研究集会2008

ワークショップの概要

A/自動採点ツールによる高大接続の試み(情報社会に生きる態度を考える)

石川千温・皆川雅章(札幌学院大学)

年間2万件ほどもある大学でのコンピュータリテラシー授業の課題採点は、負担過大な業務である。そこで2004年に開発されたWORDとEXCELの自動課題採点システムSGUDASは現在、札幌学院大学と札幌拓北高校で運用されている。学生の自学自習サイクルの確立、教員による採点レスポンスの向上などの教育的効果は毎年報告されて、さらに多くの導入が期待されている。システムの導入や課題評価基準の設定を行い、実用性を確かめた。

B1/C言語でロボットカーを制御してみよう!

栗本直人(滝高等学校)・須浦裕光(海外電商)

教育用独自開発のセンサー搭載ロボットカーの、プログラムによる自律制御。(1)制御プログラムをPCにインストール。(2)ソースコードをコンパイルし、ロボットカーに転送。(3)コース上で目的のライントレース。ソースコードを書き換えることまではしなかったが、難しいと考えがちな「制御」を楽しく理解することができた。ツール群やロボットカーについての質疑応答も活発であった。

B2/実体としてわかる情報の次世代教材(レゴマインドストーム)

棚橋二朗(北海道情報大学)・室木茂良(札幌東豊高校)

教育用レゴマインドストームNXTの基礎的な組み立て方、制御の基礎と概念を学んだ。直観的にGUI制御できる専用のソフトウェアで、興味深く取り組むことができた。授業例として、班毎に1セットの機材を組み立て、プログラミングを通してコンピュータの仕組みとアルゴリズムの概念を理解した。購入予算などについて質疑応答があり意欲的であった。

C/フリーソフトでマインドマップ!(情報社会に生きる態度を考える)

奥村稔(札幌北高校)

キーワード「情報社会の光と影」からの連想項目を、フリーソフトを使ってマインドマップに整理することに習熟。完成したマップを制限時間内にグループ・プレゼンし質疑応答。最後にマップの統合。プレゼンでは「質問を想定した情報発信受信」、質疑応答では「時間内での応答を想定した質問」の重要性を指摘した。マップ作成、マップによるプレゼン、アイディアの創発や情報の整理・提示、それらを通した授業の考え方など、多方面に応用可能な内容であった。

基調講演  今、求められている学力とは

大久保 昇
株式会社内田洋行専務執行役員マーケティング部長/教育システム部長・教育総合研究所長

社会と教育

インターネットがまだ珍しかった14年前(1995年)、全国100の学校で専用回線を導入した「100校プロジェクト」に関わったとき、日本の教育がよい意味で変わる予感がした。
資源の無い日本において、よい人材は会社にとっても国家にとっても大切である。戦後アジア諸国は教育に力を注いだ。昨年はシンガポールにとって代わられたが、昭和40年代からアジアGDPの1位は日本であった。シンガポールは人材育成に国家予算の17〜18%をかけているが、日本は逆に削減している。
海外の学校を視察する中で、日本の良さや日本の教育史を振りかえることがある。明治初期の寺子屋は非常に良い制度だった。そして明治12年、現在の価値にして約10憶円の寄付を集め全国に学校を設置した。第2次世界大戦後のもっとも貧しかった時期にも教育に金をかけてきた。これらの取り組みが現在の繁栄に繋がった。
新教育基本法には教育の情報化における格差への対応として、「教育の機会均等と教育水準の維持向上」「国と地方とが必要な財政措置」が追加された。しかし現実には、OECD各国の教育費の割合では、日本は30カ国中29位。予算は要求しなければつかない。費用対効果の測定も必要である。
教育基本法が初めて制定された頃と比較して、家族構成や社会情勢が大きく変わった。一番の変化は少子高齢化とグローバル化、そして社会の情報化である。少なくとも人事にかかわる要望は各社とも大きくは変わらない。今までは、教育界で輩出する人材と企業が求める人材とにミスマッチがあったが、最近は急速に近づいている。情報科はその起点になるかもしれない。

学習指導要領の改訂

今回改訂の学習指導要領には、いろいろな意味で注目している。理数教育が先行実施されるが、高校では初めてだと思う。言語活動の充実には情報活用能力が大きく関係している。外国語活動に対しては、一社会人としての期待も大きい。
いろいろ論議はあったが、生徒の能力を伸ばすことが目標であると明記されたことはよいことだと思う。情報化社会の中で幅広い知識と教養を身につけ、自らの能力を伸ばし創造性を培うとか、今の知識基盤社会、情報化社会の中で公共精神を養うとか、情報教育が担う役割はますます大きくなっていくものと考えている。
高等学校では、学習の基盤となる国語、数学、外国語を重視している。他には柔軟性として30単位を超える授業を容認している。しかし、義務教育の内容を高校で復習することは本来当たり前であり、このような記述自体が学習指導要領の柔軟性欠如を示しているのかもしれない。

企業が求める人間像

全体的に、社会の情勢の変化をより受けていると感じる。「生きる力」「確かな学力」などの抽象的とも思われる表現も、読み解いていくと企業の新人研修プランにも近い内容であることに気づく。確かにこのような人材を社会は求めているし、国が育成するべきである。学力重視と捉える向きもあるが、大学でも学士の質保障が問われている。現在になってやっと、教育と企業において人材を育てる方向性が一致しだしてきた。
PISA2006の調査で日本人は、知識技能に優れていても生きる力としての課題解決能力に欠けていると指摘された。結果として理数教育や言語学習の充実が必要とされ、学習指導要領の改正に影響を与えている。
当社の新人社員研修の目標の第一に「自ら思考し行動するという意識を涵養する」とある。確かに学歴社会と言われていることには間違いない。そして、一次試験ではある程度の学歴があることは有利ではある。しかし最終面接の段階では、目標に書いてあるような人材が採用されている。

入試制度

これからは形式知・暗黙知とも共有できるインテリジェンスを持った企業が制すると言われている。日本人が情報を有効に使い組織としてインテリジェンスを持てば、きっと世界に貢献できるようになる。しかし現実には、高校や大学の入試制度がこれらを阻害しているのではないだろうか。
しかし入試は必ず変わる。3年後位には大学にPISAが導入され、OECDが各国大学の学力を測定し比較するからである。PISA2006型の授業を行っていない日本の大学はこのままではいけない。
企業は国際競争に勝つために、知識を使い情報を見つけ出し、真偽を判断し、自分の考えによって加工発信できる人材を求めている。

情報科に期待すること

わずか2単位の情報科であるが、他の教科との間で触媒となり、21世紀を牽引する人材を育成してほしい。学習指導要領の改正のポイントでもある、言語活動の充実と活用の重視についても、どの教科よりも真剣に取り組んでくれると期待している。
「情報」の授業は高校生にとっては貴重な2時間になると思う。卒業後すぐ社会に出る生徒もいるし、大学に入り専門分野を学ぶ生徒もいる。そのような彼らに必要な情報活用能力を身に付けさせるとともに、高校生に情報教育の大切さを指導してほしいと思う。


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Last-modified: 2009-06-15 (月) 14:29:45 (4041d)