時の人々のものの見方や考え方に関心をもつよう にすることを意味している。神話・伝承には,国家の成立や国土の統一について,児 童が興味をもちやすい物語が多く見られるので, それらを具体的に調べることである。 これにより,我が国の歴史についての学習が一層親しみのあるものになると考えられ る。 実際の指導に当たっては,例えば,博物館や郷土資料館などを活用して遺物などを 観察し,それらをもとに狩猟・採集や農耕の生活をしていたころの人々の生活や社会 の様子を考える学習,卑弥呼が治めたと言われる邪馬台国の様子を想像して当時の社 や ま たい こく 会を考える学習,身近な地域や国土に残る古墳について調べ,豪族や大和朝廷の力な どを考える学習,神話・伝承を調べて国の形成について当時の人々のものの見方や考 え方に関心をもつようにする学習などが考えられる。 これらの学習を通して,大和朝廷による国土の統一の様子が分かるようにする。 --93/128-- -92- イ 大陸文化の摂取,大化の改新,大仏造営の様子,貴族の生活について調べ, 天皇を中心とした政治が確立されたことや日本風の文化が起こったことが分か ること。 この内容は,聖徳太子が政治を行ったころから京都に都が置かれたころまでの時期 のうち,大陸文化の摂取,大化の改新,大仏造営の三つの歴史的事象を取り上げ,こ れらを具体的に調べることを通して天皇を中心とした政治が確立されたことが,また 貴族の生活を具体的に調べることを通して,日本風の文化が起こったことが,それぞ れ分かるようにすることをねらいとしている。 「大陸文化の摂取」について調べるとは,例えば,法隆寺や遣隋使などによる大陸 けん ずい し 文化の摂取を取り上げて調べ,聖徳太子が小野妹子らを隋(中国)に派遣し,政治の 仕組みなど大陸文化を積極的に摂取しようとしたことが分かるようにすることであ る。 「大化の改新」について調べるとは,例えば,中大兄皇子や中臣鎌足による政治の 改革を取り上げて調べ,天皇中心の新しい国づくりを目指したことが分かるようにす ることである。 「大仏造営」について調べるとは,例えば,聖武天皇の発案のもとに,行基らの協 力により国家的な大事業として東大寺の大仏が造られたことを取り上げて調べ,天皇 を中心にしてつくられた新しい国家の政治が都だけでなく全国にも及んだことが分か るようにすることである。また,聖武天皇の願いにより鑑真が来日したことを取り上 げて調べ,仏教の発展に大きな働きをしたことが分かるようにすることである。 「貴族の生活」について調べるとは,例えば,藤原道長に代表される貴族の暮らし や,紫式部や清少納言の活躍などを取り上げて調べ,日本風の文化が起こったことが 分かるようにすることである。 「天皇を中心とした政治が確立されたことが分かる」とは,聖徳太子の政治や大化 の改新によって政治の仕組みが整えられたことや,大仏が造営されたころに天皇を中 心とした政治が確立されたことが分かるようにすることである。 --94/128-- -93- また,「日本風の文化が起こったことが分かる」とは,これまでの大陸文化とは趣 の異なった,独自の日本風の文化が花開いたことが分かるようにすることである。 実際の指導に当たっては,例えば,聖徳太子の肖像画やエピソードなどからその人 となりを調べる学習,大仏の大きさから天皇の力を考えたり,大仏造営を命じた詔か ら聖武天皇の願いを考えたりする学習,十二単や貴族の服装などから貴族の生活の ひとえ 様子を想像したり文化の特色について考えたりする学習などが考えられる。 これらの学習を通して,天皇を中心とした政治が確立されたことや日本風の文化が 起こったことが分かるようにする。 ウ 源平の戦い,鎌倉幕府の始まり,元との戦いについて調べ,武士による政治 かまくら が始まったことが分かること。 この内容は,源頼朝が平氏打倒の兵を挙げたころから鎌倉に幕府が置かれたころま での時期のうち,源平の戦い,鎌倉幕府の始まり,元との戦いの三つの歴史的事象を 取り上げ,これらを具体的に調べることを通して,武士による政治が始まったことが 分かるようにすることをねらいとしている。 「源平の戦い」について調べるとは,例えば,平清盛や源義経の活躍などを取り上げ て調べ,平氏と戦った源氏が勝利を収めたことが分かるようにすることである。 「鎌倉幕府の始まり」について調べるとは,例えば,朝廷から認められ全国に守護, 地頭を置いた源頼朝が鎌倉に幕府を開いたことを取り上げて調べ,武士による政治が 始まったことが分かるようにすることである。 「元との戦い」について調べるとは,例えば,北条時宗が全国の武士を動員して元の 攻撃を退けたことなどを取り上げて調べ,幕府が全国的に力をもってきたことが分か るようにすることである。 「武士による政治が始まったことが分かる」とは,源頼朝が鎌倉に幕府を開き,武士 が勢力をもつようになったことが分かるようにすることである。 実際の指導に当たっては,例えば,源平の戦いにおける源義経の活躍の様子やエピ ソードを調べる学習,肖像や人物年表,エピソードから都を離れて鎌倉に幕府を開い --95/128-- -94- た源頼朝の業績について考える学習,元との戦いの様子から武士の戦いぶりを調べる 学習などが考えられる。 これらの学習を通して,武士による政治が始まったことが分かるようにする。 エ 京都の室町に幕府が置かれたころの代表的な建造物や絵画について調べ,室 町文化が生まれたことが分かること。 この内容は,京都の室町に幕府が置かれたころの文化のうち,代表的な建造物や絵 画を取り上げ,それらを具体的に調べることを通して,室町文化が生まれたことが分 かるようにすることをねらいとしている。 「京都の室町に幕府が置かれたころの代表的な建造物や絵画」について調べるとは, 例えば,足利義満が建てた金閣や足利義政が建てた銀閣などの建造物や雪舟によって 描かれた水墨画などの絵画を取り上げて調べ,今日の生活文化に直結する要素をもつ 室町文化が生まれたことが分かるようにすることである。 「室町文化が生まれたことが分かる」とは,京都の室町に幕府が置かれたころに,足 利義満や足利義政によって代表的な建造物が建てられたことや,雪舟によって我が国 の水墨画を代表する作品が生み出されたことが分かるようにすることである。なお, ここで生まれた文化は今もなお多くの人々に親しまれていることに触れるようにす る。その際,能,茶の湯,生け花などについても関連的に取り上げることが考えられ る。 実際の指導に当たっては,例えば,書院造の影響を受けている伝統的な家屋を調べ たり,水墨画を描く体験を行ったりして,室町文化に関心をもつようにする学習など が考えられる。 これらの学習を通して,室町文化が生まれたことが分かるようにする。 オ キリスト教の伝来,織田・豊臣の天下統一,江戸幕府の始まり,参勤交代, お だ とよとみ 鎖国について調べ,戦国の世が統一され,身分制度が確立し武士による政治が 安定したことが分かること。 --96/128-- -95- この内容は,戦国大名の群雄割拠の状態から豊臣秀吉が全国を統一した後,江戸幕 府が政治を行った時代に至るまでの時期のうち,キリスト教の伝来,織田・豊臣の天 下統一,江戸幕府の始まり,参勤交代,鎖国の五つの歴史的事象を取り上げ,これら を具体的に調べることを通して,戦国の世が統一され,身分制度が確立し武士による 政治が安定したことが分かるようにすることをねらいとしている。 「キリスト教の伝来」について調べるとは,例えば,ザビエルがキリスト教を伝え たことを取り上げて調べ,我が国にキリスト教が広まったことが分かるようにするこ とである。 「織田・豊臣の天下統一」について調べるとは,例えば,織田信長が短い期間に領土 を拡大したことや, 豊臣秀吉が検地や刀狩などの政策を行ったことを取り上げて調べ, 戦国の世が統一された様子が分かるようにすることである。 「江戸幕府の始まり」について調べるとは,例えば,徳川家康が関ケ原の戦いに勝利 を収め,江戸に幕府を開いたことを取り上げて調べ,江戸幕府による政治が始まった ことが分かるようにすることである。 「参勤交代」について調べるとは,例えば,徳川家光の時代に参勤交代が制度として 確立したことを取り上げて調べ,大名を抑える仕組みを整えたことが分かるようにす ることである。 「鎖国」について調べるとは,例えば,キリスト教の禁止や海外との貿易の統制な どが行われたことを取り上げて調べ,江戸幕府による政治が安定したことが分かるよ うにすることである。 「戦国の世が統一され,身分制度が確立し武士による政治が安定したことが分かる」 とは,織田信長と豊臣秀吉の活躍により群雄割拠の世の中が統一されたこと,徳川家 康や徳川家光の働きにより武士を中心とする身分制度が確立し,江戸幕府の政治が安 定したことが分かるようにすることである。 実際の指導に当たっては,例えば,戦い方を工夫しながら勢力を伸ばした織田信長 による天下統一への様子を調べる学習,検地や刀狩の資料から豊臣秀吉の政策の意図 を考える学習,徳川家康や徳川家光の肖像画や人物年表,エピソードなどからそれら --97/128-- -96- の人物の業績を考える学習,大名行列や出島,踏絵の資料を活用して江戸幕府の政策 を調べる学習などが考えられる。 これらの学習を通して,戦国の世が統一され,身分制度が確立し武士による政治が 安定したことが分かるようにする。 