研究集会2015(2016/01/8)
情報の科学的リテラシーを活かした問題解決の授業創り(観点別評価を踏まえながら)†
- 情報科で重要な学習要素としての、情報の科学的リテラシーの位置づけ
- 情報の科学的リテラシーのもとでの、問題解決の学習
- 観点別評価の実用的な解釈と、それを踏まえたルーブリックの作成と評価の実
際 -科学的な平均の理解と問題解決(意思決定)への応用
- アクティブラーニング、しちゃう!
WS1 (60m/09:00-10:00)†
- ワークショップの概要説明 (10m/09:00-09:10)
- ミニ基礎講座
- [A]情報の科学的リテラシー (10m/09:10-09:20)
- [B]問題解決的学習活動 (10m/09:20-09:30)
- [C]観点別評価の解釈 (20m/09:30-09:50)
<Short Break AM-1> (10m/09:50-10:00)
WS2-1 30m(10:00-10:30)†
- 平均のいろいろとその活用
- 相加平均の他にも、相乗平均や調和平均などがある。
- 具体的な例を通して、スプレッドシートを使って計算する。
(この後のAHPでの実習に必要なスキル)
- 3種類の平均の間にある関係を可視化してみる。
(物事の背景にある関係性についてイメージする)
WS2-2 30m(10:30-11:00)†
- 評価規準つくりの演習
「知識を獲得して理解している」
- (略)
「思考を行い判断できる」
- (略)
「技能を獲得して表現できる」
- (略)
「関心を持ち意欲がある」
- (略)
<Short Break AM-2> (10m/11:00-11:10)
WS3-1 30m(11:10-11:40)†
WS3-2 30m(11:40-12:10)†
- 評価規準つくりの演習
「知識を獲得して理解している」
- (略)
「思考を行い判断できる」
- (略)
「技能を獲得して表現できる」
- (略)
「関心を持ち意欲がある」
- (略)
<Lunch Break> (20m/12:10-12:30)
<Business Presentation> (80m/12:30-13:50)
WS4-1 40m(13:50-14:30)†
- AHPの手法を活用した授業デザイン(計画案様式別紙)
- 学習計画案「導入−展開−総括」を作成する。
- 評価規準(WS3-2)を落とし込む。
WS4-2 30m(14:30-15:00)†
- それぞれの評価規準を、評価基準表(ルーブリック)に落とし込む
- 抽象的な言葉は、具体的考えて段階化する。
- 何か対象となるものがあれば、それらが持つ属性などを段階的に考える。
- 段階的にとらえることができるように、言葉を言い換えてみる。
- どうしても段階的に表現できない場合には、それが評価規準として相応し
くないこともある。
- 評価基準に落とし込む中で、元となった評価規準を見直
すことが必要になることもある。
WS5 30m(15:00-15:30)†
- 学習計画案とルーブリックのプレゼンテーション
- 適当な1作品を選出(選出方法は?)
- プレゼンテーション10分
- 質疑応答10分
- 改良改善のために
以下、WS1にある基礎講座の概略です。†
[A] ミニ基礎講座(授業創りの出発点 Starting Point)†
- 情報の科学的リテラシー
- 科学的とはどのようなことなのか
自然や社会など、世界の特定領域に関する法則的な認識を目指す合理的な知識の
体系、または探求の営み。実験や観察に基づく経験的実証性と、論理的推論に基
づく体系的整合性を、その特徴とする。
科学的†
- 論理的
- 客観的
- 合理的知識(演繹/deduction)による法則的認識(帰納/induction)
- 実証的
※流れ※
これらの推論--論証の形式を科学的リテラシーとしてどのようにいかすのか。
そこで、情報科の狙いの一つである問題解決の学習活動の中に埋め込んでみる。
[B]ミニ 基礎講座(授業創りの方法 Method)†
問題解決的な学習とはどのようなものなのか†
問題解決的な行動を行うために†
- クリティカルに物事を見ること
- 毎日の日常が問題解決の連続であることへの自覚
- 現状を改善してよりよい状態を目指そうとする態度
- ステレオタイプな考え方の排除
- 原理主義的な考え方の排除
- 二元論(二者択一)に陥らない
- 自分自身への理解(メタ認知)
- 他の考え方や価値観の尊重
- 「折り合いを付ける」ことの重要性への認識
※こうしたものが<科学的--論理的>な態度
問題解決行動†
- 問題の発見
- 自分の理想とする状態と現状との乖離を分析的に考察する
- 問題の大きさ、解決に至る実現性、モデル化の可能性などを考慮する
- 原因の考察
- 一つが思い当ったからといって考察を止めない
- さまざまな立場や価値観から考察する
- 解決策の考案
- 一つが思い当ったからといって考案を止めない
- 考察された原因を解消するさまざまな解決策を考案する
- 複数の解決策に優先順位を付ける
※ここまでが<仮説形成>の段階
- 解決策の実施
