令和4(2022)年度研究テーマ趣旨説明文~

令和 4(2022)年度は情報科教育にとって、大きな転換期と言えます。 乗り越えなければならない大きな波がいくつも押し寄せる中、このまま何も手を打つことができないままでは、 パラダイムシフトの衝撃に粉々になってしまう恐れを感じます。 そこでまず、パラダイムシフトと考えられる内容について、いくつかに整理してみることにします。 第 1 に、これまで選択必履修であった「社会と情報」、「情報の科学」が、共通必履修科目「情報 I」へと集約 されたことへの対応です。 確かに、学習指導要領が改定されてからこれまで、私たちはそれなりの研修を重ねてきたとは言えます。 しかし、多くの学校が「社会と情報」を選択してきた経緯を考えると、この対応は決して容易ではないでしょう。 私たち自身が、「情報の科学的理解」についての知識と技術を身に付ける研鑽を、これまで以上に積まなけ ればなりません。 第 2 に、「GIGA スクール構想」への対応です。 この構想によって情報通信ネットワークが高速大容量になり、かつ無線通信の利用により自由度も高まります。 しかし、複雑になった情報通信環境の管理が、利便性とのトレードオフとして教員の手を煩わせることになるでし ょう。 また、BYOD(Bring Your Own Device)の導入によって、生徒個々の利用する情報端末の動作環境が、それ ぞれ全く異なったものになるであろうことが予想されます。このことが、生徒個々の情報端末上でのフィルター設 定や利用制限、複数の OS 管理への対応といった面倒を生じます。 さらに、これまで利用してきた「コンピュータ教室とデスクトップコンピュータ」という環境が失われるという変化も、 けっして見逃してはならないでしょう。 第 3 に、2025 年の大学入学共通テストの中で、国立大学の受験生に対して「情報」が原則として課されること への対応です。 「情報 I」がその出題範囲となり、2022 年度入学生が最初の受験生となりますから、まったく時間的猶予がな いばかりか、その準備に失敗は許されない状況です。これまでに公開されてきた情報処理学会の試作問題や 大学入試センターのサンプル問題、「情報関係基礎」のアーカイブなどを研究することをはじめとして、その対策 は喫緊の課題と言えます。 第 4 に、新学習指導要領に則した新しい観点別評価への対応です。 観点別評価の観点は、従来の 4 観点から「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」 といった 3 観点に整理されました。単なる用語の整理であると捉えて安易に受け止めるのではなく、観点別評価 の更なる進化として具体的な評価方法としての体系化を図る必要があります。このことで、これまでの授業へ の考え方、デザインの仕方にも抜本的な変革が求められ、再構築の必要性も生まれてくるのだと考えられます。 さらに、これらの他にも、私たち情報科教員の人数や配置、スキル向上のための研修のあり方なども取り上げ ることができます。しかしながら、これといった具体的な対策が施される様子を窺い知ることは叶わず、相変わ らず問題の解決は各学校、とりわけ直接担当する情報科教員に委ねられ、先送りされているのが現状です。

新時代の情報科 混沌からの脱却(解決すべきテーマの精選、方策と活動の共有)


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