カ 歌舞伎や浮世絵,国学や蘭学について調べ,町人の文化が栄え新しい学問が か ぶ き らんがく 起こったことが分かること。 この内容は,江戸幕府が政治を行った時代の文化や学問のうち,歌舞伎や浮世絵, 国学や蘭学の二つの歴史的事象を取り上げ,これらを具体的に調べることを通して, 町人の文化が栄え新しい学問が起こったことが分かるようにすることをねらいとして いる。 「歌舞伎や浮世絵」について調べるとは,例えば,近松門左衛門などによって生み 出された歌舞伎の作品が数多く演じられ,それを人々が楽しんで見ていたことや,歌 川 (安藤)広重などによって描かれた作品が人々に親しまれたことを取り上げて調べ, 町人の文化が栄えたことが分かるようにすることである。 「国学や蘭学」について調べるとは,例えば,本居宣長が我が国の古典を研究し国 学の発展に重要な役割を果たしたこと, 杉田玄白がオランダ語の医学書を翻訳して 『解 体新書』を著したこと,伊能忠敬が全国を測量して精密な日本地図を作ったことを取 り上げて調べ,新しい学問が起こったことが分かるようにすることである。 「町人の文化が栄え新しい学問が起こったことが分かる」とは,社会が安定するに つれて,歌舞伎や浮世絵などの文化が町人の間に広がったことや,国学や蘭学などの 新しい学問が起こったことが分かるようにすることである。 実際の指導に当たっては,例えば,歌舞伎や浮世絵を楽しむ人々に着目して当時の 文化の担い手を考える学習,本居宣長,杉田玄白,伊能忠敬の業績から,その努力の 様子や果たした役割を調べる学習などが考えられる。 これらの学習を通して,町人の文化が栄え新しい学問が起こったことが分かるよう にする。 --98/128-- -97- キ 黒船の来航,明治維新,文明開化などについて調べ,廃藩置県や四民平等な どの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かるこ と。 この内容は,幕末から明治の初めにかけてのうち,黒船の来航,明治維新,文明開 化などの歴史的事象を取り上げ,これらを具体的に調べることを通して,我が国は廃 藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたこ とが分かるようにすることをねらいとしている。 「黒船の来航」について調べるとは,例えば,ペリーが率いる米国艦隊の来航を取 り上げて調べ,我が国が開国し,江戸幕府が倒れるきっかけになったことが分かるよ うにすることである。 「明治維新」について調べるとは,例えば,西郷隆盛,大久保利通,木戸孝允らの 働きによって明治天皇を中心とした新政府がつくられたこと,勝海舟と西郷隆盛の話 し合いにより戦いをせずに江戸城の明け渡しが行われたこと,明治天皇の名による五 箇条の御誓文が発布され新政府の政治の方針が示されたことなどを取り上げて調べ, 新しい時代が始まり,廃藩置県や四民平等などの諸改革によって近代的な政治や社会 の仕組みが整ったことが分かるようにすることである。 「文明開化」について調べるとは,例えば,福沢諭吉が欧米の思想を紹介するなど して,欧米の文化が広く取り入れられたことなどを取り上げて調べ,人々の生活が大 きく変化したことが分かるようにすることである。 「廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進 めたことが分かる」とは,明治政府が行った廃藩置県や四民平等などの諸改革によっ て近代国家としての政治や社会の新たな仕組みが整い,欧米の文化を取り入れて我が 国の近代化を進めたことが分かるようにすることである。 実際の指導に当たっては,例えば,ペリーの肖像画や黒船来航の錦絵などから江 にしき 戸幕府や当時の人々への影響を考える学習,西郷隆盛,大久保利通,木戸孝允のエピ ソードや資料などをもとに明治政府の諸改革について調べる学習, 『学問のすゝめ』 す --99/128-- -98- を手掛かりとして福沢諭吉が欧米から取り入れた新しい文化や考え方を調べる学習な どが考えられる。 これらの学習を通して,我が国は廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の 文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かるようにする。 ク 大日本帝国憲法の発布,日清・日露の戦争,条約改正,科学の発展などにつ にっ しん いて調べ,我が国の国力が充実し国際的地位が向上したことが分かること。 この内容は,明治中・後期から大正期における,大日本帝国憲法の発布,日清・日 露の戦争,条約改正,科学の発展などの歴史的事象を取り上げ,これらを具体的に調 べることを通して,我が国の国力が充実し国際的地位が向上したことが分かるように することをねらいとしている。 「大日本帝国憲法の発布」について調べるとは,例えば,国会の開設に備えて政党 をつくった板垣退助や大隈重信,憲法制定に重要な役割を果たした伊藤博文の働きな どを取り上げて調べ,明治政府が発足後 20年ほどで憲法を制定し,立憲政治を確立 したことが分かるようにすることである。 「日清・日露の戦争」について調べるとは,例えば,日清戦争の講和条約の締結で 大きな働きをした陸奥宗光,日露戦争において活躍した東郷平八郎や講和条約の締結 で大きな働きをした小村寿太郎の働きなどを取り上げて調べ,我が国が厳しい国際環 境に置かれた状況において,これらの戦争に勝利を収め,講和条約を締結することに よって, 国の安全を確保することができたことが分かるようにすることである。なお, これらの戦争において,朝鮮半島及び中国の人々に大きな損害を与えたことに触れる ことが大切である。 「条約改正」について調べるとは,例えば,外務大臣であった陸奥宗光や小村寿太 郎の働きなどを取り上げて調べ,幕末に欧米諸国との間で結ばれた不平等な条約を対 等なものに改める交渉を進め,条約改正に成功したことが分かるようにすることであ る。 「科学の発展」について調べるとは,例えば,黄熱病について世界的に注目された --100/128-- --100/128-- --100/128-- -99- 研究を行った野口英世の業績を取り上げて調べ,科学の面でも我が国の国際的地位が 向上し,世界的に優れた学者が活躍したことが分かるようにすることである。 「我が国の国力が充実し国際的地位が向上したことが分かる」とは,大日本帝国憲 法の発布や日清・日露の戦争において勝利したこと,幕末に結ばれた不平等条約の改 正,科学の発展への貢献などにより,我が国の国力の充実と国際的地位の向上が図ら れたことが分かるようにすることである。 実際の指導に当たっては,例えば,伊藤博文が大日本帝国憲法の起草を進めるに当 たってどのような取り組み方をしたのかを調べる学習,日清・日露の戦争や条約改正 にかかわる主なできごとを年表に表し,陸奥宗光や小村寿太郎の努力をとらえる学習 などが考えられる。 これらの学習を通して,我が国の国力が充実し国際的地位が向上したことが分かる ようにする。 ケ 日華事変,我が国にかかわる第二次世界大戦,日本国憲法の制定,オリンピ ックの開催などについて調べ,戦後我が国は民主的な国家として出発し,国民 生活が向上し国際社会の中で重要な役割を果たしてきたことが分かること。 この内容は,おおむね昭和の時代における主なできごとのうち,日華事変,我が国 にかかわる第二次世界大戦,日本国憲法の制定,オリンピックの開催などの歴史的事 象を取り上げ,これらを具体的に調べることを通して,戦後我が国は民主的な国家と して出発し,国民生活が向上し国際社会の中で重要な役割を果たしてきたことが分か るようにすることをねらいとしている。 「日華事変,我が国にかかわる第二次世界大戦」について調べるとは,例えば,我 が国と中国との戦いが全面化したことを取り上げて調べ,我が国が戦時体制に移行し たことが分かるようにしたり,また,我が国がアジア・太平洋地域において連合国と 戦って敗れたことを取り上げて調べ,各地への空襲,沖縄戦,広島・長崎への原子爆 弾の投下など, 国民が大きな被害を受けたことが分かるようにしたりすることである。 また,これらの戦争において,我が国は,中国をはじめとする諸国に大きな損害を与 --101/128-- - 100 - えたことについても触れることが大切である。 「日本国憲法の制定」について調べるとは,戦後民主的で平和主義的な憲法が制定 されたことを調べ,戦後我が国が民主的な国家として出発したことが分かるようにす ることである。なお,憲法の基本的な原則などについては,内容の( 2 )のイの日本国 憲法に関する学習において指導するようにする。 「オリンピックの開催」について調べるとは,例えば,スポーツの祭典としてアジ アで初めて東京で行われたオリンピック大会や,その後我が国で開催されたオリンピ ック大会を取り上げて調べ,戦後我が国の国民生活が向上したことや我が国が国際社 会において重要な役割を果たしてきたことが分かるようにすることである。 