研究テーマとその考え方

研究テーマとその考え方について

以下の文書は、本部会創設時からの研究テーマについて、その設定の理由から記述してあります。趣旨とその流れをご理解頂ければ幸いです。


 これまで情報部会では、研究テーマを「前年度と同じ」とはしてきませんでした。常に進化進歩を続ける情報技術と、それらを基盤として変化していく社会を把握していくためには、前年と同じことを繰り返しているわけにはいかないからです。常に前に進む部会として、これからもぜひこの方向性を維持していきたいものだと考えます。
まず、これまでの三年間の研究テーマを振り返ってみましょう。

平成14(2002)年度

	新教科「情報」に求められるものと目指すもの
	(学びの形態のデザインに向けて)

今年度までの三年の期間を経て、必修教科としての情報は、ほとんどの学校で授業が行われたことと思います。誰もが経験したことのない新規に創設された教科での学習指導は、大いなる試行錯誤の混沌状態の中で行われたのだと思います。 誰もが悩んでいた授業計画を、まず情報という教科が目指すもの、目指すところを把握することから考えようというテーマでした。生徒の学びに向けた、具体的な授業デザインができることが目標です。

平成15(2003)年度

	試行錯誤の中から見えたもの
	(やってみてから考えよう、まずは実践!)

教科情報が始まりこの一年間の中で、すでに実践を重ねてきた学校ではそれなりの視点も定まり、混沌とした中にも、学校(担当教員)独自の教科観が生まれてきたものと思われます。後から実践を始める学校にも参考になるように、失敗も成功も私たちですべてを共有することによって、新たな実践を産み出そうと考えました。 失敗を振り返ることが問題解決のプロセスの一つだとすれば、教員が積極的に授業を開発し実践することが、生徒に対する何よりのお手本なのだと思います。

平成16(2004)年度

	情報の、スキル獲得から活用能力獲得へ
	(多様な情報活用能力を明らかにしながら)

カリキュラムが落ち着いてきて授業にも安定感が出始めると、そこには二つの方向性が現れてきます。毎日の授業に慣れてしまって保守的な授業内容に陥るか、過去の実践を振る返ることでさらに授業をブラッシュアップしていくかです。 保守的な態度に陥らないためにも今一度、教科としての情報が求めるものは何かということを考え直してみようとしました。また、考え直したときに、明らかに質的に高まっていくような方向性を示したいと考えました。 単なる情報処理スキルの獲得から、情報の幅広い理解を基本に据えたものの考え方を身に付け、諸問題の解決にそれを活用していくことができる能力の獲得へ。多様な情報活用能力は、多様な授業展開から生まれてくるとも言えるのではないでしょうか。

さて、これまでのレガシー教科では、内容の系統性から発想したカリキュラムで、学習内容をこつこつと順番に(この順番が適当かどうかそれほど根拠はないけれど)教え込むのが一般的でした。しかし教科情報は、学習すべき内容の質的な部分を、社会状況的に教材テーマを柔軟に選択しながら、しかも何度も繰り返し学ぶことでスパイラルにその向上を目指すものです。 このことはカリキュラムを、学習の内容の系統性から質の系統性に向けて転換を促していることを意味します。これまでの発想からでしかカリキュラムを考えてこなかったとしたら、十分な試行錯誤(混沌)が蓄積されてきたこの時期に、質的な系統性(秩序)からカリキュラムを見直してみるべきではないでしょうか。

以上の理由から、今年度の情報部会の研究テーマを、以下のように提案します。

平成17(2005)年度

	カリキュラム、混沌から秩序へ
	(内容の系統性から質の系統性に向けて)

さらに、今年度の研究テーマは、次年度の研究テーマに連続させようと考えました。大局的な研究の流れの中で、その年度ごとのテーマを押さえ込もうというスタンスです。そのためには少なくとも、翌年度の研究テーマが明らかになっていなければなりません。 授業の計画、実践、そして評価といったPDSのサイクルの中で、評価は必ずしも最後に位置づけられるものではありません。何をどのように評価するのかといった観点は、学習目標そのものと言っても過言ではありません。さらに、質の系統性から考えられたカリキュラムは、その評価の仕方にも工夫が必要です。量的な評価方法から質的な評価方法に移行するためには、評価の規準がそれに相応しいものになっていなければなりません。 レガシーな教科では疑問をあまり持っていなかった評価を、教科情報で本質的に問い直してみたいと思います。多くの実践がまだまだ集積しなければ、評価規準のあり方やその妥当性などの検証を行うことができません。多くの方々の実践と研究を期待したいと思います。

平成18(2006)年度

	評価の視点を基本に据えたカリキュラム
	(評価規準の設定から学習活動をデザインする)

今後の取り組みにおいても、いつも先の研究テーマを模索しながら実践を行うことで、現在の自分が置かれている状況を認知することができ、新しい視点を獲得する機会も数多く生まれるのだと思います。また、多くの仲間と情報や実践を共有することで、一人では難しかった多くの知見を得られることも可能になります。 部会員のみなさまの、ますます活発な研究実践活動を、どうかよろしくお願いいたします。

以下に、2007年度版として追加

平成19(2007)年度

	学習目標と評価の一体化
	(多様な評価活動を通して学習目標の達成に向かう)

「学習活動の何を評価するのか」ということを明確にすることから、授業としての具体的な学習活動をデザインするべきであることについては論を待たないと思います。

一方で現実の世の中に眼を向ければ、情報技術は追いかければ追いかけるほど逃げていくように進歩し続け、社会状況はこれまでの価値観を根こそぎ変革するかのようです。その結果として残念ながら、教科として遺伝子を持たないがゆえに私たちの教科「情報」の授業は、正直なところ未だ手探り状態というのが実態でしょう。

この状況を克服するためには、学習のねらい(評価項目)を明確にしてその活動をデザインし、有効な評価方法を用いて次の実践を向上させていくという螺旋状(スパイラル)の努力を、より多くの仲間と知恵を出し合って積み重ねていくしかありません。私たちが今立ち止まってしまっては、その時点で子どもたちは、「情報」と真っ当に触れ合うインターフェースを失ってしまうことになりますから。

教科の特性上、たとえ現在において困難に思われている実践上の技術的課題があったとしても、将来の技術革新がそれをたやすく実現してくれることが期待できます。ですから、私たちが今心を砕かなければいけないのは、そんな時間が解決してくれるようなことではなく、教科としての本質に迫るものでなくてはなりません。

それは、情報という教科が何を求められているかを私たち自身がきちんと受け止め、どのような形で子どもたちに向けて与えていくことができるかと考える授業への姿勢なのではないでしょうか。結果として、生徒と教師がお互いに学習の目的を評価する共通の基準を持つことで、双方がその目的に沿って向上していける学習環境を築いていくことができるのです。

ここで述べてきたことは、実はどの教科にも当てまる普遍的な理念だと思われます。歴史的にいろいろなしがらみを背負ってきている既存教科と違って情報科では、先に述べたような弱みも確かにありますが、自由に納得がいくだけの試行錯誤が許されるという他にはない特長も持っていると考えて間違いはないでしょう。

情報部会として私たちが向かうべき方向は、現実の授業での戸惑いや混乱の存在を認めつつも、それらを克服するために、適切な学習目標と評価を一体化して学習活動を考えていくものだと考え、ここに標題として挙げた研究テーマを提案します。


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Last-modified: 2007-09-05 (水) 21:01:24 (4721d)