- 優先順位に従って解決策を試す
- うまくいかない場合には解決策を修正したり次の解決策を試す
※このあたりが<演繹的>な段階
- 解決行動の評価
- 満足する解決を得ることができたか、不十分な点は何か
- 不十分な原因は解決策にあるのか、解決行動にあるのか
- それらにはどのように対処すればよかったのか、そもそも無理があったの
か
- 問題解決の蓄積
- 今後はこのような問題に対してはこのような解決策が効果的である
- 今後このような問題が起こらないように解決策から考えることができる
※このあたりは<帰納的>な段階
※流れ※
このように学習活動の展開の要点を書き下すと、これらは「評価の観点」となる
では、こうした具体的な評価の観点をどのように体系化していくのか。
[C] ミニ基礎講座(授業創りの到達点 View Point)†
まずはお断り†
「技能--表現」と「思考--判断は「技能」と「思考--判断--表現」にその組み合
わせが変更されている。言語活動の重視から、思考して判断した結果を言語「表
現」させようという趣旨ではないかと考えられる。また、言語表現にとどまら
ず、深く広く表現の意味を捉えなおした結果とも考えられる。しかし本WSでは、
4観点をより分かりやすく解釈しようとする都合上、以前の組み合わせを用いる
ことにする。
4観点の適用を考えた解釈の方法私案†
- 学習活動としての解釈
例えば「知識--理解」では知識と理解を並置しているが、この二つは同列にして
考えられる言葉なのか。知識は知っている「内容」を指すものであり、理解は道
理や筋道を分かるという「行為」や行動を表す。他の観点についても同様に考え
ることができる。したがって、まず以下のように、学習活動を「<内容>を<行
為>すると、ある<在り様>になる」と解釈する。
知識・理解 →知識を獲得して理解する(理解している)
思考・判断 →充分な思考をして判断する(判断できる)
技能・表現 →技能を獲得して表現する(表現できる)
関心・意欲・態度→関心を持ち意欲がある(態度である)
- 出っ張った「態度」の扱い
項目を3つ持つという意味で違和感を覚えるのは「態度」である。
しかしここで上記のように、「態度」を内容を行為した結果としての<在り様>
として考える。すると、特に「興味--関心--態度」の中で取り上げる必要はなく
て、他の3観点と同様の表現でよいと考えられる。以上から、以下のように解釈
したい。
「知識を獲得して理解している」
「思考を行い判断できる」
「技能を獲得して表現できる」
「関心を持ち意欲がある」
- 4観点を同列には考え(られ)ない
学習活動のその時々に適した評価の観点を持つという趣旨からすれば、4観点を
同列に考えがちである。しかし、学習の深まりという点から4観点を考察すれ
ば、「興味を持って関心がある」ことが学習の最初から評価されることがあるは
ずがない。
- 学習の深まりと4観点
学習の深まりというプロセスの中で評価を考えることで、学習の成果に対してだ
けではなく、学習指導の過程の中にも評価を位置づけることができる。(いわゆ
る「指導と評価の一体化」)
<知識・理解>
学習テーマに関する「知識」を獲得する。
この段階においてすでに興味や関心があれば、それはそれで好ましいことだが、
この状態を評価しても何の意味を持たない。学習が始まったばかりなのだから、
そのときの生徒の状態を把握する効果はあるにしても、指導の結果としての学習
成果を評価することにはならないからである。知識は構造的に習得されて初め
て、学習テーマに関する「理解」に届く。
<思考・判断>
理解した上で獲得した知識は、物事を「思考」するために活用される。
仮説を検証するために演繹的に思考して「判断」した結果得る結論は、妥当だっ
たにせよそうでなかったにせよ、新しい仮説を形成するために再利用される。そ
うした経験的蓄積が、帰納的に「思考」の結果「判断」され、新しい「知識を理
解」するために利用される。
<技能・表現>
理解したり、思考して判断したりすることも含めて、問題解決をしようとすると
きに用いる手段を実現できることが「技能」を持つということである。問題解決
の手段としての技能は、問題そのものや解決の結果を可視化したり、その成果を
通して他者とコミュニケーションしたりする場合に必要な「表現」の手段ともい
える。
<関心・意欲>
知識を理解し自分の頭で自由に思考できるようになる。
身に着けた技能を使って自分の判断で表現をし、他者とのコミュニケーションを
楽しむことができる。その結果として、周囲のことに対して「関心」を持つこと
ができるようになり、「意欲」を持って主体的に取り組むことができるようにな
る。そしてまたそこに、これからも新しい知識を理解していこうという態度が生
まれるのである。
一つではない評価†
→授業評価 (学習目標と形成的評価の結果に齟齬はない
か確認する)学習活動の単位→評価→形成的評価(生徒に自己評価による適切なリ
フレクションを促す) →総括的評価(生徒が行ったリフレクションが適切かどう
かを判断する)
※生徒に適切なリフレクションを可能にする根拠(材料)を提供
するのが、学習活動(授業)である。