「戦後我が国は民主的な国家として出発し,国民生活が向上し国際社会の中で重要 な役割を果たしてきたことが分かる」とは,戦後我が国は日本国憲法を制定し民主的 な国家として出発したことや,戦後は国民の不断の努力によって国民生活が豊かにな り国際社会においても重要な役割を果たしてきたことが分かるようにすることであ る。 実際の指導に当たっては,例えば,学校図書館や公共図書館,博物館や郷土資料館 などを活用したり,地域の高齢者に話を聞いたりするなどの活動を取り入れ,児童が 自ら資料を活用したり調査したりして学習が具体的に展開できるようにすることが大 切である。 これらの学習を通して,戦後我が国は民主的な国家として出発し,国民生活が向上 し国際社会の中で重要な役割を果たしてきたことが分かるようにする。 (内容の取扱い) ( 1) 内容の( 1)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア 児童の興味・関心を重視し,取り上げる人物や文化遺産の重点の置き方に 工夫を加えるなど,精選して具体的に理解できるようにすること。その際, ケの指導に当たっては,児童の発達の段階を考慮すること。 イ 歴史学習全体を通して,我が国は長い歴史をもち伝統や文化をはぐくんで --102/128-- - 101 - きたこと,我が国の歴史は政治の中心地や世の中の様子などによって幾つか の時期に分けられることに気付くようにすること。 ウ アの「神話・伝承」については,古事記,日本書紀,風土記などの中から 適切なものを取り上げること。 エ アからクまでについては,例えば,次に掲げる人物を取り上げ,人物の働 きを通して学習できるように指導すること。 卑弥呼,聖徳太子,小野妹子,中大兄皇子,中臣鎌足,聖武天皇,行基, ひ み こ しょうとくた い し お のの いも こ なかのおおえのおう じ なかとみのか またり しょう む ぎょう き 鑑真,藤原道長, 紫 式部,清少納言, 平 清盛, 源 頼朝, 源 義経, がんじん ふじわらの み ち な が むら さきしき ぶ せいしょ う な ご ん たい らのきよも り みなもとのよりと も みなもとのよしつ ね 北条時宗,足利義満,足利義政,雪舟,ザビエル,織田信長,豊臣秀吉, ほうじょうときむね あしか がよし みつ あ しかがよ しまさ せっしゅう お だ のぶなが とよとみ ひでよ し 徳川家康,徳川家光,近松門左衛門,歌川(安藤)広重,本居宣長, と くがわい えやす とくがわ いえみ つ ちかま つもん ざ え もん うたがわ あんどう ひろし げ もとお りの りなが 杉田玄白,伊能忠敬,ペリー,勝海舟,西郷隆盛,大久保利通,木戸孝允, すぎ た げんぱく い のう ただたか かつかいしゅう さ いごうた かもり おお く ぼ と しみち き ど た かよし 明治天皇,福沢諭吉,大隈重信,板垣退助,伊藤博文,陸奥宗光, ふくざわ ゆ きち おおく まし げのぶ いたがき たいすけ い とうひろ ぶみ む つ むねみつ 東郷平八郎,小村寿太郎,野口英世 とう ごう へいはち ろう こ むら じゅ た ろう の ぐち ひで よ オ アからケまでについては,例えば,国宝,重要文化財に指定されているも のや,そのうち世界文化遺産に登録されているものなどを取り上げ,我が国 の代表的な文化遺産を通して学習できるように配慮すること。 内容の取扱いの( 1 )のアは,小学校の歴史学習の特色を具体化するための配慮事項 を示したものである。 小学校の歴史学習は,人物の働きや代表的な文化遺産を中心として学習することと している。児童にとって我が国の歴史を初めて学習することから,児童の興味・関心 を重視し,取り上げる人物や文化遺産を精選する必要がある。このことは,小学校の 歴史学習において,歴史上の細かなできごとや年号などを覚えさせることより,まず 我が国の歴史に対する興味・関心をもたせ,歴史を学ぶ楽しさを味わわせ,その大切 さに気付くようにすることを重視しているものである。 指導計画を作成する際には,例えば,アからケに示された歴史的事象の中で重点的 に扱うものと関連的に扱うものを明確にして時間のかけ方に軽重をつけるなど,歴史 的事象の取り上げ方を工夫し,小学校の歴史学習のねらいが一層効果的に実現できる --103/128-- - 102 - ようにすることが大切である。 実際の指導に当たっては,内容の( 1 )のアからクに示された歴史的事象に対応する 人物の働きや代表的な文化遺産を取り上げるとともに,重点的に扱う歴史的事象やそ れに対応する人物などについては,資料の数や扱う時間数に比重をかけるなど,重点 の置き方に工夫を加え,人物の働きを具体的に理解できるようにする。その際,児童 の発達の段階を踏まえた教材や資料の内容や提示の仕方などを工夫し,児童の具体的 な活動を中心に学習を展開する必要がある。また,内容の( 1)のケについては,その 後の中学校以降の歴史学習との関連を図り,児童の発達の段階を踏まえて指導するよ うに配慮する必要がある。 内容の取扱いの( 1 )のイは,小学校の歴史学習全体を通して児童に身に付けさせた い歴史の見方や考え方の指導に当たって,その配慮事項を示したものである。 我が国は遠い祖先からの長い歴史をもち,その間,私たちの祖先は世界に誇ること のできる,日本固有の伝統や文化をはぐくんできた。また,我が国の歴史については, 狩猟・採集や農耕の生活の後,大和朝廷による国土の統一が行われてから,政治の中 心地や世の中の様子などに着目すると幾つかの時期に区分することができる。こうし たことを歴史学習全体を通して, 児童一人一人が気付くようにすることが大切である。 実際の指導においては,取り上げる歴史的事象と人物の働きや代表的な文化遺産を 関連させ,我が国の伝統や文化が長い歴史を経て築かれてきたものであること,そう した遠い祖先の生活,人々の工夫や努力が今日の自分たちの生活と深くかかわってい ることに気付くことができるようにする必要がある。 これらの学習を通して,我が国の歴史を学ぶ意味を考えるとともに,歴史に対する 興味・関心を高めるようにすることが大切である。 内容の取扱いの( 1)のウは,内容の( 1)のアにおいて,神話・伝承について指導する 際の出典の範囲及びそれを取り上げる視点を示したものである。 ここで取り上げる神話・伝承については,古事記,日本書紀,風土記などの中から, 国の形成に関する考えを学習する上で適切なものを取り上げることを示している。 古事記,日本書紀,風土記などには,国が形成されていく過程に関する考え方をく みとることのできる,高天原神話,天孫降臨,出雲国譲り,神武天皇の東征の物語, たか まの はら --104/128-- - 103 - 九州の豪族や関東などを平定した日本 武 尊の物語などが記述されている。 や ま と たけ るのみこ と ここでの指導に当たっては,これらの神話・伝承の中から児童に興味や関心をもた せることのできるものを取り上げ,国の形成に関する考え方などに関心をもつように 指導することが大切である。 内容の取扱いの( 1)のエは,人物の働きを中心とした学習を進める上で,内容の( 1 ) のアからクに示した歴史的事象との関連を考慮して,取り上げる人物を例示したもの である。 具体的には,歴史学習のアからクまでの8項目に示した歴史的事象に関連して,我 が国の国家・社会の発展に大きな働きをした代表的な人物を,政治,文化などの分野 から取り上げて,合計 42名を例示している。 実際の指導においては,これらの人物を取り上げ,その働きを通して指導を行うこ とが適切であると考えられる。しかし,これらは例示として示しているものであり, 指導のねらいを実現できるのであれば,例示した人物に代えて,他の人物を取り上げ ることも可能である。 また,取り上げる歴史的事象とのかかわりで,例えば,地域の歴史上の人物など, 例示した人物以外の人物を取り上げることも考えられるが,内容の取扱いの( 1)のア に示された精選の趣旨を踏まえ,例示した人物を中心に学習を展開するよう配慮する 必要がある。 内容の取扱いの( 1 )のオは,代表的な文化遺産を通して歴史学習を進める上で,内 容の( 1)のアからケに示した歴史的事象に関連して,取り上げる文化遺産の範囲を例 示したものである。 「重要文化財」とは,国内の建造物,美術工芸品等の文化財の中から国によって指 定されたものであり, 「国宝」とは, 「重要文化財」のうち,学術的に価値が極めて 高く,かつ代表的なものとして指定されたものである。 「世界文化遺産」とは,世界 遺産リストに登録された遺跡や景観,自然などの世界遺産のうち,我が国に所在する 建築物や遺跡などの文化遺産を指している。 ここでは,歴史的事象と関連の深い国宝,重要文化財,世界文化遺産などの中から 適切なものを取り上げ,我が国の代表的な文化遺産を通して具体的な学習が展開でき --105/128-- - 104 - るよう配慮する必要がある。なお,地域の実態を生かし,歴史的事象に対する関心や 理解を深める観点から,自分たちの住む県(都,道,府)や市(区,町,村)が指定 している重要文化財などを取り上げることも一つの方法である。 実際の指導においては,取り上げた文化遺産を通して,それらが我が国の先人の工 夫や努力によって生み出されたものであることや,私たちの祖先の手によって現在ま で大切に受け継がれてきたこと,それらは我が国の伝統や文化の特色や現在の私たち の生活や文化の源流などを考える上で欠かすことができない高い価値をもっているこ とを具体的に理解できるようにするとともに,我が国の伝統や文化を大切にしようと する態度を育てるようにすることが大切である。 --106/128-- - 105 - ( 2) 我が国の政治の働きについて,次のことを調査したり資料を活用したりして 調べ,国民主権と関連付けて政治は国民生活の安定と向上を図るために大切な 働きをしていること,現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方 に基づいていることを考えるようにする。 「我が国の政治の働き」とは,我が国の政治が民主政治の考え方に基づいて国民生 活の安定と向上を図るために果たしている働きを示している。 「次のこと」とは「国民生活には地方公共団体や国の政治の働きが反映しているこ と」 「日本国憲法は,国家の理想,天皇の地位,国民としての権利及び義務など国家 や国民生活の基本を定めていること」の二つを指している。これらは,我が国の政治 の働きについて学習する際に調べる具体的な対象である。 「調査したり資料を活用したりして調べ」と は,ここでの学習の仕方を示している。 政治に関する学習は,ややもすると概念的,抽象的になったり,細かな用語や仕組み, 数字などを覚えさせたりする指導になりがちである。ここでは,身近な具体的事例を 取り上げて実際に調査したり資料を活用したりして,具体的に調べるようにすること が大切である。 「国民主権と関連付けて政治は国民生活の安定と向上を図るために大切な働きをし ていること」を考えるようにするとは,国民生活には地方公共団体や国の政治の働き が反映していることを調べることによって,我が国の政治が国民生活と密接な関係を もっていることや,政治は国民の願いを実現し国民生活の安定と向上を図るために大 きな働きをしていることを,国民主権と関連付けて具体的に考えることができるよう にすることである。 「現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考えに基づいていることを考え るようにする」とは,日本国憲法に定められている国家の理想,天皇の地位,国民と しての権利及び義務など国家や国民生活の基本となる事柄を調べることによって,現 在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本理念である国民主権の考え方と深くかかわ ってることを,日常生活における具体的な事柄と関連付けて考えることができるよう --107/128-- - 106 - にすることである。 ア 国民生活には地方公共団体や国の政治の働きが反映していること。 ここでは,我が国の政治の働きについて学習する際に,政治は国民生活の安定と向 上を図るために大切な働きをしていることを考える手掛かりとして,国民生活には地 方公共団体や国の政治の働きが反映していることを調べる対象として挙げている。こ こに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「国民生活には地方公共団体や国の政治の働きが反映していること」を調べるとは, 市(区,町,村)や県(都,道,府) ,国による社会保障,災害復旧の取組,地域の 開発などの事例のいずれかを取り上げ,その事業が国民生活の安定と向上を図ろうと する地方公共団体や国の政治の働きによるものであることを具体的に調べることであ る。 社会保障については高齢者や障害者のための福祉政策,健康医療に関する事業,子 育て支援事業などが,災害復旧の取組としては風水害,地震や津波,土砂災害,噴火 などの災害に対する国や地方公共団体の救援活動や災害復旧の工事などが,地域の開 発については道路の建設,地域の再開発,田畑や河川の改修工事などが,それぞれ考 えられる。これらのほかにも,公共施設の建設を取り上げることも考えられる。ここ では,これらの事業について,例えば,地域の人々や国民の願い,計画から実施まで の期間や過程,規模や予算などを取り上げて具体的に調べるようにする。 実際の指導に当たっては,児童の関心や地域の実態に応じて,調査活動を取り入れ たり資料を活用したりして学習が具体的に展開できるようにすることが大切である。 その際,国の政治の働きを具体的に理解できるようにするために,国会議員の選挙, 国会の働きについて取り上げ国会などの議会政治の働きや選挙の意味を理解できるよ うにすることや,政治の働きと税金の使われ方の関係について取り上げ租税の役割を 理解できるようにすること,国会の働きと関連付けて内閣や裁判所の働きを取り上げ 三権相互の関連を理解できるようにすることが考えられる。 これらの学習を通して,政治は国民生活の安定と向上を図るために大切な働きをし --108/128-- - 107 - ていることを考えることができるようにする。 イ 日本国憲法は,国家の理想,天皇の地位,国民としての権利及び義務など国 家や国民生活の基本を定めていること。 ここでは,我が国の政治の働きについて学習する際に,現在の我が国の民主政治は 日本国憲法の基本的な考えに基づいていることを考える手掛かりとして,日本国憲法 は国家の理想,天皇の地位,国民としての権利及び義務などの国家や国民生活の基本 を定めていることを調べる対象として挙げている。 日本国憲法は「国家や国民生活の基本を定めていること」を調べるとは,日本国憲 法には国家の理想,天皇の地位,国民としての権利及び義務などが定められているこ とや,これらは国家や国民生活にとって基本となる事柄であることを調べることであ る。ここに示された事項について指導する際には,次のことをおさえる必要がある。 「国家の理想」について調べるとは,日本国憲法に示された基本的人権の尊重,国 民主権,平和主義の基本的な原則を取り上げて調べ,国民の基本的人権は侵すことの できない永久の権利として保障されていること,主権は国民にあること,平和を希求 しそしてその実現や維持のために尽くすことが国民の義務であることや我が国が国際 紛争を解決する手段としての戦争を永久に放棄することとしていることを理解できる ようにすることである。 ここでは,日本国憲法の基本的な原則は,平和で民主的な国家を築く上で極めて重 要なものであることを考えるようにすることが大切である。 「天皇の地位」について調べるとは,天皇の国事行為等を取り上げて調べ,天皇は 日本国の象徴であり日本国民統合の象徴として位置付けられていることを理解できる ようにすることである。 「国民としての権利及び義務」について調べるとは,日常生活に見られる国民の権 利,義務に関する具体的な事例を取り上げて調べ,生命,自由及び幸福の追求に対す る国民の権利は侵すことのできない永久の権利として国民に保障されたものであり, それを保持するためには国民の不断の努力を必要とするものであること,参政権は国 --109/128-- - 108 - 民主権の表れであり,民主政治にとって極めて重要であること,また,国民は権利を 行使する一方で,勤労や納税の義務などを果たす必要があることなどを理解できるよ うにすることである。 その際,権利の行使について,国民は公共の福祉のために諸権利を行使する責任を 伴うものであり,他の人々の権利の行使に十分に留意する必要があることについても 理解できるようにすることが大切である。 実際の指導に当たっては,例えば,日常生活との結び付きが見られる事例など,児 童にとって理解しやすい事例を取り上げ,ここで述べた日本国憲法の基本的な考え方 を具体的に理解できるように留意することが大切である。 これらの学習を通して,現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方に 基づいていることを考えることができるようにする。 (内容の取扱い) ( 2) 内容の( 2)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア 政治の働きと国民生活との関係を具体的に指導する際には,各々の国民の 祝日に関心をもち,その意義を考えさせるよう配慮すること。 イ 国会などの議会政治や選挙の意味, 国会と内閣と裁判所の三権相互の関連, 国民の司法参加,租税の役割などについても扱うようにすること。 ウ アの「地方公共団体や国の政治の働き」については,社会保障,災害復旧 の取組,地域の開発などの中から選択して取り上げ,具体的に調べられるよ うにすること。 エ イの「天皇の地位」については,日本国憲法に定める天皇の国事に関する 行為など児童に理解しやすい具体的な事項を取り上げ,歴史に関する学習と の関連も図りながら,天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにするこ と。また,イの「国民としての権利及び義務」については,参政権,納税の 義務などを取り上げること。 --110/128-- --110/128-- - 109 - 内容の取扱いの( 2 )のアは,政治の働きと国民生活との関係を具体的に指導する際 には,各々の国民の祝日に関心をもち,その意義を考えさせるよう配慮することを示 したものである。 政治の働きと国民生活との関係の指導については,国民生活とのかかわりが大きい 具体的事柄として,国民の祝日を扱うようにする。その際,国民の祝日に関する法律 に定められている内容や由来などを取り上げながら, 各々の祝日について関心をもち, その祝日が設けられている意義について考えることができるよう配慮する必要があ る。 内容の取扱いの( 2 )のイは,我が国の政治の働きの学習において,国会などの議会 政治や選挙の意味,国会と内閣と裁判所の三権相互の関連,国民の司法参加,租税の 役割についても扱うようにすることを示したものである。 「国会などの議会政治や選挙の意味」については,国会などの議会政治や国会議員 などの選挙を取り上げ,選挙は国民や住民の代表者を選出する大切な仕組みであるこ と,国民の代表者として選出された国会議員は国民生活の安定と向上に努めなければ ならないこと,国民や住民は代表者を選出するため,選挙権を正しく行使することが 大切であることを考えるようにする。 「国会と内閣と裁判所の三権相互の関連」については, 「国会」が国権の最高機関 であり,国の唯一の立法機関として法律の制定や予算の議決,条約の承認などを行っ ていることを, 「内閣」が国の行政権をもち,法律や予算に基づいて実際の政治を行 っていることを, 「裁判所」が司法権をもち,法律に基づいて裁判を行っていること を取り上げ,三権がそれぞれ大切な働きをしていることや,三権が相互に関連し合っ ていることについて理解できるようにする。 「国民の司法参加」については,国民が裁判に参加する裁判員制度を取り上げ,法 律に基づいて行われる裁判と国民とのかかわりについて関心をもつようにする。 「租税の役割」については,国や県,市によって行われている社会保障,災害復旧 の取組,地域の開発などに必要な費用は租税によってまかなわれていること,それら は国民によって納められていることなどを理解し,租税が大切な役割を果たしている ことを考えることができるようにする。 --111/128-- - 110 - 内容の取扱いの( 2)のウは,内容の( 2)のアの「地方公共団体や国の政治の働き」に ついての学習において取り上げる事例の範囲と配慮事項を示したものである。 政治の働きについての指導では,学習が抽象的にならないよう,また,調べる事例 が網羅的にならないように,児童の関心や地域の実態に応じて,社会保障,災害復旧 の取組,地域の開発などの中から事例を一つ選択して取り上げ,具体的に調べるよう にすることが考えられる。 社会保障を取り上げる場合,例えば,高齢者や障害者の介護,医療の充実,子育て 支援などにかかわる具体的な事業を選択して取り上げ,市(区)役所や町(村)役場, 県(都,道,府)庁が地域の実情を調べ,人々の願いを取り入れながら必要な施策を 決定し,国と協力して計画的に実行していることなどを具体的に調べるようにする。 災害復旧の取組を取り上げる場合,災害が起こったときには市役所や町役場, 県庁が, 緊急事態に対して組織的に救援活動を行ったり災害復旧のための工事を進めたりして いることや,国でも地方公共団体の救援活動を援助したり,災害復旧の施策を進めた りしていることなどを具体的に調べるようにする。また,地域の開発を取り上げる場 合,その事業について,計画から実施までの経過,規模や予算に着目し,その事業の 実施に当たっては,市役所,県庁が,それぞれの地域の実態に応じて,住民の願いを 取り入れながら,国と協力したり長期的な見通しを立てたりして,望ましい施策を決 定し,実行していることを具体的に調べるようにする。 内容の取扱いの( 2)のエは,内容の( 2 )のイに示されている「天皇の地位」と「国 民としての権利及び義務」について学習する際に取り上げる事例と配慮事項を示した ものである。 「天皇の地位」の指導に当たっては,児童の発達の段階を踏まえ,抽象的な指導に ならないようにするため,例えば,国会の召集,栄典の授与,外国の大使等の接受な どの国事行為や,国会開会式への出席,全国植樹祭・国民体育大会への出席,被災地 への訪問・励ましなどを通して,象徴としての天皇と国民との関係を取り上げ,天皇 は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることを理解できるようにする。 また,内容の( 1 )の歴史学習との関連に配慮し,天皇が国民に敬愛されてきたこと を理解できるようにすることも大切である。 --112/128-- - 111 - これらの指導を通して,天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにする必要が ある。 「国民としての権利及び義務」の指導については,日本国憲法に定められた国民と しての権利及び義務を網羅的に取り上げるのではなく,国民生活の安定と向上を図る ために政治が大切な働きをしているという観点から,具体的な事例を取り上げるよう にすることが大切である。国民の権利については,参政権を取り上げ,選挙権など, 政治に参加する権利が国民に保障されていることを理解できるようにする必要があ る。国民の義務については,納税の義務を取り上げ,税金が国民生活の向上と安定に 使われていることを理解できるようにする必要がある。 --113/128-- - 112 - ( 3) 世界の中の日本の役割について,次のことを調査したり地図や地球儀,資料 などを活用したりして調べ,外国の人々と共に生きていくためには異なる文化 や習慣を理解し合うことが大切であること,世界平和の大切さと我が国が世界 において重要な役割を果たしていることを考えるようにする。 「世界の中の日本の役割」とは,世界の国の人々と相互に理解を深め合い,平和な 国際社会の実現を目指して,我が国が国際社会の中で果たしている重要な役割を指し ている。 「次のこと」とは, 「我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生 活の様子」 「我が国の国際交流や国際協力の様子及び平和な国際社会の実現に努力し ている国際連合の働き」の二つを指している。これらは,世界の中の日本の役割につ いて学習する際に調べる具体的な対象である。 「調査したり地図や地球儀,資料などを活用したりして調べ」とは,ここでの学習 の仕方を示している。ここでは,学校図書館や公共図書館,インターネットを活用し たり,地域の留学生や外国人から聞き取り調査したりする活動などを通して具体的に 調べ,我が国とつながりが深い国の人々の生活の様子,文化や習慣の違いについて理 解を深めるようにすることが大切である。我が国の国際交流や国際協力の様子,国際 連合の働きについての学習は,ややもすると網羅的,抽象的になりがちである。ここ では,具体的事例を取り上げ,調査や資料の活用を中心にした学習が展開できるよう にする。また,地図や地球儀の活用については,地図帳や地球儀を用いて我が国と経 済や文化などの面でつながりが深い国の名称と位置を確認したり,日本から見た方位 などを調べたりすることを通して, 地図帳や地球儀を活用する能力を育てるとともに, 世界の国々や地域に関心をもつようにする。 「外国の人々と共に生きていくためには異なる文化や習慣を理解し合うことが大切 であること」を考えるようにするとは,我が国と経済や文化などの面でつながりが深 い国の人々の生活の様子を調べることによって,外国の人々の文化や習慣の違いに触 れ,その違いを理解し尊重することが,外国の人々と共に生きる上で大切であること --114/128-- - 113 - を考えることができるようにすることである。その際,これまでの学習で身に付けた 自国に対する理解との関連を図りながら,外国の異なる文化や習慣を適切に理解でき るように配慮する必要がある。 「世界平和の大切さと我が国が世界において重要な役割を果たしていることを考え るようにする」とは,我が国の国際交流や国際協力の様子,及び平和な国際社会の実 現に努力している国際連合の働きを具体的事例を通して調べ,平和な国際社会の実現 のために我が国が果たしている役割を考えることができるようにすることである。 ア 我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生活の様子 ここでは,世界の中の日本の役割について学習する際に,外国の人々と共に生きて いくためには異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることを考える手掛かり として,我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生活の様子を調べ る対象として挙げている。ここに示された事項について指導する際には,次のことを おさえる必要がある。 「我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生活の様子」について 調べるとは,貿易や経済協力などの面,歴史や文化,スポーツの交流などの面で我が 国とつながりが深い国を取り上げ,それらの国の人々の生活の様子を具体的に調べる ことである。 人々の生活の様子については,例えば,衣服や料理,食事の習慣,住居などの衣食 住の特色や,国民に親しまれている行事,学校生活や子どもの遊び,あいさつの仕方 やマナー等の習慣などを取り上げることが考えられる。これらの学習を通して異なる 文化や習慣を理解し関心を深めるようにすることは,外国の人々のものの見方や考え 方を理解し,尊重することにつながるものである。 実際の指導に当たっては, 教師が我が国とつながりが深い国から数か国を取り上げ, その中から,児童一人一人が自らの興味・関心や問題意識などに基づいて,調べる国 を一か国選択して調べるように配慮することが必要である。その際,児童が選んだ国 によって調べる資料の量などに大きな違いが生じることのないように,教師は個に応 --115/128-- - 114 - じた適切な指導を心掛けることが大切である。また,外国語活動での異なる文化をも つ人々との交流体験を生かすなどして,外国の文化を具体的に理解できるようにし, それを通して我が国や諸外国の伝統や文化を尊重しようとする態度を養うことが大切 である。 これらの学習を通して,外国の人々と共に生きていくためには,異なる文化や習慣 を理解し合うことが大切であることを考えることができるようにする。 イ 我が国の国際交流や国際協力の様子及び平和な国際社会の実現に努力してい る国際連合の働き ここでは,世界の中の日本の役割について学習する際に,世界平和の大切さと我が 国が世界において重要な役割を果たしていることを考える手掛かりとして,我が国の 国際交流や国際協力の様子及び平和な国際社会の実現に努力している国際連合の働き を調べる対象として挙げている。ここに示された事項について指導する際には,次の ことをおさえる必要がある。 「我が国の国際交流や国際協力の様子」について調べるとは,我が国がスポーツや 文化を通して国際交流を行っている様子を取り上げ,我が国は世界の人々と互いに親 善や理解を深めていることを調べることや,我が国が教育や医学,農業などの分野で 国際協力を行っている様子を取り上げ,我が国は世界の平和や発展のために貢献して いることを調べることである。 「平和な国際社会の実現に努力している国際連合の働き」について調べるとは,平 和な国際社会の実現のために大きな役割を果たしている国際連合の働きを取り上げ, 我が国が国際連合の重要な一員として平和な国際社会の実現に大きな役割を果たして いることを調べることである。 実際の指導に当たっては, 「国際交流」についてはスポーツ,文化の中から, 「国 際協力」については教育,医学,農業などの分野で世界に貢献している事例の中から それぞれ選択して取り上げるとともに, 「国際連合の働き」についてはユニセフやユ ネスコの身近な活動を取り上げ,学習が具体的に展開できるように工夫する必要があ --116/128-- - 115 - る。例えば,地域の留学生や外国で生まれ育った人,青年海外協力隊の元隊員などか ら話を聞いて調べる活動や,ユニセフ募金のポスターなどを活用して募金の使われ方 を調べる活動,インターネットを活用して必要な資料を収集して調べることなどが考 えられる。 これらの学習を通して,我が国や日本人が,過去の戦争や原爆による人類最初の災 禍などの経験を生かして国際社会の平和と発展のために,今後,果たさなければなら ない責任と義務が重いものであることに気付くようにするとともに,世界平和の大切 さと我が国が世界において重要な役割を果たしていることを考えることができるよう にする。 (内容の取扱い) ( 3) 内容の( 3)については,次のとおり取り扱うものとする。 ア アについては,我が国とつながりが深い国から数か国を取り上げること。 その際,それらの中から児童が一か国を選択して調べるよう配慮し,様々な 外国の文化を具体的に理解できるようにするとともに,我が国や諸外国の伝 統や文化を尊重しようとする態度を養うこと。 イ イの「国際交流」についてはスポーツ,文化の中から, 「国際協力」につ いては教育,医学,農業などの分野で世界に貢献している事例の中から,そ れぞれ選択して取り上げ,国際社会における我が国の役割を具体的に考える ようにすること。 ウ イの「国際連合の働き」については,網羅的,抽象的な扱いにならないよ う,ユニセフやユネスコの身近な活動を取り上げて具体的に調べるようにす ること。 エ ア及びイについては,我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重 する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育 てるよう配慮すること。 --117/128-- - 116 - 内容の取扱いの( 3)のアは,内容の( 3)のアの「我が国とつながりが深い国の人々の 生活の様子」に関する指導において,取り上げる国の数とその選択の仕方,及び指導 上の配慮事項を示したものである。 内容の( 3)のアでは,我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生 活の様子を調べて,外国の人々と共に生きていくためには異なる文化や習慣を理解し 合うことが大切であることを考えることをねらいとしている。そのために,例えば, 我が国とつながりが深い国から教師が三か国程度取り上げ,その中から児童一人一人 が自らの興味・関心や問題意識に基づいて一か国を選択して自分の力で調べることが できるようにすること,取り上げる国が特定の地域に偏らないようにすることなどに 配慮することが大切である。 その指導に当たっては,例えば,外国語活動における外国の人々との交流体験で出 会った外国人を招き話を聞く活動が考えられる。また,それぞれの児童が選択して調 べた国の人々の生活の様子を互いに発表し考えたことを伝え合う場を設けることも有 効である。その際,外国の文化の理解を通して,我が国や諸外国の伝統や文化を尊重 しようとする態度を養うようにすることが大切である。 内容の取扱いの( 3)のイは,内容の( 3)のイの「国際交流」と「国際協力」について 学習する際に,取り上げる事例の範囲と配慮事項を示したものである。 「国際交流」については,オリンピックや国際競技会などのスポーツによる国際交 流や,歌舞伎や能,邦楽の演奏などの海外公演,海外での柔道や剣道などの我が国の 伝統的武道の紹介,外国の絵画や舞踊,音楽などの日本での展覧会や公演など文化に よる国際交流を取り上げることが考えられ る。また,「国際協力」については,教育, 医学,農業など様々な分野で技術者を海外に派遣したり,国内に海外からの研修生を 受け入れたりしている事例を取り上げることが考えられる。それらを具体的に調べる ことを通して,国際社会における我が国の役割を具体的に考えるようにする。 内容の取扱いの( 3)のウは,内容の( 3)のイの「国際連合の働き」について学習する 際の配慮事項を示したものである。 ここでは国際連合が平和な国際社会を実現するために大きな働きをしていること や,我が国もその重要な一員としての役割を果たしていることを具体的に調べ,理解 --118/128-- - 117 - できるようにすることが大切である。そのために,児童にとって身近なユニセフやユ ネスコの活動を取り上げて具体的に調べることができるよう配慮する必要がある。 内容の取扱いの( 3)のエは,内容の( 3)のア及びイにおける国旗と国歌の指導につい て,それを取り扱う際の配慮事項を示したものである。 内容の( 3)のアの我が国とつながりが深い国の人々の生活の様子や,イの国際交流, 国際協力,国際連合の働きにかかわる学習においては,国旗と国歌について関連して 指導するようにする。 国旗と国歌の指導については,国際社会においては,国旗と国歌が重んじられてい ることに気付かせるとともに,我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,それらを尊重 する態度を育てることが大切である。また,諸外国の国旗と国歌についても同様にこ れを尊重する態度を育て,国際社会に生きる日本人としての自覚と資質を育成するこ とが大切である。 我が国の国旗と国歌の意義については,第3学年及び第4学年,第5学年における 国旗にかかわる指導の上に立って,次のような事柄について理解できるようにする必 要がある。 @ 国旗と国歌はいずれの国ももっていること。 A 国旗と国歌はいずれの国でもその国の象徴として大切にされており,互いに尊重 し合うことが必要であること。 B 我が国の国旗と国歌は,それぞれの歴史を背景に,長年の慣行により, 「日章旗」 が国旗であり, 「君が代」が国歌であることが広く国民の認識として定着してい ることを踏まえて,法律によって定められていること。 C 国歌「君が代」は,日本国憲法の下においては,日本国民の総意に基づき天皇を 日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国の末永い繁栄と平和を祈念した歌で あること。 また,国歌「君が代」については,音楽科における指導との関連を重視するととも に,入学式や卒業式などにおける国旗や国歌の指導などとも関連付けながら指導する ことが大切である。 --119/128-- - 118 - 第4章 指導計画の作成と内容の取扱い 1 指導計画作成上の配慮事項 1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。 (1) 各学校においては,地域の実態を生かし,児童が興味・関心をもって学習 に取り組めるようにするとともに,観察や調査・見学などの体験的な活動や それに基づく表現活動の一層の充実を図ること。 これは,各学校が指導計画を作成する際の留意点として,地域の実態を生かし,児 童が興味・関心をもって学習に取り組めるようにするとともに,観察や調査・見学な どの体験的な活動やそれに基づく表現活動の一層の充実を図ること,という二つの配 慮事項を示したものである。 「地域の実態を生かし,児童が興味・関心をもって学習に取り組めるようにする」 ことについては,地域にある素材を教材化すること,地域に学習活動の場を設けるこ と,地域の人材を積極的に活用することなどに配慮した指導計画を作成し,児童が興 味・関心をもって楽しく学習に取り組めるようにすることを求めている。 各学校においては, まず,教師自身が各学校の置かれている地域の実態把握に努め, 地域に対する理解を深めるようにする。そして,地域の素材をどのように受けとめ, 地域の人々や施設などからどのような協力が得られるのかを明確にする必要がある。 それらをもとに,地域の素材を教材化し,地域の施設を積極的に活用したり地域の人 々と直接かかわって学んだりする学習活動を位置付けた指導計画を作成することが大 切である。 その際,第3学年及び第4学年については,目標及び内容等が2学年まとめて示さ れている趣旨を十分に踏まえ,各学校が創意工夫を生かし,地域に密着した特色ある 指導計画を作成し,児童が地域社会への理解を一層深め,地域社会に対する誇りと愛 情を育てるように配慮する必要がある。また,第5学年及び第6学年において地域の --120/128-- --120/128-- - 119 - 特性を生かした指導計画を工夫することにも大きな意義がある。しかし,第5学年及 び第6学年では我が国の国土や産業,歴史,政治などについての理解を深めることが 目標であり,地域教材を取り上げた学習が,単に地域社会の学習にとどまることのな いように,その指導計画への位置付け方を工夫する必要がある。 「観察や調査・見学などの体験的な活動やそれに基づく表現活動の一層の充実」に ついては,観察や調査・見学などの体験的な活動やそれに基づく表現活動を指導計画 に適切に位置付けて効果的に指導することにより,体験的な活動や表現活動の一層の 充実を図ることを求めている。 体験的な活動を指導計画に適切に位置付けて効果的に指導するためには,まず,社 会科としての体験的な活動のねらいを明確にすることが必要である。その上で事前・ 事後や現地における指導の充実を図り,児童が実物や本物を直接見たり触れたりする ことを通して社会的事象を適切に把握し,具体的,実感的にとらえることができるよ うにすることが大切である。また,体験的な活動に基づく表現活動については,観察 や調査・見学,体験などによって分かったことや考えたことなどを適切に表現する活 動を指導計画に効果的に位置付け,調べたことや考えたことを表現する力を育てるよ うにする必要がある。その際,言語活動の充実を図る観点から,各学年の目標の( 3 ) において,これまでの「調べたこと」に「考えたこと」を加え, 「考えたことを表現 する力」を育てることを一層重視していることに留意する必要がある。 各学校においては,児童の実態や発達の段階を考慮に入れ,観察や調査・見学など の体験的な活動やそれに基づく表現活動の一層の充実を図る観点から,4年間の社会 科学習を見通した指導計画を作成することが大切である。 ( 2) 博物館や郷土資料館等の施設の活用を図るとともに,身近な地域及び国土の 遺跡や文化財などの観察や調査を取り入れるようにすること。 これは,指導計画の作成に当たって,地域にある教育的な施設の活用を図るととも に,身近な地域及び国土の遺跡や文化財などの観察や調査などの活動を取り入れるよ --121/128-- - 120 - うに留意することを示したものである。 近年,国や地方公共団体,企業などによって,博物館やその他の施設の整備が進め られている。これらの諸施設を積極的に活用して,社会科の見学や調査活動を行うこ とは,児童の意欲や学習効果を高める上で極めて重要なことである。社会科の学習に 活用できる博物館には,歴史博物館や郷土資料館のほかに,例えば魚や自動車などに 関する博物館,水道,電気,ガス,原子力など資源・エネルギーに関する博物館,農 業や漁業,林業,伝統的な工業などの地場産業に関する地域産業振興センターなど, 多様なものがある。 地域にあるこれらの施設を積極的に活用することによって,児童の知的好奇心を高 め,学習への動機づけや学習の深化を図ることができる。また,諸感覚を通して実物 や本物に触れる感動を味わうことができる。学校での積極的な活用を通して,これら の施設を自ら進んで利用できるようになる。そのことは生涯にわたって活用する態度 や能力の基礎となるものである。 また,身近な地域や国土には,様々な遺跡や文化財が保存,管理されており,それ らを観察したり調査したりする活動の場を,学習のねらいを考慮して,指導計画に位 置付けることも考えられる。例えば,第3学年及び第4学年での地域の人々の生活の 移り変わりに関する学習や県内の特色ある地域の人々の生活に関する学習,第6学年 での我が国の歴史学習などでは,身近な地域や国土に残されている様々な遺跡や文化 財,歴史博物館などを直接訪ねて観察したり調査したりする活動を組み入れることが できる。このことにより,児童は一層具体的に学習できるようになり,学習のねらい を効果的に実現するとともに,歴史に対する興味・関心を高めることができる。 指導計画の作成に当たっては,事前に施設,遺跡や文化財などの実情を把握すると ともに,関係の機関や施設などとの連携を綿密にとることが大切である。その際,施 設の学芸員や指導員などから話を聞いたり協力して教材研究を行ったりして,指導計 画を作成する手掛かりを得ることも一つの工夫である。また,特別活動の遠足・集団 宿泊的行事や総合的な学習の時間における伝統や文化に関する学習活動などとの関連 を指導計画に示すことも考えられる。 このような学習を通して,博物館や郷土資料館,地域や国土に残されている遺跡や --122/128-- - 121 - 文化財などの役割や活用の仕方について正しく理解させ,それらにかかわっている人 々の働きやそれらが大切に保存,管理されていることの意味についても気付くように することが大切である。 ( 3) 学校図書館や公共図書館,コンピュータなどを活用して,資料の収集・活用 ・整理などを行うようにすること。また,第4学年以降においては,教科用図 書「地図」を活用すること。 これは,指導計画の作成に当たって,学校図書館や公立図書館,コンピュータ,教 科用図書「地図」 (地図帳)などの学習環境や教材・教具を活用するように配慮する ことを示したものである。 社会科の授業においては,これまでと同様に,社会の変化に自ら対応する能力や態 度の育成を図る観点から,学び方や調べ方を大切にし児童の主体的な学習を一層重視 することが必要である。すなわち,児童一人一人が自らの問題意識をもち,学習問題 に対して解決の見通しを立て,それに従って必要な情報を収集し,それらを活用・整 理して問題を解決していく学習活動を構成することが大切である。 このような学習活動を実現していく上で,学校図書館や公共図書館,コンピュータ などの果たす役割は極めて大きい。その主な理由は,次の三つに整理することができ る。 その一つは,学校図書館や公共図書館,コンピュータなどを活用して,児童が学習 問題の解決に必要な情報を検索し収集することができることである。社会科の学習に おいては,実物を観察したり,地域の様々な事象や人々の働きを見学・調査したりす るなど,社会的事象に直接かかわり,触れ合いながら学ぶことが大切である。一方, 県の様子,我が国の産業や歴史などの学習では,観察や調査・見学などの体験的な活 動が困難な場合が多く,学校図書館や公共図書館などに備えられた図鑑や読み物,事 典(辞典) ,参考書などの図書やコンピュータなどから得られる様々な情報が重要な 学習の資料となる。 --123/128-- - 122 - その二つは,学校図書館や公共図書館,コンピュータなどの活用を通して,情報活 用能力を育てることができることである。児童一人一人が学習問題などを解決するた めに図書館やコンピュータなどを活用する過程で, 必要な資料を検索・収集する能力, 分析・選択する能力,検討・吟味する能力,加工・整理する能力などを習得すること ができる。 その三つは,特にコンピュータなどの情報手段の活用を通して,多様な表現方法を 身に付け,調べたことや考えたことを分かりやすく伝える発信能力を育てることがで きることである。例えば,インターネット,電子メールなどの様々な情報手段により, 自ら情報を発信し,国内ばかりでなく,例えば日本人学校など海外の人々ともかかわ りをもつことにより,一人一人の表現力も一層豊かになるものと思われる。 このような学習を実現していくには,学校図書館などの施設の整備を進めていくこ とが大切である。特に学校図書館がもつ読書センターとしての機能に加え,児童の学 習活動を支援する学習・情報センターとしての機能をもつようにしていく必要があ る。 指導計画の作成に当たっては,例えば,児童一人一人が図書館やコンピュータを利 用する必要性を感じることができるような教材や学習過程を工夫・改善すること,児 童一人一人が図書館やコンピュータを活用し,学習問題などについて調べて考え,表 現し発信できるようにするため,十分な学習の時間を保障すること,いつどこの場面 で,どのように図書館やコンピュータを活用するのか,児童の活動場面を想定するこ となどが大切である。 また,第4学年から給与される地図帳は,地図を効果的に活用することともかかわ って,社会的事象を適切に見たり考えたりする能力を育てるために必要な教材である。 地図帳は,地名の位置を確認することができるだけでなく,社会的事象の様子や関係, 自然環境とのかかわりなどを調べることもできる。こうした活用の仕方を身に付ける とともに,地図帳を日常的に活用し,地図帳への親しみをもたせ,問題解決のための 教材として効果的に活用する知識や能力を育てるようにすることが大切である。 地図帳は,第4学年から第6学年までの各学年で使用されるものであるが,特に使 いはじめにおいては,地図帳の内容構成を理解できるようにすることが大切である。 --124/128-- - 123 - また,社会科の学習を進める上で大切な教科用図書であることや,社会科だけでは なく他の教科等の学習や家庭などにおいても活用することが大切であることを指導す るようにする。 このように,地図帳については,日常の指導の中で,折にふれて,地図の見方や地 図帳の索引の引き方,統計資料などの活用の仕方などについて指導し,地図帳を自由 自在に活用できる知識や能力を身に付けるようにすることが大切である。 ( 4) 第1章総則の第1の2及び第3章道徳の第1に示す道徳教育の目標に基づ き,道徳の時間などとの関連を考慮しながら,第3章道徳の第2に示す内容に ついて,社会科の特質に応じて適切な指導をすること。 学習指導要領の第1章総則の第1の2においては, 「学校における道徳教育は,道 徳の時間を 要 として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳の時間はも かなめ とより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に 応じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行わなければならない」と規定 されている。 これを受けて,社会科の指導においては,その特質に応じて,道徳について適切に 指導する必要があることを示すものである。 社会科における道徳教育の指導においては,学習活動や学習態度への配慮,教師の 態度や行動による感化とともに,以下に示すような社会科の目標と道徳教育との関連 を明確に意識しながら,適切な指導を行う必要がある。 社会科においては,目標を「社会生活についての理解を図り,我が国の国土と歴史 に対する理解と愛情を育て,国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者と して必要な公民的資質の基礎を養う。 」と示している。 地域の社会生活及び地域の発展に尽くした先人の働きなどについての理解を図り, 地域社会に対する誇りと愛情を育てることや,我が国の国土と歴史に対する理解と愛 情を育てることは,伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛 --125/128-- - 124 - することなどにつながるものである。また,国際社会に生きる平和で民主的な国家・ 社会の形成者としての自覚をもち,自他の人格を尊重し, 社会的義務や責任を重んじ, 公正に判断しようとする態度や能力などの公民的資質の基礎を養うことは,主として 集団や社会とのかかわりに関する内容などと密接なかかわりをもつものである。 次に,道徳教育の 要 としての道徳の時間の指導との関連を考慮する必要がある。 かなめ 社会科で扱った内容や教材の中で適切なものを,道徳の時間に活用することが効果的 な場合もある。また,道徳の時間で取り上げたことに関係のある内容や教材を社会科 で扱う場合には,道徳の時間における指導の成果を生かすように工夫することも考え られる。そのためにも,社会科の年間指導計画の作成などに際して,道徳教育の全体 計画との関連,指導の内容及び時期等に配慮し,両者が相互に効果を高め合うように することが大切である。 2 各学年にわたる内容の取扱いと指導上の配慮事項 2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。 ( 1) 各学年の指導については,児童の発達の段階を考慮し社会的事象を公正に判 断できるようにするとともに,個々の児童に社会的な見方や考え方が養われる ようにすること。 これは,各学年の指導において,特に社会的な思考力や判断力の育成に関して留意 すべき事項を示したものである。 学習指導要領の各学年の目標の( 3 )では,能力に関する目標が示されている。特に, これらの目標の後段には,各学年の指導内容と発達の段階を考慮して,社会的事象の 意味などについて考える力を育てるようにすることを示している。すなわち,第3学 年及び第4学年では「地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える 力を」 ,第5学年では「社会的事象の意味について考える力を」 ,第6学年では「社 会的事象の意味をより広い視野から考える力を」 ,それぞれ育てるようにすることを --126/128-- - 125 - 示している。 こうした目標を実現するためには,各学年の指導において,児童の発達の段階を考 慮して,社会的事象を公正に判断することができるよう配慮することが大切である。 社会的事象を公正に判断するとは,決して一人よがりの判断ではなく,社会的事象を 多面的,総合的にとらえ公正に判断することを意味している。取り上げる内容や教材 が一方的であったり一面的であったりすると,公正に判断する能力が十分に育成され なくなる。 例えば,第3学年及び第4学年の地域の人々の販売者の側に見られる仕事の特色と 消費者の側の工夫との関係を考える学習,地域社会の人々の健康な生活や良好な生活 環境,安全を守る関係機関の働きとそこに従事している人々や地域の人々の工夫や努 力を考える学習,第5学年の情報化の進展が国民生活に及ぼす影響を考える学習,公 害から国民の健康や生活環境を守ることの大切さを考える学習,第6学年の我が国の 歴史的事象のもつ意味や人物の働きを考える学習,政治の働きを調べる学習,国際社 会における日本の役割を考える学習などにおいては,社会的事象を一面的に取り上げ ることがないよう,特に配慮する必要がある。こうした学習場面においては,児童が 社会的事象を公正に判断することができるよう,教材の構成,事例の選択,教師の助 言などを適切に行うことが大切である。 また,児童一人一人に社会的な見方や考え方が養われるよう,社会的事象を比較・ 関連付け・総合して見たり考えたり,社会的事象を空間的,時間的に理解したり,公 正に判断したり多面的にとらえたりできるようにすることが大切である。そのために は,児童一人一人が社会的事象を具体的に観察,調査したり,地図や地球儀,統計, 年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用したり,調べたことや考えたことを表現 したりできるように,問題解決的な学習や体験的な活動,表現活動などを工夫する必 要がある。 --127/128-- - 126 - ( 2) 各学年において,地図や統計資料などを効果的に活用し,我が国の都道府県 の名称と位置を身に付けることができるように工夫して指導すること。 これは,各学年の指導において,地図や統計資料などを効果的に活用し,我が国の 都道府県の名称と位置を身に付けることができるように工夫して指導することを求め ているものである。 47都道府県の名称と位置については,第3学年及び第4学年の内容の( 6)のアにお いて,我が国が 47の都道府県によって構成されていることが分かり,都道府県の名 称と位置を一つ一つ地図帳で確かめ,日本地図(白地図)上で指摘できるようにする ことを求めている。 この他,第3学年及び第4学年では,地域の人々の生産や販売についての学習の中 で,また,第5学年では,農業や水産業,工業の盛んな地域や運輸の働き,我が国の 位置と領土,地形や気候の概要などについての学習の中で,さらに第6学年の歴史学 習においても,地図や統計資料などに,様々な都道府県の名称が度々登場してくる。 そうした学習場面においては,その都度,その都道府県の位置を地図帳の日本地図で 確認したり,学習した事柄を日本地図(白地図)に整理したりすることが大切である。 また,これらの学習と関連付けて,日本の都道府県を表す地図を教室に常掲し活用す るなど,教室環境を工夫することも効果的である。 こうした学習を通して,小学校修了までに,我が国の 47都道府県の名称と位置を 確実に身に付け,活用できるようにすることが大切である。 --128/128--